2008年12月

2008年12月28日

女性の話はさて置き、

The New Year came to Suma, the days were longer, and time went by slowly.
(お正月はやって来る!のやね、須磨へ
The sapling cherry (若木の桜)Genji had planted the year before sent out花を送り出す!んやなあ、幹から?) a scattering of blossoms,〜

源氏が昨年植えた若木にちらほら花が咲き、それを見るにつけ都での春の思い出が次々と浮かび、幾度となく涙を流すのでした。

そして3月に近くなって思いがけず都から親友・頭の中将が訪ねてきたのです。今は宰相に昇進、
世間の人望も得ているのですが、源氏が須磨へ発って以来、

〜he was not happy.
Everything made him think of Genji.

で、「源氏に会いたい!もう何をどう噂されてもいいや!それで罰をうけたってかまうものか!」と

〜he hurried off to Suma.
The sight of Gennji brought tears of joy and sadness.

また突然の中将の訪問は源氏にとってもなんという嬉しいサプライズ!

Weeping and laughing, they talked of all that had happened over the months.

つもる話や、また漢詩をつくったりして夜を明かし、中将は朝早くに都へと発つというその別れのとき、朝ぼらけの空に雁が列をなして渡っていくのを見て、源氏は

  「 ふるさとをいづれの春か行きて見む
     うらやましきは帰るかりがね 」      (原文)

  "In what spring tide will I see again my old village?
   I envy the geese, returning whence they came." (もといた場所へ)

都からの数々のおみやげのお礼にと源氏は見事な馬を送り、中将は

"To remember me by," と言って、世に名高い笛を置いて帰ったのでした。

その後はいぜんにも増して源氏の物思いは深くなり、巳(み)の日に御禊(みそぎ)をすると良いとかで、
源氏も海辺にでて陰陽師( a soothsayer) にはらいをさせ舟に人形(ひとがた)をのせておだやかな海に流したのですが、
まさにそのとき!にわかに風が吹き起こり!空も海も真っ暗に!!な、なにごと?
 
  soothsay 予言する、占う、
★ soothsayer  予言者、占い師、
   
ちなみに
 soothe (人、感情などを)なだめる、鎮める、(苦痛・不安などを)和らげる、機嫌をとる、などでした。

               *

Super源さんから soothsayer についてコメント頂きました。(詳しくは下記コメント欄をどうぞ)

soothsayer:a person who was believed to be able to tell the future. Soothsayers were usually very old and very wise

                *

この解説で単語のイメージがくっきりして覚えやすくなりますよね、有難うございました。思っていたより良いイメージで修正しました。
またsoothsay はほとんど使われていないようだそうです。(時代に取り残された単語なのでしょうか?)
また soothsayer のとても覚えやすいダジャレも作ってくださいました。この機会に覚えてしまいましょう!
「Super源さんのダジャレ英語日記」へは左欄下の大好きなブログからどうぞ。ほのぼの、爆笑、にんまり、まさかあー!、そんな!と、とても楽しく単語ゲットできます!よ。




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2008年12月24日

先の国守・明石の入道の娘って?

Though the girl was no great beauty, she was intelligent and sensitive and had a gentle grace of which someone of far higher rank would have been proud.

この娘はすぐれた容ぼうを持っているのではないが、優雅な上品な女で、見識の備わっている点などは貴族の娘にも劣らなかった。 (与謝野晶子・現代語訳より)  なのですって。

ところで本人は結婚とかどう思うているのかな?

She was reconciled (甘受・あきらめさせる)to her sad lot(運命).
現代語訳によれば、娘は自分のみのほどをわきまえている・そうな、なるほど)
No one among the great persons of the land was likely to think her worth a glance.(よく見かける便利な言葉ですよね〜

高貴な若者達は自分のことなど眼中にもおかないだろうし、かと言って分相応な男性とは結婚したくない・・・そして、

If she was left behind by those on whom she depended, she would become a nun(尼), or perhaps thraw herself into the sea.

もしも頼りの両親に後れて生き残ったなら尼になるか海に身を投じようと思っているのでした。

lot  くじ、分け前、、運命、めぐり合わせ、地所、区画、群れ、
 くじを引く、(くじによって)配分する、などでした。
a lot of のlot がくじ引きのlot と同じ、そしてだったなんて!
うかつどしたあ

     英文はすべて「The Tale of Genji」より


momo_sk2 at 15:21コメント(0)トラックバック(0)英語で本を読む 
さて、明石には明石の入道(former governor)とその家族が住んでいるのですが、

The former governor was an extremely proud and intractable(おそろしく自尊心が強く
強情な) man.
The incumbent(現役の) governor was all-powerful in the province, but the eccentric old man had no wish to marry his daughter to such an upstart(成りあがり者). 

娘を大切に思うあまりに、入道はこれまで求婚者を皆門前払い、そんなとき知ったのです!
這ってでもいける須磨(原文によれば)に源氏が住まうと。千載一遇のチャンス!!と思った入道は、妻に言ったのです。

"What a rare stroke of luck--the chance we have been waiting for. We must offer our girl." (offer なんや

ところが母親はまた違う視点で、「そんな!とんでもないことを!!」
(「らちもないことを!」それとも「ありえない!想定外!」とか?)

"Completely out of the question. People from the city tell me that he has any number of fine ladies of his own and that he has reached out for one of the emperor's.(いかにも宮中の奥へ手をのばしたような、おもしろい!)

「源氏には素晴らしい貴婦人が何人もいながら、帝の思い人にまで!!それがもとで須磨で隠棲っていうじゃない?
そんな源氏がどうしてうちの田舎娘なんか!」(やっぱり女性は現実的なんどす!なあ?それにしてもこれはまさに夫婦の会話!)

でも強情な入道は負けてなんかいません。「なんにも分かっていない!このことに口は出すな!」彼は娘を差し上げようと決心したのです。

"We must make our plans. We must watch for a chance to bring him (源氏)here."

源氏の実母・桐壷の更衣は実はこの入道とはいとこ同士だったのです。
いちばん最初に・桐壷の身分は高くない・という文があって、あ!あれも布石のひとつだった?紫さんすごーい!と思ってしまいます

源氏の実母・桐壷!・・・源氏は幼くして死別した桐壷を思慕するあまり、母に生き写しだと聞かされた藤壷(継母)を母のように思慕、そしていつしかそれが激しい恋情となり、源氏を苦しめるのですが・・・
源氏の父・先帝は源氏の生母・桐壷なき後、彼女に瓜二つの藤壷を後宮に迎え寵愛した。そして今や先帝は亡くなりその皇子(源氏の母違いの兄)が帝になって藤壷は出家している。(ややこしや〜


さてその問題の娘とは?どんな女性?

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2008年12月22日

任期を終えて都へ帰る太宰の大弐が須磨を通りかかり、お見舞いの便りを息子の筑前の守が持参したぐらいで、相変わらずの淋しい日々を重ね、やがて冬になりました。

It was winter, and the snowy skies(s が! the sky ではいけないのん?) were wild.

雪や風のはげしい日に、慰みに源氏は琴を、惟光に笛、良清には歌を歌わせていたのですが、

when he lost himself in a particularly moving strain the others would fall silent, tears in their eyes.

源氏が細かい手を熱心に弾きはじめると、惟光と良清は笛も歌も止めて琴の音に聴き入いりながら涙を流すのでした。
また月の明るい夜のこと、狭い家なので部屋の隅々まで月光で明るく、深夜の空はすぐそこの縁側の上、(寝たままでも見える!たぶん都での源氏の寝室は寝殿づくりの御殿の奥まったところやった)
そして、

Sleepless as always, he heard the sad calls of the plovers(千鳥) in the dawn and (the others were not awake) repeated several times to himself:

  "Cries of plovers in the dawn bring comfort
  To one who awakens in a lonely bed." (awaken=awake だって!)

  「友千鳥が声を合わせて鳴いている明け方は
    独り寝覚めて泣くわたしも心強い気がする」  (渋谷栄一・現代語訳より)
 まだだれも起きていないので源氏は一人でなんども繰りかえし口ずさむのでした。

そんな生活でも供の者たちは、

Far from being tempted to leave him, they did not return even for brief visits to their families.(これも便利な言葉ですよね!応用もきくし!)

源氏のもとを片時も離れようとはしなかったのです。

〜, the white of his hand against the jet black of his rosary(ロザリー) was enough to bring comfort to men 〜

庭をながめて寂寥感に涙をそっと払う源氏の白い手に黒檀の数珠・・・そんな源氏のこの世の者とも思えない優美で幽玄な姿を見るだけでも家族を都に残してきた供の者たちはなぐさめられる・・・(んだって!)

機嫌の悪い冬の空のような日々(英語風に擬人化してみました)・・・でも!その単調さになにやら女性の華やぎが?明石の方角からか? 

 


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2008年12月20日

日が経つにつれ都では、人々は源氏のいないのをとても寂しく感じるようになりました。
なかでも皇太子は源氏を思い出しては悲しがって時々そっと泣ていました。

The crown prince was the saddest of all.
His nurse(乳母) and Omyobu (王命婦・藤壷の侍女)would find him weeping in a corner and search helplessly for ways to comfort him.

また藤壷は、自分が源氏と親しくすれば、そのことで悪いうわさでも広まったりして、我が子・皇太子(源氏は皇太子の実父)にどんな災難が降りかかるかもしれないと、ひたすら気持ちを抑えていたのですが、源氏が遠く離れてしまった今はとても悲しがっています。

Once so fearful of rumors and their possible effect on this child of hers and Genji's, Fujitubo now grieved that Genji must be away.  (possibleって便利なことばですよね

源氏が須磨へ行った初めのころには都の人達としきりに文通していて、心打たれるような詩歌のやりとりもあったのですって。

In the early days of his exile he corresponded with his brothers and with important friends at court.
Some of his Chinese poem were widely praised.

ところが、その源氏の漢詩などがなんと素晴らしい!と人々がほめたたえた!ばっかりに・・・源氏にくし!のあの弘徽殿が聞きつけて、

 またまたにっくき源氏めが!とばかりに!

Kokiden flew into a rage. (面白い!逆鱗に触れるっていう感じ?)
"A man out of favor with His Majesty(帝) is expected to have trouble feeding himself.feed 餌をやる意味もあるこの語を彼女は選んだ!
And here he is living in a fine stylish house and saying awful things about all of us.
No doubt the grovelers around him are assuring him that a deer is a horse."昔、支那で鹿を馬と呼んで主に追従した者がいたそうな)

「勅勘を受けた人というものは、自由に普通の人らしく生活することができないものなのだ。風流な家に住んで現代を誹謗して鹿を馬だと言おうとする人間におもねる者がある」
とお言いになって、報復の手の伸びて来ることを迷惑に思う人達は警戒してもう消息を近来しなくなった。(与謝野晶子・現代語訳より) 

And so writing to Genji came to be rather too much to ask of people, and letters stopped coming.

恐るべし!弘徽殿!!

★grovel ひれふす、はいつくばる、卑屈に振舞う、平身低頭する、など
弘徽殿の使いそうな言葉やねえ)

★feed …に食物を与える、授乳する、(動物に餌を)あたえる、
 原料・燃料を供給する、など他にもいろいろありましたが、電気製品に電気をfeed とかは、まさに餌をやるイメージで面白いですよね!

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2008年12月18日

寂しさの身にしむ秋になりました。
At Suma, melancholy autumn winds were blowing.

源氏の住まいは海岸から離れているとはいえ秋風が吹き波が高い夜などには、すぐ近くまで波がおしよせてくるように思われるそんなある夜、眠られぬまま源氏は

〜he raised his head from his pillow and listened to the roar of the wind and of the waves, as if at his ear.
Though he was unaware that he swept, his tears were enough to set his pillow afloat.

落ちるともない涙にいつか枕は流されるほどになっている。(与謝野晶子・現代語訳より)

琴をひきよせて弾きかけたのですがその音に寂しさはますばかり・・・おもわずこんな歌をうたっていました。

   "The waves on the strand, like moans of helpless longing.
   The winds--like messengers from those who grieve ?"

  「恋ひわびて泣く音にまがうふ浦波は
       思ふ方より風や吹くらん」       (原文)

その声に近くに宿直している少数の供の者達も起きだしてすすり泣きはじめるのでした。
源氏が一番信頼しているこの人達は、源氏のために離れがたい都を後にしてこうして漂泊の人になっている、その心を思いやるのもまた源氏にはつらいことでした。
でもこの自分の幽愁が供の者たちをよけいに悲しませている、これではいけないと気づいた源氏は、

So he set about cheering them.
During the day he would invent games and make jokes, (どんなゲームかなあ?)
and set down this and that poem on multicolored patchwork

色さまざまな紙を切りはいで・・まさにパッチワーク!その上に和歌を書いたり、珍しい支那の絹に絵を描いて屏風に仕立てたり、写生をしたりなど昼間は賑やかに過ごす工夫をしたようでした。

This resolute cheerfulness had the proper effect.
His men, four or five of whom were always with him, would not have dreamed of leaving him.
(よかったね源氏さん!あれ!もうひとりの源さんももしかして源氏?の君?…)

庭に花の咲き乱れて美しいある夕暮れ 

Genji came out, when the evening colors were at their best, to a gallery from which he had a good view of the coast.
His men felt chills of apprehension as they watched him, for the loneliness of the setting made him seem like a visitor from another world.

海の見える廊のほうへ出てながめている源氏の美しさは、あたりの物が皆素描の画のような寂しい物であるだけにいっそう目に立って、この世の者とは思えないのである。
やわらかい白の綾に薄紫を重ねて、藍がかった直衣を、帯もゆるくおおように締めた姿で立ち「釈迦牟尼仏弟子」と名のって経文を暗誦している声もきわめて優雅に聞こえた。       (与謝野晶子・現代語訳より)

〜he announced himself as " a disciple of the Buddha(お釈迦様)" and slowly intoned a sutra(お経), and his men thought that they had never heard a finer voice.

英文はすべて「The Tale of Genji」  by Edward G.Seidensticker より


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2008年12月15日

源氏の手紙への返信にはそれぞれの女性の物語があって、例えば
末摘花の家では長雨で築地が傷んだらしく、それを知った源氏はすぐに都に手配して修理させたり、
藤壷からは (あれこれ考えたすえに) これまでよりすこし情のこもった便り、
伊勢にいる六条の御息所からはお見舞いの使者が、それは心のこもった便りをたずさえ来て、などなど、

それから、赦されてまた宮廷へ上がった朧月夜と帝の危うい関係!(よくあるパターンといえばそうなんやけど) 管弦の遊びの折の二人の会話から、(会話にならず朧月夜は涙ばかりなんやけどね)

帝の言葉から、
"Things do not seem right now that he(源氏) is gone,
I am sure that there are many who feel the loss even more strongly than I do." (源氏がこの場にいたら!と思う人もきっと多かったでしょうね)

そして「源氏を大切にせよとの父の遺言にそむいてしまっている、いつか罪をうけるだろう」と帝は涙を流すのでした。それを聞いた朧月夜もまた涙、涙。

「味気ないこの世(stupiidity of the world)に永らえようとは思わないけど、私が死んでしまったらあなたは泣いてくれますか?」 (あら!聞いたような!) でも正確には帝が言ったのはこうでした。

"And how would you feel if I were to die?
I hate to think that you would grieve(悲しむ) less for me gone forever than for him(源氏) gone so briefly such a short distance away.
The poet who said that we love while we live did not know a great deal about love"

それを聞いて朧月夜のなみだがまたあふれるのですが、それを見て帝は、

" And whom might you be weeping for?"
(ああ!いつの世も愛の深いほうがこうも苦しい!んどすなあ)

He was a handsome man and he groomed himself well,〜

たしか帝はとてもハンサムで高貴は雰囲気の素敵な方だったはず、なのに朧月夜さんときたら!・・・
ところで groom って動物のグルーミングしか知らない、チェック!

★groom 馬丁、花婿、宮内官など。(どうして馬丁と花婿が?ああ花嫁の馬丁のような?かな?
  【動詞】 (馬、犬などの)世話・手入れをする、身なりを整える、(物)をきれいにする、推薦する、 などでした。
(動物が毛づくろいするのも帝が身なりをととのえるのも同じなんやね、たしかに!)


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2008年12月13日

須磨の源氏へ次々と返信がとどきます。
藤壷、末摘花とその姉、朧月夜、六条の御息所などなど。

源氏は流刑のように須磨に蟄居、そしてあの夜のお相手だった朧月夜は?

Oborozukiyo had delighted the scandalmongers, and she was now in deep gloom.
(スキャンダルモンガー達はそれは喜んだやろうねえ、あの夜明けのサンダーストームの時のことです

父の右大臣は愛娘・朧月夜の不始末をなんとか収めようと、帝と弘徽殿に懸命にとりなし謝ったので、

In the Seventh Month(7月)she was permitted to return to court.
She continued to long for Genji.
Much of the emperor's old love remained, and he chose to ignore criticism and keep her near him,
long 長い、退屈な、 と同じ綴りで 切望する、思いこがれる、の意と知った時びっくりしました!)

朧月夜は7月になって許されてまた宮中へ上がることができたのです。
その後も帝のご寵愛は変わらずに(え!そういう間柄だったんやね!)、でも朧月夜のほうは・・・long for Genji・・・なんと人の心のままならぬことよ!!
さぞ criticism もはげしかったでしょうに、帝はそれも無視していつもおそば近くに居させたのでした。

scandalmongerなんか発音がスキャンダラスで意味が推測できそう、こんな長い複合語もだいすきです!)

monger (ふつう複合語の第2要素として)商人、〜商、(軽蔑して)〜屋、など
a fish monger 魚屋、 
動詞)商う、小売する、

scandalmonger 金棒引き、中傷家、   でした。

英語の意味が分からないときや原文が読みたくなった折には下記のページを拝見するのですが、とてもよく分かりほんとに助かっています。
いつもありがとうございます。
(英語というより現代語訳を主に読んでいるような・・ではありますが)

ちなみに、紫式部の書いた「原文」はもう残っていなくて何人もの人の手により繰り返し筆写されながら1000年を経て(いろいろ違ってきている部分もあるそうな)、それに今は読みやすいように漢字に変換、句読点なども加えられた文章・渋谷栄一先生は「本文」と記載されています。

http://www.sainet.or.jp/~eshibuya/

渋谷栄一著(C)
高千穂大学教養部教授

源氏物語の世界
定家本系「源氏物語」(青表紙本)本文に関する情報と資料の研究


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2008年12月10日

さて、源氏の手紙は都へと使者によって届けられました。都ではセンセイションが!
いいえ、それほどではなかったんですが、

They(手紙) reached their several destinations and gave rise to many sad and troubled thoughts.

京では須磨の使いのもたらした手紙によって思い乱れる人が多かった。(与謝野氏・現代語訳より)

たとえば紫。
まだ子供の頃に源氏に引き取られ格別の思いをこめて大切に育てられ、源氏のことを父とも母とも思いまた今は敬愛する夫、紫にとって源氏はいわばほとんどこの世のすべて、それが突然の別離!
嘆きは深く手紙を見るや、

Murasaki had taken to her bed.
Her women, doing everything they could think of to comfort her, feared that in her grief and longing she might fall into a fatal decline.

あまりの悲しみように侍女たちもなすすべもなく、紫の身を心配して北山の僧都に祈祷を頼んだりしてみても、紫の心は晴れず、身の回りの何を見ても源氏を思い出してしまうようなのです。

So it is even for people hardened and seasoned by trials(試練・困難),
and how much more for her, to whom he had been father and mother!
ここでおもしろい文章発見!え!硬くなって味つけされた人々? hardened は hard に en がついたもの でも season は? 動詞は・味をつける・しか知らない、チェック!)

★season (自・他動詞)・慣らす、鍛える、味をつける、木を乾かす、など
seasoned (形)熟した、慣れた、鍛えた、風味をそえた、などでした。

なるほど!困難のたびに硬くなり鍛えられてきた人々!!(歳とるということは一面ではこういうこと?)

でも、原文を現代語訳した文章ではどんなふうに?

物事をさまざまな角度から考えることができる、世間の経験を積んできた相当の年配の人でさえそうなのに、  (渋谷栄一・現代語訳より)

今の悲しみの量を過去のいくつの事に比べてみることができたりする年配の人であっても、こんなことは堪えられないに違いないのを、
                 (与謝野晶子・現代語訳より)
でした!
このニュアンスの日本語を hard(+en) と season(+ed) で表現できるなんて!!やっぱり単語は面白い!と思ってしまう。

そして人情の機微を表現することの多い「源氏物語」ではこんな表現がいっぱいあって興味津津です。そしてまたも!

"Grasses of forgetfulness" might have sprung up had he quite vanished from the earth;〜

彼がこの世からすっかり消えてしまっていたなら(死別だったなら?)、忘れ草がはびこったかもしれないのに? (忘れな草ではなく!)

死んだ人であれば悲しいなかにも、時間があきらめを教えるのであるが、 (与謝野晶子氏)
日がたてば次第に忘れ草も生い茂って忘れていくということもありえることでしょう。 (寂聴さん)

〜but he was at Suma, not so very far away, she had heard.

でも現実に源氏はあまり遠くもないと聞く須磨に暮らしているかと思えば・・・
そして紫の源氏への返信は、

And Murasaki's reply was of course deeply moving.

"Taking brine(海水) on that strand(岸), let him compare
His dripping sleeves with these night sleeves of mine"

浦人の塩汲む袖にくらべ見よ
   波路隔つる夜の衣を           (原文)

でした。
この頃にはもう須磨の海岸では海水を汲んで塩つくりをしていたようで、それにまつわる言葉がこの頃の源氏の歌やその返歌によく詠われているみたい。藻塩焼く、海女、塩汲む、しほたる、もしほ垂る、など。

Super 源さんのページで strand (岸)を取り上げてくださいました。(12月5日のページ)
ほのぼのとした絵とダジャレでとても覚えやすいです。どうぞご覧くださいませ。(左下の大好きなブログよりどうぞ)


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2008年12月07日

その頃の須磨ってどんなところ?

People of worth had once lived there, but now it was deserted save for the huts of fishermen, and even they were few.

そんな寂しいところでした。

ここの摂津守も以前からの縁で源氏に好意を寄せていたりして、源氏の家もなにかと人の出入りは多いのですが、

There was no one whom he could really talk to kept him from forgetting that it was a house of exile, strange and alien.
How was he to get through the months and years ahead?

はかばかしい話相手はなくて外国にでもいるように源氏は思われるのであった。こうしたつれづれな生活に何年も辛抱することができるであろうかと源氏はみずから危ぶんだ。    (与謝野晶子・現代語訳より)

The rainy season came.His thoughts traveled back to the distant city.
(thoughts も都へと旅をするんですね!一語なのに遠くへと思いはせる様子が分かり易い!

家の修理などが終わりすこし落ち着いてきた頃梅雨に入り、都のことがひとしお思い出されます。

都に残してきた紫の上、皇太子、大臣家で育っているわが子・夕霧のことなど、そして女性達!

He sent off letters to the city.

源氏は都へ便りをだすのですが紫と藤壷には特に時間をかけて書いたそうな、

〜for his eyes clouded over repeatedly.(また涙なんや・・・)

exile (テレビでときどき見るグループの名前、チェック!)

★ exile  追放する、流刑にする、(〜oneself)亡命する、
 追放、流刑、流人、亡命者、放浪、流刑地などでした。
彼らはこのイメージに共感したのん?

朝のドラマで ”だんだん”(島根地方の方言でありがとうの意だとか)と聞くたびに redundant ・よけいな、冗長な、くどい、・を思い出してしまう、まことによけいなことながら。
発音が日本語ふうな英単語って面白くて大好きです。
ちなみに郷里の徳島では「だんだんとありがとうございます」ってお礼の言葉なんです。いろいろとありがとうのような感じでしょうか。

英文はすべて「The Tale of Genji」by Edward G. Seidensticker より


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2008年12月05日

It was a long spring day and there was tail wind(追い風), and by late afternoon he had reached the strand(岸) where he was to live.

いくつも山を越えてかな?と思っていたら船でその日の4時ごろにはもう須磨の海岸に着いたとか、
鴨川、淀川を下り大阪湾へ出て、海岸沿いに須磨へ着かはったのやなあ、春ののどかな行楽ならよかったのに)

Genji's new house was some distance from the coast, in mountains utterly lonely and desolate.

The grass-roofed (茅ぶき屋根の)cottages, the reed-roofed galleries(廊下のようなところは葦ぶき屋根)--or so they seemed--were interesting enough in their way.

源氏の住まいは寂しい山のなか、場所にふさわしい野趣のある (風流といえば風流ですよね) 造りでした。

すぐに近くにある源氏の荘園 (ここにも荘園があったのやねえ)の役人達に命じてあれこれ手をいれたので (従者のひとりがてきぱきと家司の役をはたしたそうな)

In very quick order he had a rather charming new house.
A deep brook(遣り水) flowed through the garden with a pleasing murmur, new planting were set out; and when finally he was beginning to feel a little at home he could scarcely believe that it all was real.

わずかの間に、たいそう風情があるように見事にお手入れをさせられました。
庭には遣り水を深く引き入れ、植木を多く植えさせなどなさって、今はここを住家として、一応落ち着かれるお気持ちも夢のようです。(与謝野晶子・現代語訳より)

遣り水は、庭に川の水を引き入れて小川が流れているように造ったものだそうな。そしてそのせせらぎの音が・ pleasing murmur ・だと思うのですが、チェック!

murmur ざわめく、さらさら音をたてる、ささやく、(気持ちのいい音ばかりでもなくて) ぶつぶつ不平をいう、なんていう意もありました。(言葉っておもしろい!木も水もざわめくし、草もざわめくし、心も!みんな murmur なんですね)

読みにくいブログ読んでくださってほんとに有難うございました。とても励みになります。


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2008年12月03日

源氏(26歳)はこれまで光り輝く君と呼ばれ幼い頃から父・帝のそばで育ち、この世の者とも思えないほどの容貌と才能に恵まれ、また源氏の進言はすべて父・帝に聞き入れられてきた。その進言によって恩恵を受けた人は数知れず、どんなときも源氏は常に光の輪の中心だった!・・・のに!!
父・帝の崩御後は、右大臣家に連なる人達が牙をむきだして!源氏はなんと官位を剥奪!されたのです。報復には手段を選ばないひとたちなので、
次には流罪か?そんななかで源氏は流罪を言い渡されて罪人になるよりもと、自分から流罪のように都落ちをして須磨でひっそりと暮らそうと決心したのでした。

源氏は須磨へたつ2、3日前にひそかに左大臣邸へ別れの挨拶にいったのですが、目立たぬように粗末な車を使って女性が乗っているように思わせたり、
とても世間を気にしていたようす、よほど敵意がはげしくてそれも理不尽なものだったような・・・どんな些細なことで糾弾されるかしれないような

大臣邸では一同涙ながらに別れをおしみ、そこで一夜を過ごした源氏は、人目をさけて夜の明ける前に帰途につくのですが、

All the women were there to see him go.
He looked more elegant and handsome than ever in the light of the setting moon, and his dejection(落胆・失意) would have reduced tigers and wolves to tears.(虎ってもうポピュラーだったのやね、それに猛獣が泣くって!)

落ちようとする月が一段明るくなった光の中を、清艶な容姿で、物思いをしながら出て行く源氏を見ては、虎も狼も泣かずにはいられないであろう。        (与謝野氏・現代語訳より)

源氏の領地の荘園や牧場その他のものもすべて紫に譲り渡して(わあ!源氏ってミリオネアーだった?)、源氏がいない間の留守宅のことや気がかりなことなどもすべて手配をすませ、藤壷への別れの挨拶、そして父・帝の墓参も終えて、

He left as dawn was coming over the sky.

お別れにとひそかに訪れたさきざきでは、今生の別れとばかりに涙をいっぱい!流して(いつ許されて都に帰れるかかわからない罪人のように,でも事実それとよく似た状況だったような)、いよいよ出立の日を迎えたのでした。

さて源氏は何をたずさえて須磨へ発ったのでしょう?
現在の権勢に媚びない誠実な人達を供に選び、

He would take only the simplest essentials for a rustic (田舎の・質素な)life, among them a book chest, selected writings of Chu-i(中国の詩人・白楽天の撰じた詩文集) and other poets, and a seven-stringed chinese koto.

質素な生活にどうしても必要な品・それも飾り気のない簡素なもの、白氏文集・詩集など書籍を入れた箱、七弦の琴などでした。


momo_sk2 at 15:40コメント(0)トラックバック(0)英語で本を読む 
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