英田サキさんの非BLの本です。
一般書なので著者名も『アイダサキ』とカタカナ表記になってます。

英田サキさんと聞いただけで脳が腐に切り替わる私としては、違和感なく非BLな英田サキさんの小説が読めるかどうか心配でしたが、全く問題ありませんでした。

お話は一人の刑事が新しい部署で新しく組んだ相手の特異な能力とかなり難ありな性格に翻弄されながら事件を追いかけて行くという、事件がメインでそこに恋愛要素(男×男、男×女)は出てきません。

事件の謎解きに集中して読めました。

正直、サスペンスでお話が恋愛に逸れて行くと、『そこはいいから、お話進めて!』と心の中で叫んでしまうタイプの私は非常に読みやすかったです。

あと被害者の詳しい死体描写が出てきますので、そういうのが苦手と言う方は注意です。
警視庁特異犯罪分析班に異動した神尾文孝は、協調性ゼロだが優秀なプロファイラー・羽吹允とコンビを組む。羽吹には壮 絶な過去があり、経験したものすべてを忘れることができない超記憶症候群を発症していた。配属初日に発生した事件の死 体は、銀色の繭に包まれた美しいともいえるもので、神尾は犯人の異常性を感じる。羽吹は「これは始まりだ」と第二、第 三の事件を予見する。

お話の主人公は警視庁特異犯罪分析班情報操作係に異動した神尾文孝。

情報操作係とは現場で犯罪情報の集約と分析を担当し捜査支援を行う部署です。

神尾は熱血漢で正義感が強く、両親を亡くしたあとは学生の妹と二人暮らし。
考え方も生き方も至極正常な人間です。

お話はこの神尾の目を通して追っていくことになります。

さて、異動日早々、事件現場に急行する神尾の車には組むことになった警部補の羽吹も乗っています。

この羽吹というのが非常に変わった男です。
恰好はパーカーにチノパン、ワークブーツという学生のような姿。車の後ろでイヤホンで音楽を聴きながら飴をガリガリ噛み砕く。
しかも全く協調性がなく、人の話も聞かず、空気も読めないという組む相手としては最悪な相手なのです。

しかし、羽吹にはその欠点を補って余りある特異能力がありました。

それは超記憶症候群。
サイメシア。

羽吹は何もかもを記憶してしまい、しかもそれを忘れることが出来ないのです。

忘却という自己防衛が出来ない悲劇。
それが羽吹が他人と高い壁を作っている原因なのです。

忘れることが出来ないというのはどんなものなのでしょうね。
人は忘れることが出来るから立ち直れるし、気持ちを切り替えることができます。
どんなに辛い想い出も時間薬が癒してくれます。

しかし、羽吹のようなサイメシアにはそれができないのです。
記憶が蘇るとその時の感情や匂いまで蘇ってしまう。
恐ろしいことです。

さて、そんな特異な能力を持ち性格も自分勝手な羽吹の補佐を任された神尾はある殺人事件を担当するのですが、その事件は羽吹の予言通り連続殺人事件へと最悪の事態に発展していきます。

事件を追いながら、神尾はなにか掴みながらも自分には何も話そうとしない羽吹の後を追い、説得し、突き放されてもめげることなく行動を共にしていきます。

そうしていくうちに神尾は羽吹の壮絶な過去も知ることになりますが、このお話の中ではその過去や黒幕らしい人物のことは解決されないままです。

シリーズになって追々解明されていくのでしょうか。

バディものといえば、片方が破天荒で片方が堅物常識人という組み合わせが多いです。
読み手はその常識人の考え方に乗っかって一緒に話の通じない相方に振り回され憤り、それでも事件を解決するにはその破天荒の裏に隠された深い洞察力が必要だったと知ることになります。
そしていつしか凸凹ながらも補い合い理想的なパートナーになっていく二人の姿にハマッてしまうんですよね。

この凸凹の差が羽吹と神尾はとても大きかったのでそのズレ具合も面白かったです。

色々と屈折した羽吹が神尾には分かりにくく心を開いていく様もバディものの醍醐味で猟奇的な事件と共にドキドキハラハラさせられました。

面白かったのでシリーズの続編が出たら是非読みたいです。