前回までのあらすじ

 2つの大河が全長70kmにもわたる広大な砂丘と日本有数の平野を作り、日本海へ注ぎ込む日本海側最大の港町「柳都(りゅうと)」市の郊外に少子化の影響で5つの高校を統合再編し誕生し5年が経過した「柳都総合学園」。
 休止していた無線部を新入生だった女池智子と青山聡美と共に再建したものの、1年間は彼女達しか部員のいない状態であった。
 彼女たちが2年生になった年の入学式の日に、日本の第1級アマチュア無線技士に相当する「アメリカFCCエキストラクラス」のライセンスを持つ新津智子が入部。
 そして、通称「はむぶ」を「食べるハム」と勘違いした親松はるかが入部する。



 その後、部員は増えることがなく、4名体制で行くこととなったが、はるかと弘子が入部し3日後の無線部室。
 弘子は自宅で余ったという高級洋菓子「プラリーヌ」を切り分けながら、智子に聞いた。
 「無線部(うち)が昨年度、智子さんと聡美さんで暫定的に部として復活させたと伺ったのですが、顧問の先生って私達が入ってからいらっしゃったことがないんですが・・・。」
 「あ、、、あのね。うちの部の顧問は・・・そうそう昨年末から入院しているのよ。」
智子はあたふたしながら答えた。その挙動に不審点を覚えた弘子は続けて
 「でも、どんな人か教えていただかないと、退院後お会いした時にパーソナルな部分をわかっていれば、スムーズにコミュニケーションが取れるかと思うんですが・・・。」
と問た。
 「そうだね。弘子ちゃん。わたしも顧問の先生がどんな人なのか知りたいし・・・。」
はるかも同調した。
 「とも。和納先生のこと弘子やはるかに話してあげなよ。減るもんじゃないし・・・なんだったらあたしが話そうか?」
 聡美はニヤつきながら智子に話すように言った・・・その顔に智子はムッとしながらも仕方ないと言った感じで話し始めた。

 「うちの学校は、柳都南と柳都農業、柳都商業、柳都高校の芸術科。そして、柳都工業の合併により出来たということは知っているよね。」
 「ええ、少子化対策と柳都市の中心部再開発行うために、広大な敷地を持っていた柳都農業に全機能を移し、隣接地で放置されていた農耕地を購入したと聞いていますわ。」 
 切り分けたプラリーヌを智子たちの前に出しながら弘子は答えた。
 「その中で柳都工業はいわゆる不良の集まる学校で、15年前の再編が検討され始めた頃は、合併には慎重な意見があり、単純に廃校という話があったらしい。」
 「でも、それが合併して10年前にうちの学校が出来たんですよね。」
 「うん。うちの部の顧問の和納先生は、その頃柳都工業の生徒だったんだ。」
 「ということは、和納先生は元不良なんですか?」
 「そうじゃないんだ、むしろ『カミソリの和納』と言われるくらいの切れ者で、1年生の時にうちの部の前身となる無線部で伝説となった電波方向探査装置の製作をして、日本アマチュア無線連盟の自作機器コンクールで最優秀賞を取り、柳都工業の名前を全国的に知らしめたんだ。また、1年生で生徒会会長に立候補して当選。異例とも言うべき2年間に渡る長期政権の間に校内改革をして、2年間のうちに柳都工業の不良学校という汚名を濯ぎ、柳都工業初の東京大学入学という偉業を成し遂げたことで、柳都工業は柳都総合学園の一部として存続することになったんだ。」
 「そして、そのカミソリ和納と言われた人が、先生としてこの学校に戻ってきた・・・ということですか・・・。」
 「ただ、なぁ・・・。切れ者過ぎたんだろうな・・・。」
 「それで病気になった・・・。」
はるかが横から口を出したが、聡美は
 「・・・まぁ、病気・・・なのかな・・・。」
と、意味深に答えた。

 翌日、教務部前の廊下。
 一般的には教職員室と呼ばれるのだが、柳都総合学園の中でも歴史の古い柳都商業高校での呼び方が使われていた。
 はるかはクラス全員分の課題を集めて、英語科の白根に提出するために教務部へ向かうところだった。
 前方から白衣をまとったモデルのような長身の綺麗な女性が歩いてくるが見えた。

 「あら、あなた1年生ね。どうかしたのかしら?」
長身のその女がハスキーな声ではるかに問た。
 「あ、あの。こ、これを英語科の白根せ、先生に」
 「あぁ、白根先生ね。・・・ごめんね。さっき、嘉山先生と修学旅行の打ち合わせに行っちゃったのよ・・・。わたしが預かって白根先生に渡しておくからね。」
と言うと、はるかから課題を受け取った。
 「あ、あの・・・先生のお名前は・・・。」
 「あぁ、わたしは電気・電子コースの和納だよ。」
 「え・・・あの無線部顧問の和納先生ですか・・・。実は私も無線部員なんです。」
 「へぇ・・・そうなんだ。名前は?」
やさしい口調ではるかに問うた。
 「親松です。親松はるかです。」
 「はるかちゃんか・・・よろしくね。」
そう言うと教務部室内へ和納は入っていった。

 その日の放課後。「無線部室」
 「智子さん智子さん!今日教務部に課題を届けに行ったら、和納先生にお会いしましたよ!」
はるかは無邪気にはしゃぎながら話した。
 「え・・・学校に来てるのか・・・和納先生・・・。変な感じしなかったか?」
智子は慌てた口調ではるかに聞いた。
 「え?変ってなにが?すごく長身でスラっとしていて女優の米倉涼子さんみたいじゃないですか!」
はるかは無邪気に答えた。
 「いや・・・あれは・・・だな。」
智子は戸惑いながらも説明をしようとしたところ部室のドアが開いた。
 「イエーイ!ともと、さとみん元気にしてたー!今日からこの部の顧問に復帰するよ!あ、はるかちゃん!」
和納がハイテンションで入ってきた。頭を抱えながらも智子は叫んだ。
 「あぁぁっ!もう、うっさい!なんなのよ。その格好は!」
 「え?似合ってない?どう、はるかちゃん、あたし変な格好?」
ショボーンとしながら和納ははるかに聞いた。
 「え。あたしは良いと思うけど、弘子ちゃんはどう思う。」
 「うーん・・・そうね。トップスは少し暗めの方がいいかなと思うけど・・・」
弘子は冷静にコーディネートし始めたが、智子はそれを遮り叫んだ。
 「あのね・・・和納先生。私が言ってるのはそういうことじゃないの!なんでそんなに女性装が綺麗なんですか!男なのに!」
 弘子とはるかは
 「へー。和納先生って男の人だったんですね・・・・・・・うそ!こんなに綺麗なのに男の人なんですか!」
 思いっきり驚いたのだった。
 「そうなんよ。弘子ちゃんとはるかちゃんには黙ってたって、いつかバレるって言ったんだけど・・・。ともが黙ってろって。」
 聡美はつづけて
 「和納先生は確かに技術力はすごくて、切れ者とか言われて伝説になっているけど・・・」
 和納は聡美の言葉を遮って話し始めた。
 「伝説とか切れ者とか・・・わたし自身はそんなことを目指していたわけじゃない。でも、結果的にそうなったんだ。
 だけど、大学入学直後からこのままで良いのか・・・と、なんとなく過ごしている時に学祭で女装子コンテストがあってギャグで出場したら、最下位だったのよ・・・。なんか悔しくて、色々と頑張ったらこうなったのよ・・・。」
と、笑いながら話し始めた。
 「しかし、なぜそうなった・・・」
智子は呆れながら問うた。
 「だって!最下位よ!さ・い・か・い!悔しいじゃない!」
 「まぁ、先生。落ち着いてください。しかし・・・よく柳都県の教育委員会が採用してくれましたねぇ・・・。」
頭から湯気を吹き立つ感じで叫ぶ和納を尻目に、弘子はなだめつつ聞いた。
 「まぁ・・・わたしも先生になるつもりはなかったんだけど、当時の教育長が伯父さんで・・・引き戻されちゃった・・・て感じなんだけど、嫌だったからその際にわたしが出した条件が『女装』だったのよ。そしたら、伯父も『女教師じゃなくて、女装教師か・・・面白い!』とか言い出してね・・・まぁ、とにかく、これからみんなよろしくね。」

(次回は5月10日公開予定です)