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本の話題、ギャラリーのことなど。

2017年05月

似鳥 鶏【モモンガの件はおまかせを】文藝春秋、宮内 悠介【あとは野となれ大和撫子】KADOKAWA 、石持 浅海【鎮憎師】光文社


モモンガの件はおまかせを/似鳥 鶏
文藝春秋


飼育員たちが休日にバーベキューの買い出し中、道を訪ねた犬の散歩の人に疑問が…。
家で買っていた猫が連れ去られたが夜庭に戻っていた。オートロックの家からどうやって連れ去られ、そして戻ってきたのか…。
フクロモモンガが逃げたと思しき古いアパートの部屋にはミイラ化した死体が…。
山の集落に謎の大型生物が出現した。しかも怪物を閉じ込めたという廃屋はもぬけのからで…。
楓ヶ丘動物園ミステリー4冊目。

◆今回はいつものメンバーが出てきますが舞台は動物園ではありません。
悪質なブリーダー、ペットショップ、引き取り業者などペット業界にスポットを当てています。
動物たちは可愛いけれど、かわいいだけでペットを飼ってはいけないのです。
悪質な業者が出て来る一因には、無責任な飼い主の存在もあるのでしょう。
そして無責任な飼い主になる一因に悪質であったり、悪質でなくとも無責任な業者があるのでしょう。
その堂々巡りを断ち切るためにも、ペットを買う責任というものを周知させるべきなんでしょうね。
動物園の話がなかったのはちょっと残念だけど…。



あとは野となれ大和撫子/宮内 悠介
KADOKAWA


中央アジアのアラル海が干上がった後に出来たた沙漠の小国アラルスタン。
この国には後宮がある。
そこは将来有望な女性たちの高等教育の場であり、様々な理由で居場所を無くした少女たちが日夜勉学に励む場所である。
両親を紛争で失った日本人少女ナツキも、後宮に身を寄せている。
しかし現大統領が暗殺され、穏やかな日々は一変する。
国の危機に中枢を担っていた男たちは逃亡し、残されたのは後宮の少女のみ。
政治コースを修了し外務省入りが決まっていたアイシャが自ら大統領の後継と名乗り出、少女たちは自分たちの居場所を守るため、臨時政府を立ち上げた。

◆ちょっと未来、もしくはパラレルな世界で少女たちの「国家をやってみる」という奮闘が描かれます。
といってもそれは簡単なものじゃなく内紛、外交、宗教対立、テロ、そして環境問題と課題は山積みです。中央アジアの複雑な政治情勢はそのまま物語の中にも引き継がれていますね。
そんな中で成り行きで国防相を担当する事になってしまったのは日本人少女・ナツキ。
硬そうな話なの?と思いきや、同じ重さで祭りで行われる歌劇も描かれて、少女たちの友情もありで、エンタメとして素直に楽しめます。
章の間にあるコラムのブログも楽しくかつ物語とのリンクにニンマリもさせていただきました。
「後は野となれ山となれ」のダジャレ的なタイトルでありますが、読み終わってからだとそれだけでない願いも隠されていると思うのです。
もちろん彼女たちはやるだけの事はやったのです。
そしてだからこそ後は野になってほしいという。何しろ砂漠の国ですからね。
まだまだ前途多難ではあるでしょうけど、でもいつかはいつかは緑の野になって欲しいと…。




鎮憎師/石持 浅海
光文社


結婚式の二次会で大学のサークル仲間男女9人は久しぶりに集まった。
学生時代の事件によって集まることがなかったのだ。
その翌日、その事件によって故郷に帰り、それまで連絡の取れなかった一人が死体で発見された。
これは学生時代の事件に続くものなのか…。

◆鎮憎師とは復讐の連鎖を止める者。
序章で憎しみの連鎖例が語られます。これで憎しみが連鎖するということがすごく実感できるのだけど、メインとなるサークル仲間間の事件で、そこまで憎しみが連鎖するのかしら?とちょっと疑問。
事件を解決するだけでなく、その先の連鎖をも止めようという鎮憎師の設定はとっても面白いと思うんだけどね~。
どちらかと言うと、序章の事件のその後はどうなったんだろうとか、関係のない事件の方に気を取られてしまいました。
でも鎮憎師は気になるので、ここをスタートにシリーズ化も期待してます。


大英自然史博物館展


先週木曜日・18日に仕事で出かけたついでに国立科学博物館で開催中の
特別展「大英自然史博物館展」に行って来ました。
たまたま仕事の都合で出かけたので、全く知らなかったのだけど5月18日は国際博物館の日だそうです。
東博・科博・西洋美術館では常設展が無料だったらしいです。
でもって大英自然史博物館展 ではドードーステッカーをプレゼントしてくれました。ラッキー!
そして今回の前売券は「ポケットガイド」付き。これってすごく嬉しい!
図録も好きだけど全てでは買えないし(場所も取るので)こういったミニガイドを有料でもいいのであると助かります。
そういえばオルセーとラファエロ展では小さめの図録があってこういうのがついに出てくれた!と思ってたけど、その後見かけないですね…。

さて、大英自然史博物館展。
展示構成は
序章:自然界の至宝~博物館への招待~
1章:大英自然史博物館の設立
2章:自然史博物館を貫く精神
3章:探検がもたらした至宝
4章:身の回りにも存在する至宝
5章:今日の社会のための博物館   です。

すごいものが並んでいるのだけど、その凄さがちょっと伝わりにくいかも。
展示物の1つ1つにそれぞれ物語があって、普通なら大きくパネル説明してもいいくらいなんだと思います。だけど全部にそれをやるわけには行かないんですよね。
ですので、今回ミニガイドがついていたのは本当に良かったと思います。

個人的に気に入った物は
●オーデュボンの『アメリカの鳥類』
北アメリカの鳥類ほとんどを実物大で描いたもの。実物大ですよ!
●化石類いろいろ。
目玉である「始祖鳥」はもちろんですが、「モア」や「オオナマケモノ」「魚竜」とかいろいろあります。
「オオナマケモノ」ってナマケモノのイメージと全く違う大きさにもビックリですね。
ちなみに化石類にはそれぞれの生きていた当時の想像がCGで博物館の中を動き回る映像がついていて、これがとっても面白かったです。
ちなみのお気に入りは魚竜とドードー。
「オオツノジカ頭骨」の大きさも迫力です。

展示はコレクションの形成過程や自然史の研究の歴史に関わるコレクターや科学者に準じて並んでいます。
ですので自然史の流れもよくわかりました。
こういった点でもとても面白かった展示です。

GW中はすごい混んでいたらしいけど、午前中(10時ごろ着)で平日ということもあり、そんなに混んでなかったです。
ちなみに展示は撮影可(フラッシュ禁止)。
残念ながら私のデジカメは最初のところで充電切れしてしまいました…。





シャセリオー、雪村、バベル展

金曜日に上野で美術館はしごしてきました。
国立西洋美術館で開催中の「シャセリオー展―19世紀フランス・ロマン主義の異才」(~5/28)、芸大美術館で開催中の「雪村 ―奇想の誕生―」(~5/21)、東京都美術館で開催中の「ブリューゲル「バベルの塔」展」(~7/2)に行って来ました。

まずは西洋美術館の「シャセリオー展―19世紀フランス・ロマン主義の異才」。
シャセリオーって?という状態でしたがポスターの絵を見てクラーナハ展の時に前売りを買ってあったのです。
テオドール・シャセリオーはフランス・ロマン主義の画家で、日本で初めて紹介される展覧会だそうです。
11歳でアングルの弟子となり、16歳でサロン入選、ドラクロアとも交流があり、シャヴァンヌ、モロー、ルドンにも影響を与えた画家ですが、37歳で死去したこともあり、フランスでの回顧展も少ないようです。うん、知らないわけだわ。

展示構成は
1:アングルのアトリエからイタリア旅行まで
2:ロマン主義へ 文学と演劇
3:画家を取り巻く人々
4:東方の光
5:建築装飾 寓意と宗教主題    です。

まず最初にあるのが16歳の時の自画像です。
容姿に自信がなかったそうで、そのせいか表情は気弱そうで線が細い感じです。
サロンに入選した「放蕩息子」。その数年後には師であるアングルはイタリアへ行ってしまいます。
その後ロマン派の画家と交流を持ち、イタリアでアングルと再開した際に決別したようです。

今回の展示はシャセリオーだけでなく、別の画家の作品も一緒に並んでいます。
シャセリオー「アポロンとダフネ」と並んでモローの「アポロンとダフネ」とルドンの「…日を着たる女ありて」がありました。
同じモチーフというだけでない影響を確かに感じますね。

「マクベス」などのシェークスピアをモチーフにした作品も面白かったし、当時の恋人をモデルにした「泉のほとりで眠るニンフ」が印象的。
光るような白い肌、下に敷かれたドレスに淡い体毛…なかなか蠱惑的です。
そしてチラシ・ポスターで見た「カバリュス嬢の肖像」の清楚な美しさ。
26歳の時に2カ月ほど旅行したアルジェリアでのスケッチや東方の風俗をモチーフとした作品。

シャセリオーは壁画も多く手掛けたそうです。
中でもパリの会計検査院の壁画は戦争や平和を寓意とした大作でした。しかし残念ながら建物は焼失。廃墟化たなかから壁画の救出運動によって後年残った物が保護されています。
ちなみのこの会計検査院の跡地は駅になり、現在は美術館となってます。そうオルセーです。

知らない画家だからこその作品の、そしてその時代の面白さをも感じる展示でした。

はしごする予定なので常設はパスするつもりでしたが「スケーエン デンマークの芸術家村」(~5/28)のポスターにひかれてこちらも見ていくことに。
これは新館2階で展示されています。
前は印象派が並んでいたあたりといえば分かりやすいでしょうか。
スケーエンとは、デンマーク最北端の小さな漁村だったそうですが、19世紀末頃から、多くの芸術家が移り住んで芸術村を形成したそうです。
つまりデンマーク版バルビゾン村ってことですかね。
そのスケーエンにあるスケーエン美術館から来日した作品たちは、漁村らしく漁師を描いた作品や海を描いたものが多かったです。
というか一番多かったミカエル・アンカーが漁師を多くモチーフとしたというべきなのか…。
そんな中で美しい女性たちが散歩するミカエル・アンカーの「海辺の散歩」はすごく素敵。
その奥さんのアンナ・アンカーの描く生活感を感じる女性たちの絵。
それとチラシのペーダー・セヴェリン・クロヤー「ばら」など素敵な作品が多く並んでいました。
パスしないでよかった~。
芸大美術館へ移動して「雪村ー奇想の誕生」へ。
前期後期と展示替えがありますが、会期末近くなのでもちろん後期の展示です。

展示構成は
第1章 常陸時代 画僧として生きる
第2章 小田原・鎌倉滞在―独創的表現の確立
第3章 奥羽滞在―雪舟芸術の絶頂期
第4章 身近なものへの眼差し
第5章 三春時代 筆力衰えぬ晩年
      テーマ展示 光琳が愛した雪村
第6章 雪村を継ぐ者たち       です。

雪村は戦国時代常陸生まれの画僧で、東国・会津、鎌倉、三春どで活躍し、後年の画家にも多く影響を与えています。
まず最初に「欠伸布袋・紅白梅図」があるのですが、光琳の「紅白梅図屏風」のスクリーンとともにあるのです。
光琳の絵に影響を与えているのが、こう見ると納得できますね。
光琳は雪村の絵を多く模写もしたようですし、またそれを取り入れた作品も多くあるようで、コーナーとしてまとめられてもいました。

写実的な動植画のようでいてあらぬ方向に曲がった竹。
賢人たちのどんちゃん騒ぎの宴会図。
水墨画の静かなイメージを覆す嵐の絵。
単純に描かれたもののその存在を感じる馬たち。
鯉や龍、風に乗った仙人たちの奇想。
もちろん静謐な山水図もあります。
光琳にとどまらず、橋本雅邦や狩野芳崖など、後年の模写などされるのも納得する面白さがあります。
地下の最後にはそういったコーナーもあります。
はっきり言って、前期を見ることができなかったのがとっても残念でした。

都美術館の「バベル展」へ移動する前に、芸大で行われている「Study of BABEL」(~7/2・無料)によっていきます。
「バベルの塔」を立体化しているのです。
見てる人の倍近い感じだったので、3Mぐらいでしょうか、その大きさのバネルの塔がど~んと置いてあります。
ど~んとあるんだけど、それでも人間はこのサイズ?絶対思うはず。
人間小さいぞ~、だからよりその塔の大きさを実感しますね。
前半分は昼間の図で、よく見ると建物の中にモニタがあって働いている人がいます。
仕切りを隔てて裏側は夜の図です。プロジェクションマッピングかな?
松明をつけた人が動くなどしています。
賛美歌っぽい音楽も流れていてムードたっぷりだからこそあのラストは効果的なのかも。
ほんとよく作ってくれました。細部までよくわかりますし、面白かったです。

予習も済んだ所で都美術館の「ブリューゲル バベルの塔展」へ。
展示構成は
Ⅰ.16世紀ネーデルランドの彫刻
Ⅱ.信仰に仕えて
Ⅲ.ホランド地方の美術
Ⅳ.新たな画題へ
Ⅴ.徽宗の画家 ヒエロニムス・ボス
Ⅵ.ボスのように描く
Ⅶ.ブリューゲルの版画
Ⅷ.「バベルの塔」へ    です。

まず、当時のネーデルランドはオランダだけでなくベルギーなども含みます。
そのネーデルランドのまずは木彫からです。
これは結構珍しいかも。聖人など1人づつになっていますが、もともとは祭壇とかの飾りであったものなのか、後ろなど平で、引き剥がされた感じが…。
でも一部当時の色彩などがわかるものもあり、信仰の対象として大事にされてきたのではないかと思いますね。

続くのが宗教画です。
ディーリク・バウツ「キリストの頭部」
正面から見つめられる感じがものすごいです。
信仰心があったら、この前では悪いことは出来ませんと感じることでしょう。
枝葉の刺繍の画家「聖カタリナ」と「聖バルバラ」は対の作品でしょう。
これはかなりお気に入りの作品でした。絵葉書にしてほしかったわ。
カタリナもバルバラも美しいけど、彼女たちを彩る衣装はさらに素晴らしかった!触って手触りを感じてみたかったです。
宗教画の背景であった風景がやがてメインになっていきます。
ヨアヒム・パティニールは風景画の先駆者とか。
「ソドムとゴモラの滅亡がある風景」ロト一家はどこにいるかを探せ的です。
描きたかったのは滅亡する町の姿なのだなと実感します。

「バベル」がメインであるかもしれませんが、この展示にはもう一つ目玉があります。
ヒエロニムス・ボスの油彩が2枚、「放浪者(行商人)」と「聖クリストフォロス」も来ているのです。しかもこちらは初来日。
パネル展示も含めて1つのコーナーとしています。

「放浪者(行商人)」はボロボロの服、片足が靴で一方はスリッパの足元、スプーンが括りつけられたカゴ。行商人なら何を商っているのでしょう?
その彼が振り返る先にあるのは娼館。
出てきたのか、それとも行きたいと思っているのか?
迷いを感じる絵で、それがモチーフなんでしょうね。
「聖クリストフォロス」は、キリストを担ぐ者という意味で、ある日子供を背中に担いで川を渡っていたら、急に子供が重くなる。その子供がイエスで人々の罪で重かったという逸話があり、旅人の無事を守る守護聖人だとか。
イエスと聖人で一見普通の宗教画なんだけど、よく見ると変なものが…。
木ある壺の家には小人が、クマが吊るされていたり、廃墟には怪獣?川べりには裸の男とか…。このあたりボスっぽいです。

続くは「ボスリバイバル」です。
ボスは同時代、ないし後の時代の画家によるボス風の作品です。
そこからブリューゲルの版画へと続きます。
ボス風の変なものがいっぱいの「聖アントニウスの誘惑」や「大きな魚は小さな魚を食う」のようなものに混ざって、「野ウサギ狩り」もあります。

最後の階はバベルの塔だけのフロアとも言えましょう。
天井まで拡大したバベルの塔2フロア分…それでもこんなサイズなの?という驚きのパネル。
そしてそれまで描かれたバベルの塔、ローマコロッセオのエッチング。
なぜコロッセオがといえば、ブリューゲルの見た中で一番大きな建築物であり、塔の発想の1つでもあるからとか。言われてみれば確かに…。
そして「バベルの塔」です。
ウィーン美術史美術館にも「バベルの塔」はありますが、こちらのほうが小さく後年に描かれています。
単眼鏡で見ると、ホント遠くの塔を望遠鏡で覗いている気分。
すごい迫力でした。

ホントはこの後に「大英博物館展」も行きたかったのだけど、体力的にバテバテで諦めました。
時間も6時近かったし(金曜日だから8時まで開館しているはずだけど)。
また科博は後日行きます。 


村山 早紀【桜風堂ものがたり】PHP研究所、志駕 晃【スマホを落としただけなのに】宝島社


桜風堂ものがたり/村山 早紀
PHP研究所


百貨店内にある書店・銀河堂書店に勤める月原一整。
店内で起こった万引き事件が思わぬ顛末をたどり、その責任をとって一整は十年働いた店を辞めざるを得なくなった。
それは一整が売りたいと思っていた本、かつての人気ドラマの脚本家が書くも忘れた今販売が厳しいと思われている本だった…。

◆今年の本屋大賞5位の作品です。
本と書店を愛する書店員たちの物語で、1冊の本が話題となり売れるようになっていく過程物語であり、そして自分の居場所を見つける物語でもありましょう。
万引き事件を発端とした誹謗中傷…これは読んでいても辛いわ。
だからこそ銀河堂書店の人々の温かさを感じるのでしょう。
しかし銀河堂書店、カリスマ店員の集まりだわね。
そんな彼らが本気で売ろうとする作品、私も読んでみたいよ~と思いましたわ。
これはこの作品でとっても好きだけど、できればもっと桜風堂書店の方の話も読んでみたかったです。
ぜひ、続編をお願いしたいですね。





スマホを落としただけなのに/志駕 晃
宝島社


麻美が彼氏の富田に連絡したとき、たまたま拾った男のもとにあった。
拾い主の男と連絡をとり、とりあえず麻美が受け取ることなったスマホ。
しかしその男は麻美の写真を見て気に入ったハッカーであった。
富田のスマホのセキュリティを破り、抜き取った個人データを利用して、麻美を監視し陥れようとする…。
一方身元不明の女性の死体が次々と発見された…。
2017年このミス大賞隠し玉作品。

◆スマホを拾ったハッカー、そのハッカーに狙われる女性、山中で発見された死体を調べる刑事の視点で物語は進みます。
そこで描かれるのはスマホとSNSの怖さ…。思いもしなかった落とし穴に、騙されそうな罠の数々。
こんなことできるの?あるの?とか思うけど、いまニュースでランサムウェアの話が流れていて、思っている以上にネット犯罪は身近なものなのだと思います。
ネットは便利だし、いろいろ楽しいものでもあるけれど、それだけに
何かあった際には大事になるのだと、改めて怖さを感じます。
選評にあったように警察の方の描き方が弱いけど、でもそれを補う面白さとテンポの良い読みやすさがありました。
そしてラストの富田くんのメッセージに救われますね。
面白かったです。


ウォルター・クレインの本の仕事


昨日千葉市美術館で開催中の「絵本はここから始まった−「ウォルター・クレインの本の仕事」(~5/28)へ行ってきました。

久しぶりの千葉市美術館です。千葉駅の変わりようにかなりビックリです。
まだ工事は終わってないみたいだけど、意外と早く終わるのかな?
てっきり横浜駅のようにいつまでもやるのかと思ってたけど(笑)

さて「ウォルター・クレインの本の仕事」。
展示構成は
第Ⅰ章 クレインのトイ・ブック
 1 カラー絵本の始まり
 2 様式の確立と6ペンス・シリーズ
 3 円熟期のシリング・トイ・ブックと合本
第Ⅱ章 カラー絵本の仕掛け人エヴァンズとコールデコット、
                   グリーナウェイの絵本と挿絵本
 1 エドマンド・エヴァンズの木口木版多色刷の仕事
 2 ランドルフ・コールデコットの全トイ・ブック 
 3 ケイト・グリーナウェイの創作絵本と挿絵本
第III章 本をデザインする――クレインの挿絵本の仕事
 1 初期の児童文学の挿絵
 2 「幼子」3部作と『パンの笛』 エヴァンズとともに
 3 子どもの本のデザイン
 4 白と黒の世界 挿絵本の傑作 
 5 「フラワー・シリーズ」と晩年の作品
第IV章 クレインの素顔
 1 クレインのポートレートと詩集・著作
 2 自筆書簡とドローイング 
 3 クレインと家族
 4 デザインの仕事
 5 クレインとジャポニズム
 6 社会主義の普及活動とモリスとの友情   です。

章立ても多いですが、作品数も多いです。
トイブックなど全ページが見ることでできるようになっているんですよ!
これがすごいです。本だから中の見開き1頁ぐらいの展示かとおもっていたのですが、作品ごとに壁にズラッと並んでいるですよ!
物語を辿っていくのはとっても楽しかったですね。
有名な作品も多いので英文が読めなくても問題ないし、ABC絵本みたいのは、かなり簡単な英文なので読める人も多いのでは?(私はその…)

さて、ウォルター・クレイン。
ヴィクトリア朝の絵本画家であり、モリスとともにアーツ・アンド・クラフツ運動に携わった人であります。
そしてこの絵本というスタイル、全ページがカラーで絵と文が一緒になったスタイルを、彫師でプロデューサーであったエドマンド・エヴァンスとともに作り上げた人物なのです。
まさに「絵本はここから始まった」なのですよ。
1つづつは小さいものですが、これだけあると見応え充分です。
ちょっと雨が降っていたからか空いてましたしね。
ゆっくり美しい世界を堪能できました。

バーン=ジョーンズを思い出させた『眠り姫』。
妙に日本やアジアが入った『アラジン』。
まさに野獣=イノシシな『美女と野獣』。

木口木版でインクなので、日本の浮世絵とはちっと違う細かさと色合い。
それがとっても鮮やかです。
トイブック(8頁ぐらいの安価な絵本)という、ホントに子供向けの本がよくここまで保存状態もよく残っていたのも驚きですね。

クレインの他グリーナウェイなどの作品もあり、全部で200点ほどありちょっと疲れましたけど、でも見に行ってよかった展示でした!

プロフィール

古書 西荻モンガ堂

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