moeko's room〜Prism Air〜

信州の山奥に生息するアキバ系女装っ子、七原もえ子の日常思っていることを書いちゃったりしちゃっているブログです。 トラックバック及びコメントについては認証制としております。

小説『はむぶ』

【小説】はむぶ 7波「がっしゅく!(2)」

 日本海側最大の港町「柳都(りゅうと)」市の郊外に少子化の影響で5つの高校を統合再編し誕生し5年が経過した「柳都総合学園」の休止していた無線部を女池智子と青山聡美で復活させ、そこに新入生の新津弘子と親松はるかが入部し、女装教師の和納が顧問になり、本格的に始動。はるかはアマチュア無線従事者免許国家試験の勉強を始めるが、あまりにはるかが素っ頓狂な回答をするので、頓挫する。
 ある週末、弘子の家の別荘のある月村温泉へ向かうのだった。

第6波「がっしゅく! 2」
 冠木門を開けるとそこには綺麗に整った日本庭園と20mくらいはあると思われる鉄塔が3本立ち、大小様々なアンテナが付いていた。
 そして、その奥には入母屋造りの屋根を持つ、どこから見てもお金持ちの家という風格の日本家屋が建っていた。
 その風景に呆然としていた智子たちに弘子は申し訳無さげに
 「ちょっと古くて狭いところですが、どうぞ・・・・。」
といい、奥へ手招きした。
 「いや・・・・立派すぎるだろ。少なくとも、これは旅館だよ・・・。」
聡美は思わずつっこんだ。
 「まぁ・・・元々は経営難になっていた旅館を買い取ったんで、ちょっとその名残はあるんですよね・・・」

 「さて、今日ははるかの受験強化合宿として来たわけだが・・・」
智子はイライラしながら続けた。
 「なんで、はるかだけじゃなくて聡美と弘子も浴衣に着替えてゆっくりくつろごうとしてるの!」
 「え?だって温泉だよ。お・ん・せ・ん。入らなきゃ損じゃん!」
はるかは悪びれなく答えた。
 「そうそう・・・それに身体が汗でベタベタだしね。さっぱりしてから勉強した方が能率的でしょ?」
と、聡美も答えた。
 「あ???あれ?わたしが間違ってるの???」
智子は混乱していた。
 「とりあえず、温泉に入ってからにしましょう・・・あと実質2日あるんですから・・・。」
弘子は入浴を促した。

 浴室・・・というよりは健康ランドやスーパー銭湯のような感じで、ジェットバスや露天風呂などもあり、本当に個人の別荘なのかと思うような豪華さだった。
「ふいーーっ。いいお湯だねぇ。さすが、月村温泉。美人さんになっちゃうよぉ。」
はるかは呑気な声を出して温泉を満喫していた。
「あのね。はるか。電圧と電流が何なのかわからないって言ってたよね?」
聡美ははるかに話しかけた。
「うん。どっちがどっちかわからないんだよね。」
「お風呂のお湯に置き換えて考えるといいのよ。あそこに打たせ湯があるじゃない。あの上から落ちてくる下にいると圧力を感じるじゃない。」
「あ、たしかに何か痛いよね。」
「それが水圧なんだけど、電気でも同じことが起こるの。それが電圧。」
「あ、そっか。」
「そして、その水の流れと同じものが電気の世界では?」
「あ!それが電流か!」
「そして、その水の流れを邪魔するものが抵抗だし、ホースとかが元々持っている抵抗をインピーダンスっていうの。」
「あ、なるほど。そっか・・・そういうことなのか。・・・」

 温泉で思いがけなく勉強したはるかだった。

【小説】はむぶ 第6波「がっしゅく! 1」

前回までのあらすじ

 日本海側最大の港町「柳都(りゅうと)」市の郊外に少子化の影響で5つの高校を統合再編し誕生し5年が経過した「柳都総合学園」の休止していた無線部を女池智子と青山聡美で復活させ、そこに新入生の新津智子と親松はるかが入部し、女装教師の和納が顧問になり、本格的に始動。はるかはアマチュア無線従事者免許国家試験の勉強を始めるが、あまりにはるかが素っ頓狂な回答をするので、頓挫する。
 しかし、智子たちはローカルアイドル「inecco」のメンバーではるかの幼なじみである紗友里と話すことで、解決の糸口を見出すのだった。


第6波「がっしゅく! 1」
 「はるか、今週末空いてる?」
智子はニヤけながらはるかに聞いた。
 「うん。今週は何もやることないから、庭に穴でも掘ろうかって思っていたからちょうどいいかな。」
 「マテマテ・・・その前に穴を掘ってどうすんだよ・・・」
智子は思わずツッコんだ。
 「え?穴を掘って、その後は・・・」
 「その後はなんだ。」
智子たちはその後何をはるかが言い出すか、緊張しながら聞いた。しかし、はるかはそんなことを全く考えず
 「そのまま埋める!」
と、答えた。
 「何なんだよ!その意味のない行動は!」
智子たちは思わず叫んだ。
 「えぇ〜。だって、そのままだと危ないじゃない?」
はるかはおどおどしながら答えた。頭を抱える智子たち。
 「まぁ・・・なんっていうか・・・はるか。大丈夫か・・・あたま。」
聡美は呆れていた。
 「まぁ・・・それはともかく弘子と話して、月村温泉にある弘子の別荘でお泊り会やろうって話になったんだがどう?」
智子はニヤけながらも聞いた。
 「月村温泉かぁ・・・温泉街にある『まるはた』のイチゴ饅頭美味しかったなぁ・・・。行こう行こう!」
はるかはノリノリで聞いた。
 「じゃぁ、金曜日の放課後学校から直行で行きましょう。大体、16時に学校前を出る路線バスに乗って月村温泉には17時頃には着けると思うの。そして、美味しいものを食べて、温泉入って、日曜日の午後に帰ってくるスケジュールでどうかしら?」
弘子は微笑みながら提案した。
 「え?月村温泉に2泊するの?お肌ツルツル美人になっちゃう〜。絶対にいこう!」
と、はるかはウキウキしていた。
 「・・・でも、そんな都合の良いバスがあったっけ?」
聡美は訝しみながら呟いた。

 金曜日15時50分、はむ部の一行は二泊分の荷物を持って柳都総合学園前駅前にいた。

 「なぁ・・・弘子。この間このバス停から出るバスを見たんだけど、月村温泉に行くバスなんかなかったんだけど、一回柴田原まで電車に乗って行くんだろ?それか、この間みたいに弘子の家の自家用バスで行くのだろ?」
 聡美は弘子に聞いた。
 「いいえ。ほら、バスが来ましたよ。」

 柳都総合学園前駅前ロータリーに柳都交通の路線バス塗装の小型バスが入ってきた。
 LED表示には「豊坂駅経由月村温泉行(Toyosaka St via Tsukimura Onsen)」と表示されていた。

  「え?こんな路線あったっけ???」
聡美は混乱した。
 「できたんですよ。何でも、月村温泉と豊坂駅、柳都国際交通ターミナルを結んで海外客を誘致する目的で。」
弘子はサラリと言ってのけた。
 「いや、そういう理由で路線が出来たのはわかったけど、何故柳都総合学園前駅に止まるのよ。」
聡美は更に聞いたが、弘子は
 「・・・ま、とにかくバスに乗りましょう。」
と、はぐらかした。

 月村温泉行きバス車内。
 智子ははしゃぐはるかを尻目に、弘子に話しかけた。
 「しかし、弘子のうちが月村温泉に別荘を持っているなんて凄いな・・・。」
 「いえいえ、元々はうちの父親がシャック(無線小屋という意味)と祖母の湯治宿を兼ねたんで、狭いんですけどねぇ・・・。」
 「いや、普通は別荘どころか独立した建物のシャックなんかないよ・・・。」
当たり前のように言う弘子に智子はつっこんだ。

 一時間くらいのバス旅行・・・はじめのうちははしゃいでいたが、授業が終わって疲れていた彼女たちは20分位で睡魔に取り込まれていた。気づいたのは月村温泉駅を過ぎたあたりだった。

 終点から徒歩5分位の温泉街から少し奥まったところにある立派な冠木門の一見すると料亭のような建物の前で止まった。

 「ごめんなさい。こんな狭くて古い場所で・・・」
と、弘子は本当に申し訳のないと言った表情をしながら言った。
 「い、いや・・・これじゃ、本当に温泉旅館じゃないか!」
と、智子は大声でツッコんだ。

(次回公開は1ヶ月お休みをいただき9月10日を予定しています。)

【小説】はむぶ 第5波「ロコドルとハム部と・・・」

前回までのあらすじ

 日本海側最大の港町「柳都(りゅうと)」市の郊外に少子化の影響で5つの高校を統合再編し誕生し5年が経過した「柳都総合学園」の休止していた無線部を女池智子と青山聡美で復活させ、そこに新入生の新津智子と親松はるかが入部し、女装教師の和納が顧問になり、本格的に始動した。
 そんなある日、はるかが国家試験受験申請を締め切り当日まで忘れていたことが発覚。弘子の実家の力もあり無事申請書を提出したのだった。


第5波「ロコドルとハム部と・・・」
 はるかの国家試験受験勉強が始まった。
 はるかが受験する第4級アマチュア無線従事者国家試験は、電波法とそれに関係する総務省令からなる「法規」と、中学生程度の電気や無線工学からなる「工学」を各四者択一で12問。各科目8問以上の正答で合格するというもので、ある程度出題パターンも限られていることから無線従事者資格では一番簡単な国家試験である。
 智子は法規。聡美は工学をそれぞれ30分づつ教え、弘子が智子と聡美をフォローしつつ、お茶を用意するというスタイルで進めることとした。

 しかし、問題ははるかがあまりに天然すぎることだった。

 「いい、『免許人が免許状を汚したために免許状の再交付を受けたとき、旧免許状をどのようにしなければならないか、正しいものを次のうちから選べ。』って、問題があるけれども、この場合どうすればいいのかな」
智子が出題した。
「うん・・・と、ヤギに食べさせる?」
はるかはドギマギしながら答えた。
「そんなん、選択肢にあるわけ無いだろ!答えは総合通信局長に返納でしょ。」

 「いい?電波の一波長の長さを出す公式は、300を周波数MHzで割ると出せるんだけど、1波長が10mの周波数は何MHzかな?」
聡美が公式を教えて出題してみた。
 「え・・・と、3000MHz?」
はるかはドギマギしながら答えた・・・。
 「はぁ・・・。」

 一時が万事そんな感じなのであった。

 昼休み。部室にはるかを除いて集まった。
 「これは・・・まずい。」
智子は聡美に話しかけた。
 「確かに、はるかは天然だとはおもってはいたけど・・・ここまでとは。」
聡美は思わず同意し、続けた。
 「でもなぁ・・・合格させるって言っちゃったもんなぁ・・・。弘子、何かいい方法ないか?」
 「そうですね・・・試験官を買収する・・・」
 「そうそう。弘子の家の財力で・・・って、できるかぁー!まさか、エキストラクラスもそれで取ったんじゃないだろうな。」
 「いやですねぇ・・・冗談ですよ。冗談。でも、はるかさんは柳都総合学園(うちの学校)に入学できるくらいの学力はあるんですよね・・・あ、あれは?」
 弘子は窓越しに校庭を見ながら話をしていたら、校庭ではるかが女生徒と話をしていたのを見つけた。
 「どこかで見たような人なんですが、誰だろう。智子さん、聡美さん、あの人どこかで見たことある人なんですが、わかります?」
 弘子が智子と聡美を自分のいる窓側に呼んだ。
 「ん?どれ?あ、あれineccoのSayuじゃないか?Sayuと友達なのかな?」
智子は訝しげに呟いた。弘子は部室のパソコンを叩きながら言った。
 「あ・・・松崎紗友里・・・この子か・・・出身中学は柳都市立柳岡山中学・・・って、はるかと同じ中学か・・・。」 
 「え、そんなことまでインターネットに出てるんですか?」
弘子は尋ねた。
 「いや、教職員サーバーから情報抜いた。」
聡美はクスりと笑いながら答えた・・・。
 「えー!!!それって犯罪じゃないですか!」
弘子は驚いた・・・。
 「大丈夫。大丈夫。情報処理の黒崎先生からファイヤウォールの脆弱性試験をしてくれと頼まれていたついでだからね。・・・しかし、うちの教職員サーバーのファイヤウォール穴だらけじゃないの。よくこんなの使ってるな・・・。そうだ!日本無線協会のサーバーをハッキングして・・・」
 聡美はディスプレイを覗き込みながら呟いた。
 「いや、それはダメだろ・・・思いっきり犯罪じゃんか!」
 そういった智子は何か思いついたように
 「はるかはSayuと同じ中学出身か・・・。聡美、Sayuの今日のスケジュールわかるか?」
聡美に尋ねた・・・。
 「そうだな・・・授業計画によると今日は6時間目まで授業を受け、その後17時まで補習らしい・・・。」
 「そうか・・・。」
智子はニヤつきながら一言答えた・・・。

 その日の17時。1年B組教室前・・・紗友里が補習を終え教室から出てきた。
 教室の前にはineccoのSayuを見たいと数人の生徒が集まっていた・・・
 『Sayu!こっち見てー!』
 『サイン頂戴!』
と、大騒ぎになっていたが、紗友里は微笑みながら通りすぎようとしていた。その先に智子と聡美。そして弘子が行く手を塞ぐように立ち、聡美が
 「松崎さん!ちょっとよろしくて?」
と、紗友里に話しかけた。
 「あら先輩。何か私に御用ですか?生意気だとかそういうの要りませんから・・・」
紗友里はまた先輩から因縁をつけられているのかと思った。
 「あ・・・ineccoのSayuとしてじゃなくて、はるかの親友の松崎紗友里さんとして聞きたいことがあってね・・・。」
 「はる・・・いえ、はるかのことをご存知で?」
意外な名前が目の前にいる先輩の口から出て正直驚いた。
 「ああ、わたしは3年海外コミュニケーションコースの女池智子。はるかが入っているハム部の部長だよ。」
 「あぁ!あなたが智子さんですか?はるから色々と聞いてます。」
 「はるかについて少し話を聞きたいんだ・・・少し時間もらえる?」
 「じつはこの後、駅南のプラーザのスタジオでラジオ番組収録があるんです・・・。」
 「駅南まで電車?」
 「いえ、タクシーをこれから呼んで行くんですよ・・・。」
と、戸惑いながらも智子の問に紗友里が答えた後に、弘子が提案した。
 「それなら、私のうちの車で話しながら行きましょう。」
 「え・・・でも悪いわ・・・。」
紗友里は戸惑いながら遠慮していたが、被せるように智子が言った
 「この間のベンツ?この弘子さんのお宅は運転手さん付きのベンツが来るんだよ!」
 「ごめんなさい。うちの父の会社の車が車検が終わって戻る途中にピックアップしてもらう形だから、乗用車じゃないんです。でも、みなさんは乗れますから。」
 弘子が恐縮しながら答えたので、智子はがっかりした表情で
 「なんだ・・・ベンツじゃないのか・・・」
と、言った直後に柳都総合学園入口に一台の日野の大型観光バスが入ってきた。
 「あ、うちの車が来ましたわ。ささ、みんな乗ってください。」
弘子が3人を押していく。
 「ええ???なんで観光バス???」
 「しかも、白ナンバーだから自家用なの???」
戸惑う3人。
 「すみません。父の移動オフィス車なんでちょっと狭いですけど・・・。応接の方にどうぞ。」
恐縮する弘子。
 「いや・・・移動オフィス車ってなんなのよ・・・。つか、牛皮張りのコクーンスタイルのソファーと立派な机と椅子・・・って、本当にバスかよ。これ。」
 智子は戸惑いながらもツッコんだ。

 ソファーに掛け、智子は紗友里に話しかけた・・・。
 「実は、はるかがアマチュア無線従事者国家試験に出る勉強が全然進んでいない・・・というより、かなり素っ頓狂な答えを出してくるんだよ・・・。うちの学校ってそれなりの学力がないと入れないだろ?どうやって勉強していたかを知りたいんだ・・・。」
 「あぁ・・・はるって、結構頭いいんですけど・・・美味しいもの・・・特に甘いものと記憶が無意識にリンクするみたいなんですよ・・・。」
 「なんじゃいそれ。」
 紗友里の説明を聞いて、智子は呆れた。
 「でも、人間の記憶って興味のあることのシナプス結合は強固で、その時に関連することがインデックス化されるって、そんな様なことを聞いたことがあるわね・・・。ある意味有効かもしれないな・・・。」
 聡美は妙に納得していた。それを見た弘子は手を上げながら
 「じゃあ・・・わたしは家に余ったお菓子持ってきます。たしか、部室に冷蔵庫ありましたよね。」
提案した。
 「はるかが皆さんのこと話す時って、本当に楽しそうな顔するんですよ・・・。はるかを少し嫉妬しちゃいますね。」
紗友里は少し寂しそうであり、親友の部活仲間が良い人そうで安心した複雑な表情をしながら話しかけた。
 「何言ってんの。紗友里がはるかの友達なのは変わらないし、私達ははるかと部活の仲間だけど、大切な友人だと思っている。だから、紗友里が嫌だと言わなければ、はるかの友達である紗友里も仲間だと思っているよ。」
智子がそう言うと聡美と弘子は頷くのだった。その言葉を聞いた紗友里の表情は明るくなるのだった。

 そして10分程度はるかについての雑談をしていたが、移動オフィスと化したバスは柳都駅南口の商業ビル『プラーザ』に滑り込み、駆け出しのロコドルと女子高生3人を下ろした。

 「皆さん、きょうはありがとうございました。」
紗友里は笑顔で3人に挨拶をした。
 「いやいや、こっちもはるかの国家試験対策でいい案が出たのは紗友里のおかげだよ。」
智子は笑いながら答えた。
 「それじゃ・・・今日の収録分は明日の23時半から放送されるので必ず聞いてくださいね。皆さん!」
そう言うと、紗友里はプラーザ3の奥へと消えていった。
 
 「アイドルだからとお高く止まっているのかと思ったら良い娘だねぇ・・・」
聡美は紗友里の後ろ姿を見送りながら呟いた。
 「あしたラジオ聞いてみるかな・・・。」

 翌日、りゅうと放送では、ineccoの冠番組『ineccoのきょうはいねいね!』が放送され、紗友里は前日の出来事を嬉しそうにメンバーに話したのだった。
(次回は7月10日です)

【小説】はむぶ 第4波「スクランブル!」

前回までのあらすじ

 2つの大河が全長70kmにもわたる広大な砂丘と日本有数の平野を作り、日本海へ注ぎ込む日本海側最大の港町「柳都(りゅうと)」市の郊外に少子化の影響で5つの高校を統合再編し誕生し5年が経過した「柳都総合学園」。
 休止していた無線部を新入生だった女池智子と青山聡美と共に再建したものの、1年間は彼女達しか部員のいない状態であった。
 彼女たちが2年生になった年の入学式の日に、日本の第1級アマチュア無線技士に相当する「アメリカFCCエキストラクラス」のライセンスを持つ新津智子と親松はるかが入部する。
 そして、弘子とはるかは顧問の和納に出会い、かっこいい美人女教師と思ったら・・・。



第4波「スクランブル!」

 弘子が家で余っているからと、お茶菓子のほかにパソコン3台とカラーレーザー複合機を持ってきた。

 聡美はそれをみて驚いた・・・。去年の年末に佐世保弁の通販会社の社長がWindows10をインストールしてあるパソコンにインクジェットプリンタとコンパクトデジカメ付きでメーカー希望価格298000円を20万円と言っていたヤツだったからだ。
 それまで使っていたパソコンがサポートの切れたWindows2000パソコンだったから、処理スピードは桁違いになったからだ。
 また、カラーレーザー複合機だって、そんなに安いものではないのに余る家って・・・。
 
 そして、触って智子が驚いたのは、1年分の交信記録がすべてデータベースに入力されていたことと、アマチュア無線用の通信系ソフトと初級アマチュア無線国家試験チュートリアルソフトが入っていたのである。
 「弘子・・・これって本当余っていたパソコンなのか?」
聡美は思わず聞いた。
 「ええ、うちの父の書斎にあったパソコンなんですけど、父が新しいのを買ったから捨てようとしていたのをもらってきたんですよ。ごめんなさい、ゴミを持ってきて・・・」

 「いやいやいや・・・これだって結構新しいパソコンだし・・・それにこれをゴミって言ったら、今まで使っていたWindows2000のパソコンは・・・。それにこのデータ入力だって大変だっただろ?」
智子は焦りながら弘子に聞いた。
 「あ、あれならそんなに時間かかりませんでしたよ。父からもらうときに父が会社の人に入力してもらうって言って1時間位でデータ化してもらったんです。」
弘子はサラリと言ってのけた。

 智子と聡美は思った
 (この子どんだけのブルジョアなんだよ・・・)
と。

 「そういえば・・・はるかは?」
智子は聡美と弘子に聞いた・・・。

 「はるかさんなら日直だから先行っててって、言ってましたよ。」
と弘子は答えた。

 「あぁ、日直か・・・日直なら・・・」
と智子が言いかけたところで聡美がパソコンの画面を見て叫んだ・・・。

 その声に驚いたが、弘子と智子はパソコンの画面を見て・・・その意味を理解した。

 柳都は日本海側最大都市とはいえ、国家試験は年に2回6月と1月の2回しかなく、それ以外の時期で国家試験を受けるには、隣接県か毎月国家試験をやっている東京へ行かなければならないのだが、その試験申し込み期間が今日の消印まで受付をするとあった・・・。

 智子はつぶやいた。
 「今の時間が15時35分。申請書を入手するためには柳都駅南口のシュンイチドー書店が一番近い。柳都総合学園前から柳都駅まで最速で行く電車は15時58分・・・ダメだ。どうやってもゆうちょ銀行の窓口締め切りの16時には間に合わない。」

 弘子が叫んだ・・・
 「わたしがなんとかします!とにかくはるかさんを見つけて、玄関へ連れて行っていってください。」

 「お・・・おう。ともは教務部へ。わたしは教室へ行ってみる。見つけ次第、438.10MHzで!」
聡美はそう伝えると走りだした。


 智子は部室に鍵をして教務部へ向かった・・・が、階段を降りている時に中庭でのんびりバナナオレを飲んでいるはるかを踊り場の窓から見かけた。

 「はるかぁ・・・!すぐ出かけられる支度をして玄関に来て!」
智子は思いっきり叫んだ・・・が、はるかには聞こえていないようだ。

 「くそっ!」
智子は全速力ではるかのいた中庭へ向かった。

2分後・・・中庭でボケーッとバナナオレを飲んでいるはるかの元についた。

 「あ・・・ともちゃん。どしたの?そんな怖い顔して・・・」
はるかは戸惑っていた。智子は淡々とハンディトーキーに向かって言った。
 「こちらJM0TMOから各局。はるかを確保。これから玄関へ向かう。」
 『こちらJM0STO聡美了解。』
 『JN0HRO弘子了解しました。こちらは準備出来ました。』

 「ど、どうしたの?みんな。」
さらに戸惑っていた。
 「荷物はちゃんと持っているな?」
 「う・・・うん。」
 「詳しい話は後だ。とにかく、今はみんなの待つ玄関へ」

15時45分、柳都総合学園玄関前。

 弘子がベンツの前に立って、
 「みんな!早く乗って!」
と、叫んでいた。

 戸惑いながら全員ベンツに乗り込んだ。

 「運転手さん!駅南まで大至急!」
弘子は叫ぶように言った。
 「はい。弘子お嬢様。10分で着きます。シートベルトを全員締めてください。」
と、初老の運転手が言ったかと思ったらとんでもない速度で飛ばした。
 「な、、、なにがあったの?ねぇねぇ・・・。」
はるかは何がなんだかわからない状態。
 「あ・・・、実は国家試験の受付が今日までだったんだ。まだ、申請書出してないどころか買ってもいないだろ」
 急な展開で戸惑いながらも聡美がはるかに話しだした。
 「うちの学校から申請書が買えるのは駅南のシュンイチドーが一番近いから・・・って、色々と検討したら・・・何故かこうなった。」
 「え・・・このベンツって・・・聡美ちゃんかともちゃん家の?」
 「んなわけないっ!弘子がなんとかするから・・・って」
智子も戸惑いつつ話した。
 「みんなごめんねぇ。一番学校の近くにいたうちの車を回してもらったから、狭くて。」
(これで狭い車ってどんな家だよ!)
三人は心の中でつっこんだ。
 「でも、これから10分で申請書を入手しても柳都中央郵便局には着くことはできないわね・・・。」と、つぶやくと弘子は携帯電話で電話をかけた。


15時55分柳都駅南口のシュンイチドー書店の前に着いたら、スーツを着た男が立っていた。

 「弘子お嬢様。予め、申請書を入手しておました。」
その男は深々と頭を下げ、申請書の入った茶封筒を弘子に手渡した。
 「木戸さん、ご苦労様でした。それではこの足で柳都銀行本店へ向かいますわね。」
車は、そのまま動き始めた。
 「はるかさん、この申請書に必要事項を書いてください。」
弘子は微笑みながら言った。
 「え!わかった・・・。」
はるかは申請書を書き始めた。智子は思わず聞いた。
 「ちょっ・・・柳都銀行へ行っても窓口は15時に閉まっているだろ・・・」
 「大丈夫ですよ。世の中なんとかなるもんです。」
と、微笑んでいた。

16時10分 柳都銀行本店。
 柳都銀行は柳都市の市街地・柳都島でも一番古くから栄えた本柳町の一等地にその本店を構えていた。
 その前身は明治政府のもとで設立された国立銀行であり、日本屈指の老舗地方銀行である。
 バブルの崩壊後破綻した同業の雪椿銀行がレジャー施設やブイブイ言わせていたバブル経済下でも堅実な経営をしており、経済が低迷している中でも安定した経営を行っていた。
 その銀行の本店に弘子たちの乗ったベンツが滑り込んできた。降りたあと、弘子は運転手に帰社するように伝えた。
 本店裏手の通用口警備室で警備員に話しかける弘子。
 「すいません。常務の山下さんにアポイントメントをとっているのですが・・・。」
 「お嬢ちゃん、何を言っているんだね。常務があんたみたいな女子高生と会う訳がないだろう。ささ、帰って勉強でもしてなさいな。」
 警備員は明らかに弘子たちを相手にしていなかった。
 「弘子ちゃん、国家試験なんか最悪東京に受けに行けば良いんだから・・・帰ろう。」
はるかは諦めて、弘子に帰るように諭していた。
 「大丈夫です。お取次ぎをおねがいします。」
弘子は毅然とした態度で警備員に言った。
 「新津さまのお嬢さま、おまたせいたしました。」
50歳位のロマンスグレーの男が弘子をこう呼びかけた。
 「山下常務。この女子高生を知っているんですか?」
警備員はそのロマンスグレーの男に尋ねた・・・。
 「ああ、よく知っているよ。私や当行が懇意にして頂いているお取引先の娘さんだよ。何か失礼なことを言わなかったかね。」
 キッと警備員に睨みつけながら警備員に答えた。
 「とりあえず、ここで立ち話もなんですから、お友達も含めて私のオフィスでお茶でも飲みながらお話を伺いましょう。あ、新崎くん、雪国紅茶を4つ私の部屋へ。あと以後のスケジュールは1時間ほど遅らせて頂く調整してください。」
 女性秘書にそう告げ、女子高生4人を柳都銀行本店に招き入れたのだった・・・が、智子と聡美、そしてはるかは
(銀行の常務さんと知り合いってどんな家の子なん・・・この子。)
と、戸惑っていた。

16時20分 柳都銀行本店8階北側にある山下のオフィス。
はるかたちは戸惑っていたが、山下はにこやかに微笑んで、腰掛けるよう諭した。
 「まぁ、そんなに固くならなくてもいいよ。温かい紅茶でも飲みながら話を伺いましょう。」
弘子が口を開いた。
 「実はわたしの友達のアマチュア無線国家試験の締め切りが今日までで、受験料を支払わなくてはならないんですけど・・・。」
 「あ、なるほど。そういうことですか。少しお時間よろしいですか?」
弘子が頷いたのを確認したら山下はどこかへ電話をかけた。

 2分後、職員が駆けつけた。
 「5250円と送金手数料324円と送金票を頂けますか?」
はるかが5580円をその職員に手渡すと、そのお金を持って、部屋から出て行き、3分後にはお釣りの6円と支払い証明書を手渡しに来た。

 山下は
 「さぁ、これで申請書にこの証明書をつけて隣りにある柳都中郵便局から送れば、申請できるでしょう。僕もアマチュア無線を趣味でしていてね。それに、新津さんのお父様には色々と良くしていただいているのでね。」
と笑った。

 女性秘書の新崎が次の予定の時間を告げるまで、4人の女子高生と山下はアマチュア無線についての話で盛り上がっていたのだった。
 16時55分
 「あぁ・・・疲れた・・・」
 智子は柳都中郵便局の玄関前の植え込みに腰掛けてボヤいた。
 「ほんとに、疲れましたね・・・。」
 弘子は微笑みながら賛同した。
 「いやいや・・・学校にベンツが横付けになって、それに乗り込まされて、いつの間にか銀行のお偉いさんに会ってなんて普通の女子高生じゃないからな・・・。」
 聡美はそう答えたあと、
 「ともかく・・・だ。はるかを二ヶ月で合格させる。これがあたしらのミッションだ。」
 決意を込めて呟いた。

(次回は6月10日の予定です)

【小説】はむぶ 第3波「こもん!」

前回までのあらすじ

 2つの大河が全長70kmにもわたる広大な砂丘と日本有数の平野を作り、日本海へ注ぎ込む日本海側最大の港町「柳都(りゅうと)」市の郊外に少子化の影響で5つの高校を統合再編し誕生し5年が経過した「柳都総合学園」。
 休止していた無線部を新入生だった女池智子と青山聡美と共に再建したものの、1年間は彼女達しか部員のいない状態であった。
 彼女たちが2年生になった年の入学式の日に、日本の第1級アマチュア無線技士に相当する「アメリカFCCエキストラクラス」のライセンスを持つ新津智子が入部。
 そして、通称「はむぶ」を「食べるハム」と勘違いした親松はるかが入部する。



 その後、部員は増えることがなく、4名体制で行くこととなったが、はるかと弘子が入部し3日後の無線部室。
 弘子は自宅で余ったという高級洋菓子「プラリーヌ」を切り分けながら、智子に聞いた。
 「無線部(うち)が昨年度、智子さんと聡美さんで暫定的に部として復活させたと伺ったのですが、顧問の先生って私達が入ってからいらっしゃったことがないんですが・・・。」
 「あ、、、あのね。うちの部の顧問は・・・そうそう昨年末から入院しているのよ。」
智子はあたふたしながら答えた。その挙動に不審点を覚えた弘子は続けて
 「でも、どんな人か教えていただかないと、退院後お会いした時にパーソナルな部分をわかっていれば、スムーズにコミュニケーションが取れるかと思うんですが・・・。」
と問た。
 「そうだね。弘子ちゃん。わたしも顧問の先生がどんな人なのか知りたいし・・・。」
はるかも同調した。
 「とも。和納先生のこと弘子やはるかに話してあげなよ。減るもんじゃないし・・・なんだったらあたしが話そうか?」
 聡美はニヤつきながら智子に話すように言った・・・その顔に智子はムッとしながらも仕方ないと言った感じで話し始めた。

 「うちの学校は、柳都南と柳都農業、柳都商業、柳都高校の芸術科。そして、柳都工業の合併により出来たということは知っているよね。」
 「ええ、少子化対策と柳都市の中心部再開発行うために、広大な敷地を持っていた柳都農業に全機能を移し、隣接地で放置されていた農耕地を購入したと聞いていますわ。」 
 切り分けたプラリーヌを智子たちの前に出しながら弘子は答えた。
 「その中で柳都工業はいわゆる不良の集まる学校で、15年前の再編が検討され始めた頃は、合併には慎重な意見があり、単純に廃校という話があったらしい。」
 「でも、それが合併して10年前にうちの学校が出来たんですよね。」
 「うん。うちの部の顧問の和納先生は、その頃柳都工業の生徒だったんだ。」
 「ということは、和納先生は元不良なんですか?」
 「そうじゃないんだ、むしろ『カミソリの和納』と言われるくらいの切れ者で、1年生の時にうちの部の前身となる無線部で伝説となった電波方向探査装置の製作をして、日本アマチュア無線連盟の自作機器コンクールで最優秀賞を取り、柳都工業の名前を全国的に知らしめたんだ。また、1年生で生徒会会長に立候補して当選。異例とも言うべき2年間に渡る長期政権の間に校内改革をして、2年間のうちに柳都工業の不良学校という汚名を濯ぎ、柳都工業初の東京大学入学という偉業を成し遂げたことで、柳都工業は柳都総合学園の一部として存続することになったんだ。」
 「そして、そのカミソリ和納と言われた人が、先生としてこの学校に戻ってきた・・・ということですか・・・。」
 「ただ、なぁ・・・。切れ者過ぎたんだろうな・・・。」
 「それで病気になった・・・。」
はるかが横から口を出したが、聡美は
 「・・・まぁ、病気・・・なのかな・・・。」
と、意味深に答えた。

 翌日、教務部前の廊下。
 一般的には教職員室と呼ばれるのだが、柳都総合学園の中でも歴史の古い柳都商業高校での呼び方が使われていた。
 はるかはクラス全員分の課題を集めて、英語科の白根に提出するために教務部へ向かうところだった。
 前方から白衣をまとったモデルのような長身の綺麗な女性が歩いてくるが見えた。

 「あら、あなた1年生ね。どうかしたのかしら?」
長身のその女がハスキーな声ではるかに問た。
 「あ、あの。こ、これを英語科の白根せ、先生に」
 「あぁ、白根先生ね。・・・ごめんね。さっき、嘉山先生と修学旅行の打ち合わせに行っちゃったのよ・・・。わたしが預かって白根先生に渡しておくからね。」
と言うと、はるかから課題を受け取った。
 「あ、あの・・・先生のお名前は・・・。」
 「あぁ、わたしは電気・電子コースの和納だよ。」
 「え・・・あの無線部顧問の和納先生ですか・・・。実は私も無線部員なんです。」
 「へぇ・・・そうなんだ。名前は?」
やさしい口調ではるかに問うた。
 「親松です。親松はるかです。」
 「はるかちゃんか・・・よろしくね。」
そう言うと教務部室内へ和納は入っていった。

 その日の放課後。「無線部室」
 「智子さん智子さん!今日教務部に課題を届けに行ったら、和納先生にお会いしましたよ!」
はるかは無邪気にはしゃぎながら話した。
 「え・・・学校に来てるのか・・・和納先生・・・。変な感じしなかったか?」
智子は慌てた口調ではるかに聞いた。
 「え?変ってなにが?すごく長身でスラっとしていて女優の米倉涼子さんみたいじゃないですか!」
はるかは無邪気に答えた。
 「いや・・・あれは・・・だな。」
智子は戸惑いながらも説明をしようとしたところ部室のドアが開いた。
 「イエーイ!ともと、さとみん元気にしてたー!今日からこの部の顧問に復帰するよ!あ、はるかちゃん!」
和納がハイテンションで入ってきた。頭を抱えながらも智子は叫んだ。
 「あぁぁっ!もう、うっさい!なんなのよ。その格好は!」
 「え?似合ってない?どう、はるかちゃん、あたし変な格好?」
ショボーンとしながら和納ははるかに聞いた。
 「え。あたしは良いと思うけど、弘子ちゃんはどう思う。」
 「うーん・・・そうね。トップスは少し暗めの方がいいかなと思うけど・・・」
弘子は冷静にコーディネートし始めたが、智子はそれを遮り叫んだ。
 「あのね・・・和納先生。私が言ってるのはそういうことじゃないの!なんでそんなに女性装が綺麗なんですか!男なのに!」
 弘子とはるかは
 「へー。和納先生って男の人だったんですね・・・・・・・うそ!こんなに綺麗なのに男の人なんですか!」
 思いっきり驚いたのだった。
 「そうなんよ。弘子ちゃんとはるかちゃんには黙ってたって、いつかバレるって言ったんだけど・・・。ともが黙ってろって。」
 聡美はつづけて
 「和納先生は確かに技術力はすごくて、切れ者とか言われて伝説になっているけど・・・」
 和納は聡美の言葉を遮って話し始めた。
 「伝説とか切れ者とか・・・わたし自身はそんなことを目指していたわけじゃない。でも、結果的にそうなったんだ。
 だけど、大学入学直後からこのままで良いのか・・・と、なんとなく過ごしている時に学祭で女装子コンテストがあってギャグで出場したら、最下位だったのよ・・・。なんか悔しくて、色々と頑張ったらこうなったのよ・・・。」
と、笑いながら話し始めた。
 「しかし、なぜそうなった・・・」
智子は呆れながら問うた。
 「だって!最下位よ!さ・い・か・い!悔しいじゃない!」
 「まぁ、先生。落ち着いてください。しかし・・・よく柳都県の教育委員会が採用してくれましたねぇ・・・。」
頭から湯気を吹き立つ感じで叫ぶ和納を尻目に、弘子はなだめつつ聞いた。
 「まぁ・・・わたしも先生になるつもりはなかったんだけど、当時の教育長が伯父さんで・・・引き戻されちゃった・・・て感じなんだけど、嫌だったからその際にわたしが出した条件が『女装』だったのよ。そしたら、伯父も『女教師じゃなくて、女装教師か・・・面白い!』とか言い出してね・・・まぁ、とにかく、これからみんなよろしくね。」

(次回は5月10日公開予定です)

【小説】はむぶ! 第2波「食べられないよ」

前回のあらすじ

 2つの大河が全長70kmにもわたる広大な砂丘と日本有数の平野を作り、日本海へ注ぎ込む日本海側最大の港町「柳都(りゅうと)」市の郊外に少子化の影響で5つの高校を統合再編し誕生し5年が経過した「柳都総合学園」。
 この高校の無線部は統合時の混乱と天災により休部状態となっていた。
 この部を新入生だった女池智子と青山聡美と共に再建したものの、1年間は彼女達しか部員のいない状態であった。
 彼女たちが2年生になった年の入学式の日に、日本の第1級アマチュア無線技士に相当する「アメリカFCCエキストラクラス」のライセンスを持つ新津智子が入部希望を出し、部員は3名となった・・・。


第2波「食べられないよ」

 その日の13時。1年B組教室。
 入学式やオリエンテーションなどがおわり、クラスには緊張感から解放され帰るだけとなっていた。
 そんな中、親松はるかは窓側の席から校庭とその先にある柳都総合学園前駅をボーッと眺めて  

 「紗友里ちゃん・・・今日来なかったな・・・。」と呟いた。

 どちらかといえば、彼女はやりたいことがあってこの学校に入った訳ではなかった。
 幼なじみで、アイドルの卵である松崎紗友里が芸能コースがあるこの学校に入ると言い、それに付いてきたのだが、アイドルでも何でもない何もかもが普通の女子が芸能コースに入れるわけでもなく、比較的定員に余裕のあった人文コースに滑り込んだ。
 しかし、基本学習クラスが紗友里と同じになったものの、入学直前にローカルアイドル「inecco」のSayuとしてデビューしてしまったため入学式から欠席してしまったのだった。
 今まで一緒だった紗友里がローカルアイドルとはいえ別の世界に旅立ち、親友と言える友達が紗友里だけ、そしてやりたいことの見つからないはるかは一抹の不安感を覚えたのだった。

 「・・・もう帰ろう・・・。」
 
 しかし、親しい紗友里も毎日学校にいるわけではない、特に親しい友人もいるわけではない・・・これから3年もこんな日が続くのだろうか・・・暗澹たるものを感じた。

 昇降口へ向かう途中の渡り廊下に差し掛かった。

 「キャッっっ」

 突如として突風が吹き、スカートの裾がめくれ上がったため、はるかはスカートを押さえたのだが、顔に飛んできた紙切れが張り付いた。

 「もぉ・・なんなのよ!」

はるかは憤りながらその紙切れを取り外し、ゴミ箱に捨てようとした・・・しかし、紙には

 『ハム部部員募集中!初心者大歓迎!』

と書かれていた。

 『ハム部・・・農業系コースもあるからハムでも作るクラブがあるのかしら?』

はるかは率直にそう思った。

 『どーせ、なにもやりたいこともないし、暇だし、ちょっと行ってみようかな・・・。』

紙にある場所へ足を向けた。

 その部室ははるかの教室のある校舎棟の最上階4階の角部屋にあった。
 『こんな校舎最上階でハムなんか作っているのかしら・・・?あ、そうか!燻製にするんだよね確か・・・。でも、それにしては煙くないな・・・』
と、はるかは思っていた。
 そんな時、ドアが開き、入学式で美しさで一際目立っていた少女が出てきた。弘子だった。

 「あれ?あなたもしかして・・・入部希望の人・・・?」
 はるかは戸惑っていた・・・なぜこんな美人の人がなぜハムを作る部活にいるの?と。
 「ささ、どうぞ入って・・・」
 弘子は構わずはるかを部室へ誘った。部室内に入ったはるかはパソコンやなんか色々な機械があり、とてもハムを作っているとは思えない様相に驚いていた。

 はるかに気がついた智子が弘子に話しかけた。
 「新津さん、こちらの人は?お友達?」
 「部室前にいらっしゃったのでお連れしました。えっと・・・お名前は・・・」
 「初めまして、1年B組人文コースの親松はるかです。」
と、戸惑いながらもはるかは答えた。

 「わたしは部長の女池智子。2年A組専攻は海外コミュニケーションコースだよ。そして、奥でヘッドホンしてハンダゴテをいじっているのが副部長の2年C組通信技術コース専攻の青山聡美だよ。」
 「そして、私が1年A組の商業コース専攻の新津弘子です。よろしくね。」

 はるかは会釈したあと、部室内を改めて見回してこういった。

 「ハム部って色々な機械があるんですね。」
 「ああ、ほとんどが聡美が修理したりして調達したんだよ」

智子が胸を沿って威張ってみた。

 「で、この機械でどうやってハムを作るんですか?」
はるかは悪びれず素で言った。これには智子をはじめとして部室にいる3人がすっ転んだ。

 「ちょ・・・・ちょっとまって(笑)。うちの部のことを食べる方のハムを作る部活だと(笑)」
智子はお腹を抑えて大笑いしながら言った。はるかはなぜ笑われているのかわからなかった。
 「あははっ、ごめんごめん。気を悪くしないでね。ここはアマチュア無線のクラブなんだ・・・。Amateurの英語スペルの頭二文字のAMだけだと発音しづらいからHを一番前につけてHAMと略すようになったという説が有力なんだ・・・。ちょっと、どんな風な事をやるか見てて。」

と、智子は目の前にある無線機の操作ダイヤルを回した。
 そこから聞こえてくる声は物凄く甲高い声だな・・・と、はるかは思った。智子はマイクを握って話しだした。

「JS8ZAR JS8ZAR こちらはJK0YDC。ジュリエットキロゼロヤンキーデルタチャーリー 入感ありますか?どうぞ。」
『JK0YDC JK0YDC こちらはJS8ZAR札幌中央学園アマチュア無線クラブオペレータは南です。みかさのみ、なごやのな、みかさのみで、南です。こんにちわ、そちらのシグナルは59で札幌市中央区に入感しています。お返しいたします。どうぞ。』
「JS8ZARこちらはJK0YDC 柳都総合学園無線クラブ、オペレータは女池です。めいじのめ、いろはのい、けしきのけで女池です。そちらのシグナル同じく59で柳都市東区に入感しております。カードはアマチュア無線連盟経由でお送りいたします。JS8ZAR札幌中央学園アマチュア無線クラブ南さま。こちらはJK0YDC柳都総合学園無線クラブ女池です。どうぞ。」
『JK0YDC女池さま。こちらはJS8ZAR南です。カードの件了解しました。こちらからも日本アマチュア無線連盟へ送りますのでよろしくお願いします。また、つながりましたらおねがいします。エイティエイト。』
「JS8ZAR南さま。こちらはJK0YDC女池でした。お稼ぎください。セブンティースリー。」

一連の交信が終わると、智子ははるかの方に向いて、話しかけた。

「てな具合で、今アマチュア無線で北海道札幌市にある札幌中央学園のアマチュア無線クラブと交信したんだ。そして、交信証を交換しましょうねって約束をした・・・ざっくり言うとそんな感じかな。」

「へー。そうなんですね。最後のセブンティースリーとかエイティエイトってなんですか?」

「あ、どちらも『さようなら』って言う意味で、セブンティースリーが男性に向けて。エイティエイトが女性向けなんだ。」

「なるほど・・・。でも、今なら携帯電話もあるし、そんなに必要性はないですよね。」

「そう。いま携帯とかLINEとかあるけど、自分で電話番号とか教えないと知らない人と話はできないし、携帯電話の電波が来てなかったら話せないわけじゃない。それに、Skypeとかの会議通話なんかもあるけど、一人が発信した情報を多人数に一気に伝えることもできる。そして、アマチュア無線ならその気になってタイミングが合えば、南極の昭和基地にいる隊員さんにも、国際宇宙ステーションにいる宇宙飛行士とも話ができるんだよ。」

「え!そんなところまで話すことができるんですか?わたしも話すことできるんですか?」

はるかはあまりに知らなすぎてショックを受けた。

「うーん・・・この無線を使うためには国家試験を受けて無線従事者免許を取らないとダメなんだよ・・・。」
と、聡美が説明をした。

「え?国家試験を受けないとダメなんですか?なんか難しそう・・・」
はるかはめげそうになった・・・。そんな姿を見ていた智子がフォローに入った。

「大丈夫。試験パターンが決まっているから、一番下位の資格なら小学生でも受かる内容だよ。例えば、工学の問題で『電気を通すのは? ガラス、プラスチック、鉄、紙』なんて問題もあるからね。」

「あ、その位ならわかる!」

「ここにいる3人は資格を持っているし、もし入部するなら国家試験受験までサポートするよ。」
智子は畳み掛けた・・・。すこし、はるかは迷った・・・けど、なんか面白そうとも感じていた。少しの沈黙の後、はるかは入部を決意したことを伝えた。

 こうして、柳都総合学園無線部は4名で再始動した。

(次回は4月10日公開です)

【小説】はむぶ! 第1波「二年生二人・・・」

 2つの大河が全長70kmにもわたる広大な砂丘と日本有数の平野を作り、日本海へ注ぎ込む。
 その大河の河口付近にできた日本海側最大の港町「柳都(りゅうと)」。
 その昔は大坂から下関や敦賀などを経て運航された交易船の寄港地として栄え、柳の木が多かったことから『柳の都』と名付けられたこの街は、明治維新の際に海外へ開かれたが海外交易の中心は横浜に移り、第二次世界大戦後に中田丸栄という政治家が現れるまでは裏日本と呼ばれ社会資本の投資が遅れていたため、日本海側最大都市となったのはこの数十年の話である。
 この中心ターミナルである柳都駅から電車で2駅目にあり、近いようで遠く東北からの大河のほとりの穀倉地帯にあり、少子化の影響で5つの高校を統合再編し誕生し5年が経過した「柳都総合学園」。
 その無線部・・・通称「ハム部」の部員と、その周囲の人々の物語である。


第1波「二年生二人・・・」

 4月、雪国である柳都では入学式の頃にようやくサクラの花がその若さを誇るかのように咲き乱れ、時折吹く風にその花を散らしていた。
 
 柳都総合学園前駅には真新しい制服に見を包んだ新入生が校舎に向け楽しそうに歩いていた。

 それを4階の無線部の部室の窓から見ていた女池智子は、栗毛の髪を風に揺らしながらつぶやいた・・・。

「今年こそ・・・部員を獲得しなくては」

 彼女の所属する無線部は、学校統合5校のうち柳都工業高校と柳都南高校という2校にあった無線部を統合して設立されたもので、柳都工業高校無線部は自力で電波方向探査装置を作り上げるなど、日本アマチュア無線連盟の無線機器製作コンテストでは入選者が出る県下一の技術力に定評のある高校無線部であった。
 また、柳都南高校は外国語学科があり、日本語だけではなく、英語、中国語、韓国語、ロシア語に堪能な生徒が多くいたことから、アマチュア無線交信コンテストでは常に上位に食い込むという名門だった。

 しかし、工学に関する技術力と通信の技術力の高い両校の無線部を統合すると普通はそれぞれの強みが出るはずなのだが、少子化から来る高校の統合という大人の事情で不本意にも統合することとなり、運営方針が定まらなかったところに、落雷ですべての機材が壊れ統合後すぐに休部。
 昨年、旧南高系の海外コミュニケーションコースに入学した智子と、旧工業系の通信技術コースに入学した幼なじみの青山聡美で再開したが、部員は彼女たち二人しかおらず、今月中に部員をあと2名増やすことが部を存続させるための必須条件となっていた。

「聡美、なんか新入部員獲得のアイディアない・・・」

と、智子は尋ねたが聡美から返事がなく、振り返ると聡美がヘッドホンをしながら、工作机でハンダゴテを握って真剣に何か作っていた。
 智子はムッとしながら、工作机に近づきヘッドホンを取り外し、聡美の耳元で大声で呼びかけた。

 聡美は驚き大きく飛び跳ねたながら
「な、なによ。とも!びっくりするじゃない!」
と、叫んだ。

「聡美・・・あんたねぇ、あした新入生への部活説明をしなきゃならないのに何作ってんのよ?」

「あ、これ?放送部から小型の放送中継システムを作ってって言われたから、校内無線LANにぶら下がってやったほうが法律的に問題ないから、Grape piをベースに作ってやろうと思ってね。」

と悪びれず聡美は答えた。智子は

「うちの部の存続がかかっている時に他の部活の手伝いなんかやってる場合じゃないでしょ!」

とブチ切れたが、聡美はにやけながら言った

「でもさ、うちの部が学校から支給されている1万円だけで運営できるわけ無いじゃん。誰のおかげだと思う?」

 正直、智子は痛いところを突かれたと思った。
 無線局の免許申請手数料から無線機やアンテナの購入資金などで中古機を活用しても最低でも20万円は必要だった。
 それを近隣のアマチュア無線家から壊れた無線機などをもらってきては修理したりして、無線機を調達したり、放送部など他のクラブからオーダーを受けて開発や修理の請負を行って、資金調達を行うなどしていたのは、天才的な技術オタクの聡美だからできた芸当だった。

「ま、ともがやりやすいように技術的にバックアップするのがあたしの無線部での仕事。実務は部長のともに任せるよ。」

と、にやけながら言った。

 そんな時、部室のドアが開いた。

 「あの・・・無線部ってこちらですか?」

気品のある長身で金色の長髪が美しい色白の女の子が智子たちに話しかけてきた。

 「え・・・あ、ここは放送部ではなくて無線部ですよ?」

思わず聡美はそう答えた。

 「えぇ、ですから無線部ですよね・・・?」

困惑しながら入口付近でその少女は智子と聡美に再度聞いた。

 「あ・・・」

聡美はやってしまった・・・という顔で智子に視線を向けた。

 「あ・・・ひょっとして入部希望の方ですか?」

智子はドギマギしながら聞き返した。

 「ええ、わたくし、1年A組商業コースの新津弘子って言います。」
 「あ、わたしは部長の2年の女池智子。こっちが副部長で同じく2年の青山聡美です。早速だけど、新津さんこのクラブでは無線従事者免許がないと無線局で通信できないけど、何か免許をもっているかな?」

と、再度弘子に尋ねた。弘子は

 「大した資格ではないんですけど・・・」

と、もじもじしながら何かをかばんから取り出して智子と聡美に見せた。

 「え・・・エキストラ・・・FCC(米国連邦通信委員会)の!」

智子は素っ頓狂な声を上げて驚いた。

 「え・・・これではダメですか?」

弘子は戸惑いながら聞き返した。智子たちは顔を横に振りながら答えた。
 「いえいえ・・・そんなことないよ!第一級アマチュア無線技士同等資格だもの・・・新津さんが入部してくれればすごくありがたいよ!」

智子たちは素直に喜んだ!


(次回は3月10日公開予定です。)

『はむぶ』執筆中

昨年9月から小説・・・というにはおこがましいけど、執筆中。

今日はさわりだけ。

日本海側最大の政令都市『柳都(りゅうと)』市の東にある公立単位制高校『柳都総合学園』の無線部(通称『ハム部』)の部員たちの日常を描いてます。

智子は同じ中学出身の技術オタク聡美と、入学した際かつて名門と言われた柳都総合学園無線部を復活させるのだが、その年は部員は彼女たちだけであった。
しかし、翌年には柳都市有数の財閥令嬢の弘子、そして天然の入っているはるかが入部して、本格的に始動するのだが・・・。

月1ペースで公開できたら良いな・・・とは思っています。

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