電王戦

将棋話──電王戦FINAL感想;;/祐屬肇灰鵐團紂璽拭決着のついた世界

 私はすでに電王戦に興味を失くしている。二年前は土曜を楽しみにし、毎週食い入るようにニコ生を見、感想をこのブログに書きまくったが、今年はニコ生を見ることすらしなかった。それでも気になっていて、結果は毎週チェックしていた。内容もよく知っている。永瀬や阿久津の勝利にはがっかりした。しかしまた「勝つにはもうそれしかない」とも思っていた。

 と書いて思うが、私はまだ十分電王戦に興味があるような気もする。ニコ生をリアルタイムで見ることはなかったが、毎週土曜は結果を気にしていたし、「永瀬の角不成王手」も阿久津の「2八角」も知っている。2ちゃんねる将棋板を覗いては情報を得ていたし、阿久津の勝利に関して書かれた『週刊文春』の記事も読んでいる。私は「もうあのオンナとは別れた。関係ない」と言いつつ、いまなにをしているのか、誰とつき合っているのか、気になって仕方ない状態なのかも知れない。

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 ともあれ二年前のように渾身の電王戦観戦記を書くような状況ではない。相変わらず将棋は大好きで『将棋世界』を愛読し、NHK杯戦を観戦し、『激指』に負けまくり(私はネット将棋は指さない)、眠る前は睡眠薬代わりに詰将棋本を手にしている。しかし電王戦との距離はずいぶんと開いた。
 
 すっかり将棋文とはご無沙汰しているが、それでもこの時期、ネット検索した多くのかたが、二年前の電王戦の文を読みに来てくれていると、人気記事ランキングを見て知る。まちがって来ているのだ。「電王戦.第五局」で検索し、今年の「電王戦FINAL第五局」だと思って二年前の私の文にたどり着いている。あのころは燃えていて、自分なりに熱い文を書いているから、もうしわけないとまでは思わないが、今年のそれを読もうと検索してきたのに、それが二年前のものだったら肩透かしと感じたかたもいたことだろう。検索から私のブログにたどりついたかたがたは、それらの文を読んでくれたのだろうか。「あ、なんだこりゃ二年前のだ」と勘違いに気づき、すぐに去ったのだろうか。アクセス履歴は「来たこと」までしか教えてくれない。中には二年前のものと知ってがっかりしたが、最後まで読み、おもしろかったと思ってくれたかたもいたはずと信じている。そう自負するぐらいあのころは熱い気持ちで書いていた。といってもほんの二年前なのだが。

Shogi.gif・テーマ──電王戦2013 



Shogi.gif ・自分の「将棋テーマ」を一覧で見てみたら、当然のことではあったが2014年の電王戦にも一切触れていない。私にとっての電王戦は2013年で終っている。

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 いまから電王戦FINALと電王戦全体の感想を書く。結論を先に書いておくと、「私はもう電王戦FINALに昂奮することはなかった。コンピュータと人間の闘いに決着はついている。コンピュータの勝ち。羽生が出ても渡辺が出ても、コンピュータの勝ち」になる。

 だから電王戦FINALに興味を持ち、ひととコンピュータの対決にわくわくし、「ついに勝ち越した、まだまだ人間のほうが強い! これからがたのしみだ」と思っているかたは、ここから先を読んでもおもしろくないと思う。

 また先日引退した内藤九段が口にした「コンピュータ将棋にはロマンがない。つまらん」にも私は反論する。それはコンピュータ将棋からロマンを感じる感性が内藤さんにないだけである。というか内藤さんは典型的な「コンピュータ知らずのコンピュータ嫌い」であり、知らないまま語っていると思っている。内藤さんと同じ考えのひともまた以下の文は不快になるだろうから読まないほうがいい。私は「コンピュータ将棋ソフトは、人間の最強棋士より強い」と思っている将棋ファンだ。そして「それをすなおに認められない将棋ファンはアホだ」と思っている。
 
 以下、私なりの電王戦全体への感想と、コンピュータ将棋ソフトとの思い出話である。ソフトとの関わりはファミコン時代からの関わりを以前書いているので繰り返しになるが、もういちどまとめておきたい。(続く)

将棋話──サンスポ「甘口辛口・今村忠」のつまらん電王戦感想──知らないのだから書くな、書くならすこしは勉強しろ!

 サンスポの「甘口辛口」というのに、じつにくだらん文章があった。書いているのは今村忠というひと。

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●棋士側に意味を感じないコンピュータソフトとの対局

2013.4.22 06:41 [甘口辛口]
 1秒間に2億5千万手を読む将棋のコンピューターソフトにトップ棋士の一人、三浦弘行八段が負けた。5人のプロ棋士が5種類の将棋ソフトと対戦した団体戦「第2回将棋電王戦」の最終局。三浦八段の負けで棋士側は1勝3敗1分けで終わった。「プロは強い」と絶対視されていた棋士にとって、これ以上の屈辱はないだろう。

 将棋は概して好手を指した方が勝つというより、悪手を指した方が負けるといわれる。人間同士では相手が悪手を指すと喜びすぎて自分も悪手で返し、負けることもあるからだ。ところがソフトは悪手を指すと、容赦なく正確無比に突いてくる。そこには人対人での駆け引きなどは存在しない。

 電王戦は持ち時間が各4時間だった。「持ち時間10秒のような早指しになると差は歴然。なにしろ向こうは10秒では25億手読むことになる。人間はせいぜい本筋を含めて、2〜3手がやっとだから…」とある高段棋士は苦笑いした。反対にソフト開発者は「既にソフトは名人を超えた」と、自信たっぷりという。

 コンピューター将棋が強いのはよくわかったが、この対局が棋士側にとって何の意味があったのか。負けによってプロとしての存在意義が薄れたといわれても仕方ない。好対照の棋風でファンを沸かせた大山康晴vs升田幸三のように、人間力や個性のぶつかり合いで将棋の面白さを広めることに専念すべきではないか。
 コンピューターには他に人間を超えてほしいものが沢山ある。たとえば「くるぞ、くるぞ」といわれる大地震はいつどこにくるのか。予知となると人間は無力だ。1秒間に2億5千万手の読みこそ、そうした人の命に関わることに生かしてもらいたい。(今村忠)

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 こういう薄っぺらで無内容な文章って、一読するだけですべてが見える。
 この今村ってひとは、将棋もコンピュータも知らない。電王戦は、いわゆる「旬の話題」として取りあげているだけだ。よくいるコンピュータを知らないおっさんらしく、それふうに人間側の肩を持った文を書いただけである。
 コンピュータに対する基礎知識として「1秒間に2億5千万手を読む将棋のコンピューターソフト」を強調する。数字のマジックによるこけおどしである。そしてまた「大山、升田」なんて名前を出す。「古くからの智識があるんだぞ!」という外連である。しかしこのひと、大山升田に関してもまともなことは語れないだろう。一瞬で判る。

 そして結びはだれもが興味を持っている「地震予知」に繋げる。いかにも、な結び。それでコラム、いっちょ上がり。なんとも安易な姿勢が見えて、将棋好きとしても、コンピュータ好きとしても、次の地震を案じる日本人としても、たまらん気持ちになる。これが日本の「コラムニスト」の現状だ。



 コンピュータを知らないひとの顕著な特徴は、知らないから嫌っているのだが、同時にコンピュータに異様な恐怖心をもっていることだ。ある種、誰よりもコンピュータを崇拝していると言える(笑)。「スイッチポンで、あっと言う間に、凄いことを何でもやってしまう」のように思いこんでいる。コンピュータは、人間がひとつひとつプログラミングしないと何もしない、出来ない。

 先程、YouTubeで「ほこたて」を見た。「最新シュレッダーで断裁した絵葉書文章を、スキャンし、結合するプログラムで読めるところまで復元できるか」という闘い。コンピュータ側はアメリカのプログラマー軍団。絵葉書の断片をスキャンし、読み取り結合を始めるところからはコンピュータの出番だが、その前は、鼻息で吹き飛ばさないようマスクをした人間が、細いピンセットで断片をひとつずつスキャナーで読み取らせる手作業だ。コンピュータを嫌い、やたら怖れ、一方で意味なく崇拝する連中は、ここの流れがわかっていない。

 将棋ソフトも、人間が作りだした過去の棋譜を読みこんで学習する。プロ棋士にとってコンピュータとの闘いは、機械との闘いではなく、過去に自分達が紡ぎだしたものとの闘いでもある。



 こういうコラムをしたり顔で書くひとは、ニコ生中継を見ながら、将棋ファンがどんなに熱狂したかなんてわかりゃしない。塚田にもらい泣きした気持ちなんかわからない。
 わからないのは、彼らに無縁の世界なのだからそれでいいけれど、わからないくせにわかったふうなことを書くからたちがわるい。棋士にもコンピュータソフト開発者にも将棋ファンにも失礼だ。その「失礼」の感覚が缺落している。「紙メディア」でのマスコミ意見だから粋がっている。ふんぞりかえっている。自分の滑稽さに気づいていない。上半身は正装して立派だがズボンを履き忘れている。ついでにパンツも。

 サンスポを毎日購入していたころから、つまらんコラムだなあと読みたくないのに目を通しては惘れていた。いまだにこんなことを書いているのか。どうしてこんなものが続いているのだろう。サンスポに自浄作用はないのか。

「読みたくないのに目を通して」いたのは私が活字ケチだからである。せっかく買ったものだからと、やりもしない競艇やインチキ競馬予想会社の広告まで、そこにある活字全部を読んでしまう。それでもさすがに最後のころはこのコラムとエロ記事は読まなくなっていた。



 しかしまたよくできたもので、世の中にはこういうのを好むひともいる。この今村というのと同じようなひとだ。将棋も知らない、コンピュータもいじれない、でもニュースで「将棋のプロ棋士がコンピュータに負けた」らしいと一行ニュースとして知る。そしてこういうコラムの「1秒間に2億5千万手!」というこけおどし数字に反応する。それがもう罠に落ちていることなんだけど。
 期待通りに、このコラムのように、「それがなんだってんだ、コンピュータにはもっとやるべきことがあるだろう」のような「わかったふうの」意見を言う。まあそんなひともいて世の中、動いているわけだが……。



 第五局が終り、電王戦総括としての記者会見。
「時間の関係で、最後の質問にさせていただきます」に手を上げ、質問したのは産經新聞のフジタというひとだった。
 質問内容は「(ニコ生を)どれぐらいの人数が見たのか教えてくれ。一日でもいいし、総数でもいいし」

 そんなことすら知らないなら記者会見に来るな。最終戦第五局の取材に来るなら、第一局から第四局まで調べてくるのが記者の基本だろう。それらはすべてニコ生で見られるようになっている。ニコ生を一度も見たことすらない門外漢なのが丸わかりだ。それが日本のマスコミか。
 なんだか虚しくなるような最後の質問だった。

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【追記】──2ちゃんねるにスレがありました 20:17

●2ちゃんねるの「甘口辛口」のスレ

 2ちゃんねるにこの件に関するスレが立っていました。
 総じて、真っ当な批判が多く安心しました。日本人はまだまともなようです。
 もちろんこのコラムを賞讃している意見もありました。

 最後の「こいつらって、コンピュータに命令すればなんでも出来ると思ってるじゃねーの?」に強く同意します。
 知らないんだから書くな、書くならすこしは勉強しろと言いたくなります。



36 :名無しさん@恐縮です [↓] :2013/04/22(月) 10:41:37.69 ID:yD+smNTp0
負けた途端今までが無意味みたいな意見言い出すのはバカすぎねえか?

棋士のレベルも半端無いから2013年まで勝てなかったんだろ。俺が相手なら
20年前のPCでもコンピューターの勝利だわ。



39 :名無しさん@恐縮です [↓] :2013/04/22(月) 10:42:34.18 ID:Dhenj3Le0
>存在意義が薄れたといわれても仕方ない

馬鹿の筆頭
これがマスゴミか 



52 :名無しさん@恐縮です [] :2013/04/22(月) 10:46:41.00 ID:Ws9NvrKoP
こいつらって、コンピュータに命令すればなんでも出来ると思ってるじゃねーの?

二億通り以上の先手を作り出すアーキテクチャは人間が考えてんだよ

地震予測をやれ?
だれがその元となるアーキテクトを創るのですか?

一見無意味とも思える将棋プログラムがその肥やしにもなるのですよ?

将棋話──電王戦第五局──声優・岡本信彦の将棋実力──本物を見ると気分がいい

Shogi.gif もうひとつHさんのメールから。
 声優岡本信彦さんのこと。
 私もこのひとのことを書こうと思っていたので、いいタイミングで触れてもらいました。



okamoto2












> いままでコンピュータソフトは、棋士の過去の定跡から戦法を構築して行くので、新手、新定跡とは無縁、創りだすのは無理

一方で、こちらこそ純然たる新手、新構想といえるかもしれないのは、gps将棋が突いた矢倉の端歩△1四歩ではないでしょうか。

この歩は端攻めされる恐れがあるので突いてはいけない、というのが定説でしたし、ニコニコ生放送の大盤解説でも、ゲストの声優の岡本信彦が指摘していました。

小学生時代は研修会にいて将棋連盟の道場で三段、橋本八段に飛車落ちで勝ったことのある、かなりの指し手です。こういう人が、ニコニコ動画というメディアをハブにして「アニメ」と「将棋」を繋ぐとすれば、ニコニコに進出した甲斐があったと思います。
ただ、大島麻衣に厳しい指摘をされる結城さまですから、もしかすると評価はされないのかもしれませんが。




 私はこのひとをまったく知りませんでした。今風のさわやか青年がゲストとして登場したとき、だいじょぶかと案じました。

 【芸スポ萬金譚】につるの剛士のことを書いています。この時点では彼の将棋好きに感心していたのですが、あの「将棋検定テスト」の時、いつだっけ、あれ、森内名人も受験したヤツ、え〜と、忘れた、調べる、ああ去年の10月か、あれの簡単なやつをスタジオでやったら、「次の三人の内、名人位をいちばん多く獲得しているのは? 1.羽生、2.中原、3.大山」で、羽生を選んでハズれているのを見て、「こいつ、ほんとに将棋好きなのか!?」と急に疑問に思いました。彼が彼なりに将棋好きなのはまちがいないのでしょうが、でも将棋好きと、そういう無知が同時に存在しているのですね。だけどこれはちょっとお粗末です。

 「社長島耕作に少年編が」には、「アメトークの島耕作特集に疑問」を附記しました。島耕作大好きだという芸人が集まってそれらしいトークをするのですが、30そこそこの連中の知識は浅く、見ているのがつらくなりました。

 そういうことをさんざん経験してきているので、私は、この青年(そのときには名前も覚えていません)に懐疑的でした。「将棋、だいすきなんですぅ」なんて女が登場して、口先だけでうんざりしたなんてことは多々あります。



okamoto













 でも嬉しい誤算、本物でした。
 Hさんと同じく、矢倉で、後手からの1四歩にすぐ反応し、指摘した時点で、「あ、これは強い人だ」とわかりました。その後の意見もすべて見事でした。

 そのときに、「あとでこのことをブログに書こう」と思ったのですが、彼のことをなにも知らないので戸惑っていました。知らない人のことだから「あの青年は本物だ」としか書けません。
 今回Hさんから「小学生時代は研修会にいて将棋連盟の道場で三段、橋本八段に飛車落ちで勝ったことのある、かなりの指し手」との情報をもらいました。研修会にいた本物なのですか。そりゃ指摘のセンスもいいはずですね。

 「大島麻衣の競馬」は、知らないのに知ったかぶりするから、タレント売り出しの戦略としてまちがいではないのか、につきます。もう一歩かしこいと、引くこともできるのでしょうが。
 その点、岡本さんは本当に棋力があるから本物です。

 岡本さんが、声優という仕事と、かつてはプロを目指した本格派の将棋好きということを、うまく両立させ、絡めて、ふくらませ、大きく成長することを、心から願っています。

将棋話──電王戦第五局──7五歩からの仕掛けは新手ではなかった!

Shogi.gif ニコ生で電王戦第五局を再生しながら書いています。10時間39分の中継をもういちど見られるのだから贅沢です。ニコ生に頭があがらん。

denou5-7  この局面。
 詰めろ詰めろで迫ってくるGPS。

 なんとか振りほどこうとするのですが、解けません。

 解説の屋敷と矢内も懸命に考えるのですが脱出口が見えません。沈痛な雰囲気になってきました。

 胃が痛くなる場面です。しかも相手は矢倉の堅城で手つかず。三浦八段が顔を真っ赤にして苦しんでいます。

 私はこのあたり、リアルタイムで見ていませんでした。いま「タイムシフト再生」というこれで見て、三浦と一緒に苦しんでいるところです。



 Hさんがまたすごいことを教えてくれました。Hさんと同じぐらい詳しいひとはもうご存知でしょうが、私レベルのひとには驚愕情報だと思うので、紹介させてもらいます。
 あの「7五歩」からの仕掛け、勝又や渡辺竜王が「新手」と言った手に前例があったというのです。
 以下、Hさんのメールからの引用です。

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> 7五歩からGPS将棋が仕掛けたところ。勝又によると新手だという。新手で三浦を撃沈したのだ。

このくだりですが、おそらく屋敷伸之九段だろうと言われている匿名のTwitterアカウントの@itumonhttps://twitter.com/itumon が、非常によく似た実戦例が1982年に存在していた、と教えてくれました。
しかもそれが、この日将棋会館にいた、電王戦出場者の塚田泰明と、開催に関与した連盟の理事の田中寅彦の対局というのだから、真部一男の幻の4二角と大内延介の局にこそ劣りますが、なかなかの因縁でしょうか。

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@shogishogi ありました!1982年の全日本プロの▲塚田四段ー△田中寅彦六段がこの仕掛けですね。(塚田先生が先手なので)▲3五歩△同歩▲2六銀△3六歩▲3五銀△4五歩と進んでいますね。本当にありがとうございます!

https://twitter.com/itumon/status/325653845457911808

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このアカウントが屋敷ということは一度も明言されていないのですが、タイトル棋戦を リアルタイムで解説するときの分析の深さと鋭さが並大抵ではないこと、屋敷が対局のときや大盤解説などのときはツイートがないことから、ほぼ屋敷で間違いないだろうと言われてます。あまりTwitterは活用されていないと書かれているのを拝見しましたがタイトル戦のときなどはこちらのアカウントをフォローされておられるとより楽しみが増えるのではないかと。

勝又がこの棋譜を見つけられず、渡辺も初めてだと言ったのは無理もないかと思います。


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 ふうむ。もう溜め息しか出ません。そうなのですか。コアな情報をありがとうございました。31年前の棋譜ですものねえ。さすがの勝又教授も気づきませんでしたか。お化け屋敷はそんな活動をしているのですか。なぜ正体を隠しているのでしょう。

 Twitterは「あまり活用していない」どころか今はまったくやっていません。起きている間中、絶え間なく呟き続けている<きっこさん>のようなひとを見ると、狂人としか思えませんし、サラリーマンやOLが仕事の合間に、あれこれ思いつくことを呟いているのを見ると、気味が悪くなります。あれに中毒したら黙ってはいられなくなるのではないでしょうか。ツイッターで知りあったひとでまともなひとを知りません。

でも、こういう話を聞くと見直します。とはいえ私のフォローしているのは政治関係のかたばかりで、将棋関係をフォローしても、めちゃくちゃ活動的なそのひとたちの発言の中に埋もれてしまいます。いまも橋本八段とかいくつかフォローしてますが、埋もれてしまって見にくいです。

 そうか、将棋情報を得るためだけの将棋専門アカウントを作ればいいのか。なるほど、Twitterというのはそういうふうに使い分けるものなのですね。早速いまからやってみます。

将棋話──電王戦第四局、第五局に【追記】──メールをくれたHさんに感謝を込めて──「名人戦」のことを書いた夜

 コンピュータ将棋にとても詳しいHさんが、長文のメールでご意見をよせてくださり、私の観戦記の勘違い等を指摘してくれました。

電王戦第五局「GPS将棋、三浦八段に勝つ」

電王戦第四局「塚田八段対Puella α 持将棋」

 修正部分を下部に*マークで追記しました。

 Hさん、ありがとうございました。また何か気づいた点がありましたら教えてください。感謝しています。

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●仕事に対する私の基本姿勢──将棋、放送、競馬、その他あれこれ

 私は、マイナーではあるけれど、良質の仕事をこつこつとこなしてきたと自負しています。
 私と感覚のちがう同業者は、「おれは来た仕事は断らない。それがポリシーだ」と言っていました。依頼があった仕事は絶対に断らないというのです。どんな仕事も受けるのだから収入にはなるでしょうが、ずいぶんと質の悪いいいかげんなこともしていました。いわゆる団塊の世代というのは、最高最悪の競争社会を生き抜いてきたので、仕事を断ったら他人に取られる、二度と発注が来ないかも知れないという恐怖を抱き、注文を断れないようです。そのことにより、ろくに知らない内容の仕事でも、来たら全部受けてしまうのでしょう。井崎さんとか石川さんはこのタイプですね。上記のその理由をご自分たちで口にしています。



 ベビーブーマーの正しい意味を知らないひとは、なんでもかんでもおっさんを狠腸瑤寮ぢ絖瓩砲靴討靴泙い泙垢、私は正しい意味で団塊の世代ではありません。それは正真正銘の団塊の世代である兄と比べるとよくわかります。5歳上の兄と私では中学校のクラスの数が倍もちがいました。当然競争の限度がちがいます。兄のときは一組50人以上で12クラスもありました。私の時は40人で6クラスです。半分以下です。それほどちがうのです。ベビーブーマーとは、あの第二次世界大戦が産んだ異常な世界でした。兄の世代は先生に対して「ハイ! ハイ!」と積極的に手を挙げないと、永遠に指名されない(覚えてもらえない)世界です。目立ち根性がちがいます。私のときは、手を挙げなくてもふつうに順番で指名されてしまう世界でした。そして今その田舎は過疎になり、一年生と二年生が一緒に学ぶ「複式学級」とかいうのになっています。併せても20人もいない世界です。兄の世代と複式学級では、同じ学校でも全然ちがいます。団塊の世代のああいうひとりひとりの存在感が薄くなってしまう競争社会に生きてきたひとは発想がちがいます。何を考えるにしても段階の世代は独特の発想をします。そういう競争社会に生きてきたからでしょう。たとえば「カンナオト」なんてひとの目立ちたがり根性が典型です。私からすると「来た仕事はどんな内容でも必ず受ける」という発想は理解し難いものになります。

 私は彼らとは逆に仕事を選びに選び、納得できる数少ないものだけを受けてきました。「やっつけ仕事」をしたことは一度もありません。それは私の誇りです。後々恥じることのない仕事をするのが私の基本でした。



 将棋では、むかし「月刊プレイボーイ」から、本来それを書くはずだった弦巻というカメラマンが締切を守らず、ぎりぎりになって書けないと逃げてしまい、そこが白紙になってしまいそうだから助けてくれと編集者から電話が来たことがありました。電話が来たのが夜の9時、ぎりぎりで印刷所に放り込む締め切り時間は明日の朝の6時だとか。

 親しい編集者ではありませんでした。弦巻というひとが、ぎりぎりで行方不明になったため、錯乱状態に陥り、知り合いのライターに片っ端から頼んだけど全員断られ、そのときなぜか私が将棋好きだったことを思い出し、もしかしたら書けるのではないかと、わらにもすがる思いで電話してきたようでした。

 テーマは谷川が新名人になり「あたらしい時代が到来した」ことを、歴代の名人戦を振り返りつつ書くというものでした。書けるか書けないか一瞬考え、書けると判断し、受けました。ひどいものを書いて後々まで悔やむようになる可能性もありましたが、義を見てせざるは勇なきなりと、なぜかそのときは思いました。

 そのとき私が相手に出した条件は、「ワープロのシャープの書院を用意しておいてくれ」だけでした。使い慣れた書院を用意してもらえばなんとかなるはずです。逆に、それがないと量的に手書きでは自信がありません。まだPCではなく「書院」で書いている時代でした。私のは、固定型の大型のタイプだったので持参するわけには行かず、「用意してくれ」と頼んだのですが、今は、ユーザー辞書の入っている自分のワープロをタクシーで運べばよかったのだと気づきます。そのときは思いつきませんでした。けっこう私もテンパっていたのでしょう。

 あちらから用意できそうだと返事があった後、編集部に駆けつけ、会議室の中で、一切の資料もないまま、徹夜で、なんとか6時直前に書きあげました。4ページ用で原稿用紙換算20枚ほどでした。きつかったです。
 谷川が中原から名人位を奪った時期のことでした。テーマもそれです。大山から中原、そして谷川と、自分でもあれこれ想うことがあったので書けた原稿でした。谷川が初めて名人になり、あの名台詞「名人を一年預からせて頂きます」の時ではありません。あれは加藤一二三から奪取した時です。
 中原から奪い、「中原さんに勝って初めて名人」と思っていた谷川が、真の谷川時代に向かって歩き始める時です。(でも中原さんは、谷川からまた取りもどします。驚異でした。感動しました。)

 一晩で仕上げたのですから、何十回も読み直して推敲するのが常の私の仕事としては、時間的に一種のやっつけ仕事になりますが、出来上がったものに関しては今も自信を持っています。
 落ちるかもしれないと覚悟していたのをぎりぎりで助けてくれたとたいそう喜んでもらい、編集長までニコニコ顔で出てきて、握手をして(笑)、その場でギャラの20万をくれました。ギャラのことは聞かずに受けました。いわゆる「とっぱらい」で、後に源泉徴収も来なかったように記憶しています。一晩で20万だといい仕事のようですが、当時の私は馬券狂なので、その週にすぐに溶かしてしまいました。

 弦巻さんというひとは、将棋関係では高名なカメラマンらしく、そのときカメラマンを飛びこえて、さらに「エッセイスト」としてデビューしようと思ったようです。でも現実にはまったく書けず逃げ出しました。いまも名物カメラマンらしく、大言壮語しているのをたまに将棋雑誌で見かけますが、迷惑を掛けられた私は好印象をもっていません。逃げた詫びもありませんでした。積み重ねてきた将棋愛があったから、水準以上のものを書けたと思っていますが、へたをしたら、唯一の、今も恥じる、やっつけ仕事になるところでした。

 前記、「今も自信を持っています」にはすこしウソがあるかもしれません。後々後悔と羞恥で身悶えするようなひどいものを出さなかったというだけで、三日あったらもっといいものが書けたし、一ヶ月前に正規の注文を受けていたら、どんなにいいものが書けただろうとは思います。だから、やっぱり、これはこれで私の「将棋関係唯一のやっつけ仕事」なのかも知れません。



 放送関係は学生時代から親しくしてもらっているM先輩がディレクトする仕事をやってきました。これもM先輩という仕事に厳しいすばらしいかたがいたからやったのであり、手を広げませんでした。心優しいM先輩は、自分にもっと力があったら、私にももっともっといろんな仕事を廻して遣れたのにとおっしゃってくれたことがありましたが、私はM先輩以外のディレクターと仕事をする気はありませんでした。自分から世界を縮めているようですが、後々恥じない仕事をするためには、己の力に応じた、こういう縮めかたも必要と思っています。



 競馬では、この20年を振り返ると、ずっとYさんという名編集者に支えられてきたのだと、あらためて気づきます。
 理科大院卒のYさんは、理系独自の厳しさで、情というか乗りで書く私の文章を、上手に諌めてくれます。Yさんの指摘により、私は脱線した部分を修正し、飛びだしたよけいな枝葉を剪定します。結果としてこの20年、私とYさんのタッグで創りだしたそれは、どこに出しても自慢できるだけのものであったと自信を持っています。昨年の仕事など、たった4枚を書くのに、どれほど多くの資料を読んだ(読まされた)ことか(笑)。

 今春、移動でYさんは私の担当ではなくなってしまいました。今更ながらYさんの世話になっていた自分に気づき、とても心細い心境で仕事をする春です。



 Hさんも理系のかたなのでしょうか。私の脱線した部分を適確に指摘してくださるメールを読んで、私の缺けている部分を補ってくれる感覚に、Yさんとの仕事をなつかしく思い出しました。
 Hさんがコンピュータ将棋に興味をもったのは「渡辺対ボナンザ戦」からだとか。そのあとの集中しての取り組みかたと系統だった智識は、やはり理系の智性を感じます。
 私も一応理系崩れ(笑)で、数学大好きであり、いわゆる「国語英語が大得意。数学物理はチンプンカンプン」というタイプではないのですが、大ざっぱな自分を反省するたび、本物の理系のきちんとした感覚のかたはすごいなと感嘆します。

 Hさんは今回あらたに知りあったかたではありません。もうずいぶんと前から、気づいたことがあると指摘してくれます。ありがたい存在です。今回のメールはひさしぶりでした。

 今日も雨。
 ひさびさに「インターネットもいいもんだ」と思える朝になりました。多謝。

将棋話──電王戦第五局──GPS将棋、A級三浦八段に完勝!──歴史的変革の日

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小雨の日、GPS将棋が、現役A級三浦八段に、矢倉で完勝した。今年1月12日、A級順位戦で羽生のA級21連勝を止めた三浦である。1996年、無敵の羽生七冠から棋聖位を奪い、七冠を崩壊させた、あの俊英の三浦である。そのことにより、「電波少年」で、松本明子にアポなし押し掛け交際を迫られ、「最初はお友だちから」と応じていた、あの三浦である。それが木っ端微塵にされた。
(写真は朝の10時40分。観戦者は56000人)



佐藤四段の和服が気合なら、*1カジュアルなセーター姿での対局は、これはこれで三浦の対局に臨む姿勢だったのだろう。かなり意図的だったと思われる。おまえごときに正装はしないという。
(いま18時50分からの記者会見では、背広を着てきた。)



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この勝利の価値は大きい。現役A級の三浦からの完勝なのだ。奇策ではない。三浦得意の矢倉なのだ。しかも7筋からGPS将棋が仕掛けての完勝である。残り時間は三浦が1分。コンピュータは1時間53分。
コンピュータ側の3勝1敗1引き分けだが、実質4勝である。
Puella αの伊藤が言うように、もう最強の将棋ソフトは「名人より強い」と言えるだろう。
森内名人がGPS将棋に勝てるイメージが湧かない。

電王戦は来年からどうなるのだろう。
今年、もう、それなりに、いや、それなりに、じゃないか、結論は出た。



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今日もなぜか無料会員なのに追いだされずに最後まで見られた。いま観客は441413人。
将棋の歴史が変る日に立ちあえた幸運に感謝する。

「禁断の扉を開けた」とは、こんなときに使うのだろう。
パンドラの匣に希望は潜んでいない。

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【追記】──将棋の美学 19:12

いま会見をやっている。
金子さんとおっしゃるGPS開発者のかたは、謙虚で気持ちいい人だな。感心した。将棋はこうでなくちゃ。
将棋の美は、礼儀にある。
勝敗が決したとき、「負けました」と頭を下げた敗者に、勝者は決して居丈高に口を利いたりはしない。敗者が平静になり、ことばを搾りだすまで、沈黙して、待つ。
それが将棋の美学だ。

私が『月下の棋士』を嫌いなのは、基本として、筋そのものがけったいなものだからだが、この美学がない作品であることによる。年輩者に対する口のきき方も出来ず、室内でもいつも野球帽を被り、正座もしない無礼な少年には、いくら将棋が強かったとしても、将棋を語る資格はない。やたらこの作品を誉めるひとがいるが、この考えは変らない。連載中は毎週スピリッツで読んでいたし、単行本もまとめて読破しているが、変らない。不快になる。嫌いだ。ごく一部では「あれを見て将棋を始めたこどもは態度が悪い」という批判もあるようだ。これはまたあとで書こう。

Puella αの開発者が嫌われる理由も、その辺にあろう。
それにしてもせつない。どうしてこんなにかなしいんだろう。

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【追記.2】──記者会見を見て 20:05──観戦者は47万人

全員揃っての記者会見。勝者のコンピュータ側が、みな謙虚だったのが清々しい。
Puella α伊藤だけがニヤニヤしていた(右から2番目)が、しかし彼の予言通りの結果になった。コンピュータ側の完勝なのだ、それは許される。

*2昨年の世界コンピュータ将棋選手権で、全勝のGPS将棋に唯一黒星を点けたのが、前年度の優勝ソフトボンクラーズの改良型Puella αだった。
いま思うのは、結びの一番で三浦を破るのがPuella αでなくてよかったということだ。それどころかPuella αは塚田に持将棋に持ちこまれ、五局のなかでいちばんつまらない将棋を指している(指させられた)。伊藤は「ふつうの将棋を指したかった」と不満を述べていた。「つまらない将棋だった」と言い、それは棋士に対して失礼ではないかと週刊誌にも取りあげられていた。大一番で目立ちたかった伊藤をそこに追い遣った塚田は、やはり殊勲なのだ。
もっとも、大賞の三浦を破るのがPuella αであり、伊藤が「Puella αは名人を越えた。来年は名人か竜王とやりたい」なんて豪語するのも、憎々しいラスボスとして、物語としてはおもしろいかも知れないけど……。



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六本木でMCの矢内も、今日の敗戦はいつになく悔しそうだった。A級三浦が勝って、2勝2敗1引き分けは、みんなの願いだった。
会見での谷川会長も悲痛な顔をしていた。

画像は7五歩からGPS将棋が仕掛けたところ。勝又によると新手だという。新手で三浦を撃沈したのだ。
いままでコンピュータソフトは、棋士の過去の定跡から戦法を構築して行くので、新手、新定跡とは無縁、創りだすのは無理、と言われてきた。そうじゃないことを証明した。すばらしい。



ニコ生のコメントで新鮮だったのは、「初めて見ましたが」と、将棋を全然知らないひとが、かなりの数、見ていたことだ。
将棋を知らないひとたちにも大きなアピールをした「電王戦」だった。
これは「将棋」というテーブルゲームにおいて、日本将棋連盟にとって、プラスになったのだろうか。
私のように落ちこんでいるものだけではなく、これがひとつのブームとなり、日本のこどもたちがもっともっと将棋を始めてくれるなら、それはとても寿ぐことだ。

でも、毎度言うことだが、これから将棋を覚えるひとにとって、パソコンでもゲーム機でも、将棋ソフトってのは「自分より強いもの」なんだな。なら十数年以上将棋ソフトに負けなしだった私は、そんな時代にいられたことを喜ぶべきなのか……。



たとえばそれは、息子に関して、抱きあげて遊び、肩車した記憶があるようなものだ。いま息子は自分より大きくなったけど、それはそれで成長の楽しみだ。息子のほうにも、かつては見あげていた大きなお父さんが、いまは自分よりちいさいというのは、それはそれで感慨だろう。

しかしこれから将棋ソフトで将棋をするひとは、最初から見あげるような大巨人と戦うことから始まる。どんなに努力しても(そりゃ強さはいじれるけど、最強設定では)勝てない相手との遊びになる。父と息子で言うなら、こどもは最初から自分よりも大きいのである。こどもに抱っこされることはあってもだっこすることはない。ここにおける意識の差はかなり大きい。

そうだな、私はファミコンの「森田将棋」、PSの「東大将棋」、PS2の『激指2』、パソコンの「極」から、「AI将棋」「東大将棋」「金沢将棋」、いまの『激指』「銀星将棋」まで、「かつては勝っていた。勝ちまくっていた」のだ。今は歯が立たないけど、その「かつて」を思い出に生きて行くか。息子は大巨人になってしまったけど、かつては私が肩車して遊んでやったのだ。



流れてきたコメントに「夢のような1ヵ月だった」とあった。
この5週間、私も楽しませてもらった。生中継ニコ生の価値は絶大だった。ニコ生あっての電王戦だった。
2ちゃんねるの「将棋板」には、「電王戦がおもしろすぎて他の棋戦がつまらない」との書きこみもあった。それもまた事実だ。私の中でも、この1ヵ月、名人戦より遥かに興味が強かった。将棋ソフトとともに、ニコ生もまた勝者である。

米長が生きていたら、どんなコメントを発したろう。どんなときでも凡庸な発言を嫌い、ひととは違う味を出して目立ったひとだから、また誰とも一味ちがう発言をしたことだろう。聞いてみたかった。この結果を見届けて欲しかった。あのPVが輝くのも、ラスボス伊藤の憎々しさと、やつれた米長がいるからなのだ。あらためてそう思う。

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H氏よりご指摘いただいての修正──4/20 6:06

*1──三浦八段は、ずっと背広(上着)を着ていて、セーター姿になったのは午後からだとのご指摘。小雨の降り続く、冬にもどったかのような寒い日だった。私も室内で秋物の薄地のジャケットを着た。
 三浦八段は、寒い日だったのでスーツの中に薄地のセーターを着て対局し、午後、暑くなったので上着を脱いだ=べつに意味はない、のではないかとのご意見。その通りでしょう。こちらで訂正し、本文はそのままにしておきます。

 じつは土曜日であり、競馬もやっていたので、一日中ニコ生にはりついていたわけではありません。短時間ながら外出もしています。観察不足でした。失礼しました。
 その裏には、「電王戦の中でも最高の話題となる第五局、A級三浦八段との闘いであり、視聴者が殺到し、もう昼前には無料会員は追いだされるだろう」との投げ遣りな気持ちがありました。最後まで見られたのは意外です。

「棋士のセーター姿」というのは、私はあまり記憶にありません。三つぞろいのベスト姿はけっこう見ていますが。とても新鮮な姿でした。真っ先に思いつくのは、「NHK杯戦にカラフルなもこもこセーター姿で登場して顰蹙を買った先崎」です。「そんなことに何の意味がある!」「目立ちたがり師匠の悪いところばかり真似して!」と糾弾されました(笑)。あれ以来テレビ棋戦でそんなことをする棋士はいないようです。

 でもそれは、私がむかしの「早指し将棋選手権」「NHK杯戦」ぐらいしか「映像」を知らないだけで、テレビ中継のない将棋会館での対局では「棋士のセーター姿」はごくふつうなのでしょう。先崎のようなのは特別としても、今回のように「寒い日に上着の中に薄地のセーターを着る。暑くなったので上着を脱いでセーター姿」というのはよくあることなのかもしれません。単に「私にとって棋士のセーター姿が新鮮だった」というそれだけの話ですね。すみません。



*2──昨年の世界コンピュータ将棋選手権で、全勝のGPS将棋に唯一黒星を点けたのが、前年度の優勝ソフトボンクラーズの改良型Puella αだった」に関して、Hさんは「私の棋力では、この将棋はGPS将棋が勝っていたのを、ソフト全体の弱点とされる入玉の対応を誤ってpuellaに負けた、と思っているのですが結城さまはどのようにお考えでしょうか」と問うてくださいました。

 おっしゃるとおりです。私も『将棋世界』でこれは見ています。今回の電王戦の前にも読み返したほどです。そこでの解説もHさんの言うように、「GPS将棋全勝優勝かと思われたら、最後の最後に思わぬ展開に」のようになっていたのを覚えています。
 全勝のGPS将棋に「入玉」問題で初黒星を点けたPuella αが、塚田に入玉から持将棋にされるという皮肉な展開になりました。Puella α伊藤の傲慢な態度が好きでない私(笑)は、詳しく触れませんでしたが、勝敗に関する見解はHさんと同じです。
 しかしこの入玉や点取りもコンピュータはすぐに改善するだろうし、鉄壁ですね。



 もうひとつ第四局の「コンピュータソフトは、古今の百人以上ものすぐれた棋士が心血注いで作りあげた定跡や戦法を全部身に着けているのだ」に関しても意見を戴きました。それは第四局のほうに【追記】したいと思います。
 Hさん、すばらしい内容の長文メールをありがとうございました。心から感謝します。

将棋話──電王戦第四局に【追記】──河口さんの観戦記を読んで知ったこと──投了の進言を拒んだ神谷

Shogi.gif「電王戦第四局──塚田対Puella α」に、「河口さんの観戦記を読んで感じたこと」を追記しました。

18日に公開されるというので待ちかねていた河口さんの観戦記がアップされたのは20日でした。知らないコンピュータ将棋の観戦記でご苦労されたのでしょう。期待にたがわぬ力作でした。

そこで、河口さんや先崎は、あの絶望的な状況(入玉は出来るが点数で負けることが確実)になったとき、塚田八段にもう投了した方がいいと進言するよう立ち合いの神谷七段に促したそうです。しかし神谷が断固としてそれを拒み、指し続けることを望みました。その結果あの「大逆転持将棋」が成立したのだと知りました。 

塚田と神谷は「花の55年組」です。同期生のあのあまりに惨めな状況に、それでも心中で逆転を願った神谷の気持ちが、あれを産んだのでしょう。
河口さんは、「あんな将棋は二度と見たくない」と言いきっています。
私もああいう将棋を見たいとは思いません。
しかしあれは、人間の意地が産んだ人間的なものでした。
しかしまたそれは、ニコ生の中継があったからこそ感動的なのであり、棋譜だけを見たら、じつにつまらんものでもあります。

さて、今日は、三浦八段の登場する第五局。
ニコ生の無料中継は無理でしょうから、またfc2経由で見せてもらえることを願う次第です。

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そろそろ、ほんとに有料会員になろうかな。有料会員になったら、私もfc2経由中継のような形でどなたかの役に立ちたい。でもその技術はない。パソコン歴30年自作歴15年でハードには詳しいけど、そっち方面の智識はまったくない。未だ動画のアップすらしたことがない。もっとも、したくても出来ないのではなく、したいと思ったことがないからやったことがなく、やりかたを知らないだけだ。必要になったら覚える。
あちこちの記事を寄せ集めた個人の出す「日刊新聞」てのがあるけど、あんなのってどうやって作るのだろう。想像すらつかない。あんなことに興味はないのでこれまたどうでもいいけど。ああいうことをしているひとのモチベーションてなんなのだろう。わからん。

ここのところ、自分の詩をIllustratorでデザインされて発刊されるパンフのデザインが気に入らないので、本気でPhotshopとIllustratorの勉強を始めた。いままで何度も挑戦しては挫折している。才覚がないのだろう。果たしてマスターできるだろうか。マスターして、自分の詩は自分でデザインしたい。
といって、假りにマスターできて、そんなものを作っても、自分だけの慰み物でしかないのだが。
それでも気に入った写真と自分の詩と自分のデザインなら満足は出来るだろう。でもなあ……。前途多難。 

将棋話──電王戦観戦記の感想記──第1局観戦記=すべりまくる夢枕獏

 電王戦の観戦記は第1局と第5局が夢枕獏。第2局が先崎八段、第3局が大崎善生、第4局が河口七段、ということらしい。いま第3局まで公開されている。河口さんのは4月18日公開だとか。

 以下、三局分の感想を述べる。意見が違い気分を害するかたもいるだろうことを予めお断りしておく。夢枕獏氏のファンは不快になるだろうから読まないでください。

Shogi.gif電王戦観戦記




 第1局の夢枕の観戦記がひどい。ニコ生のえらいひと(社長)とのやりとりから、初の観戦記を「やりましょう!」となり、社長のほうもネットだから紙数に制限はなく、「好きなだけ書いてください!」と盛りあがっての始まりらしい。まあそういう勢いはほのぼのとしていていいけれど……。

 この観戦記の感想をひとことで言うと「はしゃぎすぎ」である。あるいは「空回り」か。羽生を相手に名人戦防衛戦をやった米長が52歳と書いてあるが、正しくはまだ50歳と11カ月だろう。でもそんな細かいことはどうでもいい。後で直せる。しかし「空回り」という全体の空気は直せない。

 米長がボンクラーズに負けた「われ、敗れたり」を読んで「泣いた」という。信じがたい。あんなものを読んで泣くか。私は白けた気分で読了しただけだった。しかしその理由も読み進むとわかる。このひと、なにも知らないのだ。
 書きだしはこうなっている。



一局目と五局目を観戦して観戦記を書くのがぼくの役割であった。
 観戦を終えた時にはすでに原稿の構想はできあがっており、どう書くかという文体まで決めていたのだが、今日『われ敗れたり』を読んで、これまで考えていたことが、みんなぶっとんでしまったのである。
 白紙。
 まっしろ。
 その中で、ぼくが考えていたのは、この本を書いた米長邦雄のことを書かねばならないということであった。まず米長邦雄のことを書かねば、この稿を進めることができないと思ったのだ。
 おれはプロだよ。
 書くことのプロ。
 要求された枚数で、必要なこと、思ったことは書ける。
 だから、いきなり、この文章を普通の観戦記としてスタートさせることだってむろんできたのだが、この米長邦雄の本を読んだ時に。それができなくなってしまったのである。
 落涙。
 おれは泣いたよ。
 米長邦雄に泣いたのだ。




 これ、ここだけ読むといい話のようだけど、冷静に分析すると違う面が見える。
「今日、『われ、敗れたり』を読んだ」とある。1年前に出た電王戦に関するこの本を観戦記を書く今日まで読んでなかったのだ。観戦記を書くことになって急いで読んだらしい。するとそこには自分の知らない世界があり、感動したのだ。それでもって書く方向性を変更することにした、という。いい話のようでいて、じつは単に「おれ、将棋に熱心じゃないんだ」と告白しているにすぎない。私は1年前に発刊されてすぐ読んでいる。たいした中身の本ではないが、そういうタイミングで読むべきものだったとは言える。観戦記を書くぎりぎりまでそれすら読んだことがなかったということからも、夢枕の将棋に関する知識と熱意がどれほどのものかも見えてくる。ものすごく浅いのだ、感覚が。それは次の文章からも見える。



そもそも、将棋のプロ棋士というのは、とてつもない天才である。
 小学生の頃に、大人のアマチュア四段、五段と指して負けない。そういう少年が将棋の奨励会に入るのだ。
 能力のある者がない者が、どんぐりの背くらべをするのではない。
 子供の頃からの天才が、その天才を比べっこしているのが奨励会なのである。
 その中から、プロ棋士になるような人間は大天才であり、さらにA級の棋士ともなれば大大天才であり、名人位にある棋士は超大天才なのである。




 読んでいて恥ずかしくなる。天才、大天才、大大天才、超大天才だって(笑)。こどもかよ。まさか酔っ払って書いたとは思わないが、なんともお粗末な言語感覚だ。でも当人は棋士をこれで持ちあげているつもりなのだろう。
 将棋ファンとして棋士を天才と持ちあげられるのはうれしいが、ここまでことばに節操なく幼稚なこどものような言語感覚でもちあげられると、「バッカじゃねーの」と言いたくなる。ほんと、素面で書いたのだろうか?

 20年ほど前、私は競馬随筆で、「世を制するのは天才ではなく秀才だ」というような内容のものを書いたことがある。キャロットクラブの会報だった。
 その一部に升田、大山を引用し、「棋界に長く君臨したのは、天才型の升田ではなく、秀才タイプの大山だった」とし、その後、本来の趣旨である競馬に関し、「騎手の世界も、天下を制したのは、誰もが天才と呼んだ福永ではなく、秀才型の岡部であり武豊だった」と続く。高名な作家に無名ライターがケンカを売ったら嗤われるが、天才、大天才、大大天才、超大天才と天才を大安売りする彼より、升田大山という偉人を「天才と秀才」にする私の方が、日本語感覚としてまともだと自負する。



 と、ここまできて、先程からもやもやしていたモノの正体が見えた。この薄くて軽い味のない、ひとりで炎上している文を読んで、「何かに似ている」と思っていた。ターザン山本である。あのひとの軽薄な中身のない文とそっくりだ。やはりプロレスファンて通じる感覚があるのだろうか。もっとも山本さんは職業として選んだだけでプロレスは好きじゃないし、私は彼ら以上のプロレスファンである自信はあるが。

 しかしまあこのノリは、山本さんが知りもしない世界を知ったかぶりでしゃべるときの薄っぺらさとそっくりだ。たとえば山本さんが松任谷由実について書いたことがあった。音楽なんてなにも知らないひとだ。それが何かのきっかけでNHK朝の連ドラ「春よ、来い」の同名の主題歌を聴いた。彼女に関する知識はそれだけだ。すると、山本さんの表現で言う「スイッチが入った」になり、連綿とはしゃぎまくり知ったかぶりをしてスベりまくるのである。今回のこの観戦記がまったく同じだ。
 まあ夢枕氏は大山名人と駒落ち対局までしているらしいから将棋を知らないわけじゃない。でもかといってこのお粗末な観戦記を持ちあげる気にはなれない。やっぱり薄っぺらで軽い。



 それから今度は自作の「キマイラ」とかについて延々と語るのだが、こちらが読みたいのは「電王戦第1局の阿部光瑠四段がコンピュータソフト習甦に勝った話」なのであって、あんたの作品のことじゃないんだ。いやいや夢枕先生の大ファンにとっては、「キマイラ」について先生ご自身が語られるのが読めて最高かもしれない。でも夢枕ファンでもなく、「キマイラ」なんて知らない将棋ファンには、「電王戦観戦記でなにやってんだ、このひと?」というイタい話でしかない。



 細かいことで言うと、このひとは手書き原稿だそうで、原稿用紙に縦書きで書き、それをどなたかがネット用の横書き文章に直してアップしたらしい。高名な作家先生の文章だから原文を大事にする。そのことによって「一○○○万」というような私の大嫌いな表現が出ることになる。先生が書かれたものをそのまま写したのだろう。「一」は漢字。あとは○が三つである。「一千万」でもいいし、「1000万」でもいい。でもこんなのはヤだ。ま、これは私の好みの話だが。



 ネットなので紙数に制限がないというのも、このひとにはマイナスに出た。さすがに文筆業で喰っているのだから「10枚」と限られたなら、その中に必要最低限のことは書いたろう。そうすればコンパクトにまとまったはずだ。ところが制限がないから果てしなく脱線して行く。脱線したまま戻ってこない(笑)。行ったっきり垂れながしの無惨なものとなった。

 冒頭でこのひとは、

おれはプロだよ。
 書くことのプロ。
 要求された枚数で、必要なこと、思ったことは書ける。
 だから、いきなり、この文章を普通の観戦記としてスタートさせることだってむろんできた


 と書いている。「むろんできた」が、敢えて道を外したのだ。私は、要求された枚数で、必要なこと、思ったことを書いて、普通の観戦記にして欲しかった。道を外さなければ、もうすこしましなものが書けたろう。そうすりゃここまでわけのわからんものは出現しなかった。思うのはそれだけである。



 もしも本当に棋士を「天才」と思い、尊んでいるなら、この場では阿部光瑠四段の将棋を語らねばならない。なぜならここは「そういう場」だからだ。阿部光瑠四段がコンピュータソフトと対局し、血涙を振りしぼって創作した棋譜を語る場なのだ。

 そのことに「阿部四段が勝った」とだけしか触れず、自身の作品のことを延々と語るあなたは、いくら「超大天才」などと薄っぺらなことばで棋士を持ちあげても、とてもとても棋士を尊敬しているひととは思えない。あなたが真に尊び、酔っているのは自分自身だけなのだろう。ひとりで裸踊りをしてはしゃぎまくっているような、みっともない観戦記である。
 生きるということは恥を掻くことなのだと、あらためて感じさせられた観戦記もどきだった。こんなものは観戦記と認めない。



 米長は、名人挑戦者となったとき、アサヒシンブンの名人戦恒例となっていた山口瞳の観戦記を、「山口さんでは困る」と拒み、大揉めに揉めた。将棋界を「狂人部落」と呼んで悦に入っていたセンスの悪い、しかし世間的には高名な作家に対する、米長の聖域なき抵抗である。まさか(たかが)棋士が観戦記担当の作家を拒むなどという事態を想定していなかったアサヒシンブンは戸惑った。
 阿部光瑠の将棋には触れず、自著についての説明を延々とした夢枕の観戦記?に対し、天国の米長はどう感じたろう。(続く)

将棋話──電王戦第四局──塚田対Puella α──19:20、あと1点で持将棋!──河口さんの観戦記

 あの傲岸な伊藤のPuellaに勝って欲しい。塚田がんばれと思いつつ10時の開戦前からの観戦。

denou4-3 午後、塚田入玉模様になる。入玉はもう確実だ。しかし大駒4枚がPuella。これじゃ入玉しても点数で完敗だ。
 コンピュータの形勢判断は、コンピュータ2900ポイント有利。絶望的状況。かなしくなって離れた。



 かなしいけれど、とりあえず塚田の敗戦を確認しようと18時過ぎに繋ぐと、相入玉模様から、塚田も大駒を取りもどし、1点勝負になっていた。なにがどうなったのか。まさかここまで盛りかえすとは。塚田の根性だ。
 なぜか知らんが、この時間になっても追いだされることなく、ミラーサイトではなくニコ生で見られる。325806人も見ているのに。ありがたい。




 点取り勝負で、「もしかしたら塚田が持将棋に持ちこめるかも」という形。勝ちはない。ベストで引き分けだ。
 延々と続く相入玉の将棋。短絡にと金を作り続けるコンピュータソフト。缺陥か!?
 木村の絶妙の解説に会場から笑いが起きる。いつもとはちがう風景。
 どうやらPuellaは持将棋の点数計算が苦手のようだ。
 点取り合戦になったら、手持ちの駒でのと金作りより、取られる可能性のある盤上の歩を勧めてと金になるのが常法なのだが。

 さて、塚田、持将棋に持ちこめるか。あと1点だ。盤面右端の歩三枚の内、一枚を取れば24点に達する。がんばれ。(19:20) 



 19:31、塚田のと金が歩を取って24点になった。これで相手が持将棋の申しこみを受ければ持将棋が成立する。会場から拍手が沸く。 

 19:38、持将棋成立。会場から大拍手。引き分けではあるが、 塚田、よくがんばった!(島崎三歩風に)

 しかしこれ、持将棋の点数計算の弱さ(金銀も歩も同じ1点)という缺点を突いたものであるのも確か。それをソフト側が今度修正してきたら……。

 さらにまた、持将棋の申しこみをコンピュータが受けず、千手二千手三千手と指し続けたら、人間は体力が切れて倒れる。時間切れでコンピュータが勝つ。

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 対局の間でのインタビュウ。
 奇妙な決着、珍妙な勝負に、立会人の神谷が笑い続けている。

 1986年、塚田が前人未到の22連勝を達成する。それまでの記録は有吉の20連勝だった。誰も越えられないと言われたその記録を越えたのが、同時期に連勝をしていた神谷だった。「花の55年組」の同期生である。その年、神谷が達成した28連勝を越えるのは不可能と言われている。ちなみに羽生の連勝記録も22である。

 絶対的劣勢の場面、投了を考えた瞬間はあったかと問われ、塚田が声を詰まらせ、ハンカチで涙を拭う。

 機械との闘い、負けられない人間の誇り。チーム対抗戦。1勝2敗を受けての第4戦。最年長。
 残酷でもある。胸が熱くなった。
 笑いに満ちていた雰囲気が一転してウェットになる。

 塚田が一番強かった二十代、王座の頃から知っている。中原さんから奪った。
「塚田スペシャル」が吹き荒れたころ。

 今回最年長、50歳近くなってのこの場への登場はつらかったろう。
 事前予想で確実に勝つと思われていたのが船江なら、最も不安だったのが塚田だ。
 その船江が負けた後を受けての一戦。
 絶望的状況から、ほんとによくがんばった。



 来週は第五局、最終戦。A級三浦の闘い。相手はモンスターマシンGPS将棋。700台以上を繋いでくる。
 三浦のプレッシャーも半端ではなかろう。
 がんばれ、人間!

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【追記】

 いま20:50。
 20時10分から記者会見があった。立会人の神谷が、塚田と35年のつきあいがあるが、初めて涙を見たと語っていた。

 塚田との質疑応答を聞いて、あらためてショックを受けたのは、Puellaを借りての練習将棋で、真正面から塚田の得意とする横歩取りをやっては勝てないという告白だった。「もしも勝てるとしたら」、あの「入玉模様」しかなかったのだ。ただし、もちろん、引き分け狙いではない。自分だけ入玉し、相手を負かすつもりでいたら、コンピュータも入玉してきたので驚いたという。そして絶望的状況。
 ところが相入玉模様になるとPuellaの意外な缺陥が露呈した。持将棋の点数計算が苦手なのだ。しかしすぐに直してくる。今回はうまく引き分けに持ちこめたが、来年はもう無理だろう。

 塚田の横歩取りが通用しないというのは、勝ちまくった「塚田スペシャル」時代を知っている身にはショックだった。しかしそれは「塚田スペシャル」の利点と、その後の全棋士が知恵を絞って作りあげた対応策を完全に定跡として記憶しているのだから当然だ。

 昨年、米長が敗れたとき、彼がどんなに「6二玉」の価値を主張しようとも、それを言えば言うほど、「矢倉は将棋の純文学」と言った彼が、何百万手もの定跡を体内に抱えたコンピュータソフトには、正面からの矢倉では勝てないのだとの確認になり、かなしくなった。あの時点でもうすべての結論は出ていた。戦う棋士がひとりの人間でしかないのに対し、*コンピュータソフトは、古今の百人以上ものすぐれた棋士が心血注いで作りあげた定跡や戦法を全部身に着けているのだ。優れたコンピュータソフトと戦うということは「全将棋史」と戦うと言うことなのである。

 つまり今後、羽生渡辺クラスが出てきたとしても、それですらもう「コンピュータソフトの苦手部分を突く」という闘いになり、彼らでも矢倉や相掛かり、横歩取り、ふつうの「居飛車対振り飛車」ではもう勝てないのだ。
 それはかなしいけど、明確なひとつの結論だろう。



 カメラはインタビューの畳の間から、また六本木の会場に戻り、木村と安食の会話の後、最後に初公開の来週用のPVを流す。かっこいい。ほんと、電王戦のPVはよくできている。
 米長の映像も使い、ポイントをつかんでいる。闘いに臨む棋士の姿が鮮烈だ。
 PVに感動したMCの安食総子女流が涙でしゃべれなくなっている。

 今日の番組のアンケート結果。もちろん私も「とても良かった」に1票。
 男を上げたね、塚田さん。かっこわるかったけど、かっこよかったよ。
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【追記】──河口七段の観戦記を読んで 4/20

 待ちに待った河口さんの観戦記がアップされた。18日アップと知り、こまめにチェックしていたが、遅れに遅れ、やっと読めたのは20日の午前5時だった。河口さんもご苦労なさったのだろう。
 それによって知ったことを追記しておきたい。

 誰もがあの相入玉将棋にうんざりしていた。塚田に勝ち目はない。もしかしたら奇蹟的な「引き分け」に持ちこめるかも知れないが、その可能性も薄い。ただ黙々と指し続ける時間。Puella αはバカの一つ覚えのように歩を垂らしてと金を作る。それを解説の木村八段が揶揄する。六本木の観戦会場からは笑いが起きていた。



 今回の観戦記で知った愕き。
 河口さんもうんざりし、立会人の神谷七段(塚田と同期)に、塚田が投げるように進言したらどうかと意見を言ったのだとか。そばに居た先崎八段も同意見だったという。

 しかし神谷が動かない。「256手まで指す規定があります。規則は規則です」と言って。
 河口さんの本音は、「みっともないから、もう投げたら」だったらしい。しかしさすがに対局場に行き、塚田にそう言うわけにもゆかないと自重する。もしも誰かが短気を起こし、それをしてしまったなら、それを拒んでも黙々と指し続けることは、さすがの塚田も出来なかったろう。
 そして、点取りが苦手な将棋ソフトの缺点を突いて、奇蹟的な持将棋が成立する。



 プロ棋士としての、あまりに惨めな姿に、同期生の悲惨な姿に、立会人の神谷が「狹跳、もう投げたら」と口にしていたら、あの持将棋はなかったのだ。残ったのは、入玉という変則戦法を用いたが、将棋ソフトに相手にされず、大駒を全部取られ、大差で負けた惨めな棋譜、だけだった。
 塚田の辛い心境を知りながら、河口に、先崎に、投げるよう言ってこいと進言されても断固拒んだ神谷が、あの塚田の「逆転の引き分け」を生んだのだ。

 230手で持将棋が成立したとき、立会人の神谷は、対局者の向こう側で、「くっくっくっ」と、おかしくてたまらないという感じで笑っていた。笑いすぎだった。私はそれを不快に思った。たしかにみっともない将棋だったが、指しに指し続けた塚田の気力を思えば、笑うのは失礼だろうと感じた。そのあとの塚田の涙を見て、さらにその思いを強くした。

 しかしそれはそんな単純なものではなく、泣きたいのは神谷なのに、河口さんや先崎に言われるまでもなく、すぐにでも対局場に行き、立会人として「狹跳、もう投げなよ」と言いたいのに、「256手まで指す規定ですから」と彼らの意見を拒み続けた神谷だからこそのうれしさから来る笑いだったのだ。

 もしも先崎が立会人だったら、口にしていたかも知れない。あるいは塚田に強いことを言えるより年輩の棋士が立会人だったなら……。するとあの持将棋はなかった。
 そう思うと、あのみっともない引き分けではあるけれど、塚田のがんばりに涙した世紀の凡戦という熱戦は、塚田の同期生、立会人の神谷が作りだしたものでもあったのだ。



 河口さんの観戦記はさすがだった。
 だが河口さんは観戦記を厳しい言葉で結んでいる。

最後に一言書いておきたい。

 本局のような将棋も、将棋にはこういった場面も生じるのだ、との例として相応の価値はあろう。しかしニコニコ動画などによって、プロ将棋をファンに見てもらい、楽しんでいただくために、二度とこういう将棋は見たくない。

 たしかに。
 塚田のがんばりに感動した一局ではあったが、私自身、大駒を全部取られて、入玉しても点数で負けとわかった時点でうんざりし観戦を打ち切っている。塚田の人間としてのがんばりに感動はしたが、ひどい一局ではあったろう。

 だが、コンピュータなど触ったこともなく、まして将棋ソフトと対局などしたことなどあるはずもない河口さんのこの意見は、升田大山時代から知っている引退プロ棋士の意見として極めて正当ではあるが、私は「河口さんは将棋ソフトの強さをわかっていない、その恐怖を肌で感じていない」という不満を覚えた。

 かつてA級棋士であり、タイトルも獲得した塚田は、事前対策として、正攻法でソフトと何百局も対局したのだ。 だけど勝てない。「塚田スペシャル」を用いても、その後開発された対抗法をソフトはすべて記憶している。間違えない。正面からでは勝てないと認めざるを得ない屈辱。そこから生まれた奇策がアレだった。



 今回ドワンゴは、夢枕獏、先崎、大崎善生さん、河口さんと、コンピュータに詳しくないひとばかりを観戦記に選んだ。 それは計算尽くの戦略だったのだろう。
 夢枕は、電子メールはするらしいが原稿は手書きのアナログ人間だ。「電子メールはできる」と自分はコンピュータを知らない人間ではないと自慢するあたりでどの程度かわかる。
 先崎もまたコンピュータ的世界を否定することを人生の柱としているひとだ。
 河口さんはコンピュータどころではない。「携帯電話すら持っていない」と書いていた(笑)。

 唯一大崎さんが、古くからゲーム機やパソコンで将棋ソフトと遊び、旅先にもノートパソコンを持参して原稿を書く今時のふつうのひとだが、パソコンマニアというほどでもないだろう。今回の観戦記でいちばん好きなのは大崎さんのものなのだが、それは別項でまとめる。



 パソコンと対局しないひとの観戦記には、パソコンに負けるという恐怖が書けてなかったように感じる。それは観戦記をそういうひとに依頼したのだから当然だけど。

 私のような最盛期でもアマ三段という低レベルの者でも、ファミコンからPS、パソコンでも十数年勝ち続けてきたから、初めて負けたとき(PS2の『激指』)はショックだった。それが悔しくて私は本気になり、なんとかPS2の『激指』四段に勝てるところまで復活したが、すぐにパソコンでは、逆立ちしても勝てない時代になってしまった。相手にならないほど弱くてバカだった将棋ソフトに、相手にされない時代になった。

「あんなに弱かった将棋ソフトがこんなにも強くなった」という感慨はある。1万円以上出して買った将棋ソフトに勝ってばかりではつまらないから、負かしてくれるほど強いのはありがたいことでもある。同時にやはり、どんなにがんばっても将棋ソフトにはもう勝てないのだという敗北感も引きずっている。



 私ごとき素人でも、それなりの絶望感がある。もうどんなに頑張っても、棋書を読んで努力しても、絶対に将棋ソフトには勝てないのだ。それは、「すでに将棋ソフトが自分よりも強い時代に将棋を始めたひととは決定的にちがっている感覚」だ。

 小学生でおとなの高段者を破る神童として、将棋一筋の人生を生きてきた人が、それを職業としている棋士が、必死に考えてもパソコンに勝てないと自覚したとき、どんな思いをしただろう。

 総じて、今回の観戦記は、ひとり明後日の方角ではしゃいでいた夢枕は論外として、先崎も、河口さんも、将棋ソフトに負ける痛みというものに関して、鈍感なように感じた。
 もしも先崎や河口さんが『激指12』と指していたなら、観戦記の切り口はまったくちがったものになったろう。おそらく市販品の『激指12』でも河口さんより強いはずだ。

 河口さんは引退棋士だが、先崎八段は現役だ。来年はぜひ選手として出場し「自戦記」を書いてもらいたい。その自戦記と今年の観戦記を読み比べたい。 出ないだろうけど。

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Hさんからのご指摘──2013/04/21 6:29

*コンピュータソフトは、古今の百人以上ものすぐれた棋士が心血注いで作りあげた定跡や戦法を全部身に着けているのだ

 の部分に、Hさんからご意見を戴きました。



これ、実はそうではないところがあります。
例えば、一昨年の晩秋、当時のボンクラーズが米長との対戦を控えてネット将棋の将棋倶楽部24に席主の許諾を得て参戦して、匿名のプロや奨励会員やトップアマと数千局指して弱点の洗い出しをしました。
(その結果ボンクラーズのレーティングが人間では絶対に届かないレベルに到達したのですが)

そのボンクラーズの棋譜を遠山雄亮5段が全て精査した解説番組が昨年の電王戦前にニコニコで放送されました。
http://www.nicovideo.jp/mylist/29409825

かなり長い番組なのですが、お楽しみいただけるのではないかと思います。
この中で遠山が指摘しているのですが、鷺宮定跡とか、そういう古い定跡にころっとはまって負けることがあるのだそうです。
特に多い負け方が、角換わり腰掛け銀の富岡流、先手必勝とされている流れに自分から飛び込んでの自爆でした。




 なるほど、今回第五局が終った後の会見で、GPS将棋が「どれぐらい、どのような定跡を挿れているのか」という質問に、「1995年からの順位戦を中心に」のように応えていました。手作業なんだから「古今東西全部」は無理ですよね。となると、そういう「知らないので苦手な戦法」も現実に存在するのでしょう。

 将棋ソフトに関するこの部分で重要なことは、「人間が覚えさせる」ということですよね。もしかしたらこれからは、ソフト自身が自動で棋譜を収集して学習する、なんてことにもなるかもしれません。そうなると『ゴルゴ13』に出てきたモンスターソフト「ジーザス」みたいに、人間が寝ている間に、かってにネットの中を徘徊し、教えていない定跡をいつのまにかマスターし、やれと言ってもいないのに、かってに新戦法を考案し、なんてことも起きるのでしょうか。すくなくともいまは、人間が「これを覚えなさい」と過去の棋譜を与えて成長させているから、知らない戦法、知らない定跡の流れになると、そうなることもあるのでしょう。



 そうかあ、対振り飛車「鷺宮定跡」は私の得意とするところです。あれで勝てる可能性もあるのですね。あくまでも「まだ学んでいない時」に限られますが。
「金開き」とか「角頭歩突き」なんてのをやったらどうなのだろう。「鬼殺し」の受け方なんて知ってるのかなあ。あとで『激指』でやってみます。

 でも所司七段が監修した『激指』定跡道場は、その辺の定跡をしっかり覚えさせているから「鷺宮」にも強いんですよねえ。

 遠山五段監修のそのニコ生は今も見られるのでしょうか。今から出かけてみます。楽しみです。
 ご指摘、ありがとうございました。感謝いたします。

将棋話──電王戦第三局──船江五段敗れてコンピュータ2勝目

5人のプロ将棋棋士がコンピュータ将棋ソフトと団体戦で戦う「第2回将棋電王戦」の第三局・船江恒平五段 VS ツツカナの対局が6日、東京・将棋会館で行われた。

第三局は、6日20:35、船江五段が第22回コンピュータ将棋選手権3位のツツカナに敗れ、全五局のうちコンピュータ側の2勝1敗となった。手数は184手で、消費時間は船江五段が3時間59分、ツツカナが3時間27分(残り33分)。

終局後にツツカナの開発者・一丸貴則氏は「途中はツツカナの評価値もかなり悪く、勝てないと思っていました。勝ったという気はしていません。1分将棋というのは本当に厳しいと感じました」と激闘を振り返り、船江五段は「結果については残念としか……。途中は優勢になったと思いますが、終盤逆転を許したのは自分という人間の弱さが出てしまいました」と肩を落とした。http://news.mynavi.jp/news/2013/04/06/105/

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土曜日にリアルタイムで見られず、夜、ニュースで結果を知った。船江の負けはショックだった。ある意味、最も負けてはならないひとだった。

『将棋世界』2012年7月号に「第22回コンピュータ将棋選手権」の記事がある。今回対局する五つのソフトの順位が決まった大会だ。
この大会の表彰式で、米長会長から「第2回電王戦は5対5の対決」と発表され、プロ棋士の中で唯一「船江五段」の名があがっている。あとの4名はまだ未定だ。米長会長直々の指名である。
私も、素人考えながら、船江は確実に勝つと読んでいた。あらためてショックである。

深夜、2ちゃんねるの将棋板で棋譜を得て、『激指12』で並べてみた。船江が優勢で進むが、時間のなくなった終盤から形勢が逆転する。



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先手の船江、圧倒的優勢(と私には思える)この場面で、ツツカナの指した勝負手と讃えられる74手目の5五香。駒割りは飛車香交換。



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95手目の局面。駒割りは龍と成桂。優勢だろう。

しかしここから184手まで続く「ツツカナ」の闘いは見事だった。
コンピュータは繋いでいない。最新のデスクトップ機一台である。ツツカナ作者のブログには「デスクトップ機を宅配便で送るので壊れるかも知れません。そのときはノートで戦います」とあった。デスクトップ機のCPUはCore i7 3930k、ノートになったら2630QMだから力は三割減になるだろう。それでも自信があったのか。何百台もクラスタで繋いだのとは勝利の意味あいが違う。



こちらのブログがリアル感たっぷりの写真をたくさん掲載して魅せてくれます。感謝。

『いけるい』の将棋日記



電王戦による話題沸騰で、いま空前の将棋ブームなのだとか。たしかにこれほど多くの媒体で速報のように将棋の結果が伝えられたことはない。名人戦よりも竜王戦よりも話題になっている。

だがこれは、「人間がコンピュータに負けるらしい」という「最後の場面」に対する興味だ。羽生と渡辺の対決が話題になるのとは根本から異なっている。将棋好きとして、そこのところにはしゃげない。

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【追記】──4/22

いまニコ生の「タイムシフト再生」というやつで見ています。
解説の鈴木八段の早見えで、なにをどうやっても勝てる流れだ。会場には笑いが沸き、コメントには「もう勝ったな」なんてのも目立つ。ここから負けたのか。いま12時間の中継中の4時間40分の部分。

将棋話──電王戦第二局──佐藤四段、Ponanzaに敗れる──fc2.comで観戦させてくれたかたへ感謝を込めて

 今日は電王戦の第二局。佐藤慎一四段vsPonanza戦。
 昨日まで意識していたのに、なぜか今朝は忘れてしまい、「あっ!」と気づいてニコ生の中継を開いたときはお昼。
 それからしばらくは楽しめたが、競馬中継を見て、再接続したときはもうダメ。すでにニコ生は「タダ見はできません」状態になっていた。入門不可。でも気分としては追いだされるのよりはいい。いいところで「有料会員が来たから、タダ見のあんたは出ていってね」と追いだされるのはすごい惨めだ。



 しかたがない。2ちゃんねるの将棋板に行こう。電王戦スレに行けば、あそこには棋譜を書きこんでくれる親切なひとがいる。それを見つつ自分で並べよう。
 願い通りどなたかが棋譜を書きこんでくれていた。『激指12』で並べることにする。
 するとそこに「ソフトの形勢」という書きこみがあった。いつも何人かのひとが書きこむソフトを使った形勢判断だ。

 私も『激指12』を使って並べるから、それが他のソフト(AI将棋のこともあった)だったとしても形勢判断は同じようなものだろう。見てもしょうがないのだが、いまはどんな形勢なのだろうと、『激指』起動前に出かけてみた。

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 するとそこはニコ生を観ているひと(もちろん有料会員なのだろう)が、『激指12』の盤面を使い、live-fc2.com経由で対戦を見せてくれる場だった。多くのひとがコメントを書きこみ、ミラーサイトのようになって盛りあがっていた。ここで終局までリアルタイムで観戦することが出来た。ほんとうにありがたかった。
 直接お礼を言いたいが、それも適わないので、この場を借りてお礼申しあげます。ありがとうございました。
 


 将棋は、佐藤が序盤から中盤まで有利に運んでいたが、後半になってからPonanzaの圧倒的な攻めが始まり、結果的には相手は手付かずという完敗の棋譜となった。プロ棋士の完敗を見て、なんとも複雑な心境だ。
 画像は投了図。銀冠ならぬ金冠になったPonanzaは金の守備力が強く詰まない形になっている。

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 『激指』が後手有利と判断する(+300前後)早めの時点で入玉模様に切り替えれば勝てていたように思う。しかしそれを佐藤はよしとしなかったのだろう。最後は先手が2000ポイント以上プラスとなる大差だった。

 6三龍を5三金と弾いていても、またちがった流れになったろう。なんだかそのへんの受けが半端だったように感じた。素人が口を出す分野ではないが……。 



 今夜は26時からドバイでジェンティルドンナが走る。グリーンチャンネルが無料視聴出来るそうだから見てみようか。グリーンチャンネル初体験だ。 
 もしも佐藤が勝っていて、人間側二連勝だったら、もっとわくわくしつつ観られたのだが……。
 でも今、いかに将棋ソフトが強いかは肌で感じて知っているから、順当なようにも思う。



 先日、「『将棋世界』──米長追悼号──二ヵ月遅れの感想」をアップし、『将棋世界』4月号の勝又の「突きぬける! 現代将棋」の米長特集がすばらしいと書いた。
 そこに衝撃的な一行がある。

 中原と米長のすさまじい終盤の捻り合い。いまも名局と讃えられる一局。中原優勢を逆転する米長の妙手に痺れる場面。
 ここで勝又は、念のためにその場面をコンピュータにかけてみた。

 するとおどろくことに、ものすごく難解だが詰みがあったのだそうだ。つまり、形成を逆転する歴史的妙手の米長の一手も、中原がそれを詰ませられなかったから逆転したのであり、相手が今時のコンピュータなら一瞬で詰ましており、妙手もクソ(失礼)もなかったのだ。しかも勝又が調べたコンピュータは、自宅のごくふつうの市販機だろう。GPS将棋のように何百台もクラスタしたものではない。

 勝又はこれに関して、「そのことによってこの名局の価値が損なわれるものではない。あの1分将棋の局面で人間がこの難解な詰みを見つけることは不可能である」としている。
 その通りだろう。逆転や妙手が連発される人間同士の手に汗握る勝負が面白いのであり、詰ませればいいというものではない。頓死ですらも人間将棋の魅力のひとつだ。近年の頓死では名人戦での森内に頓死した丸山の一手が思い出深い。(2002年は近年じゃないか。)

 しかしそれはまたコンピュータへのギブアップ宣言でもある。全盛期の中原、米長が死力を振りしぼっても読めない詰みを、今時のコンピュータは一瞬で読むのだ。繰り返すがそれはモンスターマシンではない。勝又愛用の市販のデスクトップ機(推測)だ。 

 人間がコンピュータに勝つためには、序盤から有利を拡大し、終盤になってもコンピュータ側から詰みのない形、中押しの形にするしかないのだろう。それを試みたのが「米長の二手目6二玉の空中城」だった。

 とするとやはり今日も、早々と入玉を目的にし、確定させ、点数取りに絞ればよかったのか。
 でも、人間が負けて残念だが、名局だったと思う。いい勝負だった。特に終盤のPonanzaの攻めはよかった。
 と書きつつも、まだ落胆しているが……。 
 1対1になって、ますます盛りあがるか!

 今まで対コンピュータソフトとの正式対戦では、渡辺竜王がBonanzaに勝ち、清水があからに、米長がボンクラーズに負けているが、清水は女流、米長は引退棋士という言いわけがあった。
 佐藤は現役棋士だ。現役のプロ棋士初の敗戦だ。つらい記録を背負うことになった。

 このPonanzaは名前からもわかるようにBonanzaの思考ルーチンを取りいれている。Puella αと名前を替えたボンクラーズもそう。あらためてBonanzaを開発し、ソースコードをオープンにした保木邦仁さんの偉大さを思う。

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●どうでもいい【追記】──勝又六段の愛機はデスクトップ機? ──22:59

 東海大学の理系出身の勝又六段はパソコンに詳しく、棋士として取りいれたのはかなり早い。長年拒んでいて、ついこのあいだ使い始めた郷田のようなひともいる。私はパソコン好きだけど、パソコンを拒む棋士の感覚も好きだ。

 勝又は、パソコンを導入しようという気持ちはあるものの、セッティングが出来ず困っている棋士を助けてやり、そのことで交友を拡げたらしい。パソコンが取りもつ縁である。盒尭四唆綯覆縫札奪謄ングしてやり、そのあとに「一番指そうか」と言われたのがとても嬉しかったと書いていた。A級棋士であり、かつてはタイトルホルダーだった高橋は遥かな格上棋士である。高橋のそれは何よりもの礼になる。
 今もパソコン使いの棋士として最前線にいる。電王戦でも解説をやったようだ。

 ということから私は彼の愛機をデスクトップ機であると希望的に推測する(笑)。
 パソコン好きなら市販のノートブックとかではなく、もちろん携帯用にノートも保っているのだが、厖大なデータが収められた彼の愛機は、居室にでんと構えるデスクトップ機であって欲しい。大のデスクトップ機好きとしてそう願う。自作派までは望まないが。
 そういや山崎バニラは自作するんだよね。あれで一気に親近感を持った。

「あ、勝又さんはノートですよ。ソニーの。ヤマダ電機で買ったって言ってました。デスクトップ機って使ったことないんじゃないかな」なんて親しいひとからの情報があったらショックで寝こみそうだ(笑)。

将棋話──第2回電王戦開幕──米長の敗戦を振り返る──阿部光瑠、勝利!

Shogi.gif 今日から第2回電王戦が開幕する。昨年は米長とボンクラーズの対戦のみだったが、今年は5人の棋士といつつの将棋ソフトの対決。今日は、阿部光瑠四段と世界コンピュータ将棋選手権5位の習甦(しゅうそ)が対局中。ニコ生で中継している。いま行ってみた。まだ入れるようだが、どうせ会員ではないのでいいところで弾き出されるのが見えている。何度もやられて悔しい思いをした。だったら有料会員になればいいんだけど(笑)。

 棋戦を中継したり、今回の電王戦でもスポンサーになって盛り上げたり、ニコ生(=ドワンゴ)が、将棋界の発展に寄与しているのは事実であり、将棋ファンとしてすなおに感謝しているのだが、同時にまたドワンゴが将棋コンテンツで大きく儲けたのも事実であり、なんか月525円でも躊躇する自分がいる。

 BSやCSとも無縁の生活なので有料視聴に慣れていない。逆に言うと、ここで一歩踏み込んでドワンゴに金を払うと、一気にそういうことに抵抗がなくなり、あちこちに払うようになるのだろう。

 私はいまテレビを見ないけれど、PC作業のあいまに「動画倉庫」のようなところはけっこう覗く。明け方に見知らぬお笑い番組を見て楽しんだりしている。調べてみると毎日放送制作で関西地区の番組だったりする。これらを楽しんでいると、心底からもうリアルタイムでテレビを見ることはないだろうと感じる。しかしこのネット視聴でもよく「混み合っているので見られません。有料会員になると見られます。月525円」をやられる。BSやCSの有料放送とは今後も無縁だろうが、ネットのこれには入ってしまいそうだ。最初のそれがニコ生の将棋か。



 Google日本語入力が「阿部光瑠」を一発で変換した。さすが! でも「習甦」は出なかった。辞書登録。まあ発売されているソフトでもないしね。この見慣れぬ漢字二文字には「羽生」が入っている。
 大好きなソフト『激指』が今回5位までに入れず登場しないのがすこし残念。

※ 

 ニコ生のサイトにある第2回電王戦のPVを見た。とてもよくできているので感心した。8分の長尺。 

yonenaga2 瀬戸内寂聴みたいな貧相なおばあさんが出ているのでなんだろうと思ったら、ガン治療で頭を丸めた米長だった。 左写真。

 このPV、棋士が魔王に立ち向かう5人の勇者みたいな作りになっていて(笑)、魔王役はボンクラーズ(今回は名前を改めてPuella α)の伊藤がやっていた。悪役としてふさわしい。ほんと、このひとは傲慢だ。でもこんなひとがいたほうが盛り上がるのか。



 昨年、後手番の米長は二手目に6二玉と指した。対局も見たし、その後の彼の著書「われ敗れたり」も読んだ。
 米長は自身の名高い米長玉(9八玉)を例に出し、この6二玉は第二の米長玉であり、自分が弱いからたまたま負けてしまったが、後世にまで伝えられるような意義のある手なのだと主張していた。

 そうなのかも知れない。勝つためには最善の方法だったのもしれない。しかしこれはもう力負けを認めている一言でもある。
 米長の名言(迷言?)に「矢倉は将棋の純文学」というのがある。私は、そう言った米長にそれをして欲しかった。でも自宅での何百局もの対戦で、それでは勝てないともう結論は出ていた。正々堂々のまともな将棋では勝てないのだ。つまりその時点で勝敗は決まっていたことになる。正面から行っては勝てない力士に唯一勝つ方法として編み出したのが、猫騙しをして相手を戸惑わせ、後ろに回って押し出すことだった。それが二手目6二玉からの、あの不思議な空中城構築だった。
 それがどんなに優れたアイディアだったとしても、そこにはもう「正面からの居飛車、振り飛車、どの戦法でも勝てない」ということが前提にあった。それがなんともかなしく、米長の主張を読めば読むほどせつなくなった。



 今日の対局者である阿部光瑠四段はPVの中で、「正面からの将棋を指す。そのほうが悔いがないから」のような発言をしていた。きっとそういう将棋を指すことだろう。どんな結果になるのだろう。
 五番勝負最後には、優勝したクラスターマシンの怪物GPS将棋が控えている。戦うのは三浦八段。

 もしも今回プロ棋士が全敗するような結果になったなら、来年は羽生だ渡辺だということではなく、企劃そのものが廃止になるように思う。それはそれでいい。人間同士が指す将棋は、コンピュータの強さとは別に存在すればいいのだから。あの羽生でさえ一手詰みに気づかず負けたりする(対木村戦)。それが将棋の味わいでもある。

 問題は、2勝3敗の負け越し、のような微妙な場合だ。こうなると将棋連盟も引っ込みがつかず、来年もまた、となるのだろうか。もちろん5戦全勝だったらまちがいなく来年も、となる。これは拒めまい。往くも地獄、引くも地獄。



 将棋ソフトはファミコンの時からやっている。最初は「森田将棋」かな? スーファミでもPS、PS2でも将棋ソフトは買い続けた。Nintendoはこっち方面は捨てたのだろう、GameCubeもWiiもいい将棋ソフトはない。
 PS3に「銀星将棋」ってのがあるが(PCにもある。持っている)、これは北朝鮮が作ったソフトなんだよね。コンピュータ将棋選手権には初期の頃から出ていた。初めて出てきてからずっとそこそこの成績を収めていた。「北朝鮮? 将棋?」と不思議な感じがしたものだった。PSVITA版も出たのか。強いのを謳っているけどどうなんだろう。

 PCのほうは、Windows 3.1時代に将棋ソフトをもって海外に出たことを覚えている。フロッピーディスク1枚のソフトは弱くて相手にならなかった。1991年。「極」のころ。
 そのあとのPCソフトで有名なのは「AI将棋」「金沢将棋」「東大将棋」か。みんな買ったけど2000年を過ぎても一度も負けなかった。初めて完敗したのはPS2の『激指2』だった。発売は2003年か。『激指』は歴史的には新顔だったけど最初から強かった。今じゃパソコンの『激指12』初段にころころ負けている。

 パソコン将棋はCPUで激変する。その証拠にDSの将棋ソフトはおそろしく弱い(笑)。10数年前のソフトのよう。どんなすぐれたプログラムもCPU次第なのだろう。それは私のパソコンでも、同じ『激指10』が、以前のCore2 Duoの2.3GHZの時と今のCore i7のOCした4.3GHZでは強さがぜんぜん違うことからも解る。何百台も繋ぐGPS将棋ってどれぐらい強いのだろう。まあ「繋ぐ」ということ自体はもうチェスの「ディープ・ブルー」の時にも言われていたが。



 いま行ってみたら、ニコ生は真っ暗な画面にコメントだけ流れているな(笑)。なんでしょ。どうせいいとこで追い出されるからどうでもいいんだけど。
 阿部四段、がんばれよ!



 おお、やっと見られた。解説阿久津に聞き手矢内か。 早いアクセスだが10万人も見ているらしいから、もうすぐ追い出されるな。
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 13時にはもう追い出されるだろうと思ったら14時になってもまだ見られる。ラッキー。
 15時から競馬観戦。
 それが終り、16時になって、そろそろかなあと思ったら、やっぱり「出て行ってくれ」と言われた(泣)。ちょうどこれからいいところなのに……。
 阿部、習甦の攻めを凌ぎきれるか!?

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●阿部、勝利! 人間側、まずは1勝!

 18時半、阿部の勝利を確認。最終形はともに「米長玉」だが、阿部は餘裕、コンピュータは苦し紛れ、まったくちがう。最終形の米長玉も米長の追悼になるだろう。おめでとうコール! 幸先良し! 

訃報──米長邦雄将棋連盟会長──来年の電王戦を見て欲しかった──後継者は谷川か!?

00shogi.gif日本将棋連盟会長で元名人の米長邦雄(よねなが・くにお)さんが18日午前7時18分、前立腺がんのため東京都内の病院で死去した。69歳だった。


 米長邦雄さんが亡くなった。いま、安倍内閣組閣予想をする「ミヤネ屋」を見ていて、知った。
 自分の知ったのが15時半だったので「速報」かと思ったが、上のニュースにあるように亡くなったのは「午前7時」であり、もっと早くニュースは流れていたようだ。配信時間は「12時15分」となっている。

 いつものよう午前3時起きの生活だったらリアルタイムでこれを知り、もっと早くアップできていた。しかし開票速報の16日午後8時から徹夜でテレビを見ていたので、いま生活時間はめちゃくちゃになっている。今日は徹夜のまま「みのもんた」を見てから寝て、14時に目覚め、すぐにまた政治関連のニュースを見ようと「ミヤネ屋」を点けて知ったのだった。

 69歳という享年は奇しくも大山名人と同じである。大山さんは、その年で現役A級だったのだ。あらためて偉大さを知る。今年は没後20年である。
 ふたりは不仲だったが……。



 米長さんの死そのものは、数ヵ月前に見た『将棋世界』の、どこかの表彰式に出席した姿が、おどろくほどちいさく萎んでいたので、覚悟していた。もう何年も前に前立腺癌であることを公表し、闘病日記も公開していた。

 とはいえ元気満々で、相変わらず諧謔に満ちた発言を連発し、今年1月にはコンピュータ将棋ソフトと対戦し話題になっていた。
 たとえ体内にガンを抱えていようとも、生命力のあるひとは、それすらも抑えてしまう。米長さんもそのひとりかと思っていたから、『将棋世界』で見た「ちいさく萎んだ姿」はショックだった。悪魔の癌に魅入られ、ああなったらもうどんな鉄人でも終りだ。あの不屈の鉄人大山康晴ですら、最後はちいさく萎んでいた。オーラが消えていた。
 冬は元気だった。晩春あたりから一気に衰弱したようだ。



 私は熱心な米長ファンではなかった。中原米長時代で言うなら、確実に中原さんのファンだった。
 昭和58年の三冠馬ミスターシービーと翌59年の三冠馬シンボリルドルフは、ルドルフのほうが強かったが、後方一気という派手なレースぶりからシービーのほうが一般的人気があった。中原米長の関係もそれに似ている。年上の米長シービーは派手なレースで人気があったが、実績は年下の地味な中原ルドルフのほうだった。それは大山升田にも共通している。

 私は中原さんとルドルフのファンだった。何事もきちんと通じているものである。
 その中原さんは脳梗塞に倒れ、いまも障害が残っているらしい。表に出ることはない。
 熱心な米長ファンではなかったけれど、中原米長時代に将棋に夢中になったものとして、米長会長の元気な活躍が心の支えになっていた面はある。熱心なファンではないが、ファンではあった。ではその「熱心」になれない壁とはなにかと言えば、このひとは「才気煥発すぎる」のである。それが時たま鼻につくのだ。

 たとえば若い頃の、ある受賞パーティでの祝辞。紙上再現を読む。うまい。つかみはOK、笑いをとり、感嘆させ、最後にほろりとさせて結び、万雷の拍手を浴びる。なんとも、絶品の名人芸としか言いようがない。
 それが場数を踏んだベテランならともかく、30そこそこなのである。うますぎる。そのあまりのうまさに、学生だった私は、感心しつつも反撥を覚えるのだった。

 私の好きなのは、木訥な、訥弁だけど、愛情が籠もっていて、思わず感動するようなモノだった。対して米長さんのは、抜群に頭の回転の速いひとの、「これとこれをこう組み合わせて、こういう形にして、こんなふうに話すと、こういう連中がこういうふうに感動する」というような戦略が見えかくれしていた。見えていても感動させられたが。
 大山さんが米長さんを嫌ったのも、そのへんになる。武骨な大山さんには米長さんの才気煥発は軽薄に思え、同時に自分にはない羨ましい才能だったろう。



 ちいさく萎んだ写真にショックを受け、覚悟はしていたが、つい最近までホームページもツイッターもやっていたのだと知る。この流れからは「急逝」になる。
 ツイッターはフォローしていたし、ホームページも開設当初から読んでいたが、ここのところしばらく行ってなかった。これまたサービス精神旺盛すぎてかえって読み辛いのである。

 下は、ホームページの「さわやか日記」で公開した11月28日の役員会の写真。

yonenaga20121128 ついこのあいだである。次の会長は隣の谷川になるのだろうか。忙殺されるから会長職は棋士を引退してからがいい。むしろ谷川には役員すらやめてもういちど棋士に撤して欲しいと願うのだが、そうも行かないのだろう。どうなることやら。



「さわやか日記」の最後の書きこみは12月3日。テレビであの名勝負「羽生対山崎戦」を見ている。この時点では元気いっぱい。

 私があの将棋に感銘を受け、PCに向かって、このブログ用の「NHK杯戦──ひさしぶりに見た才能の将棋」を書いているころ、米長さんは囲碁を見、マラソンを見ていたことになる。

yonenagasawayaka




 上記の文をブログにアップした私は再びテレビに戻り、競馬観戦(JCD)し、そのあと『笑点』を見た。ここは同じ。もう米長さんがいなくなってしまったのかと思うと、この日、同じ東京の空の下で、ほとんど同じテレビ番組を見ていたという繋がりがいとおしい。たかがテレビでも共有感覚ってのはあるのだと知る。



 ツイッターは12月5日までやっていたようだ。フォローしていたが、ツイッターをほとんどやらないので、米長さんのつぶやきが記憶にない。

 13日に倒れて救急車で運ばれたらしい、という情報を見かけた。とすると、自民党支持者の米長さんは、自民党大勝の結果を覚醒しては見られなかったことになる。あの悪夢の民主党政権が終る瞬間を見て欲しかった。米長さんなりの手法で、そのよろこびをコメントして欲しかった。

yonenagatweet























shogitaikyousuu 棋士米長邦雄は、将棋史的にも指折り数えられる名棋士だが、数字的記録は残していない。

 たとえば1980年に「年間対局数88」というとんでもない数字を記録した。あらゆる棋戦に顔を出していた全盛期である。

 だが88局を記録したから最多勝も記録したかと言えばそれはないのである。それどころか「歴代最多勝10傑」にも入っていない。

 ふたつの表を比べて欲しい、羽生、森内、佐藤、中原、森内、木村、谷川と、「最多対局ベスト10」を記録したひとは、全員「年間勝数ベスト10」にも入っている。入ってないのはただひとり、米長さんだけなのである。かっこわるい。でもこういう目立ちかたがあのひとである。
 才気煥発な米長さんが目ざしたのは「最年少名人」だったろう。だが結果は「最年長名人」だった。そういうひとだった。

shogishorisuu この88という記録は2000年に羽生に破られる。1局差の89局。だが羽生はこの年「68勝」という歴代最高勝ち星を記録している。ただ単に対局数が多かった米長とは中身が違うのである。

 タイトル獲得数は、羽生、大山、中原、谷川に次いで史上5位。でも上位3人とは比ぶべくもないし、谷川にもだいぶ差をつけられている。「米長玉」のような歴史に残る手もあったが、谷川の「光速の衝撃」と比べるとだいぶ落ちる。
 だがその米長に、まだ佐藤も森内も渡辺も届いていない。



 そんな中で今も輝いているのがこの記録。同一カードの最多記録。中原米長戦。あの時代、いかにこのふたりが抜きん出ていたことか。

yonenagataikyoku











 この187という数字を抜くのは「羽生谷川戦」だと思っていた。しかし162で止まったまま。谷川の凋落からもうそれはありえない。

 唯一可能性を残しているのは「羽生佐藤戦」だが、39の差は大きい。もしも越えるとしても10年以上先だろう。
 しかしまたここでも米長は、大きく中原に負け越している。それが米長というひとの実力になる。だが、大山に負ける升田が大山より人気があったように、中原に適わない米長も中原以上の人気を誇った。



 下は、歴代名人位。これに関して書き始めると長くなり、米長さん追悼ともすこしズレるので、この話は別項にする。49歳の新名人は今後も出ることはあるまい。しかしまたここでも、「羽生へのバトンタッチ」で目立っている。そんなひとだった。

 「中原米長世代」という、ひとつの時代が犂袷瓦豊畚わった。
 これから将棋連盟は一気に若返る。20歳若返る。
 それはまた、激動の時代の始まりでもある。棋士は一丸となって連盟運営に尽力して欲しい。

shogimeijin





















 来年の「電王戦」の布陣が決まった。

dennosen 急速に強くなったコンピュータ将棋ソフトに危機感を感じて、恥を搔くわけにはいかないと、プロ棋士に「コンピュータ将棋ソフトと対戦しないように」と通達を出したのは米長会長だった。

 しかしまた一転して、渡辺竜王とBonanzaの対局を企劃したのも、「電王戦」を設置に尽力し、自らボンクラーズと対戦し、派手に散って話題になったのも米長会長だった。

 来年3月から4月には、「第二回電王戦」として、一気に5対5の決戦が組まれる。大将として三浦八段が控えるプロ棋士として弁明不能の剣が峰である。

 これを見届けて欲しかった。なんとも残念である。



 個人的には政治思想が同じなので、安倍内閣誕生の瞬間を見て欲しかった。石原都知事のもとで都の教育委員も務めていた。園遊会での「國旗と君が代の普及」に関する発言も懐かしい。

 5日までふつうに活動し、13日に体調を崩し、18日に逝去というのは、苦しまないいい逝き方だったか。



 谷川を始め残された理事はみな醇朴だ。米長さんのような良くも悪くも策士はいない。
 棋士は、スポンサーに金を出してもらって藝を見せる藝人である。組織の長となるものは、藝とはまたべつに、スポンサーを捜し、スポンサーとの金銭交渉に長けていなければならない。将棋に好意的なら、サヨク新聞とも酒席をともにし、朝鮮企業にも創価学会にも頭を下げる柔軟さが必要である。今後の将棋界にそれの出来る人材がいるだろうか。心配だ。

 米長さん、天国から将棋連盟を見守ってください。長いあいだお疲れ様でした。合掌。

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【追記】──会長に谷川九段──12/25

 12月25日、後継の会長に谷川九段(50歳)が決まった。
 人品骨柄文句なしのかただが、現役棋士との兼務はきついだろう。A級陥落で引退となるのだろうか。
 すばらしい棋士だけに、すこしさびしい。 

今日は電王戦の日──がんばれ米長!

1月14日は米長永世棋聖(将棋連盟会長)対将棋ソフト「ボンクラーズ」の電王戦。
現在、ニコニコ生放送で観戦中。
渡辺竜王の解説はストレートでいいなあ。矢内の聞き手もいい。
米長は定跡を外して駒落ちのような駒組み。後手ゴキゲン中飛車のような最先端戦法では定跡通のコンピュータに勝てないと踏んだのだろう。

午前11時に公式サイトで見始め5分で追い出された。有料会員が来ると無料会員は追い出されるらしい。

2ちゃんねるの「将棋板」でミラーサイトがあると知る。
ニコ生なんて見たことないから、そんなものがあるのを知らなかった。
この後どうなるかわからないが、とりあえず今は有志が流してくれているそれで見られている。感謝。

対局料やら設営費等の1千万円はニコ生を運営しているドワンゴが出している。
現在12万人が視聴中。月額500円の有料会員がどれぐらいいるのかわからないが、十分採算は取れるのだろう。将棋人気も捨てたものではない。

これから外出するので見られなくなる。こういうときスマートフォンでネット契約していると電車の中でも見られていいなと思う。世の中の過半数はいまそういう時代か。私のケータイは電話するだけの道具だ。メールもしない。写真も撮らない。
スマートフォンは欲しくないけど、そろそろタブレッド端末を買う時期か。iPadじゃなくてAsusか東芝あたりがいい。

深夜に結果を知ることになる。米長会長、がんばれ! いまのところ作戦勝ち、優勢だ。

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米長会長が将棋ソフトと対決 2011/10/7

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追記──1/15 16.00

ということで24時間ぶりに帰宅。結果は今朝、友人宅で知った。米長惨敗。まあ覚悟していたことではあったが……。
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