10月3日。雨模様。
「雨模様」と書くとATOKが「使いかたに注意」と指摘してくる。
雨模様の正しい意味は「雨が降りそうな天気」なのだが、昨今は「雨が降ったりやんだり」に使う誤用が増えているのだとか。

正しい意味の雨模様の中、図書館に出かける。降りだしそうで怖い。ノートパソコンを持っている。万が一の時にも濡れないよう、防水の準備をしてゆく。



今日は王座戦第4局。昨年、羽生が歴史的大偉業20連覇を渡辺に3連敗で止められた。

タイトルの通算獲得数は大山康晴が80期、羽生は今年それを越えた。81期。将棋では9×9の盤にちなみ、81は縁起のいい数字だ。81歳を「盤寿」として祝ったりする。

羽生と大山の全盛時ではタイトルの数が違う。大山五冠王の完璧な強さを考えれば、七冠があったなら、大山は安々と七冠を独占していたろう。だから通算獲得数81期はさほどの業績ではない。100期獲得してやっと大山の80期に並ぶぐらいだ。

そんな中、「王座戦19連覇」は文句なしだ。それこそ大山全盛期の安定度を考慮すれば、大山は何かのタイトルで20連覇をしていておかしくない。だがその大山ですら名人戦の13連覇が最高だった。名人と王座ではタイトルの格がちがうが、この場合、それは関係ない。全棋士が参加するのだから。
つまり「王座戦19連覇」こそが、羽生が大山に対して堂々と自慢できる最高の棋歴だった。
それを全棋士中、唯一負け越している渡辺に奪われた。3連敗という屈辱的な成績で。
羽生ファンにとってこれほど悔しいことはなかった。

天才と讃えられた同時代の、イチローが三割を切り、武豊の連続G1制覇記録が止まった。
東日本大震災のあった2011年。



だが羽生は今年、見事に王座戦の挑戦者として勝ちあがってきた。
とはいえ、順位戦全勝で挑んだ名人戦で、昨年の勝率から犹鯵簗梢有瓩噺討个譴討い真稿發貿圓譴討い襦絶好調ではないのか? 一抹の不安。

棋聖と王位は防衛した。
現在、最多対局数、最多勝利数だ。本来これは伸び盛りの二十代の若手が落ち目のロートル棋士から星を稼いで取るべき称号だ。41歳の王者の羽生がこれを独走することがいかにすごいことか。

王座戦。ここまで2勝1敗。5番勝負だから、今日勝てば奪還だ。



朝9時開始。それからずっと見ている。
その間、あれこれあったが、 午後2時に帰宅してからは、ずっとPCの「王座戦棋譜中継」を開いたままだ。
17時まで図書館で調べ物をする予定だったが、王座戦が気になって早めに帰宅してしまった。それからはずっと開いたまま。一緒に闘っている気分。
リアルタイムでこうして見られるいまの時代に感謝する。

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いま21:22、111手目。羽生の桂馬の王手に渡辺が9七玉と逃げたところ。いよいよ大詰めだ。

122手目。歩頭にただ捨ての6六銀。詰めろ逃れの詰めろ。6六桂を打たせず詰めろになっている。
これは羽生マジックとして語りつがれる妙手になろう。

そのあと、△8九金に▲飛車を受けて、取って、また金打って、金受けて、うわっ、なにこれ、千日手になるの!?

22時09分、千日手成立。わからん。なんでこんなことになったのか。圧倒的優勢だったはずなのに。渡辺の受けの力か。

指し直し局は22時39分から開始。毎日午後9時就寝の午前3時起きの生活なので、もう目がしょぼしょぼしてつらいけど、こりゃ眠るわけにはゆかん。結果を見届けないと。



2ちゃんねるの将棋板「王座戦」スレが励みになる。みんなふたりに熱い応援を送っている。いや圧倒的に羽生人気が高く、渡辺は悪役だが(笑)。

すごい勢いでスレが消化されて行く。38が一杯になり、39がすぐに埋まる。
ニコニコ生放送が中継しているらしいが無料会員は追いだされたまま。深夜だが、そんなに熱心に見ている有料会員がいるのか。それはそれでうれしい。



いま4日の0:39。93手目。羽生が渡辺の王を下段に落として追い詰める。渡辺は角で飛車取りになっているが取る暇がない。羽生、このまま押しきるか。

ouza4 103手目。2八馬として馬交換になるだろう。そのあと手持ちの角でどう決めるのか。7一角か。

 羽生がまちがいなく優勢なのだが、こと渡辺に対してだけは、粘られているうちに自分から転んで負けたりするので最後の最後まで気が抜けない。もちろんそれは大山風に粘る渡辺が強いのだけれど。

 眠くて目を開けているのが辛いが、なんとしても羽生が勝ち、王座を奪還するのをリアルタイムで見たい。がんばれ、羽生。もうすこしだ。

 羽生は飛車のほうを取って5四歩。

 2時02分、渡辺投了、羽生、奪還!

 やった。よくぞ勝った。よくぞ一年で取りもどした。リアルタイムそれを見られた満足感が心地良い。

※ 

 羽生の勝利を願い、午後9時に「羽生、奪還!」とやって、この文を書き始めた。実際そのまま勝ちきると思われる優勢な場面だった。だからこの文のアップ時間は午後9時25分になっている。

 ところがそこから午後10時過ぎに千日手になって指し直し。
「奪還!」とアップできたのは午前2時過ぎ。すぐに2時半。でも終りよければすべてよし。いい気持ちで寝よう。眠い。
 いつも午後9時就寝、午前3時起床。いつもなら起き出す時間だ。



 羽生がここまでがんばっている。イチローも復活した。あとは武のG1だけだな! 単勝をとらないと。

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【追記】──武も勝ちました!──11/18

 2012年11月18日、三大天才の内、いちばん復活の遅れていた武豊もG1マイルチャンピオンシップを勝ち、復活の狼煙を上げました。羽生が王座を奪還する瞬間をリアルタイムで見たいと願ったように、武が久々にG1を勝つときは、その馬券を当てたいと願っていた私は、運よくそれを叶えることが出来ました。

・マイルチャンピオンシップ完勝記──やってくれたぜ武豊!