こんばんわ。
今日の分です。
 

 それから僅かな沈黙。
「無理だよ」
 ダメだよ、でも、イヤだよ、でもない。それではやては良しとした。笑みを深め、横に並んでいるユーノの背をバシンと強く叩く。
「はやてっ!? う、うわっ」
 当然ユーノは前に押し出されつんのめり、
 階段から落ちた。
 ころころぽすん。なんとも可愛らしい音がした。背中を押した際にはやてが防御と質量軽減の魔法を。ユーノが転がるのを認めた瞬間なのはが護網魔法をそれぞれ発動していた。
「大丈夫、ユーノくん?」
「あ、あぁうん」
 二重の驚きに思わずユーノは怪我の確認をする前に頷いてしまった。慌てて身体中を点検するが、怪我はおろか痛みを感じる場所さえなかった。
「あ、その、ええと」
「よかった。はやてちゃんはあとで私が怒っておくから」
 二人のうしろで音にならない唸り声がしたが、二人は完全に無視を決め込んだ。
 ユーノは隣に座るなのはの体温を感じられる距離。だが今は無邪気に喜べない距離だ。
 ――僕はなのはがわからなくなってしまった。
なのはは僕をわかってくれるんだろうか。
 ユーノは意を決した。
「なのは。僕は――弱いかな」
「そんなことないよ」
 即答だった。
「ユーノくん、私と初めて会った時からずっとランクAだったよね? 弱いなんて言ったら色んな人に怒られちゃうよ」
 それはそうだけど、と口の中で呟く。言いたいことはいくつかある。あれはあくまで魔導師ランクであって戦闘技能・技術・技巧は換算されない、とか。毎回実地試験の内容が違うので、得意分野を使いやすい試験内容だと有利、とか。
 でも、そういうのじゃなくて。
「僕はなのはより、弱いよね」
「そうだね」
 やっぱり即答だった。覚悟していたとは言え衝撃がないわけではない。ユーノは目を伏せた。
「どうして悲しむの?」
 ――言われてみれば。
 どうしてだろう。オトコのプライド? そんなもの、爪先をひっかけた覚えもない。ユーノが脳を絞り終えるより先になのはが続けた。
「ユーノくんは、自分が強かったらどうなってたか、想像したことある?」
 ユーノの顔がかっと朱く染まった。もちろんある。それも純粋なシミュレーションから暇つぶしの空想、妄想としか言えないようなものまで。テロリストとか無痛動体ゾンビとか。
「ううん、もっと前からだよ。私の、私たちの最初から」
 ことのはじまり。暴走したジュエルシードに、ただの小学生だった高町なのはが襲われた時。
「あのとき、どんな意味においてもユーノくんが私より強かったら、レイジングハートはきっと私を選ばなかった。ううん、ジュエルシードが奪われることもなかったかも。そうしたらどうなったかな。私がユーノくんと出会うことはなかったかもしれないし、魔導師として腕を磨くことも決してなかった。フェイトちゃんにも会えなかったろうし、はやてちゃんにも――」
「「それは困る」」
 ハモった声が降ってきた。振り向くと階段上にフェイトの顔が増えていた。鏡像との話は終わったらしい。やはりバリアジャケットを解いている。
「なのはと会えないのは――すごく、こまる」
「私なんか立ってられるかどうかも怪しいしなぁ」
 二人は笑っていた。

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