録画しておいた「しゃべくり007」を観ていたら、アンジャッシュの渡部が女役の名倉を口説くというシーンで、タイ人に似ている名倉(イサーンの不細工な顔だ。あれを代表的タイ顔と思ったらタイ人が気の毒)が、突如わけのわからないコトバをしゃべって通じないというコントをやっていた。

名倉がしゃべったとき「どこの人やねん」とばかりにテロップで文字が出た。普通の人には見たことのない奇妙なモノだったろう。タイ文字だった。読みは、左から、ディー・チャイ・ティ・ダイ・ポップ・クン。
「左から」と書いたのは、見た目が似ている?アラビア文字が右から読むので、タイ文字に関して「どっちから読むの?」とかつて問われたことがあるからだ。意味は「あなたに会えててうれしい」。その辺の旅行会話本から取ってきたのだろう。よくあるように、×▲!※などを並べる存在しないインチキ語かと思った。でもすぐにタイ文字だと解り、一瞬で読めたから、一度覚えた異国語の読み書きは使わなくなってもけっこう覚えているものだと感心した。

その絵が欲しいので、テレビ画面をデジカメで撮るかとも思ったが、ネットで探したら簡単に見つかった。こっちのほうがきれいだ。まったく便利な世の中である。

むかし、もう40年ちかく前だが、ビデオ関係の仕事をしていたとき、こういうスーパーインポーズを挿れるのはたいへんだった。いちいち専門の会社に頼んで作らねばならなかった。下っ端の私はそれを受けとりに行かされた。いまはコンピュータで簡単にできる。だからここにも正しいタイ文字が入った。むかしだったなら、テレビ番組どころかこれが大作のコメディ映画だったとしても、ここに正しいタイ文字を挿れるのはむずかしい。きっと、×▲!※のようなインチキ文字だったろう。

thaimoji

画面にある文字、これが左から「ディー・チャイ・ティ・ダイ・ポップ・クン」。「あなたに会えてうれしい」という意味である。語順で言うと「うれしい・できた・会う・あなた」になる。

十数年前、タイ文字をキイボードで打つのに苦労した。けっきょくはタイ文字が刻印されているキイボードを現地で買ってきて使うのがいちばんだった。今は簡単なのだろう。すっかりもう縁が切れてしまったのでやっていない。



タイ語に関して最も信頼できないのは、メール等で文中のタイ語をアルファベットで綴ってくるような日本人である。たとえば「ありがとう」をKhob khun Ka と書いてきたりする女だ。実際にいた。これはタイ文字をアルファベットに置きかえるルールを知っていないと意味をなさない。むしろ混乱する。

ホームページに詳しく書いたが、この「タイ語のアルファベット表記の無意味」を一例挙げる。
「メーサイ」という町がある。タイ語でもメーサイである。アルファベットでは「Maesai」と綴る。英語地図でもそうなっている。
これは有気音無気音のあるタイ文字を、それのないアルファベットで表現するため、「エ=e」と「エ゛=ae」と表記を分けたことによる綴りである。タイ文字の子音は44あり、それを26しかないアルファベットで表記するためには、当然こういう智慧というか、方法というか、工夫が必要になる。

「Maesai」は「M(ae)sai」であり、「ae=e」であるから、「Mesai=メーサイ」と発音するのが正しい。綴りに「a」があるが、これは英語にはない「E」の発音を表すための「ae」という記号でしかない。このルールを知らずに知ったかぶりすると、初期の『ゴルゴ13』にあるように、世界中の言語に詳しいはずのゴルゴが「マエサイ」と発音して恥を掻くことになる(笑)。

ゴルゴに出て来るタイはまちがいだらけでかなり笑える。脚本家が現地の事情を知らず机上で作ったのが丸見えだ。一例を挙げると、「マリー」という名の娼婦と「フィリップ」というヒモの話があった。そんな名前の男も女もいない。フィリッピンとこんがらがっている(笑)。

というようなことを10年ほど前、ホームページに書いた。



日本語のカタカナの「コップンカー」でいいものを、あえて「Khob khun Ka」などと書いてくるのは、それが上級だと勘違いしている半可通の最もたちのわるいバカになる。これは相手がどの程度のモノかを判断するときに役に立つ。

Maesaiの「e=ae」と同じように、タイ語の「コ」の音を表すアルファベット表記には「ko」と「kho」がある。両方とも「コ」だ。その「タイ文字をアルファベット表記するときの法則」を知らなければ──知らない人に対し──「Khob khun Ka」は意味を持たない。混乱を助長するだけだ。「Khoとはどう発音するのか」と悩むだろう。khoなんて見たことがない。むしろ害悪である。こんな表記を得意気にメールに書いてくるようなような無神経な人間はこの程度の勉強もしておらず、それがかっこいいと思ってやっているのだろう。

日本人がタイ語の「ありがとう」を綴るなら、日本語の「コップンカップ/カー」か、ขอบคุณ ครับ/ค่ะであり、Khob khun Krab/Kaは、タイ文字とアルファベット置きかえの法則を理解しているごくごく一部の欧米人向けのモノでしかない。それを日本人相手にしたり顔で使う女(こんなことをするのは女しか知らない、男でもいるんだろうけど)はかなりの低レベルである。アルファベットを綴ることが高級だと思っているのだ(笑)。

日本人なら日本語を綴ればいいし、タイ語のニュアンスを伝えたいならタイ文字にするしかない。「コップンカップ」はタイ語の抑揚や語音を表していない半端なカタカナだ。しょうがない。コトバとは、文字とはそんなものだ。日本文字で外国語を表記するのは不可能だ。それは「カリフォルニア」が「California」の現地発音と離れていることでもわかる。かといってCariforniaをより現地発音にちかく「キャリフォーニャ」と言えばいいのかということではない。そんなことをしたらより混乱する。たとえCariforniaとかけ離れた音であっても「カリフォルニア」と言うしかないのだ。それが日本語なのだから。

「Khob khun Krab/Ka」は、「コップンカップ/カー」よりも優れているのかというと、そんなこともない。なぜ「コ」の発音に「Kho」「Khu」と「H」が含まれているのか。そのリクツを理解できていなければなんの意味もない表記だ。まことに愚かである。
言いたいのは、アルファベット綴りの方がよりよいと思い込んでいる意識の低さである。こんなことをする女が何を発言しようと高が知れている。まして知ったかぶりで政治的発言をするなんてのはお笑いだ。



halfway

というようなことを映画「ハルフウェイ」を流しながら書いていた。なかなかいい青春映画だった。2009年2月21日封切りというから、ちょうど3年前になる。

私が「北乃きい」という藝名を聴いたとき笑ってしまったのは、「きい」はタイ語で「クソ」という意味だからだ。人糞の「糞」である。まあ国によってコトバはいろいろとちがう。全世界のどこでも美しいとされるコトバはあるまい。どこかでは美しいコトバが他国では卑猥だったりする。

「ハルフウェイ」というタイトルの意味が解らず、なんか知らない言葉なのかと思ったら、本来のタイトルである「Half Way」を北乃きいがそう誤読したので、そのままタイトルにしたのだとか。しゃれているようでいて、北乃側からするとバカの刻印を打たれたようなものだ。HalfのLがRだとフランス語的にハルフと読んだとかばえるが、Lだからなあ……。
「ヘキサゴン」のオバカタレントもみなそうだったけど、日本人はローマ字読みに毒されている。その分、イタリア語を覚えるときには便利なのだが、かといってイタリア語熱が高いという噂も聞かない。

kanren6北乃きいの「きぃ」がタイ語では「クソ」の意味だという話



私はパソコンの日本語入力はかな入力でやったほうがよいと主張している。世の中のほとんどはローマ字入力のようだから、こんな主張は田作の歯軋りにすぎないが。たしかにローマ字入力を覚えてしまえば日本語も外国語も同じタイピングで済むから、あえてかな入力を覚えるよりは便利だ。
でも日本語でモーツァルトは、モーツァルトかMozartであり、「mo-tuxaruto」なんてものは存在しない。何の意味もない。でもここを読んでいる人も99%はローマ字入力だろうから、これ以上憎まれ口はやめる。カナ入力にこだわっているかた、メールくださいね(笑)。

註・田作=ごまめ