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きのうの記事の続きです。12月2日深夜にCBCで放送された、立浪和義を1年間密着取材したドキュメント『瞬刻 〜一打に懸けたミスタードラゴンズ 立浪和義の2007年〜』。きょうは後編をお送りします。
体力の落ちる夏。敢えて炎天下でのランニングを、試合前の練習に採り入れた。やれることはなりふり構わずやった。

(上半身裸で、井上一樹とランニング)
立浪「おなか映さんといてください」
井上「いや、ちょっとオレ入ってもいいんだからね。無視せんでもいいから」
(立浪のワンショットを狙うカメラにジェラシー?笑)
立浪「ちょっと出したってください」

立浪は、同じ代打での出場が多い井上とともに、強い日差しのもと、ひたすらダッシュを繰り返す。

井上「テレビが回ると…」
Q.練習がはかどっていいですか?
井上「(ダッシュの)数も増えるやん?。ホントは5本やったのに、7本8本走らなあかんやん?なぁ」

立浪「あーいい天気だ」(天を仰ぐ)

立浪「汗かいた方が…やっぱ汗かかなあかんでしょ。試合中汗かいてないから…なぁ?」
井上「イヤイヤ(笑)」


(8月19日 38歳の誕生日)
この日、誕生日を迎えた立浪。ウッズとともに、野手ではチーム最年長となる38歳になった。

立浪は、1988年、PL学園高校からドラフト1位で入団すると、ルーキーの年からレギュラーを取り、新人王に輝いた。その後ベストナイン、ゴールデングラブなど数々のタイトルも獲得。2003年には2000本安打を達成。名実ともにドラゴンズを支えてきた。

8月24日。この日までに積み重ねてきた打点は999。立浪の記録達成の瞬間を見ようと、ナゴヤドームにはたくさんのファンが集まった。

場内アナウンス「バッターは、英智に代わりまして、立浪!。バッターは、立浪!。背番号、3」

この日一番の声援が立浪に送られた。
(1、2塁間を破るタイムリーヒット)
初めて口にした個人的な目標、それを達成した。プロ野球史上32人目の1000打点達成。ドラゴンズ生え抜き選手としては初めての快挙。

(ヒーローインタビュー)
立浪「たくさんの皆さんの前で、こうして、こういう記録が達成できたことを、ホントに感謝してます」

そして、8月28日のベイスターズ戦では、代打では初となるホームランを放ち、チームの勝利に貢献。立浪のひと振りで、ドラゴンズはセ・リーグで初のクライマックスシリーズ進出マジックを点灯させた。

(試合後)
立浪「試合前にタイロン・ウッズに『どうやってボール飛ばすんか』ってたまたまそういう話して、聞いてたのが、こういう結果になって。代打でホームラン、たぶん初めてなんで、すごいうれしいですね」

優勝へ、チームも立浪も一直線に向かうはずだった。しかし−。38歳、ベテラン・立浪の体に、また異変が起きていた。後半戦、ほぼ毎試合打席に立ち続けた立浪の足は、限界に来ていた。

(低周波治療器を右もも裏に着けながら)
立浪「ランニングするの3日間禁止なんですよ。走りたいんすけど走れないんです」

足は痛かった。それでもチャンスになれば打席に向かう。それが、代打・立浪の使命。

(9月19日 ヤクルト戦)
優勝するためにはひとつも落とせない試合。一打同点のチャンスで、代打・立浪。誰もがタイムリーを期待した(結果はファーストフライ)。気持ちでは捉えたと思ったが、体が反応しなかった。

(試合後)
Q.どうでした?
立浪「えぇ?。ダメだ…。あそこで打たな…」
Q.どんなことを考えて、(打席に)入ったんですか?
立浪「……ちょっと待って…」

チャンスで打てない自分自身に腹を立てていた。

9月21日
早出練習


Q.ランニングしていいんですか?
立浪「徐々に…」

足が痛いのは理由にならない。

Q.この間(9月19日)、試合のあと、あまりしゃべらなかったじゃないですか?
立浪「違います、ショックやったんや、ゴメン…。打ちたかったんですよ…。また、残り13試合、何とか1個ぐらいいい仕事できるように頑張ります」

プロ入り20年目の秋、前向きな気持ちとは裏腹に、体は言うことを聞かない。

シーズン終盤に差しかかると、立浪と同世代の選手が、次々に引退を表明していった(古田、佐々岡、田中幸雄…)。

(去年10月12日 甲子園球場)
去年、高校からの親友である、タイガースの片岡がユニフォームを脱いだ。立浪が、引退を強く意識した瞬間だった。

(9月22日 東京へ出発)
残り10試合。首位・ジャイアンツと、最後の直接対決のために東京へ移動する車中、立浪が、引退についてついに口を開いた。

立浪「体がどうのこうのっていう問題、打てるか打てないかっていう問題。あと、根気の問題、いつまで自分の気持ちが続くかっていう、その3つだと思うんですけど、今んところ、自分なりに採点すると、まだ野球がやりたいなっていう気持ちがあるし、来年もっと代打でも打ちたいなっていう向上心もありますし。ホントにダメだなって思ったときは言います(笑)。情けない、もう足ばっかり痛めて。試合も出てないのに、ホンットに恥ずかしいですよ」

今年で引退するつもりはない。何より今は、優勝という目標がある。

(9月24日 巨人戦)
首位・ジャイアンツとゲーム差1で迎えた直接対決3連戦。立浪は第2戦でタイムリーを放ったものの、勝利には結びつかなかった。ジャイアンツに1勝2敗と負け越したドラゴンズは、結局レギュラーシーズンを2位で終えた。

(10月3日 巨人優勝翌日)
ジャイアンツがリーグ優勝を決めた翌日、立浪は意外にもすっきりとした表情をしていた。
立浪「今年に限ってはクライマックスシリーズありますから、まだ頑張らんといけないなと。しょうがないですよね。切り替えてやるしかないですよね」

立浪には、気持ちを切り替える理由がもうひとつあった。9月の終わりのタイガース戦。試合前の練習中、落合監督から直接、兼任コーチの打診を受けていた。チームから来年も必要とされている。断る理由はなかった。

立浪「広島でもう返事しに行った。せっかくそう言ってもらったから、ナゴヤドームとかやったらやっぱり、若い選手と朝、一緒に早く来て毎日打たさないかんやんか。大変は大変だけど、自分の成績もやらないかんから大変なんよね。だけどそれも勉強やと思って」

来年は兼任コーチ。自分のことだけを考えていれば良かったこれまでとは、立場が大きく変わる。少しでもいいから仲間の役に立ちたい、そんな思いがますます強くなった。

(10月13日 クライマックス第1S)
日本シリーズ進出を懸け、史上初のクライマックスシリーズが始まった。プレーボール直前に組んだ円陣、その中心に立浪がいた。

立浪「まぁ先手必勝でしょ。『とにかく初回から行こう』とね」

そのひと言でチームがまとまった。ファーストステージ第1戦。ドラゴンズは初回に3点を奪う速攻を見せ大勝(7-0)。続く第2戦も、初回に一挙5点を挙げ流れに乗ると、一度も主導権をタイガースに渡すことなく2連勝(5-3)。圧倒的な強さで、セカンドステージ進出を決めた。

そして、日本シリーズ進出を懸けて戦う頂上決戦。荒木・井端の二遊間コンビが大活躍。堅い守りでジャイアンツの勢いを完全に止め2連勝、一気に王手をかけた。

(10月20日 クライマックス第2S)
そして迎えた第3戦。守護神・岩瀬がセカンドシリーズ3試合連続で、8回からマウンドに上がった。

ドラゴンズは、クライマックスシリーズ怒濤の5連勝。立浪にとって5度目の日本シリーズへの挑戦権を得た。

(その夜、宿舎のエレベーターにて)
立浪「主力ふたりが乗ってきたよ」(井端・岩瀬が乗り合わせる)
岩瀬「すいません(笑)」
立浪「おえぇ〜マジかよ〜」
井端「おえぇ〜」
岩瀬「おえぇ〜って!?(笑)」(…と1つ下・井端に)
立浪「3連投、全部8回からやからなぁ」
岩瀬「シーズン3回しかないのに、クライマックスで4回投げちゃった(笑)」
立浪「お疲れさん!」
岩瀬・井端「お疲れっした!」(フロアが違うんですね)

(宿舎の部屋)
立浪「いや〜良かったですわホントに。また日本シリーズに、ね、連れてってもらえるから、頑張らな」
(ユニフォームを着替えながら)
立浪「(今季は)長いこと野球がね、できて幸せです」

立浪「まぁ思い切って、絶対日本ハム倒したいですね」
Q.53年ぶりの日本一に
立浪「ねぇ、残されたこの野球人生の中で、常に、今年もそうですけど『明日はない』と思って、ぐらいの気持ちでは、やってきてるんで、今年1年。だからまたそういうつもりで、もう1打席1打席集中して、やりたいなと思ってます」

立浪「(日本シリーズ第1戦まで)ちょうどあと1週間、今週のきょうからですね、ナイターですもんね、もちろん。打倒・ダルビッシュに燃えます!」

(10月26日 日本シリーズ事前練習)
2007年日本シリーズ。日本一に向けて、立浪の5度目の挑戦が始まる。

Q.DHでの出場は?
立浪「出ますよ、たぶん」

第1戦はDH・5番でスタメン出場。第1打席は2回。マウンドには、対戦を楽しみにしていたダルビッシュ。あっという間に追い込まれる。

(去年10月26日 日本シリーズ第5戦)
去年の日本シリーズ。立浪は、ダルビッシュからヒットを2本打っている。

ダルビッシュは立浪を警戒し、変化球で攻めた。タイミングを外された。三振。次の打席も、その次の打席も、立浪のバットから快音は聞かれなかった。まさかの3三振。完敗だった。

立浪「3三振(苦笑)。もうガックリしましたねホントにねぇ。もうクライマックス入る前から、もう1回自分でミニキャンプっぽくね、コツコツとやってたんで。久しぶりに『三振するんじゃないかな』っていう3打席目。『ヤバイ』っていうのが頭をよぎったんで。まぁそんなこと言っていてはいけないんですけど、それぐらい出来は良かったと思います」

ダルビッシュの前に完敗。ドラゴンズは大事な初戦を落とした(1-3)。

立浪「いや何かねぇ、今回はねぇ、北海道でスタートして1勝1敗で名古屋へ帰ってきまして、ナゴヤドーム(のベンチ)にポンと試合前に座ったときに、勝てそうな気がしたんですよね。何でか分かんないですけど」

今年のドラゴンズは違った。『短期決戦に弱い』と言われ続けたチームは、クライマックスシリーズを勝ち抜いたことで自信をつけた。名古屋に戻ってきたドラゴンズは、第3戦・4戦と連勝。悲願の日本一まであと1勝と迫った。

11月1日
日本シリーズ 第5戦


立浪「おはようございます。何とか地元で決められたら最高ですよね。敵はダルビッシュなんで、きょう何とか1本でも打てるように頑張りたいです」

日本一が懸かるこの日も、立浪は暗いドームを走っていた。一打に懸ける準備はいつも通り。若手にも声をかけた。

立浪「4勝1敗を祈願して41(と、小田にトスを上げる立浪)
立浪「足張った?」(練習後ひっくり返る小田に)
ODA「はい…」
立浪「日本一になるぞ」
ODA「はい」

刻一刻と試合開始が近づく中、立浪はひとりの選手を見つめていた。この日スタメン出場する、プロ2年目の平田。代打・立浪にとっては大切な一打。その一打に懸ける思いを伝えた。

平田「打球の威力といいますか、とか、飛距離とかも変わってきてるんで、すごくいい勉強になってます」

名古屋で53年ぶりの日本一に−。この強い気持ちが、ダルビッシュを攻略する。2回、先制のチャンスで平田に打席が回った。日本一を決めるこの試合で、平田がこの試合唯一の打点をダルビッシュから挙げた。

山井がこのリードを8回までパーフェクトピッチングで守り、そして9回のマウンドには、岩瀬がいた。

日本一を決める試合、立浪に出番はなかった。そして、その瞬間がやってきた。

待ちに待った瞬間だった。開幕からこの日まで、立浪は140回の打席に立った。140回の一瞬に懸けた、この1年だった。立浪が、日本シリーズ5度目にして、やっと日本一になった。

(その夜、帰りの車中にて)
Q.いかがでしたか?
立浪「いやーあらためて良かったです。こんな、なかなかチャンスないんで、良かったです」
Q.涙ぐんでいるようにも
立浪「ちょっとね、ツーアウトになったときにウルウルッと。…イバチンも乗れよ!」(…と井端を車中に招く)
立浪「イバチンも入って来て。きょうは頑張ってくれましたよ」

あの瞬間、ベンチではなくグラウンドにいたかったのではないか。悔しい思いをしたのではないか?。
立浪「いやいやもう、そんなこと全然思ってないです。もう何でもいいんです、勝てば。な?」
井端「はい。あの、そういうことです。できれば、(立浪さんを)胴上げしたかったですけど」
立浪「いやいやいや。また来年ということで(笑)」

一打に懸けた立浪の、長かった1年が終わった。

(ナゴヤ球場スタンド?にて)
立浪「1年間通して、妥協せずに、一生懸命やってこれたことは、自分には合格点だなと。やっぱり一生懸命やってて、結果が出ると、今まで以上にうれしいしね。その分やっぱり、悔しい思いもありますし。常にそういう、いいことと悪いことが前後しながらの1年間だったような気がします」

1試合に1度あるかないかの打席のために妥協を許さない。代打になって、1打席の重みを知って、立浪は強くなった。

立浪「まぁとりあえず来年も野球できると。また来年でね、どうなるか分からないですけども、1年、常に勝負の年で、もう先のことを考えず、まず来年ですね。またちょっと…頑張ってみようかなと、そういう気持ちです」

来年の立浪が、待ち遠しくなった。

立浪「はい、頑張ります。頑張れるとこまで頑張ります」

(おわり)


モコ感想:なかなかプレーを見ているだけでは分からない機微というか、そういうものがヒシヒシと伝わってくる、非常に見応えのあるドキュメントでした。

夏場、少し落ち気味だったのは、右もも裏の故障のせいだったんですね。立浪に限った話ではないのですが、素人の僕は、ついつい結果だけを見てあれこれブログに書いてしまったりするわけですが、故障をひた隠しにしながらも、何とかその中でベストのプレーをしようと必死で頑張ってくれていたんですね。それでも結果が出せなかったときの、神宮での自らへの苛立ち。いかにも職人ですね。

来季からはいよいよ兼任コーチという肩書きが加わるわけですが、そちらの方での成果も期待せずにはいられません。ケガともうまくつきあいながら、またバットの方でも期待しています!。とにかく今季はお疲れ様でした。
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