忘れられない唇 (キャラ文庫)忘れられない唇 (キャラ文庫)
著者:ふゆの仁子
徳間書店(2010-08-27)
おすすめ度:3.0
販売元:Amazon.co.jp
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ふゆの仁子/著 新藤まゆり/画

三角関係ものです。
受けに対して、10年ぶりに帰って来た強引でテクが凄い肉食系男と10年付き合った優しい尽くしてくれる草食系男が争奪戦を繰り広げます。

受けが今の彼に対しては攻め、元カレに対しては受けという、ちょっとややこしいスタンスですが、そこはそれ、男の矜持というのが絡んでいるらしいです。まあ、同性ものは、どちらにでも転べるリバがあって便利(爆)ですね。

さて、こういう場合、男女の恋愛モノでBLでも、肉食系男子が勝つと決まってます。優しい草食系男子は何故かいい人で終ってしまうんですよね。

まあ、女性が肉食系を選ぶのは、強い男の遺伝子が欲しいという本能だとしましょう。

同性同士でも、結局、肉食系を選んでしまうのは、何故(・_・;?
強い男と一緒の方が、生き延びる可能性が高いから?やっぱ、生命力の高さに惹かれるから?

このお話の場合、受けは肉食系寄りの草食系男だと思います。だから、肉食系男に惹かれたのかな?自分も完全な肉食系男子だったら、可愛い草食系恋人を捨てたりせんだろう。

どうも、受けが正しい選択をしたのかどうか、読み終わった後まで悩んでしまったお話でした。

私?
私なら、面倒なのや暑苦しいのが嫌いだし、平和が好きなので、草食系タイプを選びますよ。だって、疲れたくないもん。そういう私は完全な草食系腐女子ですね。年とともに、脂ぎったものが消化不良に・・・(爆)。
ストーリー:忘れたいのに忘れられない、俺の人生を変えてしまった男—。大学時代、短くも燃え尽くした恋の記憶を忘れられずにいた商社マンの小椋。けれどある日、新事業の顔合わせで、その恋の相手・曽根と再会!!十年前、突然姿を消したのに、なぜ俺の前に現れたのか?真意が見えないまま、再び曽根の昏い情事に絡めとられ…!?断ち切れなかった十年越しの執着に、捕まったら次は逃げられない—。

小椋一寿は商社の輸入食品部で働くサラリーマン。八方美人で周りに気を使い、人当たりもよくて、そこそこ上手くやっていました。新しいプロジェクトの立ち上がりに助っ人として提携会社から優秀なスタッフがやってくるまでは・・・。

そのスタッフとは、10年前、大学時代に付き合って体の関係まで持ちながら別れた曽根宣雄です。小椋に男同士の濃厚なHを教え込み、そのまま小椋に黙って留学してしまった男。

10年経っても、曽根は強烈な色気を放つフェロモン系の男でした。顔合わせで初対面のフリをする曽根に小椋も負けずに初対面のフリを通します。しかし、曽根は小椋を忘れてはいませんでした。いや、むしろ今度こそ絡め取ろうと、いきなりキスを仕掛けてきます。

忘れたはずなのに・・・。小椋はその熱情にあがらいきれず、流されてしまいます。体の相性はやっぱり今でも最高でした。身体を重ね、その情熱に溺れた小椋は改めて思います。曽根は自分にとって誰も代わることの出来ない存在なのだと。

さて、二人の大学時代の回想シーンが入ります。
軟派系の小椋とカッコがいいのに身持ちの固い曽根は正反対の性格でしたが、友達が間をとりもったことで急速に親しくなっていきます。そして、酒の勢いもあり、体の関係を持つようになります。ツボを知り尽くした男同士のHの快楽に二人は溺れるように夢中になります。

しかし、そこに肝心な言葉はなかったのですね。若さゆえの快楽への暴走

ふと、小椋は心配になります。曽根に抱かれる自分はゲイなのか?こんなことやっていていいのか?

まあ、現実に目が覚めたというやつですね。小椋は曽根と距離を置くようになり、自分はゲイだと認めるのがイヤで、無理矢理彼女を作り、曽根には「もう会わない」と告げます。そして夏休みが明けてみると、曽根は留学を決めていていなくなってしまったのです。

こりゃ、逃げ出したとしいうことに関しては、どちらもどちらですね。若いときにはありがちな身体だけで感情がついてなかったというパターンです。二人には愛を育てるという忍耐や思いやりがありませんでした。

さて、現在の小椋には年下の恋人がいます。友人の紹介で、曽根と別れて付き合いだして、もう10年。高校の後輩で、当時から小椋に憧れていたという山科滋です。デザイナーで茶髪の長髪を一つに結び、黒縁眼鏡をかけた山科は優しくてマメな男。小椋に忘れられない相手がいると知りながら、それでもいいと言う様な健気な性格です。

最初に、山科から「小椋さん、男役でしょ?」と言われて、山科を抱き、その一途さに絆されたように付き合いだしますが、小椋の気持ちはlikeであってもloveではないんですよね。

それを知っていても惚れた弱みでとことん尽くしてくれる山科の側に居ることの気楽さを都合よく利用しているだけの小椋。

それが、曽根に出会ったことで、より温度の高いほうに引かれて行ったのも無理からぬことだとは思います。

でも、山科とは10年ですよ!
10年も自然体で付き合える相手と巡り合えるというのは、とても奇跡的なことだと思うのです。

そして、山科と曽根は小椋を巡って直接対決することになります。しかし、曽根には小椋と別れた後、自暴自棄になって遊び相手にサイアクなことをしていた時期がありました。山科はそんな曽根では小椋を幸せには出来ないと言い切ります。

「あんたが愛してくれなくても愛している。絶対に幸せにするから、今までみたいに側にいたい」

大人しいと思っていた山科からの熱い想い。
「あなたが他の人を好きでも・・・」

出会ってから培ってきた二人の気持ち。空気のように穏やかで、これからも続いていく山科との優しい時間。山科の愛は将来を見据えた愛です。

小椋は思わず山科の手を取ります。そして、曽根には別れを告げるのです。焦がれるような不安定な恋よりも、穏やかな安定を取ったということです。

おや〜!草食系男子の勝ち!と思いきや、曽根は傷心で倒れるという反則ワザを繰り出します。いや、わざとじゃないですが、結果的にはそうですよね。

強気で傲慢な男が、自分への愛に苦しんで泣き笑いの告白。出会った時から好きだった。そして、小椋に溺れていく自分の激情が怖くて逃げ出したのだと。

燃えるような恋か穏やかな愛情か。

ここで小椋の恋の天秤は、山科から曽根へとガタンと傾きます。元々、曽根に強く惹かれていた小椋。山科に対する疚しい気持ちは曽根に対する嵐のように荒れ狂う思いの前に吹き飛んでしまうのです。

結局、一番ズルイのは小椋ですよね。山科の自分に対する想いに甘えて10年間尽くさせ、曽根も自分を愛していると知るとさっさと自分の感情の赴くままにそちらに乗り換えるのですから。

10年連れ添った『糟糠の妻』の山科。その10年間、心は他の男にあると知りつつ、いつか自分を愛してくれると信じて尽くしに尽くした山科の苦しさや哀しみを、よくも一言で切り捨てたものです

いや、一度山科を選んだ時には、曽根を不誠実な男として、やはり一言で切り捨てた小椋です。結局は、自分の気持ちしか見えていない男でしょう。

山科と曽根に言いたいです。こんな男を本当に好きなのかって。いや、こういう風船のようにふわふわと飛んでいってしまう相手だからこそ、束縛して手の内に囲いたくなるのかも。

傍から見ると嫌なやつなのに、モテモテという小悪魔タイプですなあ。己に酔っている姿がどうにも好きになれない受け(山科に対しては攻めですが)です。

いつか曽根との間に吹き荒れる強すぎる感情の嵐に疲れ果てた小椋が泣きながら山科に縋ってくる日が来ますように!と思ってしまった私でした。