「―なるほど、それでこそ愛奈だな」
 拓人が言い、フと笑った。物問いたげな愛奈に向かって、彼は淡く微笑った。
「俺は素直に身を任せる愛奈も好きだが、以前のように泣いたり笑ったりするお前の方が良い。強くて意地っ張りで、何ものにも屈さないお前を俺は欲しいと思ったんだ」
 そう、自分が欲しいと望んだのは、どんな卑怯な手段を使ってでも手に入れたいと望んだのは人形のように言いなりになる性の玩具ではなかった。風にゆらめく七色の光のようにくるくると表情の変わる少女の眩しさを彼は愛したのだから。
 その時、拓人の脳裏に去来した想いを愛奈は知らなかった。容易く願いが聞き届けられるとは思ってはおらず、ただひたすら息をつめて男からの返答を待った。
 永遠とも思える沈黙の後、拓人が口を開いた。
「良いだろう、どうせあと一年もないんだ。せめて高校は卒業しないとな」
 愛奈は弾かれたように顔を上げた。まさかこう容易く承諾を得られるとは考えていなかったのだ。
 だが、と、拓人が愛奈を強いまなざしで絡め取る。
「このままでというわけにはいかない。俺の歓ぶことを愛奈がしてくれたら、高校には今までどおり行かせてあげよう」
「拓人さんの歓ぶこと?」
 小首を傾げた愛奈に、拓人が頷いて見せた。
「判らないわ」
 しばらく考えても、応えは見つからなかった。途方に暮れてまなざしで訴えかけると、拓人が小さく含み笑う。
「相変わらずのねんねだな。どれだけ俺に抱かれても、お前は無垢なままだ。いや、身体の方だけは俺好みの嫌らしい身体に見事に開発されたか」
 わざと愛奈の羞恥を煽るような言い方をする。
「それなら、教えてやろう。その愛らしい口で俺を歓ばせるんだ」
 それでも愛奈は、まだ、きょとんとしている。拓人は小さく肩を竦め、いまだつくろげたままの下肢を指さした。愛奈の小さな顔が見る間に強ばってゆく。
「まさか―」
 拓人は愛奈の反応を心底から愉しむかのように微笑む。
「そう、お前の考えているとおりだよ。これまで俺は色んなことをお前に教えてきたが、そろそろレッスンも次の段階に進んでも良い頃合いだろう。女はベッドの上では男に与えられるだけではいけない。さあ、ここに来て、やってごらん」
 愛奈は拓人の前に跪いた。ズボンの股間からはあれほど烈しい営みを重ねたにも拘わらず、いまだ大きさを保った彼自身がそそり立っていた。
 この男は、これを舐めろというのか。
 愛奈にとっては到底、従いがたい要求であった。今、天を向いて屹立していたこれは、愛奈にとっては排泄器官でしかない。けれど、この命令を拒めば、高校に行けなくなる。
 愛奈は瞳を閉じた。閉じた眼を開けば、涙がこぼれてしまいそうだ。でも、こんな男の前では涙ひと粒も見せたくはなかった。
 意を決して眼を開き、顔を彼自身に近づける。
「どうしたら良いのか、やり方が判らないわ」
 どうしても声が震えるのはこの際、致し方なかった。
「俺の言うとおりにやるんだ」
 愛奈は彼の命令どおり、まずは竿におずおずと舌を這わせた。それから先端を口に含み、縁を描くように舐めてみる。亀頭の窪みを舌先でつつくと、拓人は小さなうめき声を洩らし腰を揺らめかせた。
「なかなか上手いじゃないか。お前はやはり、生まれながらの娼婦だな。お前の身体も何もかもが男を歓ばせるために存在しているんだ、愛奈」
 拓人の声には抑えがたい情欲の焔が点っている。たどたどしい舌遣いがかえって彼をそそったことを愛奈は知らない。夢中で屹立を舐めている中に、先端から酸っぱいようなほろ苦いような液体が滲み始めた。
「見てごらん。お前が俺のを銜え込んでいるところが見える」
 ふと、その言葉に何気なく視線を動かした愛奈はあまりの衝撃に息を呑んだ。
 数メートル前方に設置された大きな鏡には、まさに今の二人の姿がくっきりと映し出されている。拓人の方は背広の上着こそ脱いでいるものの、ワイシャツも着ているし、ズボンも履いたままで股間をくつろげているだけだ。服を着たままの彼に対し、愛奈だけが一糸纏わぬ生まれたままの姿になっている。
 拓人の足許に跪いて懸命に奉仕する自分の姿はあまりにも屈辱的で惨めで、淫らだった。
 ショックに顔から血の気が引いていくのが判った。しかし、そんな反応すら、彼を歓ばせるための趣向でしかない。 
「初めてにしては上出来だ。よくできたご褒美に今度は俺が愛奈を気持ちよくさせてやろう」
 打ちのめされている愛奈に最早、逆らうすべはなかった。拓人は愛奈を軽々と抱き上げ、ベッドに押し倒す。すかさずその上に覆い被さると、烈しく唇を貪った。それから両脚を膝を立てた状態で大きく開かせる。
「拓人さん、何を―」
 何をするのかと不安げな声を出した愛奈を拓人は宥めるようにその太腿を撫でた。
「何も考えなくて良い。いつものようにただ俺を感じていてくれ」
 ふいに尖らせた舌先が彼女の蜜壺に挿入され、愛奈の身体がピクンと跳ねる。
「あ? 拓人さん、そこは」
 いやと言おうとして、また身体がビクビクと立て続けに撥ねた。生まれて初めて与えられる刺激はあまりにも強すぎるものだった。これまで指を挿れられたことはあるけれど、舐められたことなどなかった。
「いや、止めてっ。汚いから、そんなところは」
 暴れる愛奈の両脚を力をこめて押さえつけ、拓人が濡れた声で呟く。
「汚くなどないさ。さっき、愛奈も俺のを舐めてくれただろう。愛し合う男と女の間には汚いなんて言葉はない。何をしてもされても、極上の快楽になるだよ。よく憶えておきなさい」
 拓人は愛奈の蜜壺を舌で刺激しながら、快感に膨れ上がっている花芽を指先で捏ね回す。何度も続けている中に、いつものあの感覚―身体の奥底から湧き上がってくるうねりを感じた。
「あっ、あっ、来ちゃう」
「達けば良い。思いきり感じて達ってごらん」
 耳許に熱い息が吹きかけられる。蜜壺のとりわけ感じやすい部分を更に舌で嬲られ、愛奈は絶頂に達した。
「俺ももう我慢できない」
 愛奈はまだ絶頂の余韻にいた。そんな彼女の両脚の間に座り、拓人は彼女の片足を高々と持ち上げ肩に担ぐ。
「ぅぅーうっ、あ、ぁあ」
 いつもとは違う内壁の場所を鋭い楔が穿ってゆく。幾度もすり上げられ、犯される。いきりたった剛直が狭い蜜道を何度も通過する度に、あらゆる箇所が刺激され、愛奈は甘い声で啼いた。
 堕ちていく。どこまでも堕ちていく。
「堕ちる、堕ちてしまう」
 達したばかりなのに、また小さな絶頂が来る。何度か達した後に訪れたのは、かつてないほどの大きな波だった。大きなうねりに呑み込まれ、愛奈は好きなように翻弄される。
「堕ちれば良い。堕ちておいで、俺の腕の中に」
 そして二度と飛び立つことができないように、この鳥籠から逃げられないように、俺が底なしの快楽という鎖で永遠にお前の翼を縛り付けてあげる。
 耳許で囁かれた男の口調は夢見るようで、どこか倒錯的な熱さえ帯びていた。そして、愛奈の最も敏感な最奥で男の熱が弾ける。ビュクビュクと飛び散る飛沫に奥を濡らされながら、愛奈はその烈しすぎる快感についに意識を手放した。