このブログの読者の方は、欧州の銀行が増資が必要で、最終的には、公的資金の注入もありうるということをご存知かと思います。
そういう話が、ちらほら、聞こえ始めています。
今朝の日経新聞の一面にも、IMFは、EUの銀行がソブリン債から銀行に「波及する影響」だけで、2000億ユーロの損失を抱えている可能性があると発表しています。これに、銀行が保有する資産の価値の下落により、合計3000億ユーロの損失の可能性があると計算しています。
欧州の当局者は、もちろん、この試算に対して反論していますが、重要なのは、銀行の経営を揺るがすほどの影響があるということです。
また、BBGに次のようなニュースがありました。
9月22日(ブルームバーグ):欧州連合(EU)の行政執行機関、欧州委員会のバルニエ委員(域内市場・金融サービス担当)は、欧州の一部の銀行が公的支援を必要とする可能性を排除できないと述べた。フランス紙フィガロとのインタビューで発言した。
また、欧州の銀行の資本ニーズについて国際通貨基金(IMF)とは見解が異なると述べた。その上で、必要な資金は民間部門から調達されることが望ましいと付け加えたという。
公的支援が必要であることは認めているわけです。
が、IMFが計算しているような(大きな)金額にはなりませんよということです。
で、これまた、当たり前ですが、公的資金の前に、市場調達を試みるべきとのことです。
ここまでは、現段階での、欧州の銀行に対する当局の見方です。
次に、今後の(現実的な)見通しを説明します。
その前に、まず、銀行はいったい何を考えているのか、本音の確認です。
銀行にとっては、増資は、できれば避けたいのです。
というのは、普通株に希薄化が起こりますので、銀行の経営陣は、株主でもありますから、出来れば、希薄化(=株価の下落)は、避けたいのです。
しかし、どうしてもとなれば、増資を行わざるを得ないのですが、できる限り、公的資金の注入は回避したいわけです。
公的資金が入れば、それは、いわゆる、税金注入ですので、経営陣をはじめ、多くの従業員のボーナスなどなくなります。
また、経営者は引責辞任もありえます。
事実、日本や米国、英国での銀行への公的資金注入は、程度の差はありましたが、経営陣には、非常に厳しい現実が待っていました。
そういうわけで、欧州の銀行も、なんとしても、公的資金は避けたいのです。
今年も4分の3が終わりました。
あと3ヶ月耐えれば、変な話ですが、ボーナスも手に入ります(厳密に言えば、権利があります)。
もうちょっと、自力でがんばりたいのです。
もし、来月にでも、公的資金が入れば、経営陣は、ボーナスもなく、職も失うかもしれません。
では、銀行は、何をするのか。
ヒントは、下記のロイターのニュースにあります。
仏BNPパリバは22日、資本増強を行うことなくバーゼルIIIが求める資本基準を満たすことが可能と明らかにした。
同社の広報担当者は、カタールからの出資について質問された際「カタールに関連して再度述べるが、BNPパリバは、資本増強を行うことなく2013年1月には9%のコアTier1を達成できる。これは2019年に設定されている期限より6年も早い」と述べた。
事情に詳しいカタールの関係筋が21日明らかにしたところによると、カタール政府は、BNPパリバへの出資の可能性について、同行と交渉を進めている。
まずは、資産を売却します。
すでに、BNPパリバがドル建て資産を600億ドル売却するとか記事がありました。
ここで言う資産は、売却可能な有望な資産のことです。
不良債権では、良い値段で売れませんし、実現損が出てしまいます。
レゼコー紙(フランス)によりますと、ソシエテ・ジェネラルは、ニューエッジとSGSSの売却を検討中ということです。
資産売却で40億ユーロを調達する計画の一環だそうです。
このように資産売却で、資金調達を行うのです。
この資産売却や事業売却は、資金を調達すると同時に、資金調達が満足に出来ない現状、避けて通れないのです。
加えて、順番は前後するとお思いますが、リストラ(人員整理)を行います。
いわゆる、コスト削減ですね。
ロイターのニュースで、下記のような現実もあるのです。
ドイツ銀行のクラウス最高財務責任者(CFO)は、銀行間の無担保借り入れがほとんど不可能になっていることを明らかにした。
同CFOは会議に出席した際、「無担保市場はほとんど凍結している」とし「特定の銀行に対する疑念があるのではなく、欧州に対する全般的な疑念が存在する」と指摘。「環境は著しく変化した」と述べた。
そうはいっても、都合よく売却できる十分な資産や事業があるかどうかはわかりません。
もちろん、叩き売りすれば良いのですが、そんなことをすれば、自分で自分の首を絞めることになります。
よって、次に考えるのは、市場で増資をしようとします。
が、この環境で、増資に応じる貴重な投資家が大勢いるとも思えません。
そこで、考えられるのが先ほどのニュースにありましたSWF(政府系ファンド)です。
SWFは、十分な資金はあると思いますが、金融危機の際、多くの世界の銀行の増資を引き受けたのですが、(正確に検証をしていませんが)未だに含み損を抱えているSWFが多いはずです。
典型例は、GICで、2007年12月にUBSが130億SFの増資をしていますが、GICは110億SFを引き受けています(現在6.44%保有の筆頭株主)。
そんなわけで、どこまで、SWFが欧州の銀行のリスクをとるか、読み切れません。
もし、SWFが空振りに終われば、公的資金に頼ることになります。
公的資金でも、大きく2通りの注入があります。
定義にも寄りますが、国有化(普通株で50%以上取得)と非国有化です。
もちろん、公的資金を注入することになっても、銀行は、国有化を回避したいはずです。
おおよそ、今後、欧州の銀行は、こういう順番で、資金調達を行っていくと思います。
もちろん、環境によっては、いきなり公的資金もありえます。
ギリシャのデフォルトの時のヘアカットの話(70%とか80%)が出始めているということは、具体的な準備が始まっているのでしょうね。
今晩の欧州市場は、大きく下げています。
なぜか。
ここに書いた動き、特に資産売却の話やSWFが出資する話が表面化したからです。
つまり、「ああ、やっぱり、銀行は、大変なんだ!」と市場が再確認したのです。
この話題に関係ないのですが、ひとつ質問がございます。
日銀の白川さんが「対GDP比では過去最大の緩和を行っているからこれ以上緩和を行う必要はない」と言っていたと思うのですが、通貨の量は何を基準に見れば一番適切なのでしょうか?また何と何とで合わせてみるのが適切なのでしょうか?
変動相場を考えれば他の通貨と比較するのが適切ですし、インフレ・デフレ率みたいなものと比較するのも適切のような気がします。
自分としては通貨の量はインフレ・デフレや変動相場制と大きく関係があるのですから、白川さんの言っていることは適切ではないのかなと思ってしまったのですが、いかがでしょうか。