最初の約束だった、土曜日がやって来た。あれから4日過ぎたが
俺の心の中は、相変わらず、もやっとしたままだった。
その日も、朝からピーカンで、天気予報の里芋みたいなキャスターは、
3日連続夏日になると伝えていた。

退院して、ギブスは取れたモノの、松葉杖無しで歩くのは、ちと
しんどかった。それでも気分を変えるべく、なるべく外へ出るようには
いていた。

住んでる部屋から一番近いマックまで、車で行けば5分と掛からないのに
松葉杖を突きながら、おっちらほっちら出かけたら、20分以上掛かってしまった
汗だくになりながら、ソーセージエッグマックマフィンセットとチキンクリスプ
を頼み、テーブルでグリーでゲームをしながら、遅めの朝食に食らい付いていた

ピーンポン、メールが届いたようだ、ゲームを中断して、Eメールを見た。
タイトル:「元気ですか?マサです」

はぁ?マサって?だれ????とりあえず、中を確認した

「どうも、ゲイ****のG***こと、マサです。
 △△△△△さん怒ってますか?ごめんなさい
 すみませんでした。今更なんですけど、
 今日はお御約束の日ですよね。最初の予定通り
 約束した場所に迎えに行かさせて戴きます。
 時間は、午前中という約束でしたけど、今から
 じゃ間に合わないので、午後1時で構わないですか
 
 レスがこなくても、来てくれるまでずっと待ってます
 嘘ではありませんし、誰かからの指示でもないです。
 変な勧誘でもありません。」

やっぱそうか、まだ飽き足らずてか?しつこいなぁ
いい加減ターゲット変えなよ。俺はゲームの続きを
やり始めた。

ふと気になって店内の時計に目をやった。時計の針は
11時42分を指していた。土曜の昼近くになったので
店内は混んできた。残っていたアイスを飲み干すと
店を出た。

外は、相変わらず雲一つない天気だった。えっちらほっちら
川沿いの道を途中公園を通りながら、松葉杖を突きながら
歩いていた。川に浮かんでいたクルーザーは、どこか
船出でもするのだろう、出港準備をしていた。

空には、誰かが餌を撒いてるらしく、カモメが集まってきた
俺はベンチで休憩しながら、クルーザーやらカモメやらを
ボーっと眺めていた。

シュッと音がして、俺の頭のすぐ横を何かが、かすめ
目の前の看板に辺り、ボンと音がして、目の前に
転がってきた。それはサッカーボールだった。

「えっ?」「あっ、どうもすみませーん」
「あっぶねえなぁ」「こっちへ蹴ってください」

見ると中学生くらいのガキども。

俺は、足が滑ったようなふりをしてわざと川の中へ
蹴ってやった。

「あっ!「おっ、すまんすまんこの通り怪我してるんで
ちと狂った、すまんすまん」
「いえ、どうも」

ガキ共は、松葉杖の俺を見たらなんも言えなかったらしく
もう少しで頭にぶつかりそうだったのを謝りもしねえんだから
このくらいのことは、してやらねえと気がすまねえ

で、看板を見てみた。この公園には、何回も来ていたが、
この看板は今まで気づかなかった。看板は案の定ボールの痕
がくっきり付いて、少し曲がってしまったようだ。

そんなことより、その書かれてる内容にふと目が行った
「××魚市場跡地」どうやら戦前までこの辺りは魚市場
だったようだ。

魚市場・・・・魚屋・・・あいつ。やべっ想い出しちまった
俺っちまだ気があるのかな。俺に送ってくれたメールは
どこまでが真実でどこまでが虚栄なんだろうか?
それとも全部真っ赤な嘘でデタラメ・・・

あの日、何回も自問自答したのが甦ってきた。何を今更
よせばいいのに、さっき来たメールを気が付けば読み返していた

「止めた、止めたぁーい!帰ろ帰ろ!」

俺はまた歩き始めた、歩き始めたから気が付いた。
約束の場所の橋は渡らねえと帰れないってことに
時間は?12時55分だった。やべっ今からじゃ
丁度1時頃に渡る。

それに、この姿じゃすぐに俺って解っちまうな。
松葉杖だし右足包帯撒いてるし、頭の包帯だって。。。

魚屋そんなこと考えながら歩いてると、橋まで来てしまった。
橋の反対車線に、軽トラがハザードを点灯けて駐車ってる
その腹に、魚屋のロゴが書いてあるのに気づいた。

まさかあれじゃねえよな。と運転席から、誰か降りてきた。
Tシャツにデニムの半ズボン、白長靴とエプロン、おまけに
ゼッケンつけたキャップを後ろ前に被ったやつだった。

俺がプロフと暗めの写真から勝手に想像していた奴とは
違ってた。まず、俺と同年代と書いてあったが、奴のが
どう見ても若い。次にジムで鍛えてますて書いてあったが
どう見てもジムなんか縁遠い。

がちぽ?いやかなりデブ。
人懐こそうな感じは、メールからも伺えたがそこは同じだった

こんな奴に騙されていたのだろうか?人は見かけによらねえな
わっ、気づかれちまった。奴は車が途切れるのを待って
こっちへ渡りかけてる。松葉杖じゃ速くは逃げられねえ

俺は、対決する覚悟を決めた。

「△△△△△さんですよね」「まぁな」
「やっぱそうだ、イメージ通りの人すね」
「だったらどうだってんだ?」「怒ってますよね」
「当然だろ」「どうも済みませんでした」

奴は橋の上なのに、土下座を始めた。

「本当にごめんなさい、済みませんでした」
「いいよそこまでしなくても」
「でも・・・」「いいから、みっともねえマネは止めてくれねえか」
「はい」

ようやく止めてくれた、通行人は何事が起きたかと、好奇な目で
見ながら足早に通り過ぎた。

「あのーまずこれを受け取ってください」
奴は、俺に封筒を渡した。
「なんだこれ?」「そのー騙した分のお返しです」
「こんなの受け取れねえな」「せめてそれだけでも」
「うけとれねえってば、騙された俺にも落ち度はあったし」
「でも、それじゃおいらの気が・・・」

「だったら金輪際、止めるこった」「ええ、それはきっぱり
高収入のバイトがあるって友達に勧められてつい」
「あんまし、そいつはいい友達じゃねえな」
「友達も紹介されただけで、中身は知らなかったようで」
「そっか」「で、あの日以来、バイトは止めました」
「賢明だな」「うす」

「なんで今更出てきたんだ?」「それが・・・・」
「どした?」奴の顔は赤くなってた。
「△△△△△さんっていい人過ぎて・・・最後に送ったのは本音っす」
「で、△△△△△さんの直アドっておらの所には届いてねえっす」
「どうして解った?」「だから、こっそり調べるのに時間が掛かったッス」

奴の顔を見てたら、それ以上なんも言えなくなって、俺はずっと無言だった

「で、今更なんすけど・・・イメージとおいらってギャップありすぎッスよね」
「まあな」「そうっすよね、ジムなんか行ってねえしかっこよくねえし
幻滅っすよね、実際に逢うと」

「そうでもねえけどな、どっちかといえば実物の方がタイプ的には上だけど」
「マジっすか?って△△△△△さんはお世辞や嘘は言わない人って解ってるす」
「おめえなぁ、そういえばこっち系なのか?」

「違うはずでした」「でしたって?」「アルバイトしてから実際に
メールをやりとりしてみると、イメージしていた業界の人たちとは
全然違ってて、だんだん騙してるのが、心苦しくなって・・・
△△△△△さんときたら、カッコいいし優しいし好き・・いや
マジで惚れちゃいました。ねぇ最初の予定取り今からデートしてくれませんか?」

俺は返事をしないで、そばにあった歩行者用信号の押しボタンを押した。

(完)