震災

2018年09月04日

《歌集読む 184》 『震災のうた 1800日の心もよう』を読んだ

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河北新報社編集局編『震災のうた 1800日の心もよう』を読んだ。
河北新報出版センター。2016年8月。
河北新報という新聞の「河北歌壇」に入選した震災の短歌から選ばれて掲載されている。

河北新報出版センターの本は、こちら宮城ではけっこう売ってるけど、ほかの地域ではどうだかわからない。ローカルな本なのかもしれない。

河北歌壇の選者は佐藤通雅さんと花山多佳子さん。オレも河北歌壇に送ってたけど、この本には載ってません。



友捜し海沿いの街彷徨(さまよ)うも人一人見ず廃墟あとにす/矢内長吉



ろうそくを灯して災害ニュース聴く揺らぐ炎を両手(もろて)に庇ひて/佐藤繁



被災地に住めども我は被災せず避難所の前足早に過ぐ/小畑恵美子

仮設住宅の道隔てれば住宅街ガレージに庭にベランダがある/渋谷史恵

新築し仮設を去ると云う噂羨望の渦静かに廻る/島田啓三郎

→ほかの人との被害の程度の差による、ひそかな思いを詠んだ歌を三つ引いた。
渋谷さんや島田さんはよく見かける。この新聞歌壇の常連。



砂浜に波の描ける紋様は津波に逝きし人の便りや/内海おり子



やんだやんだ帰って家で暮らしたい動く左手で吾の頬打つ/武内文也

→「動く左手で」で右手が動かないことをあらわしていると見た。持てる力で精いっぱいうったえている。しかし「吾」にはどうすることもできない。
方言の初句。そういえば方言のある歌はとても少なかった。



映像にストレスあらば視るを止めよとテロップ流れ大津波寄す/伊東光江
→テレビで放送されるそのまんまなんだが、これもまた震災から出てきた異様なものの一つなのではないか。
珍しいテロップ。ストレスと名付けられたもの、予告されて押し寄せる津波。



津波より拾いし写真を伸ばせしか隣の葬儀のぼやけし遺影/島田啓三郎



防潮堤高くつづきて海みえぬ無人の駅にひとり降り立つ/薄井慈恵子




以上です。この本おわり。




▼▼▼



【こっちもおすすめ】
noteのほうでは、ブログでは読めない内容の記事をたくさんアップしています。




角川「短歌」2018年9月号の荻原裕幸さんの歌壇時評の感想すこし
https://t.co/CzRqDYixti

2018年7月のオレの短歌とその余談
https://note.mu/mk7911/n/nb3e7945830c7

「短歌研究」2018年9月号・短歌研究新人賞のことを思うぞんぶんに書く【1】
https://t.co/9LDZrsWmr0

「短歌研究」2018年9月号・短歌研究新人賞のことを思うぞんぶんに書く【2】 https://t.co/lcoeLM1kt6



などなど、
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2017年12月21日

「質問箱」七日目~九日目  2017年の歌集ベスト3、結社に入ってうれしかったこと、ほか

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「質問箱」
https://peing.net/mk7911
にきた質問に短歌でこたえるシリーズ。質問がこなくなったので、これが最終回になるかもしれない。引き続き質問くれば答えます。



結社に入って一番嬉しかった事は何ですか?
読まれてる参加している手ごたえを感じられます誌面の上で
初めての選者は三井修さん選歌なるほど寸評うれし
最近もうれしいことがありましてでもまだここでつぶやけません
https://t.co/zPmm6gkNxA



短歌は3.11から変わったでしょうか
震災のあとで短歌を読み始め作り始めたオレは黙るのみ
https://t.co/UivQH4k2d3

震災の年の夏に短歌をはじめました。ビフォーを体験してないのでビフォーアフターはわかんないですね
ちなみに「3.11 サンテンイチイチ」という言い方をすることにためらいがある。東日本大震災、とオレなら言う。




暴力と短歌は、どんなつながりがあると思われますか?
暴力はあると思えばどこにでもありうるものであり、定型も
https://t.co/3fLz3QnDQh



新聞歌壇って、やっぱり「いい歌」順に並んでいると思いますか?
いい歌かどうかは読者の判断もあるし選者の考えもある
参考になりそうなのを貼りましょう 『村弘氏穂の日経下段』#0 https://t.co/EaPVYuU4n1

https://t.co/hLqWqqJehq



短歌にとっての大問題、それだけで何ページも評論が書かれるようなことを質問してくる人がいる。



短歌の口語とは、本当に口語なのでしょうか?
あんたねえわざとそれやってるでしょうまあダメっつーわけでもねえが
話してる通り書いても字で見ると伝わりにくいこと多いです
https://t.co/QCWoclowlJ



可能ならば、枡野さんや穂村さん、加藤さんなどレジェンド級の先生方と、新聞歌壇などの投稿で掲載を競い合いたいと思いますか?
おもしろい考えですが掲載は競い合うものではないでしょう
https://t.co/1gkWYwCeHE



2017年の歌集ベスト3は何ですか
恥ずかしいことにたったの五冊しか今年の歌集を読んでいません
「今年読んだ」ものなら『昭和萬葉集 巻六』『つきかげ』『緑の祠』
https://t.co/dBocjaPhlW

……でも五冊でもオレとしては少ないほうではない。ベスト3を選ぶには少なすぎるという話。
『昭和萬葉集』はアンソロジー、『つきかげ』は斎藤茂吉、『緑の祠』は五島諭さん。


お休みの日は何をしていますか?
散歩して歌を作って本読むかちょっと遠くへ行ったりします
https://t.co/3hkxQXTG17



お酒は飲みますか?何を飲みますか?
お酒ねえ……飲まないんです飲み会に行ってカルピス飲むくらいです
https://t.co/0Ge0Aip35o




本名でいろいろするのは怖くないですか?
こわいけどすぐ慣れましたFacebookなんてだいたい本名でしょう?
https://t.co/hGlwb4BdCR



答えるの速くないですか!
早いでしょ書きたいことを定型にあてはめるのはそこそこ得意
https://t.co/ErN5YndGvY

「うたのわ」のコメント欄って57577でしかやりとりできなくて、致命的に使いづらいと思ってたんだけど、今のオレならわりと普通に使える気がする。



以上です。



▼▼▼



noteでは、ブログでは読めない内容の記事をたくさんアップしています。

「誰のために詠むのか」短歌投稿と選ばれるための歌 https://note.mu/mk7911/n/n58673caf4e12

第57回短歌研究新人賞候補作「仙台に雪が降る」全30首
https://t.co/2qhYBXq6hv

バリウムを初めて飲んできたんだけど、その話をします
https://note.mu/mk7911/n/n4425984a46f9


500円ですべての記事(約100記事)が読めます。
よろしくお願いいたします。



去年の角川短歌賞の予選通過作品 50首|note(ノート)
https://note.mu/mk7911/n/nd28a52e005c7
50首連作を200円で公開しています。


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2017年04月25日

[総合誌読む 116] 「現代短歌」2017年4月号  ~永遠にのぼりのエスカレーター、ほか

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「現代短歌」2017年4月号。


本題に入る前に一言。
本屋に行ったら、「歌壇」はあるんだけど「現代短歌」の五月号が売っていない。何件まわっても売っていない。でも出てないわけではなくて、届いている人には届いている。
ホームページを見たら、現代短歌社は解体して法人になったと書いてある。それがたぶん関係している。

読者としては、本が本屋に出るのかどうか、出るならいつ出るのかだけが知りたい。

「弱冠の時間を要します」とのことなのでとりあえず待つつもりでいたが、早い解決はあまり期待できないので注文することにする。

一言おわり。








あらためて四月号。特集は「震災二〇〇〇日」。

これがはじめは「二〇〇日」に見えて、そうか熊本地震からそれくらいの時間がたったかーと思ったら、東日本大震災の特集だった。



人がいるかぎり電気があるかぎり永遠にのぼりのエスカレーター/工藤玲音「休符」
→後戻りできない、降りられないエスカレーターに我々は乗っているというわけだな。「我々」とかあんまり言いたくないんだけど、そういうことになる。



わたしだけだろうか避難訓練で虹を見たのを覚えているのは/寺門玲子「残雪」
→震災の特集のなかで読むと、避難訓練の虹は別のものに重なってくる。震災の日の雪とか。
空にかかった虹を一人しか覚えていないみたいに、多くのことを多くの人が忘れてゆく。



斉藤斎藤さんの「完璧な格納容器は存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね。」はちょっと参ってしまった。
二回目でしょう、これ。そのたびに太字と傍点を抜き出さなきゃいけないのか。最初は驚いたり戸惑ったりしたが、二回目はただの作業になる。ナンプレとか子供の学習絵本と同じだ。
初めて見たときの驚きが大きかったぶんだけ、二度目に見たときに減るものも大きくなってしまう。「またか」というがっかり感に変わってしまう。解けばおもしろいんだけども。

自動改札を眺める駅員のくちびるうごく みんな よいこ/斉藤斎藤

これをまた解いてあげるような、これが何回出てきてもそのたび別紙に抜き書きするような、そこまで親切な読者でいなきゃいけない理由があるとしたらそれはなんだろうって考えてしまった。
問題用紙を渡されたから、公式を使って問題を解く。駅員に「みんな よいこ」と言われるのはそういう姿勢だろう。



音楽のけして流れることのない法廷に泣く男のありて/竹内亮「裁判長のヨーグルト」
→泣き声が音楽になって聞こえるようだ。








読者歌壇に投稿した短歌二首が特選になった。


浜名理香選
このオレが死んでしまった後に吹く春の風、ああ、あったかそうだ/工藤吉生

奥村晃作選
百十円ならば買わないおにぎりの百円セールに二点を選ぶ/工藤吉生


ありがとうございました。


この本おわり。
んじゃまた。






▼▼



短歌パトロール日誌【2】4/20-4/23|mk7911|note(ノート)https://note.mu/mk7911/n/n7e733d2bc5cb

短歌パトロール日誌|mk7911|note(ノート)https://note.mu/mk7911/n/nba8232f28b92

短歌と公募と賞金のこと|mk7911|note(ノート)https://note.mu/mk7911/n/n47a017bcce69

2017年3月に発表した/掲載された短歌といただいた選評まとめ|mk7911|note(ノート)https://note.mu/mk7911/n/n1dba7a62c361

短歌に関するbotをつくった|mk7911|note(ノート)https://note.mu/mk7911/n/n7f59d9cbbfeb



工藤の有料マガジン【500円】やってます。


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2016年04月18日

河北新報の「河北歌壇」(2016.4.17)に短歌が掲載されました

河北新報の河北歌壇(2016.4.17)に短歌が掲載されました。



花山多佳子さんの選で短歌が掲載されました。20首載るうちの16首目。


行きたくはならない朝の道で見る小石の影の濃いこと濃いこと/工藤吉生


花山さんに選んでいただいたのは1/17以来、じつに三ヶ月ぶり。
二週つづけて載るのも一月以来。少しは良くなっているんでしょうか。

この歌に関しては、二句からのA音→I音→O音という母音の変化、子音では後半のK音の畳み掛けが自分で気に入ってたりします。
しかしまあ、そういうことは内容がともなって初めて活きてくることかもしれません。






震災から五年の感慨の短歌が載っていました。投稿から掲載まで一ヶ月あるので、ちょうど今くらいが震災から五年なのです。通雅さんよりも花山さんのほうが震災の短歌を多く選んでいました。



震災の歌では次の短歌が印象的でした。

震災の春に生まれし孫娘バット構えて我をば睨む/高橋明

オレなりの評を書こうとしてみましたが、新聞に載ってる花山さんの評が言い尽くしているような気がしてやめました。







宮城やそのあたりの地域の新聞である河北新報の「河北歌壇」は花山多佳子さんと佐藤通雅さんの選でそれぞれ20首ずつ計40首載ります。毎週日曜日の掲載。




新聞に載るのは71首目くらいです。だんだん多くなってきて数字に自信がなくなってきています。
河北歌壇32、毎日歌壇21、日経歌壇10、読売歌壇3、よみうり文芸宮城県版5。
たぶんそのくらいです。

今年になってからは13首目(河北7、毎日3、日経3)。


以上、報告でした。

新聞に載った短歌のまとめはこちら。
http://t.co/6IYOFlvBhk




宣伝。昨日有料マガジンを更新しました。

短歌の読みについて。自転車のことなど。|note(ノート)https://note.mu/mk7911/n/n9aa5c37ddffa

「工藤の有料マガジン」は500円ですべての記事が読めます。月額ではなく、一度払えばずっと読めますのでお気軽に。なかなか好評です。




んじゃまた。


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2016年04月13日

[総合誌読む 96] 「現代短歌」2016年4月号  ~冬の茜ががんがんしづむ、ほか

「現代短歌」2016年4月号。
「東北を詠む」という特集がある。


立ち話の人去りし仮説住宅に冬の茜ががんがんしづむ/柏崎驍二「越えがたく」
→立ち話の人がいなくなったしずけさに、追い打ちをかけるように日が沈んでいく。「がんがん」が印象的で、日の沈む速さと容赦のなさがあらわれている。


黙礼するにあらねどすこし俯いて道路除染の前を過ぎたり/齋藤芳生「春の向こう」


雪の原青々と翳る時のありいづくともなき北のふるさと/扇畑忠雄


あの日から歳月五指の小指まで ダンプカー連なり冬陽を弾く/丹治久惠「日差しあまねく」

→五年ということが五本の指になり、さらに連なるダンプカーへと変化してゆく、そのイメージの移り変わりを良いと思った。


粉ミルク求めて街中のドラッグストアを奔走したり雪に濡れつつ/松田久恵「回想」


東北の歌人たちの作品7首とエッセイが50くらい載っていたけど、良い歌は少なかった。五年たったということと復興が進まないことばかりで飽きてしまう。




五百円出して受け取る釣銭の十四円軽しレシートのうえ/松村正直「塔について」


おかわりの珈琲を飲む一生に飲むコーヒーに限りあれども/松村正直「塔について」

→コーヒーを飲むことで一生の終わりに近づいているような感じを受ける。実際はすべての行動が死に向かいながらの行動だとは思うけれども。
飲むときは「珈琲」、限りがあるのは「コーヒー」。漢字の方が味がありそう。


人界の余白のごとし青白く光れる公園車窓より見えつ/楠誓英「団地のあかり」


しろたへのチョーク一本取り出して竹と大きく黒板に書く/本田一弘

→作品時評から。「一読して「竹」でなければならぬと心より思った」とさいとうなおこさんの評。オレもそう思う。この「竹」の説得力はなんだろう。


東京(とうけい)の言語を「標準語」とすれば吾らみちのくの土語(ことば)卑しき/本田一弘
→こっちは春日いづみさんの作品時評から。これらの歌の評に「方言撲滅運動」とか「方言札」という言葉が出てきて驚いた。

方言札について調べてみると、検索上位には沖縄のものがたくさんでてくる。「わたしは方言を使いました」などと書かれた札だ。生徒が首からぶら下げたという。


人のむれはすぐにさへぎるまだ明き夕街にふと別れてしまふを/森岡貞香



この本おわり。







オレは「特別作品」に「駅」五首と、読者歌壇の佳作に載った。
特別作品は解説つきでnoteの有料マガジンにアップした。500円でいろんな記事が読める「工藤の有料マガジン」をやっています。

特別作品「駅」|mk7911|note(ノート)https://note.mu/mk7911/n/ne0b639938acf





んじゃまた。


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2016年03月11日

【東日本大震災から五年】東日本大震災を詠んだ短歌・25首選

東日本大震災から五年経った。


オレの震災体験は、震災直後に書いた。それを再掲する。まだ東日本大震災という名前が定着していなくて「東北地方大平洋沖地震」だったころだ。

東北地方太平洋沖地震 体験記[1]: ▼存在しない何かへの憧れ http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/51863226.html

体験記[2] http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/51863581.html

体験記[3] http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/51863831.html

体験記[4] http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/51864226.html

体験記[5] http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/51865082.html


そのほか震災関連記事。

震災から半年。オレの周りに残る爪痕 : http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/51927366.html

TBC東北放送 DVD 「東日本大震災の記録~3.11宮城~」内容と感想 : http://blog.livedoor.jp/mk7911/archives/51956537.html









ここは短歌のブログなので、短歌でも震災をふりかえってみたい。短歌の総合誌「歌壇」2016年3月号で吉川宏志さんが震災詠100首を選んでいた。

オレも選んでみることにした。

東北の歌人が選んだものがあっていいだろう、ネットで発表されるものもあっていいだろうと思い、今までこのブログでとりあげた歌の中から震災の短歌を25首選んだ。
吉川さんの選は、震災後一年ほどの河北歌壇と朝日歌壇、歌集、震災詠を集めた書籍、が中心となっている。オレは総合誌と塔を中心にして、重複のないように選んだ。





▼工藤吉生が選んだ震災の短歌25首



輪ゴムひとつ握りてをりき何をせむとしたるか午後二時四十六分/相澤豊子
 塔短歌会東北「1099日」


宿題はどうすると叫ぶ子供のこゑ大津波のがるる人語のなかに/井上生二
 「短歌研究」2014年5月号


ああこれが夢といふものどこまでも瓦礫の道を歩いてゆきぬ/梶原さい子
 『リアス/椿』


母の遺体確認せしは体育館199番の名札つきをり/荒井裕子
 「歌壇」2012年12月号





裏山へなぜ逃げなかつた 問ふて問ふて問ふてすべなきことをまた問ふ/佐藤通雅
 『昔話』


眩暈か余震かもはや誰にも区別はつかない ただ揺れている/佐藤涼子「記録」
 「塔」2014年7月号


人形に「もうすぐ地震をはるよ」と繰り返す子のひとり遊びは/大口玲子
 『トリサンナイタ』





東北のすべてのアナウンサーたちへ昨日より濃い影の伸びゆく/北山あさひ「報道部にて」
 第59回まひる野賞


震災に親を亡くしし少年は映さるるなり涙流すまで/岩﨑秀子
 「短歌研究」2014年12月号


引き続き瓦礫と人が流れますテレビの前でお待ちください/木下龍也
 現代歌人協会 全国短歌大会 2012年


杭のやうに見えてゐたのが人だった。といふこともある。被災写真は。/澤村斉美
 角川「短歌」2012年7月号





あの道もあの角もなし閖上一丁目あの窓もなしあの庭もなし/斉藤梢
 「短歌研究」2012年7月号


信号の黄色に変はりスピードを増してがつんと震災の溝/佐藤和彦
 「塔」2012年11月号


おめでとう言えば小さくウンという三月十一日十三歳の少年/小林則子
 「塔」2014年6月号





(3月11日2時46分)揺り落とされて我々は違ふ世界に来たのではないか/文屋亮「私といふ一本の糸に」
 「玲瓏」83号


半分に切られし虫がまだうごくように日常は続いておりぬ/吉川宏志「ハナニラ」
 「短歌研究」2013年5月号





原発と活断層の因縁話(ものがたり)始まりまするでろれん、でろれん/高野公彦
 角川「短歌」付録 現代短歌アンソロジー 平成26年版


AKB48が走り出す原子炉の爆発を止めるため/穂村弘「ナンバー」
 「角川短歌年鑑 平成28年度版」


フクスィマにいきたくない使徒フクスィマでいきたくない死と うえのえきなう/鈴木博太「ハッピーアイランド」
 「短歌研究」2012年9月号


メルトダウンに最も近いパチンコ屋で浜崎あゆみを2千円打つ/斉藤斎藤「それから絶望感に押しつぶされそうになりながら、いつかやってくる日をひたすら待ちました。」
 「短歌研究」2013年5月号


したうけのそのしたうけのしたうけのさげふゐんぬるッぬるッと被曝す/渡辺松男
 「短歌研究」2013年5月号


2012年2月
くりかえし子にかけやる湯ナイブヒバクガイブヒバク皮膚うらがえしたし/沼尻つた子「水揺れる」
 「みずつき4」


「ただいまの時刻の放射線量をお知らせします」 おい、いま何時なんだ/小林真代「雨降り松」
 「塔」2013年7月号


くうかんはうしやせんりやうくうかんはうしやせんりやうと鳴く鳥はあらずや/本田一弘
 「角川短歌年鑑 平成28年度版」





訪れし仮設住宅に住む人を「仮設の人」と言ってしまえり/三原由起子「地団駄を踏む」
 「歌壇」2013年2月号


なぐさめのための行事に微笑みぬいまだに職なき仮設住まいは/山本司
 角川「短歌」付録「現代短歌アンソロジー」平成28年版


憐憫の貌の真中にそのはなしまたそのはなしといふ眼が並ぶ/高木佳子「夏の藁」
 「短歌研究」2013年8月号


被災地の友らを見舞ひ奉仕して帰るといへど懺(ざん)の心よ/秋葉四郎
 『みな陸を向く』





山頂の鎮魂の鐘打ちたれば津波の更地は谺返さず/大内晋次
 河北新報「河北歌壇」2016.1.17


津波にて海ただよひし裸婦像がホールに立てり傷跡ふかく/岡田紘子
 第三十一回啄木祭短歌大会





以上。

あらためて、吉川さんが100首選んだすごさを感じた。
オレも100首選ぼう、
いやそれはむずかしいから50首、
やってみたらそれもきついから30首、
いやいや……と結局25首になった。
オレの観測範囲の狭さも感じた。


オレは2011年8月に短歌を始め、2012年春から短歌の総合誌を読むようになった。震災後一年間の雑誌・結社誌がごっそり抜けているのは選ぶうえで影響した。
この企画は今朝思い付いて、三時間で20首選をつくり、それから二時間で5首を追加し25首選とした。



んじゃまた。


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2014年08月02日

{短歌の本読む 29} 塔短歌会・東北「1099日目 東日本大震災から三年を詠む」  ~短調の歌が聞こえる、ほか

塔短歌会・東北「1099日目 東日本大震災から三年を詠む」を読みます。

ちょっと内容が重いのですが、まあいつも通りにやります。

これは一冊500円で、売り上げは寄付されるとのこと。62ページまである。
10首+文章というのが18人分あり、ロングエッセイが10篇。
ちょうど半分くらいは会ったことのある人だ。でもそういうのはあんまり気にしすぎないようにしてます。

こういうのってどれくらい感想が書かれているんだろう、どのように書くものなんだろうと「733日目」のことを検索してみた。検索で見つかるようなネット上の感想は数件だった。



使はない鍵ではあるが放せぬとカチャリと鳴らす電話の向かう/相澤豊子「使わはない鍵」
→ちょうど今日、角川でも同じような発想の歌を見た。でもこの歌がいいのは、鍵が電話の向こうにあることだ。姿の見えない音だけの鍵。


短調の歌が聞こえる映像の奥でこちらを見ている人ら/浅野大輝「手紙には海」
→「短調の歌」というのが何となく暗そう、悲しそうな印象をもたらす。短調でも「青い山脈」「リンゴの唄」みたいに希望のある歌も、あるにはあるんだけれど。
その歌も、映像の中の人も「こちら」とは距離がある。距離があるが、接点もある。


書きしまま触れざる歌のいくつかが「たすけて」ではじまりて終わらず/風橋平「流転」
→31字の歌が、詠み終わらない。伝えたいことがあるにも関わらず、だ。乱れてやまない気持ちがあったのだろうか……などと想像してみる。


みつめればみつめ返して咲く梅のそのはなびらもふるへてゐたり/小林真代「殿様の井戸」


空うつす田の面(も)と空とに挟まれて五月の谷に生者のみ動く/佐藤陽介「We shall overcome が聞こえる」


慰霊碑に友の齢(よはひ)は刻まれて変はらざりけり一○○○日を経ても/武山千鶴「支援物資」


雪深き夜の電話に郡山過ぎるときマスクして眼を閉じよと言われき/田中濯「春と流謫」

→身を守るために考えているんだろうが、まるで幽霊・妖怪の類への対処法みたいだ。


記憶という孤独な持ちもの幾重にも円を描いて鳶(とんび)鳴きおり/外山つや子「春の風ひかる」
→同じ記憶がぐるぐる回っている、ということか。


昔はよかったと思う昔は四年前 原子力発電所はその時もあった/花山周子「蝶の軽さ」


行き場なく青ざめた土さっきまでたしかに公園として踏みいき/三浦こうこ「青ざめた土」


輪ゴムひとつ握りてをりき何をせむとしたるか午後二時四十六分/相澤豊子

→ロングエッセイから引いた。この輪ゴムのちっぽけさ、たよりなさ。



この本からは以上です。

オレも塔で東北の人だけど、次があっても参加はしない。できる気がしない。そんなに真面目に向き合っていない気がして。
歌を読んでいても、いつも通りに短歌を読んでいる感じだったし、いつも通りに今回も書いた。短歌作品集として読んで、読みごたえがありました。


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2014年04月14日

河北歌壇・俳壇(2014.4.13)を読む  ~死ぬ力少し残して、ほか

河北歌壇・俳壇を読む。今回はとりあげたい歌がない。

やっぱり震災と季節と老いの短歌が多すぎると思うし、そこが狭苦しい。

これ言うと怒られそうだけど、オレの中では震災はとっくに終わっている。原発は終わってないにしても。
老いは来ていない。季節ものは嫌いじゃないけど続くといやになる。
東北だから震災詠んでろ、東北だから寒がってろ、みたいなのがあるなら嫌だなあ。ないと思いたいけど。
もしかしたら河北歌壇は自分に合ってないのかもしれないので、ちょっと様子を見ながら考えていきたい。毎日歌壇で特選をもらったのにこっちではなんにもないということも気になるところ。

中学生の作品が載ったりもするけど、学年を書く規定がないのになぜ学年がわかるのだろう。書いているとしたらなぜ書いているのだろう。
なんでもないことまで疑わしく思ってしまうのはよくない兆候だ。慎重にいきたい。


俳壇ではつぎの一句がいい。

死ぬ力少し残して雪を掻く/野村慶子

よくわからなかったが、評を読んで納得した。


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2013年01月23日

[歌集読む9] 笹公人監修 合同歌集「希望の河」

笹公人監修 合同歌集「希望の河」を読んだ。良かった歌や感想を流していきます。

まずこれは笹さんのお弟子さんたち18人の合同歌集で、一人あたり10首ほど入っている。短歌のほかにエッセイ的なものも収録されている。東日本大震災を受けてまとめられたところもあり、震災に関する歌も見られる。




あの日からくわんきゅううんと始まったソロの続きをキミは知らない/104hero

→あの日っていうのは「キミ」と別れた日でしょう。ひとりになったからソロ。ギターのソロは時には人間の泣き声に似て、別れや孤独を嘆く。その想いはキミには届かない。




銀色のスパンコールを着たジェシカ「にほんご1」を幾度もめくる/山本喜美江

→ジェシカは日本に稼ぎに来ているのか、日本語を勉強している。銀色のスパンコールのジェシカには夜の匂いがする。それと「にほんご1」の幼さ、優しさ、素朴さが強いコントラストを生んでいる。




こつ然と戦後日本が現れたダウンロードが終わらぬ内に/山本喜美江

→これはわからなかった。わからないなりに気になる。




銀幕に映し出される大嘘に何故にこれ程泣かされるのか/酒井景二朗

→笑ってしまった。大嘘と言ってしまったら身もフタもない。
ピュアであるがゆえに嘘に対して敏感なのかとも思った。泣いていながら客観的になろうとしている。


酒井さんは笹短歌ドットコムの常連だ。オレは過去をさかのぼって笹短歌ドットコムは全部読みました。だからここに載ってるゼビウスの歌やモアイ部の歌は知ってました。モアイ部の歌は好きだからツイートします。

飴色の夕日に染まる校舎横モアイ部がまだじつとしてゐる/酒井景二朗




ミッキーの中に棲んでる日本人よ 覗き窓から富士を見なさい/大庭れいじ




あの日からカラータイマー外したるウルトラマンが増えて ニッポン/大庭れいじ


→よくわからなかった歌なんだけど、藤原龍一郎さんの解説を読んでわかった。「あの日」は震災だ。ウルトラマンとは復興のために尽くす人のことだ。カラータイマーを外すというのは、いつまででも辛抱強く努力するということだ。そんな人がたくさんいることを知った震災でもあった。




「マスカラをつけますから」と言う僕に「お願いします」と答えし生徒/内田裕士

→という歌に藤原龍一郎さんが解説で「生徒への優しいまなざし。強く、優しい心意気が歌の底に流れている。」と書いてるけど、そういう歌じゃないと思う。ウケを狙って「マスカラをつけマスカラ」とダジャレを言ったらスベッた、っていう歌だよこれは。




藤原さんは解説をものすごく丁寧に書いている。この合同歌集、うまい人ばかりではないと思うが、藤原さんは全ての方の歌に温かい言葉を寄せている。よくまあこれだけ褒めることができるな、よくこれを褒めたな、と「褒め」の上手さを感じた。




最後は笹公人さんがあとがきを書いている。天命歌会っていい名前だなあ。そして笹さんの歌がこの歌集をしめる。


中央線に揺られる少女の心的外傷(トラウマ)をバターのように溶かせ夕焼け/笹公人

→中央線がいいな。トラウマを抱えた少女はどこへ向かっているのか。主体は少女の心的外傷を知りながらも、直接なにかしてあげることはできない。慰める言葉も持たない。非力だ。そしてその思いを車窓から見えた夕焼けに託すのだ。そこに切実さを感じた。

自分の力ではどうにもならない、人間の力ではどうにもならないことがある。そうなると、無駄とわかりながらも何かに念じずにはいられない。信仰する神がいなければ空とか海とかにそれは向けられる。「溶かせ夕焼け」はそういうことだと読んだ。




以上「希望の河」でしたー。明日からは短歌研究2月号を読みます。


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mk7911 at 12:55|PermalinkComments(0)

2012年01月23日

TBC東北放送 DVD 「東日本大震災の記録~3.11宮城~」内容と感想

TBC東北放送 DVD 東日本大震災の記録~3.11宮城~





コンビニで購入。1890円。



序章

最初に震災と津波についてのおおまかな説明がある。

七北田の七十七銀行の映像があった。このあたりはよく来るから「あっ」と思った。




震災や津波の被害の様子を北から見てゆく。これがこのDVDのメインとなる。



気仙沼

大津波警報を町に知らせる男性の声が印象に残る。

消えた信号と渋滞する車の列。

津波が来る前に潮は引いてゆく。津波に追われて走る車が映ってる。

流される車、船、家。「早く逃げてー」という悲鳴。

つり具屋のある交差点の場面が悲惨だ。子供の泣き声が入ってる。地面から何か吹き出しているのがこわい。

押し寄せた津波が引いてゆくのも映ってる。


流出した油による火災の映像。爆発も起こっている。停電した町に炎と車のライトだけが光る映像は不気味だ。

翌朝になると被害があらわになる。



このDVDは基本的にBGMはなく、音が生々しい。





南三陸

こちらの緊急放送は低音域の男性と若い女性が交互にしゃべっている。はじめは予想される津波の高さをは6メートルと放送してるが、途中で10メートルに変わっている。


雪が降る高台で何人かの男性がしゃべっている。撮影者の仲間か。
男性達が津波を実況するような形になっている。「建物越えた」「パソコンのデータ終わりだー」などと言っている。「あぁーー」という深い嘆息。
津波が町を飲み込んでゆく一部始終が収められている。20分かそこらの間に町は水の底となる。男性達の声は、全てを押し流す轟音にかき消されていく。

2005年の景色との対比がある。鋭い対比だ。




石巻

雪が強い。

男性が説明しながら撮影してるが、緊急事態のせいか、元から下手なのか、ダメダメな説明になっている。
「津波でしょうか」「大丈夫でしょうか」の連発がやがて「やばい」「嘘だべ……」と変わってゆく。どんな説明よりも映像は雄弁に語っている。。

短いが、わりと近くで撮影してる映像もある。





東松島

リアルタイムの映像はない。事後取材に行ったようだ。自衛隊のヘリなどの残骸を映している。短い。




仙台

泉区のセルバの中らしき映像がある。ここには時々来る。

七北田川の映像がある。氾濫している。逆流もしている。川は激しく、陸地を削りながら流れている。

仙台港の様子。
撮影者が「こんなことやってていいのかな」「ここで大丈夫か」などと言っている。

ものすごい必死に避難を呼びかけてる場面がある。

津波で車が大量に流されてる。迫力ある。


名取川の空からの映像は音がなく静かだ。津波と同じくらいの速度で追われて走ってる車がある。

荒浜。メチャクチャな家を近くで見ると、そのひどさが一層伝わってくる。




名取

空港の滑走路を泥水が埋めつくしてゆく。画面右から左へと津波が通過してゆく。


航空基地の男性が絶望的な様子で被害を伝えている。





亘理町、山元町

巡視船が津波を乗り越える映像。見てるこちらも一緒に乗り越えてるみたいな感覚になる。

かなり近い場所での津波撮影映像がある。

鳥の海付近では、船が住宅に激突している。





地震の仕組み

震災が起こった原因についての説明の映像がある。
プレートがどうこう、アスペリティがどうこうという説明。二人の学者が出てくる。あまり興味持てなかった。




地震直後のTBCの放送


実際には震災直後に広い範囲で停電になった。そのためほとんど視聴されなかった貴重な放送だ。

女性アナウンサーが緊迫した様子で「皆さん落ち着いて行動してください」「スタジオでも強い揺れを感じています」などと言っている。

津波情報の日本地図が二つ出てしまってる。それくらいの緊急事態だ。

しばらく後の放送ではアナウンサーがヘルメットをかぶっている。

空港に津波が押し寄せるリアルタイムの実況がある。「津波が押し寄せています」





石巻からの電話のレポートがある。被害を伝えているが、最後には力なく「この世とは思えない、地獄のような状況になりました」と言っている。



津波の高さ

最後には津波がどの地域でどの高さまで到達したかのデータが入っている。映像として見る価値は感じなかった。ただのデータだ。






[感想]
貴重なものが見られた。報道やYouTubeで津波はいくつか見たが、見たことない映像が多かった。

町を破壊するダイナミズムを感じていたが、流れてゆく車や家のひとつひとつに持ち主がいたり生活があることを考えると、悲しくてたまらなくなる。





 



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mk7911 at 11:39|PermalinkComments(0)