谷崎 泉/著, yoco /画

『ダークホースの罠』のスピンオフです。

『ダークホースの罠』のレビュー記事で「南野係長のスピンオフ」が読みたいと騒いでいたのですが、その声が谷崎さんに届いたのかどうかなんと南野係長のスピンオフが出たのです〜!!

長年の腐れ縁カップル、ついに年貢を納めるの巻ですね。

それにしても、胡桃はこちらのスピンオフではめっちゃカッコよかったです。
クールなのに熱くて行動力もあって洞察力もあってスーパーマンのような働きぶり。

今度は『胡桃の本編が読みたい〜』と騒ぎたくなりました
けれど、これはきっと、愛がなければできないセックスだ
警視庁捜査一課係長・南野の唯一の弱点は、暴力団組長・鷲沢と長年パートナー関係にあることだったが…。
事なかれ主義のなんでも流せる及び腰――警視庁捜査一課係長・南野の弱点は、指定暴力団組長・鷲沢と長年パートナー関 係にあること。 少年時代を血の繋がらない兄弟として過ごし、再会した時には刑事とヤクザ、そこから始まった鷲沢の深すぎる求愛行動が 今に至るのだが…。
南野の班が保護した事件の目撃者が鷲沢の若い頃に瓜二つ、しかも父親を捜しに来たことが判明し!?
  とんだ溺愛ヤクザと枯れた中間管理職カップル、いきなり別離の危機!?

捜査一課の係長・南野の特技はのらりくらりと場をやり過ごすこと。
強行犯を扱う捜査一課の捜査員としては華奢で頼りなげな外見をしている南野は飄々と暖簾に腕押しで相手をかわすやり方を貫いてきました。

その南野の掴みどころのない態度に胡桃が苦労したのは『ダークホースの罠』に書かれている通り。
胡桃は可愛い名前に反して目つきが悪くガタイも大きいので威圧感もあって警視庁内でも一目置かれる存在感を放っています。
南野が躱した苦労を背負い込んでいる損な役回りは今回も変わらず(爆)

そして南野と20年来のパートナー関係にあるのが指定暴力団組長の鷲沢です。
母親の再婚で南野の弟となった鷲沢は、両親の離婚で兄弟の縁が切れても南野に対する想いを抱き続け今に至るなのです。

南野にとってそんな鷲沢の執着は迷惑でしかありません。

「あいつのせいで俺の人生までめちゃめちゃにされた」

何度縁を切ろうとしても鷲沢の南野に対する執着は凄まじく今に至るまで執着されているというのです。

そんな南野の言葉を胡桃は一言で一刀両断します。

『鷲沢が執着で馴れ合いがあんた』

見事な分析です

南野が本気で鷲沢を切る気なら方法はあったはず。
それをずるずると受け入れてきた南野も45歳になるこの年まで鷲沢以外の相手とその気になれなかったと言うことです。
そんな気が起きないほど仕事が忙しく、わずかなプライベートな時間は根こそぎ鷲沢の性欲に付き合わされているというのもあるでしょうが

もちろん警察官が指定暴力団と付き合うということなど許されるはずもなく、班の中では二人の関係を知っているのは胡桃だけです。

一方の鷲沢ですが、海外にまで潤沢な資産を持ち、狡猾で傲慢不遜。警察にも身内の暴力団にも敵がいないという天下無双ぶり。

その鷲沢が世界中でただ一人頭が上がらないのが南野なのです。
はい、がっつり尻に敷かれています。
外では怖いものなしの鷲沢ですが、南野と一緒の時はひたすら南野の顔色を伺い、ストーカーも顔負けなほどの執着で身辺を見張り、南野に邪険にされようが冷たくされようが罵られようが二人きりになってラブラブしたいと想いを隠そうともしません。

そんな重すぎる愛をぶつけてくる鷲沢だからこそ、南野はどんなに冷たくしても鷲沢が自分の側にいることは当たり前だと思っているんでしょうね。

しかし、ある事件の19歳の目撃者の青年・桐本が鷲沢と瓜二つだったことから南野と胡桃には鷲沢の隠し子疑惑が沸き上がります。

両親の離婚で離れていた間に鷲沢がそういう関係を持った女性がいても不思議ではない。

鷲沢は南野だけを一筋に愛していますが、だからと言って離れている間に遊ばなかったのかというとそういう訳でもなさそうなんですよね。

更に南野の頭を悩ます存在がもう一人。
それは管理官の古市です。

キャリアで神経質そうで声が小さく体格も貧相な古市は着任早々捜査一課の係長たちから舐められてしまったのですがその古市につけ込まれたのが事なかれ主義で反抗的な態度も取らない南野。

古市の他の班の係長たちに対する鬱憤も全て南野に向かってしまったのです。

それでも事なかれ主義を通す南野を見かねた胡桃は南野に「頃合いを見て地を出した方がいいですよ」と忠告します。

普段は何事にも逆らわないような南野ですが鷲沢に対しては氷のように冷たい態度と視線で黙殺するのですから、それが南野の『地』なんでしょうねえ。

それでも処世術を変える気のない南野ですが書類のことでネチネチと嫌味を重ねる古市にカチンときて、つい鷲沢に向けるのと同じ視線を向けてしまいます。

つまり氷のようにものすごく冷たい視線です。

この時の南野はこれが古市の性癖をクリティカルヒットしたとは思いもしなかったでしょうね。

一見疲れた華奢なオジサンの南野には妙な色気があってモテるのが鷲沢の心配の種なのですが、そんなことあるのかと思った胡桃もびっくりな方向にお話は転がって行きます。

鷲沢に瓜二つな桐本からもねちっこい上司の古市からもまさかの好きです告白を受けてしまった南野。
しかも古市には特殊な性癖があって・・・。


もう南野の許容範囲を全てが超えてしまいます。
何もかも嫌になってプッツンと切れてしまった南野に残されたのは鷲沢の存在。

自暴自棄になって逃避してしまった南野を連れ戻しにくるのはやはり胡桃なのですが、胡桃と鷲沢が水面下でしっかり協定を結んで連絡を取り合っているのには苦笑でした。

南野のように捉えどころがなくてふわふわとした人間を捕まえておくにはそれしかありませんか。

さて、桐本は本当に鷲沢の息子なのか。
南野を妖しげなバーで襲おうとした古市のその後の報復はないのか。

まあ、そこら辺はスパダリの鷲沢が全て裏で手を回して善きに計らったようです。

そして南野の下で一人苦労を背負い込んできた胡桃も「南野のちょうどよさが分かる」ようになったようです。
南野は胡桃たち部下を好きなように行動させ庇うところは全て自分が被ってきました。だから胡桃は忙しくて苦労はしても南野が上司でないと困るのです。

胡桃が言うようにきっと本当の意味での常識があるのは南野ではなく鷲沢の方なのでしょう。

南野の全てに目を配り、南野が定年を迎える将来のことまで考えている鷲沢。
将来設計もしっかりしているではありませんか。
南野、老後も安心ですね(笑)

腐れ縁でも馴れ合いでも執着でも、それは二人で育てて行くなら確かに愛なんだと思います。
もうね、お互いにお互いてとしかこういうHは出来ないんだから。
世界のどこにも怖いものなどない鷲沢が愛する南野だけには尻に敷かれて情けない様子なのも可愛いではありませんか。

南野、ついに自分の気持ちを認めて年貢を納めるのお話しでした。
鷲沢の粘り勝ち


やれやれ、胡桃の苦労はまだ続きますね。
それはそうと、胡桃の例の吸血鬼君との恋愛はどうなっているんでょうか。
谷崎先生、今度はそちらを宜しくお願いします

胡桃ってどんな人?と気になった方は↓を是非!