スクランブルメソッド
谷崎 泉
幻冬舎コミックス
2017-03-01

谷崎 泉/著 笠井 あゆみ/画

つくづく谷崎泉さんは長編向きな作家さんだなあと思います。

えっと広げられた風呂敷が広げっ放しなんですけど〜(T_T)
頭の中の?マークも点灯したままなんですけど〜(T_T)

でもやっぱりすっごく面白かったです。
昔から谷崎さんのファンですが作風は変わらないのに内容はいつも斜め上行く斬新な切り口で飽きさせません。

今回も愛が重い上に思い込みも重い攻めが暴走してくれました。
そしてそんな重い愛にもめげないその斜め上行く不思議ちゃん受け。

こういうお話、私のドツボです。
あ〜、楽しかったvv
若くして莫大な資産を築いた人生の成功者・音喜多だが、かつて想い人を亡くして以来、本気の恋情とは無縁に生きてきた 。そんなある日、音喜多は死別した相手と酷似した顔立ちの青年と出会う。その青年・久嶋は、華奢で可憐な外見とは裏腹 に、二十五歳にして博士号を三つ持ち、元FBIのアドバイザーという経歴を持つ天才だった。彼に強く惹かれた音喜多は、 側に居たい一心で行動を共にするが、天才ゆえ人の心が分からないという彼に、身体だけの関係を提案され―。

不動産で成功した音喜多には初恋の忘れられない女性がいます。
年上で唯一無二の存在の彼女との将来のために経済的に成功する計画まで立てていた青春時代。

しかし、彼女の死でその想いは行き場を失い、音喜多は仕事に情熱を傾け資産は増え寄ってくる人間は増えたものの誰にも夢中になれず三十代半ばとなってしまいます。

ある日美術館を訪れた音喜多の前にその初恋の女性瓜二つの青年が現れます。

彼をもっと見ていたい!

そんな想いが音喜多を不審なストーカーのような行動を取らせます。
青年に声を掛けたもののますます初恋の女性に似ている彼に言葉を失い逃げられてしまうのですが、音喜多は諦めきれずこっそり後を付けてしまうのです。

高級スーツに身を包み金のかかった目立つ容姿をしている音喜多がこそこそと青年の後を付けて言葉をかけるタイミングを計っている姿はかなりヘンタイさんですね(爆)

しかし、驚くことにその青年は音喜多に後を付けられていることを見破っていたのです。

久嶋と名乗った青年は二十代半ばにして三つの博士号を持ちアメリカ国籍で客員教授として日本最高峰の大学の招かれているほどの天才でした。

極度の方向音痴で浮世離れした久嶋がそんな天才博士だとはすぐには信じられない音喜多ですが、更に音喜多を驚愕させたのが久嶋が住まいにまるでこだわりを持たないということです。

音喜多にとってどんな住まいにどういう風に住むかというのはとても大事なこと。それが高じて不動産を経営しているくらいなのです。

つまり音喜多と久嶋には共通項がまるでないのです。

それでもどうしても久嶋と近づきたい音喜多。

そうして久嶋に強引に付きまとっているうちにいつしか音喜多は久嶋自身に興味を惹かれて行くようになります。

久嶋はすごく不思議な掴みどころのない人物なんですよね。

久嶋は音喜多が自分の顔が好きだった初恋の女性に似ているから側にいて見ていたいという感情もバイだということも淡々と理解を示します。

それだけ頭がいいのに実生活では衣食住にまるで興味がないし甘いものばかり偏食するし道はどんなに丁寧に教えられても迷って目的地に辿り着けません。

更にある事件に巻き込まれたことで音喜多は久嶋がアメリカではFBIの特別犯罪捜査チームにアドバイザとして参加していたと聞いて驚愕します。

久嶋、見た目とのギャップあり過ぎ!

そのギャップに音喜多は目が離せなくなって行きます。

そして久嶋から打ち明けられた秘密。

「僕は人の気持ちがよく分からないのです」

だから人と恋愛関係になることを避けていると言う久嶋。

「でも気持ちは理解できませんがセ★ック☆スはしてもいいと思ってます」

どういう気持で久嶋がそう言ったか音喜多には全く理解できません。
でも理由はどうであれそんな美味しい申し出を断る理由もありません。

しかし、久嶋からの条件として出された「何も聞かないでください」という言葉が後々ずっと音喜多を苦しめることになります。

久嶋は抱かれる時に「うしろから」という条件も付けてきます。

音喜多には尋ねたいことが満載です。

久嶋の腕の細い傷跡。
背中の致命傷級の大きな銃創。
腰の中央には三本の縦線の焼き印の跡。
抱かれる時の怯えたような苦悶の表情とそれとは裏腹に受け入れることに慣れたような身体。

久嶋にとって抱かれるということは何かを試しているのかもしれない。
そう思うのですが久嶋と交わした「何も聞かない」という約束が久嶋の過去を聞きたいという音喜多の気持ちにブレーキをかけてしまいます。

そんな時、音喜多は知り合いから久嶋がかつて連続殺人犯に一時期拉致監禁されていたという話を聞き、久嶋の身体に残る傷跡との関係に気が付いてぞっとします。

つまり・・・久嶋は・・・。

さて、お話はこの久嶋の秘密は秘密なままなんですよね。
久嶋の秘密は元より、音喜多の初恋の女性が亡くなった経緯も謎のままです。

何もかも謎のまま、音喜多と久嶋は身近で起こる殺人事件に巻き込まれ、久嶋の頭脳と音喜多の金と見た目に物言わせた行動力で事件を解決していくという謎解きの方にストーリーが転がって行きます。

もう天才久嶋の人物像が風変わり過ぎてツボすぎるし、好きな久嶋限定で愛が暴走するストーカーのような愛が重い音喜多もツボでした。

二人の周りに人間味の溢れた人たちが大勢登場するのも谷崎さんの作品ならではですね。

頭の中に「で?」というハテナマークを抱えたままお話はサクサクと痛快に進んで行き終わってしまいました。

これはもう続編とかあるんですよねっ?
もしかして続編は同人誌でとかいうパターンですか?

広けっ放しの風呂敷に蹴躓きそうになりそうな読後感でした。
それでも面白かった!と思わせてくれるのがさすが谷崎さんなんですけどね。

続編、プリーズ!!