第17話 Back to The Future

「主将、主将てば!着いたっス」

俺は、恵一に揺り起こされた。どうやら夢を見てたようだ。
軽トラは、ひなびた旅館の前に止まっていた。
車から降りると、硫黄の香りとともに微かに潮の香りもした。

「ここって・・・」

奴の実家は、温泉旅館ってのは、学生時代から聞かされていた。
さっき夢で見たイメージとは、かなり違っていた
そこは、どう見ても廃屋だった。
もう何年も営業どころか、誰も住んでないようだった。

「潰れちまったっス。ていうか、おいらが潰したも同然っす」

それだけ言うと、奴は車から降りた。

「こっちッス」

奴は、旅館だった建物の裏手へ回り、裏手にある民家に
案内した。

「ここは?」「実家っす、て言っても誰も今は住んでねえすけど」

奴はその更に裏に回り、勝手口のドアを開けた。

「どうぞ」

俺は、奴にかける言葉は見つからず、ずっと無言だった。
奴の部屋だったらしき部屋に案内された。
部屋はちょっとカビ臭かった。

奴は、窓を開け、雨戸も開けた。窓からは、旅館の端っこの向こうに
海が見えた。海は夕陽を受け黄金色に輝いていた。カモメだろうか
波音に混じって、鳴き声が時折聞こえてくる。

「おおっ、いいところじゃねえか」「なんもねえっすよ」
「それがいいって」

風は優しく吹いていたが、一瞬強くなり机の上にあった写真立てを
カタンと倒した。俺は反射的にそいつを取り上げて、元に戻そうと
して、何気なく写真に目が行った。

写真には、奴と俺が写っていた。いつの写真だろうか。
たぶん夏の合宿の時だ。短パン一丁の俺は奴の肩に手を回し
ピースサインをしている。奴と言えば、ラグシャツにラグパン
カメラの方は向いてなくて、照れたように俺の方を向いていた

「あっ」奴はそう言って写真の中と同じように、顔を赤くした。
「おめえなぁ」写真立てをそっと、元の位置に戻した。

「主将、腹減ってねえすか?風呂入るスか?まだ温泉は出るっすよ
それとも・・」
奴は照れ隠しか、俺の顔を見ないで矢継ぎ早で話しかけてくる

「いや、腹はまだすいてねえ。風呂がいいな」
「うす、解ったっす。とっておきの場所に案内するっす」

俺は、着替えをもって奴について行った。

温泉分後、俺たちは、露天風呂の湯船に使っていた。
ここからは、海が見えた。といっても既に暗くなってきていて
灯りがねえからなんも見えないに等しい。波音だけが聞こえる

「やっぱいいところだ」「そうすか、気に入って貰って嬉しいす」
「なぁ、なんで潰れたんだ?」「・・・・」
「悪りぃ、訊いちゃいけなかったか?」「いいっす、それが・・・」

奴の話によると、3年前に奴の親父が亡くなり、それがきっかけで
後を追うようにお袋も・・・ここは一人っ子の奴が継ぐか誰か任せれば
よかったのだが、奴はとりあえず、医者の免許をって思ったらしく
それが結果的に、こうなったらしい。

「そっか、おめえも大変だな」俺は、奴の隣に行き肩に腕を回した。
奴は俺の方に寄りかかってきた。

「主将~」「なぁ、いつまでそう呼ぶんだ?」「だって・・・」
「だってもあさってもねえ!」俺は少しむくれたフリをした。
こいつ昔から、いじわるしてやると、困った顔が可愛いんで
よく困らせてやった。

「もう、相変わらずいじわるっすね」「ははは、可愛いでやんの」
俺は奴の頭を抱え込んでげんこでぐりぐりしてやった。
何年ぶりだろ、こいつにこうするの。そういえばあの写真を撮った
あともこうしてやったっけ。

「んもぅ、変わってねえっすね」「いやか?」「じゃねえすけど」
「けどなんだ?」「その・・・・兄貴って呼んでかまわねえっす?
・・・あっいやその・・・良かったらの話っすけど・・・」

「俺とつきあうって言ってくれたらな」
「やっぱ、そう・・・えっ?なんて言ったっす?」
「馬鹿か、おめえ、だから人の話はよく聞けって・・・
二度も言わすな、照れる」

「うす、兄貴っ」そいったきり、奴は湯船に沈み込んだ。
「おぃおぃ、大丈夫か」俺は奴を引き上げた。
「げほげほ、滑ったっす」「あのなー」
「げほげほ、死ぬかと思った」「ホント馬鹿だなおめえって奴は
そこが可愛いんだけど・・・」

健太と恵一の違いは、健太はどこか冷静なところがあって
真面目ちゅうか放っておいても大丈夫だが、それに比べこいつは
天然ちゅうか放っておいたら何するか危なかしくて放っておけない

俺には恵一の方が向いてるだろうな。決めてしまった!
腹が据わってしまえば、こいつが無性に可愛く見えた。

「うー兄貴ぃ」やべっ言い方可愛い、呼ばせるんじゃなかった
「ねぇ兄貴ぃ、どうして黙ってるっすか?兄貴ぃ兄貴てば」
「うっせーな、そう気安く何回も呼ぶんじゃねえ」
「呼ばせたのは兄貴っしょ」

奴も何回も呼んで馴れようしてるらしく、何回も何回も連呼した。

「ねぇ兄貴ぃ、そろそろ出て体洗わないっすか?」
「いいから、おめえ先に上がって洗いな」
「へへへ、さては・・っすね」

奴は、手を伸ばし俺の股間を確かめた。

「やっぱし、大丈夫っすおいらもっすから」
奴は俺の手を取って自分のモノに触れさせた。

「相変わらず、でけえな」「兄貴のだって」

                    To be continued....