料理人の光 ヤッさんIV/原 宏一
双葉社

料理人を志してイタリアに渡ったものの、いまや市場で盗んだ食材でホームレス相手に料理を格安で出しているショータ。
そんな彼をヤッさんは保護観察として教育していく…。


◆ヤッさんシリーズの新作です。
現在揉め事の多い築地ではなく足立市場を足場にしています。
その市場で盗みを働いていたショータを捕まえたヤッさんは保護観察として新たに弟子とします。
なんとなく流されるように料理人となったヤンキー崩れのショータに料理人として何が足りないのかを教えていくので、彼の成長がとても良くわかるし、その他にも彼の恋もありで面白かったです。
懐かしい人物たちも登場してその後がわかるのも嬉しいわ~。



リアルプリンセス/寺地 はるな他
ポプラ社

プリンセスなおとぎ話をモチーフにしたアンソロジー。
寺地はるな「鍋かぶり」(鉢かづき姫)
飛鳥井千砂「歩く12人の女」(踊る12人のお姫様)
島本理生「ラプンツェルの思い出」(ラプンツェル)
加藤千恵「正直な彼女」(エンドウ豆の上に寝たお姫様)
藤岡陽子「あの人は海を捨てた」(浦島太郎・乙姫)
大山淳子「夢のあと」(眠り姫)

◆子供の頃読んだお姫様のお話が現代になったら…のアンソロジーです。
寺地はるなさんの「鍋かぶり」や、飛鳥井千砂さんの「歩く12人の女」はまさに現代に置き換えた感の話でしたが、その他はかなり面白い味付けがされていました。
個人的には浦島太郎をモチーフにした藤岡陽子さんの「あの人は海を捨てた」が好きです。
童話の乙姫様のその後の想定も素敵だけど、亀役の彼がとっても素敵ですね。太郎より彼のほうがいいんじゃない?と思わなくもなかったり。
そして大山淳子さんの「夢のあと」のラストが!
そういえば読んでいる時は加藤千恵さんの「正直な彼女」はなんの話のお姫様かちょっとわからなかったけど…なるほどエンドウ豆の上に寝たお姫様だったのか~。




月のぶどう/寺地はるな
ポプラ社

実家であるワイナリーを営んでいた母が、突然かえらぬ人となった。
母の後を継ぐことを目指していた双子の姉・光実と、できの悪い方として将来の定まらない弟・歩。
家業を継ぐ光実に手伝ってほしいと歩も実家に戻ることになった…。

◆できる方の姉、できの悪い方の弟の二人の視点で語られます。
できが良い悪いどちらであってもそれぞれの悩み、そして急に柱を失ったワイナリーの仕事と家族の話です。
ワイナリーのお仕事小説の部分も、家族小説の部分もとても丁寧に描かれていました。
姉弟それぞれの相手に向ける想い…嫉妬も愛情もどちらもわかるし、それを自覚しているからこそ補って成長していけるのかもしれません。
そしていたずら好きの祖父、経理担当で裏で仕事をも支える父親の存在が家族を温かくしているのでしょう。
とても素敵な作品でした。