前回までのあらすじ

 日本海側最大の港町「柳都(りゅうと)」市の郊外に少子化の影響で5つの高校を統合再編し誕生し5年が経過した「柳都総合学園」の休止していた無線部を女池智子と青山聡美で復活させ、そこに新入生の新津智子と親松はるかが入部し、女装教師の和納が顧問になり、本格的に始動。はるかはアマチュア無線従事者免許国家試験の勉強を始めるが、あまりにはるかが素っ頓狂な回答をするので、頓挫する。
 しかし、智子たちはローカルアイドル「inecco」のメンバーではるかの幼なじみである紗友里と話すことで、解決の糸口を見出すのだった。


第6波「がっしゅく! 1」
 「はるか、今週末空いてる?」
智子はニヤけながらはるかに聞いた。
 「うん。今週は何もやることないから、庭に穴でも掘ろうかって思っていたからちょうどいいかな。」
 「マテマテ・・・その前に穴を掘ってどうすんだよ・・・」
智子は思わずツッコんだ。
 「え?穴を掘って、その後は・・・」
 「その後はなんだ。」
智子たちはその後何をはるかが言い出すか、緊張しながら聞いた。しかし、はるかはそんなことを全く考えず
 「そのまま埋める!」
と、答えた。
 「何なんだよ!その意味のない行動は!」
智子たちは思わず叫んだ。
 「えぇ〜。だって、そのままだと危ないじゃない?」
はるかはおどおどしながら答えた。頭を抱える智子たち。
 「まぁ・・・なんっていうか・・・はるか。大丈夫か・・・あたま。」
聡美は呆れていた。
 「まぁ・・・それはともかく弘子と話して、月村温泉にある弘子の別荘でお泊り会やろうって話になったんだがどう?」
智子はニヤけながらも聞いた。
 「月村温泉かぁ・・・温泉街にある『まるはた』のイチゴ饅頭美味しかったなぁ・・・。行こう行こう!」
はるかはノリノリで聞いた。
 「じゃぁ、金曜日の放課後学校から直行で行きましょう。大体、16時に学校前を出る路線バスに乗って月村温泉には17時頃には着けると思うの。そして、美味しいものを食べて、温泉入って、日曜日の午後に帰ってくるスケジュールでどうかしら?」
弘子は微笑みながら提案した。
 「え?月村温泉に2泊するの?お肌ツルツル美人になっちゃう〜。絶対にいこう!」
と、はるかはウキウキしていた。
 「・・・でも、そんな都合の良いバスがあったっけ?」
聡美は訝しみながら呟いた。

 金曜日15時50分、はむ部の一行は二泊分の荷物を持って柳都総合学園前駅前にいた。

 「なぁ・・・弘子。この間このバス停から出るバスを見たんだけど、月村温泉に行くバスなんかなかったんだけど、一回柴田原まで電車に乗って行くんだろ?それか、この間みたいに弘子の家の自家用バスで行くのだろ?」
 聡美は弘子に聞いた。
 「いいえ。ほら、バスが来ましたよ。」

 柳都総合学園前駅前ロータリーに柳都交通の路線バス塗装の小型バスが入ってきた。
 LED表示には「豊坂駅経由月村温泉行(Toyosaka St via Tsukimura Onsen)」と表示されていた。

  「え?こんな路線あったっけ???」
聡美は混乱した。
 「できたんですよ。何でも、月村温泉と豊坂駅、柳都国際交通ターミナルを結んで海外客を誘致する目的で。」
弘子はサラリと言ってのけた。
 「いや、そういう理由で路線が出来たのはわかったけど、何故柳都総合学園前駅に止まるのよ。」
聡美は更に聞いたが、弘子は
 「・・・ま、とにかくバスに乗りましょう。」
と、はぐらかした。

 月村温泉行きバス車内。
 智子ははしゃぐはるかを尻目に、弘子に話しかけた。
 「しかし、弘子のうちが月村温泉に別荘を持っているなんて凄いな・・・。」
 「いえいえ、元々はうちの父親がシャック(無線小屋という意味)と祖母の湯治宿を兼ねたんで、狭いんですけどねぇ・・・。」
 「いや、普通は別荘どころか独立した建物のシャックなんかないよ・・・。」
当たり前のように言う弘子に智子はつっこんだ。

 一時間くらいのバス旅行・・・はじめのうちははしゃいでいたが、授業が終わって疲れていた彼女たちは20分位で睡魔に取り込まれていた。気づいたのは月村温泉駅を過ぎたあたりだった。

 終点から徒歩5分位の温泉街から少し奥まったところにある立派な冠木門の一見すると料亭のような建物の前で止まった。

 「ごめんなさい。こんな狭くて古い場所で・・・」
と、弘子は本当に申し訳のないと言った表情をしながら言った。
 「い、いや・・・これじゃ、本当に温泉旅館じゃないか!」
と、智子は大声でツッコんだ。

(次回公開は1ヶ月お休みをいただき9月10日を予定しています。)