著作:ジョシュ・ラニヨン
訳:冬斗亜紀
画:草間さかえ

翻訳シリーズものです。

私は学生時代から若いころにかけて和書より翻訳洋書が好きでした。
あまり身近過ぎない世界観が良かったのかもしれません。
最近は和書ばかり読んでいましたが、やっぱり翻訳ものもいいです。

その中でもこのアドリアン・シリーズは大好きでずっと追いかけてきたのですが、ここにきてやっと二人の幸せなクリスマスを見ることが出来ました。

ここまで長かったなあ〜。

ジェイクとともにクリスマスをロンドンで過ごし、経営するクローク&ダガー書店に戻ったアドリアン。義妹のナタリーと 従業員のアンガスの関係に時差ぼけの頭を悩ます彼の前に現れたのは、かつてアドリアン所有の敷地内で起きた殺人事件で 知り合ったケヴィン。消えた恋人を探す彼はアドリアンに救いを求める。同じ頃、ジェイクにも失踪人捜索の依頼が――!?  アドリアン・イングリッシュシリーズ番外篇「So This is Christmas」ほか「雪の天使」「欠けた景色」を収録した短篇 集。

『雪の天使』
こちらは元宝石泥棒ノエルと彼をずっと追いかけてきたFBI捜査官カフェのお話しです。
10年前、宝石泥棒だったノエルは自分を追い回す捜査官のカフェがいつしかお気に入りとなり、騙し合いの揚句熱い一夜を共にしてホテルに置き去りにします。

それから10年。
当時の思い出を小説として売り出し人気を得ていたノエルの前にカフェが現れます。
すっかりノエルにコケにされた形となってしまったカフェ。
どんな思いでクリスマスの夜、ノエルの前に現れたのか。

憎んで憎んでもそれを上回る激しい執着と愛。

オシャレで心がほっと温まるお話でした。

『Another Christmas』
気持が通じ合ったその後の二人のラブラブなショートです。

『欠けた景色』
FBI捜査官と地方警察官のお話しです。
訓練の監督員として地方を訪れたFBIのナッシュは地元警察のグレイ警部と恋に落ちます。
運命の相手だとお互いに感じても障害になるのはあまりにも遠すぎる三千キロの距離。
ナッシュは後ろ髪を強烈に引かれる思いでグレイと空港で別れますが、グレイはその後、行方不明になってしまいます。
どうしてあの時、手を離してしまったんだろう。
あの後グレイに何が起きたのか。
深い後悔に後押しされた愛が奇跡を生むお話です。

それにしても行方不明になるとひた隠しにしてきた性癖やプライバシーが捜査の名目で暴かれていくというのは怖いですね(腐のお宝もどうしようと身につまされました)。

『So This is Christmas』
アドリアンとジェイクのお話し。
厄介ごと引き寄せ体質のアドリアンの前にケヴィンが現れます。

シリーズ2『死者の囁き』に出てきた考古学者ケヴィンです。

当時、アドリアンに色目を使ってきた相手だけにジェイクはいい顔をしません。

さて、ケビィンがアドリアンに頼み込んできたこととは実家に帰った恋人のアイヴァーと連絡が付かなくなったので助けて欲しいということでした。
アイヴァーの家族は息子がゲイだということを受け入れようとせず、更にケヴィンが息子をゲイにしたと恨んでいるので合わせないように息子を拘束しているに違いないというのです。

一方、今は私立探偵のジェイクはその家族から息子のアイヴァーが行方不明になっているので探して欲しいと依頼を受けます。アイヴァーの家族は実家まで押しかけてきたケヴィンが犯人かもと疑っているのです。

昔なら、勝気で自分の思うようにしか行動しないアドリアンとそれを快く思わないジェイクは衝突したでしょうが、今はお互いに相手を深く愛しています。
だからどんなに意見が違っても相手を傷つけようとはもう思わないし、その回避方法はちゃんと出来るですよね。

アドリアンも変わったし、ジェイクも変わりました。

もちろん大きく変わったのはジェイクです。

昔のジェイクは自分がゲイだとは頑として認めず、それなのに自分を惹きつけるアドリアンを憎み傷つけ、ついには普通であることに拘るあまり結婚してアドリアンの前から去ったのです。
でも結局ジェイクはそういう全てを捨て、息子がゲイだとは受け入れられない家族と決別し、職も捨てて、アドリアンと生きることを選びました。
普通に拘り続け、いい息子、いい刑事を演じ続けてきたジェイクにとってその選択はどんな恐怖だったことでしょう。

ジェイクは自分のプライドを護るために愛するアドリアンを傷つけた過去を深く深く悔やんでいます。

そんなジェイクがアドリアンに自分の愛を証明しようと選んだ方法とは。
「お前に抱いて欲しい」

ええええっ〜!
日本のBLでもリバはありますが、この体格差でのリバは想定外でした。

ジェイクはマッチョな大男です。
一方アドリアンは心臓が悪かったこともあってどちらかというと華奢です。
大型シェパード犬に豆柴犬が乗っかるイメージ?!

「いつかやる日がくるなら相手は絶対お前だと思ってた」
あー、そーですか。
カモン、ベイビーですか。

このカップルにまさかのリバの日が来るとはちょっとびっくりでしたよ。
いや、外国のゲイ小説はほぼほぼリバがあるので(対等の証明なのかな?)リバってもいいんですが。

「お前との新しい初めてだな」
そのジェイクの言葉に真意が分かりました。
そう、このリバは二人にとって愛の誓いのリバだったんですね。
新しくここから始めるという二人にとっての神聖な儀式だったのかー

そして、ジェイクの家族から二人へのクリスマスの招待。
ジェイクの家族はジェイクの元妻ケイトをすごく気に入って大好きだったので当然アドリアンへの風当たりは強いものと思っていましたが、ちゃんと歩み寄ってくれましたね。

これもアドリアンが勇気をもってジェイクの背中を押してくれたからです。

クリスマスの夜を愛する家族と愛する人と共に過ごす。
ごく普通のことですが家族と縁を切っていたジェイクにとって奇跡としかいいようのない一夜をくれたのはアドリアンの深い愛だと思います。

そして愛する恋人へのクリスマスのプレゼントとしてジェイクが用意したものは

あっ、アイヴァーの失踪事件ですがこちらもちゃんと解決しました。
めでたしめでたしです。

それにしてもあちらのゲイ嫌いの人間の憎悪というのは剥き出しですね。
自由の国だから自分の行きたい様に生きる権利はあるけど、それは戦って勝ち取って得た自由なんだなあと改めて思いました。

そして和書と違って気になったのがアフターシェイブローションとかマウスウォシュとかそういう匂い消しの描写が多いこと。
割と日本はそういう香りon香りという描写があまりないような気がします。

外国の大陸の風というか匂いというか、自分の個性を前に押し出す人間ばかりが出てくるお話というのは、お話の中に自分の居場所はないなーと思います。そこが好きで楽なんですけどね。
間違ってもBL王道『自分なんか・・・』という奥ゆかしい受け君というキャラは見たことないような気がします。そういう押しの弱さは海外では透明人間と同じだなと思ったり。

そんな中でも勝気で美人でなんにでも首を突っ込むヒロイン体質のアドリアンはお気に入りだったのでジェイクと幸せになって本当に良かったです。

まあ、周り(義理の妹とか^^;)は色々とトラブルメーカー揃いなのでまだまだ難題を抱え込みそうですがジェイクという伴侶がいるので大丈夫ですね。

クリスマスの奇跡のお話し、どれも愛する人と掴む幸せが心が温まるお話でした。

アドリアンシリーズはまだまだ読みたいので続編希望です