「僕の知らなかった原子力発電その42」からの続き

  前々章で述べた、電力多消費型の経済・産業構造の変革について、長期的にどの
  ように見通せるのかについて考えていきます。

  大震災を契機に、日本で必要に迫られた原子力からの脱却(そして再生可能エネ
  ルギーの飛躍的な拡大)と省エネは、長期的な経済・産業構造転換の潮流に位置
  づけてみることで、その意義がより鮮明に見えてくる。
  21世紀の今日、再生可能エネルギーと省エネが情報通信技術(IT技術)と結びつく
  ことで、新しい産業革命が起きつつあると主張するのが、ベルリン自由大学の政治
  学者マーティン・イェニケとクラウス・ヤコブである。
  かれらによれば、18~19世紀の第一次産業革命では、主たるエネルギー源だった
  石炭が、主要動力源の蒸気機関と結びついて飛躍的な生産力の拡大をもたらし、
  それが軽工業から重工業への産業構造転換をもたらしたという。
  第二次産業革命は、主たるエネルギー源が『石炭』から『石油および原子力』への
  転換で特徴づけられる。鉄鋼業、化学工業、電気工業、といった、エネルギー集約型
  産業が花形産業として台頭し、石油・電力の大量消費を伴いながら急速な発展をと
  げた。さらに、動力源としての内燃機関(エンジン)が石油(ガソリン)と結びついて、自動
  車の大量生産・大衆への普及を可能にした。

  さらに、21世紀に本格化する第三次産業革命は、再生可能エネルギーの爆発的な普
  及と、全産業領域における省エネの大規模な達成によって特徴づけられる。
  以前の2つの産業革命では、産業の成長が環境負荷の増大を不可避的に伴ったが、
  第三次産業革命では、事実上の発電とも解釈できる『省エネ』という形でのエネルギー
  需要の削減そのもが、正面の課題となり、それに取り組む事が新しい産業を創出する
  ことにつながるという新局面に入ることになる、と、イェニケとヤコブは主張する。
  つまり、第三次産業革命後は、経済成長と環境負荷の増大が切り離される事になる。
  情報通信産業とそれを媒介としたサービス産業が主軸となり、イノベーションを主導し
  ていく。日本やドイツのように、製造業が国ですら、情報通信技術とそれを媒介とした
  サービスをいかに活用できるかが、その競争力と新しいビジネス展開の成否を左右
  する。

  我々は、今回の大地震で、原発のような集中電源から電力消費地に一方的に電力を
  供給するシステムが、危機にあっていかに脆弱かを見せつけられた。つまり、このよう
  なシステムでは、地震で集中電源が破壊されると、ネットワーク全体が機能麻痺に陥っ
  てしまうのである。

  これに対して、分散型電源に基づく双方向型の電力供給システムは、今回のような大
  規模災害に対して意外な強靭さを発揮する可能性が高い。それは、それぞれ分散型
  電源で電力供給を自律的に賄う地域は、1ケ所が機能不全に陥っても、システム全体
  への影響は限定的だからである。
  また、電力の過不足分を相互に融通し合って需要変動に対処する仕組みなので、機
  能不全に陥った地域に対しては、その周囲から電力を送り込んで支援することも可能
  である。これを可能にするのもまた、『スマートグリッド』である。

  電力供給システムの『集中型』から『分散型』への転換は、電力事業における担い手が
  変わることをも意味する。その過程における障壁については、次節にて考えていきます。

                     「僕の知らなかった原子力発電その44」へ続く


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