モモンガの件はおまかせを/似鳥 鶏
文藝春秋
飼育員たちが休日にバーベキューの買い出し中、道を訪ねた犬の散歩の人に疑問が…。
家で買っていた猫が連れ去られたが夜庭に戻っていた。オートロックの家からどうやって連れ去られ、そして戻ってきたのか…。
フクロモモンガが逃げたと思しき古いアパートの部屋にはミイラ化した死体が…。
山の集落に謎の大型生物が出現した。しかも怪物を閉じ込めたという廃屋はもぬけのからで…。
楓ヶ丘動物園ミステリー4冊目。
◆今回はいつものメンバーが出てきますが舞台は動物園ではありません。
悪質なブリーダー、ペットショップ、引き取り業者などペット業界にスポットを当てています。
動物たちは可愛いけれど、かわいいだけでペットを飼ってはいけないのです。
悪質な業者が出て来る一因には、無責任な飼い主の存在もあるのでしょう。
そして無責任な飼い主になる一因に悪質であったり、悪質でなくとも無責任な業者があるのでしょう。
その堂々巡りを断ち切るためにも、ペットを買う責任というものを周知させるべきなんでしょうね。
動物園の話がなかったのはちょっと残念だけど…。
あとは野となれ大和撫子/宮内 悠介
KADOKAWA
中央アジアのアラル海が干上がった後に出来たた沙漠の小国アラルスタン。
この国には後宮がある。
そこは将来有望な女性たちの高等教育の場であり、様々な理由で居場所を無くした少女たちが日夜勉学に励む場所である。
両親を紛争で失った日本人少女ナツキも、後宮に身を寄せている。
しかし現大統領が暗殺され、穏やかな日々は一変する。
国の危機に中枢を担っていた男たちは逃亡し、残されたのは後宮の少女のみ。
政治コースを修了し外務省入りが決まっていたアイシャが自ら大統領の後継と名乗り出、少女たちは自分たちの居場所を守るため、臨時政府を立ち上げた。
◆ちょっと未来、もしくはパラレルな世界で少女たちの「国家をやってみる」という奮闘が描かれます。
といってもそれは簡単なものじゃなく内紛、外交、宗教対立、テロ、そして環境問題と課題は山積みです。中央アジアの複雑な政治情勢はそのまま物語の中にも引き継がれていますね。
そんな中で成り行きで国防相を担当する事になってしまったのは日本人少女・ナツキ。
硬そうな話なの?と思いきや、同じ重さで祭りで行われる歌劇も描かれて、少女たちの友情もありで、エンタメとして素直に楽しめます。
章の間にあるコラムのブログも楽しくかつ物語とのリンクにニンマリもさせていただきました。
「後は野となれ山となれ」のダジャレ的なタイトルでありますが、読み終わってからだとそれだけでない願いも隠されていると思うのです。
もちろん彼女たちはやるだけの事はやったのです。
そしてだからこそ後は野になってほしいという。何しろ砂漠の国ですからね。
まだまだ前途多難ではあるでしょうけど、でもいつかはいつかは緑の野になって欲しいと…。
鎮憎師/石持 浅海
光文社
結婚式の二次会で大学のサークル仲間男女9人は久しぶりに集まった。
学生時代の事件によって集まることがなかったのだ。
その翌日、その事件によって故郷に帰り、それまで連絡の取れなかった一人が死体で発見された。
これは学生時代の事件に続くものなのか…。
◆鎮憎師とは復讐の連鎖を止める者。
序章で憎しみの連鎖例が語られます。これで憎しみが連鎖するということがすごく実感できるのだけど、メインとなるサークル仲間間の事件で、そこまで憎しみが連鎖するのかしら?とちょっと疑問。
事件を解決するだけでなく、その先の連鎖をも止めようという鎮憎師の設定はとっても面白いと思うんだけどね~。
どちらかと言うと、序章の事件のその後はどうなったんだろうとか、関係のない事件の方に気を取られてしまいました。
でも鎮憎師は気になるので、ここをスタートにシリーズ化も期待してます。