金曜日に上野で美術館はしごしてきました。
国立西洋美術館で開催中の「シャセリオー展―19世紀フランス・ロマン主義の異才」(~5/28)、芸大美術館で開催中の「雪村 ―奇想の誕生―」(~5/21)、東京都美術館で開催中の「ブリューゲル「バベルの塔」展」(~7/2)に行って来ました。

まずは西洋美術館の「シャセリオー展―19世紀フランス・ロマン主義の異才」。
シャセリオーって?という状態でしたがポスターの絵を見てクラーナハ展の時に前売りを買ってあったのです。
テオドール・シャセリオーはフランス・ロマン主義の画家で、日本で初めて紹介される展覧会だそうです。
11歳でアングルの弟子となり、16歳でサロン入選、ドラクロアとも交流があり、シャヴァンヌ、モロー、ルドンにも影響を与えた画家ですが、37歳で死去したこともあり、フランスでの回顧展も少ないようです。うん、知らないわけだわ。

展示構成は
1:アングルのアトリエからイタリア旅行まで
2:ロマン主義へ 文学と演劇
3:画家を取り巻く人々
4:東方の光
5:建築装飾 寓意と宗教主題    です。

まず最初にあるのが16歳の時の自画像です。
容姿に自信がなかったそうで、そのせいか表情は気弱そうで線が細い感じです。
サロンに入選した「放蕩息子」。その数年後には師であるアングルはイタリアへ行ってしまいます。
その後ロマン派の画家と交流を持ち、イタリアでアングルと再開した際に決別したようです。

今回の展示はシャセリオーだけでなく、別の画家の作品も一緒に並んでいます。
シャセリオー「アポロンとダフネ」と並んでモローの「アポロンとダフネ」とルドンの「…日を着たる女ありて」がありました。
同じモチーフというだけでない影響を確かに感じますね。

「マクベス」などのシェークスピアをモチーフにした作品も面白かったし、当時の恋人をモデルにした「泉のほとりで眠るニンフ」が印象的。
光るような白い肌、下に敷かれたドレスに淡い体毛…なかなか蠱惑的です。
そしてチラシ・ポスターで見た「カバリュス嬢の肖像」の清楚な美しさ。
26歳の時に2カ月ほど旅行したアルジェリアでのスケッチや東方の風俗をモチーフとした作品。

シャセリオーは壁画も多く手掛けたそうです。
中でもパリの会計検査院の壁画は戦争や平和を寓意とした大作でした。しかし残念ながら建物は焼失。廃墟化たなかから壁画の救出運動によって後年残った物が保護されています。
ちなみのこの会計検査院の跡地は駅になり、現在は美術館となってます。そうオルセーです。

知らない画家だからこその作品の、そしてその時代の面白さをも感じる展示でした。

はしごする予定なので常設はパスするつもりでしたが「スケーエン デンマークの芸術家村」(~5/28)のポスターにひかれてこちらも見ていくことに。
これは新館2階で展示されています。
前は印象派が並んでいたあたりといえば分かりやすいでしょうか。
スケーエンとは、デンマーク最北端の小さな漁村だったそうですが、19世紀末頃から、多くの芸術家が移り住んで芸術村を形成したそうです。
つまりデンマーク版バルビゾン村ってことですかね。
そのスケーエンにあるスケーエン美術館から来日した作品たちは、漁村らしく漁師を描いた作品や海を描いたものが多かったです。
というか一番多かったミカエル・アンカーが漁師を多くモチーフとしたというべきなのか…。
そんな中で美しい女性たちが散歩するミカエル・アンカーの「海辺の散歩」はすごく素敵。
その奥さんのアンナ・アンカーの描く生活感を感じる女性たちの絵。
それとチラシのペーダー・セヴェリン・クロヤー「ばら」など素敵な作品が多く並んでいました。
パスしないでよかった~。
芸大美術館へ移動して「雪村ー奇想の誕生」へ。
前期後期と展示替えがありますが、会期末近くなのでもちろん後期の展示です。

展示構成は
第1章 常陸時代 画僧として生きる
第2章 小田原・鎌倉滞在―独創的表現の確立
第3章 奥羽滞在―雪舟芸術の絶頂期
第4章 身近なものへの眼差し
第5章 三春時代 筆力衰えぬ晩年
      テーマ展示 光琳が愛した雪村
第6章 雪村を継ぐ者たち       です。

雪村は戦国時代常陸生まれの画僧で、東国・会津、鎌倉、三春どで活躍し、後年の画家にも多く影響を与えています。
まず最初に「欠伸布袋・紅白梅図」があるのですが、光琳の「紅白梅図屏風」のスクリーンとともにあるのです。
光琳の絵に影響を与えているのが、こう見ると納得できますね。
光琳は雪村の絵を多く模写もしたようですし、またそれを取り入れた作品も多くあるようで、コーナーとしてまとめられてもいました。

写実的な動植画のようでいてあらぬ方向に曲がった竹。
賢人たちのどんちゃん騒ぎの宴会図。
水墨画の静かなイメージを覆す嵐の絵。
単純に描かれたもののその存在を感じる馬たち。
鯉や龍、風に乗った仙人たちの奇想。
もちろん静謐な山水図もあります。
光琳にとどまらず、橋本雅邦や狩野芳崖など、後年の模写などされるのも納得する面白さがあります。
地下の最後にはそういったコーナーもあります。
はっきり言って、前期を見ることができなかったのがとっても残念でした。

都美術館の「バベル展」へ移動する前に、芸大で行われている「Study of BABEL」(~7/2・無料)によっていきます。
「バベルの塔」を立体化しているのです。
見てる人の倍近い感じだったので、3Mぐらいでしょうか、その大きさのバネルの塔がど~んと置いてあります。
ど~んとあるんだけど、それでも人間はこのサイズ?絶対思うはず。
人間小さいぞ~、だからよりその塔の大きさを実感しますね。
前半分は昼間の図で、よく見ると建物の中にモニタがあって働いている人がいます。
仕切りを隔てて裏側は夜の図です。プロジェクションマッピングかな?
松明をつけた人が動くなどしています。
賛美歌っぽい音楽も流れていてムードたっぷりだからこそあのラストは効果的なのかも。
ほんとよく作ってくれました。細部までよくわかりますし、面白かったです。

予習も済んだ所で都美術館の「ブリューゲル バベルの塔展」へ。
展示構成は
Ⅰ.16世紀ネーデルランドの彫刻
Ⅱ.信仰に仕えて
Ⅲ.ホランド地方の美術
Ⅳ.新たな画題へ
Ⅴ.徽宗の画家 ヒエロニムス・ボス
Ⅵ.ボスのように描く
Ⅶ.ブリューゲルの版画
Ⅷ.「バベルの塔」へ    です。

まず、当時のネーデルランドはオランダだけでなくベルギーなども含みます。
そのネーデルランドのまずは木彫からです。
これは結構珍しいかも。聖人など1人づつになっていますが、もともとは祭壇とかの飾りであったものなのか、後ろなど平で、引き剥がされた感じが…。
でも一部当時の色彩などがわかるものもあり、信仰の対象として大事にされてきたのではないかと思いますね。

続くのが宗教画です。
ディーリク・バウツ「キリストの頭部」
正面から見つめられる感じがものすごいです。
信仰心があったら、この前では悪いことは出来ませんと感じることでしょう。
枝葉の刺繍の画家「聖カタリナ」と「聖バルバラ」は対の作品でしょう。
これはかなりお気に入りの作品でした。絵葉書にしてほしかったわ。
カタリナもバルバラも美しいけど、彼女たちを彩る衣装はさらに素晴らしかった!触って手触りを感じてみたかったです。
宗教画の背景であった風景がやがてメインになっていきます。
ヨアヒム・パティニールは風景画の先駆者とか。
「ソドムとゴモラの滅亡がある風景」ロト一家はどこにいるかを探せ的です。
描きたかったのは滅亡する町の姿なのだなと実感します。

「バベル」がメインであるかもしれませんが、この展示にはもう一つ目玉があります。
ヒエロニムス・ボスの油彩が2枚、「放浪者(行商人)」と「聖クリストフォロス」も来ているのです。しかもこちらは初来日。
パネル展示も含めて1つのコーナーとしています。

「放浪者(行商人)」はボロボロの服、片足が靴で一方はスリッパの足元、スプーンが括りつけられたカゴ。行商人なら何を商っているのでしょう?
その彼が振り返る先にあるのは娼館。
出てきたのか、それとも行きたいと思っているのか?
迷いを感じる絵で、それがモチーフなんでしょうね。
「聖クリストフォロス」は、キリストを担ぐ者という意味で、ある日子供を背中に担いで川を渡っていたら、急に子供が重くなる。その子供がイエスで人々の罪で重かったという逸話があり、旅人の無事を守る守護聖人だとか。
イエスと聖人で一見普通の宗教画なんだけど、よく見ると変なものが…。
木ある壺の家には小人が、クマが吊るされていたり、廃墟には怪獣?川べりには裸の男とか…。このあたりボスっぽいです。

続くは「ボスリバイバル」です。
ボスは同時代、ないし後の時代の画家によるボス風の作品です。
そこからブリューゲルの版画へと続きます。
ボス風の変なものがいっぱいの「聖アントニウスの誘惑」や「大きな魚は小さな魚を食う」のようなものに混ざって、「野ウサギ狩り」もあります。

最後の階はバベルの塔だけのフロアとも言えましょう。
天井まで拡大したバベルの塔2フロア分…それでもこんなサイズなの?という驚きのパネル。
そしてそれまで描かれたバベルの塔、ローマコロッセオのエッチング。
なぜコロッセオがといえば、ブリューゲルの見た中で一番大きな建築物であり、塔の発想の1つでもあるからとか。言われてみれば確かに…。
そして「バベルの塔」です。
ウィーン美術史美術館にも「バベルの塔」はありますが、こちらのほうが小さく後年に描かれています。
単眼鏡で見ると、ホント遠くの塔を望遠鏡で覗いている気分。
すごい迫力でした。

ホントはこの後に「大英博物館展」も行きたかったのだけど、体力的にバテバテで諦めました。
時間も6時近かったし(金曜日だから8時まで開館しているはずだけど)。
また科博は後日行きます。