「僕の知らなかった原子力発電その54」

  「僕の知らなかった原子力発電その53」からの続き

  『除染廃棄物の土のうが流出』  『大雨で河川に』   (9月12日、日経新聞朝刊)

  環境省は11日、関東や東北地方に降った記録的な豪雨のため、福島県飯舘村で、東京電力
  福島第一原子力発電所の事故に伴う放射性物質の除染で出た刈草などを詰めた大型の土
  のうが、7河川に流出したと発表した。
  増水した新田川などが氾濫し、水田に一時的に保管していた土のうが浮かんで流れ出た。同
  日夜までに河川内に82袋発見し、うち37袋を回収した。他にも流出した可能性があるとみて、
  今後も確認作業を続ける。

  とある。まず驚いたのは、放射能で汚染されている草や土などを『土のう』に詰めて保管して
  いるという事。また、その『土のう』を野ざらしで一時的にせよ置いていたということです。
  野ざらしの状態で、『土のう』から外部へ放射性物質が漏れ出ないのでしょうか。疑問です。
  また、前日なり前々日から記録的大雨が茨城県から北上してきていた事はTVの天気予報で
  も放送されていました。大雨が来る前にに、野積の『土のう』を本来の保管場所に移しておく
  という事を何故行わなかったのか。疑問です。

  『除染廃棄物流出合計で240袋に』  『一部は破れて空』 (9月13日、日経新聞朝刊)

  東京電力福島第一原子力発電所の事故の除染で出た汚染廃棄物を入れた大型の袋が、
  豪雨で福島県飯舘村の河川に流出した問題で、環境省は12日、流出が計240袋になったと
  発表した。このうち113袋を回収したが、一部の袋は破れて中身が空になっていたという。
  12日午後9時半現在の調査結果を集計。240袋のうち238袋は飯舘村で、2袋は保管場所か
  ら約20km下流の南相馬市原町地区で見つかった。
  破れて空だった袋は南相馬の2袋で、最近刈り取った草が入っていた。環境省は「放射性物
  質濃度は比較的低く環境への影響は少ない」としている。

  とある。『環境への影響は少ない』との表現は、大変便利な言葉です。放射性物質が2袋分全
  て漏れ出ているという事実の重大さを出来るだけ薄めたいという意図が感じられてなりません。

                      「僕の知らなかった原子力発電その55」へ続く

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「僕の知らなかった原子力発電その53」

  「僕の知らなかった原子力発電その52」からの続き

  『グリーン電力』という新しい考え方が国際的に注目を集めている。価格が高くても
  出来るだけ環境負荷の少ない商品を率先して購入し、そのような商品を育てていこ
  う、また生産者や製造業者、小売業者に対して、市場と政府に対して、消費者がその
  ようなニーズを持っているというシグナルを伝えようとするグリーン購入運動がある
  が、その電力版といってよい。
  『グリーン電力』は、風力や太陽光など再生可能エネルギーによる電力を指す言葉
  である。環境負荷の高い原子力発電や石油・石炭火力発電等との差別化を図るた
  めのもので、直感的でイメージ換気的である。グリーンは環境保全およびエコロジカ
  ルな価値のシンボルカラーとして国際的に定着している。様々な分野でイメージ喚起
  的に使われる。

  電気は現代社会に不可欠なライフラインであり、電力会社の公益性は明らかだが、
  発電事業は環境負荷の大きなビジネスの代表である。大規模な水力発電は、住民
  から先祖伝来の生活拠点を奪い、地形を大きく改変し森林を破壊し、動植物の生存
  環境を大きく変化させる。火力発電、特に石炭火力や石油火力は二酸化イオウや窒
  素酸化物などで大気を汚染し、膨大な量の二酸化炭素を排出する。原子力発電には
  重大事故の危険性や平常時および事故時の放射能による環境汚染の可能性、放射
  性廃棄物の処理問題などの難題がある。また、地域間格差を前提に過疎地に立地さ
  れてきた。

  では消費者が、自分たちの求める電力サービスのあり方を電力会社市場に伝えたい
  とき、どうすればよいのだろうか。1つの選択肢が、『グリーン電力』=再生可能エネル
  ギーによる電力を購入することである。
  通常の環境ラベル商品と異なるのは、消費者が直接使用する電気としての性質、物
  理的特性自体には差がないことである。再生可能エネルギーによる電気も火力発電
  や原子力発電による電気も送電網を一緒に流れる以上、流れてくる電気自体は従前
  のものと変わりはない。『グリーン電力』は純粋に概念上の区別である。
  再生可能エネルギーは、原理的に枯渇せず、無尽蔵に利用可能なエネルギー源という
  意味である。石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料やウランという枯渇性のエネルギー
  源と対比した概念である。

  では、再生可能エネルギーの一般的な社会的特性はどこにあるのだろうか。
  ①二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量がすくない。
  ②枯渇性エネルギーに比べ、有害物質の排出量が少ない。
  ③環境への影響が少ない。
  ④放射性廃棄物を出さない。
   ※『グリーンなエネルギー』とされるのは①から④の特性による。
  ⑤小規模分散的で、立地条件に応じて、柔軟に施設を建設できる。
  ⑥比較的小規模なため、移設・廃棄・リサイクルなどが比較的容易である。
  ⑦エネルギーを需要地近くで調達しやすい。エネルギーの『地産地消』に向いている。
  ⑧強風、日照時間、森林など地域の気象条件や地域資源を有効に活用できる。
  ⑨農業との共存に優れ、地域の活性化と親和的である。
  ⑩設備が比較的単純で、修理などが容易である。オールタナティブ・テクノロジー(AT)
    =『等身大の技術』の代表が再生可能エネルギーである。
  ⑪送電網に接続する系統連結でも、接続しない独立型でも利用できる。
  ⑫相対的に小規模のため、中間搾取が少ない。
  ⑬安全性が高い。
  ⑭兵器などへの転用可能性がない。
  ⑮立地選定から発電、廃棄に至るまで、差別的な要素が少ない。
  ⑱途上国への技術移転にふさわしい。先進国での普及は、設備単価を下げることに
    なり、間接的に途上国への導入を助けることになる。

  しかし、再生可能エネルギーにも様々な課題がある。相対的に高い発電コストを誰が
  どのような原則で負担するかが、普及を図る上での大きな課題である。
  『グリーン化』を進める1つの政策が『固定価格買取制度』である。消費者の負担が
  増すことに批判があるが、再生可能エネルギーの普及を社会全体で広く薄く支え合お
  うという制度である。原発のための税金(電源開発促進税)は、1974年の導入以来、年
  間電力使用量が3600KWhの平均的な世帯では、年間1350円も意識しないまま負担
  し続けてきた。それよりもはるかに健全ではないだろうか。

                                                       「僕の知らなかった原子力発電その54」へ続く

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「僕の知らなかった原子力発電その52」

  「僕の知らなかった原子力発電その51」からの続き

  原子力発電は『安くて、クリーンで安全な』発電であるという『神話』は、アメリカやドイツなどでは
  1970年代半ばに既に破綻していた。アメリカでは原発の新規発注は、スリーマイル島事故前年
  の1978年を最後に途絶え、しかも1974ねん以降発注された原子炉は、一基も完成していない。
  1979年のスリーマイル島事故をきっかけにアメリカでは原子力離れが始まったという趣旨の記
  述をしている文献が多いが、それは正確ではない。アメリカの場合、原発離れは70年代半ばに
  すでに始まっていたのである。79年のスリーマイル島事故はそれを決定的に加速したというの
  が正確な理解である。『経済的リスク』の大きさという問題はそれ以前に顕在化していたからで
  ある。日本で流布している理解には、スリーマイル島事故の特殊性を強調し、『経済的リスク』の
  大きさという問題から目を逸らせる効果がある。

  2001年、息子のブッシュ政権が誕生した頃から、温暖化を好機として、また石油や天然ガスなど
  のエネルギー価格の高騰を背景に、アメリカやヨーロッパで、また日本で『原子力ルネッサンス』
  のかけ声がかまびすしくなった。日本では、これまでの電力の安定供給に加えて、運転中は二酸
  化炭素を排出しないとして、原子力発電を推進する新たな口実に地球温暖化対策が使われる
  ようになった。
  2005年、東芝はイギリスのBNFL(英国核燃料公社)が売却したウエスチング・ハウス社(WH)の
  原子力部門を落札し子会社化し、世界一の原子炉メーカとなった。WHはGEのライバルと目さ
  れてきたアメリカを代表する総合電機メーカで関西電力などが採用している加圧水型炉(PWR)
  を開発してきた。WHは次第に衰退し99年に消滅するが、98年に原子力部門を、イギリスのBNF
  Lに売却した。倒産寸前のBNFLが手放した、つまり背後にいるイギリス政府が見放した落日の
  WHの原子力部門を、『原子力ルネッサンス』を期待して、予想の倍以上の50億ドルで買収したの
  が東芝である。東芝とともに、それまでGEの沸騰水型炉(BWR)を納入してきた日立製作所は、
  2006年、東芝に対抗するようにGEの原子力部門と事業統合をはかった。WHの落札で東芝に
  敗れた三菱重工は、加圧水型炉のメーカであるフランスの国策会社アレバ・グループと提携した。
  原子炉の受注減という危機に直面した米仏のプラントメーカーを救済し、原子力業界再編の主役
  になって、『原子力ルネッサンス』によるビジネスチャンスを拡大する。日本の原子力プラントメー
  カー三社いずれもがこの方向に賭けたのである。東芝はじめ三社とも、フクシマ事故後も強気だ
  が、三社の選択は、カードゲームでいえばジョーカーを引いたことにならないだろうか。
  80年代から風力発電に熱心な三菱重工をのぞくと、東芝も日立も、太陽光発電や風力発電、再生
  可能エネルギーへの関心が乏しかった。原発一辺倒の両社は、フクシマ事故後にどのように軌道
  修正をはかるのだろうか。

  原子力産業側の1つの狙いは、2013年以降の『ポスト京都』の温暖化対策の枠組みの中に、京都
  メカニズムの技術として原子力発電を公認させることにあった。
  京都メカニズムとは『京都議定書』で認められた、温室効果ガス削減を、より柔軟に(つまり、自国内
  での削減だけにこだわらず、他国との取引によって、相対的に低いコストで効率的に)行うための経
  済的メカニズムである。2001年にモロッコのマラケシュで開催された温暖化防止会議(COP7)で採
  択された『マラケシュ合意』で、原子力発電に対する投資は、持続可能な技術ではないとして、京都
  メカニズムの対象にならないことになった。原子力産業側の必死のロビー活動にもかかわらず、原
  子力発電は、放射性廃棄物問題が未解決であることや安全性の問題から含まれなかったのである。

  1990年代以降、発電や電力供給の分野でも『グリーン電力』という新しい考え方が国際的に注目を
  集めている。次章において、考えていきます。

                          「僕の知らなかった原子力発電その53」へ続く


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