岩田副総裁が、持論を展開しています。。

簡単にまとめますと次のようになります。


量的・質的金融緩和 ⇒ 予想インフレ率(BEI)を引き上げる ⇒ 予想実質金利の低下(=名目金利-予想インフレ率)


予想実質金利の低下 ⇒ 国債や株式、為替の市場価格に変化を引き起こす(ただちに始まる)


資産価格の変化 ⇒ 設備投資と住宅投資、輸出などの総需要を増やす ⇒ 生産と雇用の増加(時間がかかる)


私は、岩田理論をおかしいと思います。

なぜ、金融緩和が予想インフレ率を引き上げるのか?(ある程度は上がるのでしょうが…)

入り口からおかしいですね…


インフレになるであろう期待感が膨らめば、期待インフレ率は上がります。

それは、5月中旬まででした。

量的・質的金融緩和で、予想インフレ率が上がるのであれば、少なくとも、44日の異次元緩和の時点の予想インフレ率は上回っているはずですが、現実は下回っています。

金融緩和をしているから、必ず、予想インフレ率があがるものではないのです。


予想実質金利の低下についても、名目金利も上昇していますから、実質金利が大きく低下していません。

実質金利の低下にも限界があるので、資産価格への影響も限定的となります。


資産価格の変化で、一時的に需要は増えましたが、恒常的な需要増にはつながりません。

逆に、資産価格が下がりだせば、ますます、需要は減るということになりますね。


よく、岩田副総裁の理論では、金融緩和の波及経路があいまいだという批判がありますが、まさに、あいまいというか「?」だらけというか。

確かに、金融緩和は、株高を引き起こす効果はあります。

そこは、同意見ですが、そもそも、株高だけで、日本全体の景気が良くなるのか?

永遠に株が上がるわけがありません。


実際、1-3月期のGDPの伸び率は0.9%で、4-6月期は0.6%です。

株価はその間、約20%10%の上昇でした。

毎四半期10%20%の株価上昇があればいいのですが…

また、金融緩和の恩恵は、金持ち>庶民、大企業>中小企業、都会>地方といった具合です(やや極端かもしれませんが)。

岩田理論通りにいけば、今後、庶民や中小企業、地方にも金融緩和の恩恵がくるであろうということなのでしょうか?

そうは思えませんね。


そして、何度も書きますが、総需要を増やすのは、金融緩和をするから増えるのではないのです。

いくら当座預金口座の残高を増やしても、それが市場に流れるこむことはないでしょう。

民間に、資金需要があれば、こんなに緩和しなくても、当座預金残高がここまで膨らまないで、資金は市中に流れます。


無理に、資金需要を作ろうとすれば、ろくでもない結果を招くだけですよね。

「低金利で金貸すから、借りてくれ」といっているに等しく、そうなれば、需要が増えると…

そんなバカなですよね。

25年前は、低金利でお金を借りて(しかも、エクイティファイナンスまで大量にして)、株式投資や不動産投資にのめりこんだのでした。

その結果は、書くまでもないですね。


確かに、金融緩和は、経済の鎮痛剤のようなものですから、政府が、改革をするというのであれば、金融は緩和した状態を継続するべきだと思います。

欧州は、まさに、改革中ですね(改革の中身はいまいちなこともありますが)。

また、通貨の番人たるもの、鎮痛剤を打つのを止めるときのことも考えておくべきでしょうね。

鎮痛剤の打ち過ぎは、思わぬ副作用が起きるということです。


結局、日本は変わりそうにないということですかね。

百歩譲って、(岩田理論は否定しても)異次元緩和を良しとすれば、その分、大規模な規制緩和や構造改革、そう、何か日本が変わったなという象徴的なことをすべきだと思うのです。

ここは、政治になりますね。


金融緩和を否定するつもりは毛頭ないのですが、金融緩和だけで、何とかなるものではないと思うのです。