HAKATA PARIS NEWYORK

今のファッションを斬りまくる辛口コラム

2012年02月

本業はファッション、グラフィックなどデザイン関連のクリエイティブディレクター。創る側の視点で今のファッション関連の事情を評論する。マスメディアはもちろん、業界紙誌も扱わないテーマに踏み込む。

ジル復帰で試されるオンワードの懐。

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 2月24日、WWD.COMは
Jil Sander to Return as Raf Simons Exitsの見出しで、ジル・サンダー氏がジル・サンダー社のクリエイティブディレクターに復帰し、ラフ・シモンズ氏が退任すると報じた。

 同社は2006年にプラダ社から英国の投資会社に1億2000万ドルで売却され、08年には約倍の価格で日本のオンワードホールディングスが買収した。創業デザイナーの返り咲きでオンワードHGはクリエイティビティの強化やブランド力向上を狙うのは言うまでもないが、買収後は復帰の環境をじっくり整えていたと見られる。やはり、デザイナー名=ブランド名は、何よりも顧客に強いメッセージを伝えられるからだ。


 思えば、ジル・サンダーは99年に自社がプラダに買収されて以降、同社との間で軋轢や確執を繰り返してきた。ジル本人は00-01秋冬ミラノコレクションを最後にデザイナーを辞任。その後、03年5月に復帰し04春夏コレクションよりデザインを手がけかるも、同年11月、再び辞任している。

 ただ、デザイナーと親会社との対立は、何もジル・サンダーに始まったことではない。デザイナーは誰でも、自分の思い通りの作品をつくりたいと願っている。だから、コストや収益一辺倒の経営方針にはどうしても疑問をもち、その夢や希望をつぶしにかかられると、その企業を飛び出してしまう。

 しかし、親会社側には「食えなければ、戻ってくることもある」との読みがあり、これがズバリ的中すれば、デザイナーが舞い戻ってくるケースはあるのだ。


 ファッション系コングロマリットは、いくつものブランドを傘下に抱える。デザイナーもブランド事業も1つに賭けていると、リスクが大きいからだ。しかし、ことプラダに限っては、ブランド買収に打って出るものの、黒字転換や経営の立て直しをできずに手放すことを繰り返している。ヘルムート・ラングしかり、フェンディしかりである。

 上場企業ゆえに株主から監視され、ブランド買収による負債を処理せざるを得なかったわけだが、それはそもそも同社の経営体質に問題がある。今後、オンワードHGはプラダを反面教師にして、彼女をうまくマネジメントしなければならないのだから、現時点では朗報ともリスクとも言えない。


 ジル・サンダー社はプレステージラインのウエアの他、07年からはバッグや靴、09年にはダミアーニとライセンス契約し、ジュエリーや時計の販売にも参入。11年春夏からはセカンドラインの「ジル・サンダー ネイビー」もスタートした。まさに総合ブランドとしての足場を固めている。

 しかし、ウエアはグッチやアルマーニを凌ぐ高額ラインで、メンズスーツでも優に30万円近い。米国は景気低迷が続き、欧州は経済危機のただ中、日本とてデフレを克服できずにいる。アクセサリーやセカンドラインを持つとはいえ、ラグジュアリーブランド、ジル・サンダーを取り巻く景況は決して良くない。

 創業デザイナー、ジル・サンダーの復帰で、クリエイティビティやメッセージ性は高まるだろうが、それが売上げに結びつくかは未知数である。その意味で彼女を生かすも殺すも、オンワードHGの懐の大きさにかかっていると言えそうだ。


http://www.wwd.com/fashion-news/fashion-features/bridget-foleys-diary-jil-sander-the-trials-of-succession-5747542


パルコを手中に収めたJFRの真意。

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 大丸と松坂屋を傘下に持つJ・フロントリテイリングがパルコを関係子会社化する。売り上げ減少に歯止めがかからない百貨店が若者に強いファッションデベロッパーをグル-プ傘下に納めることで、脱百貨店戦略にも踏み込もうということらしい。

 一般メディアは「顧客層の拡大」「百貨店の再編」が進むなんて相も変わらずのフレーズをお書きになっているようだが、パルコを手中に収めたところで小売り面のメリットがそれほどあるとは思えない。

 パルコが2000年以降の経営改革で行なったことは、若手店長を抜擢して店舗ごとにジャッジできるようにし、都心店と地方店にグルーピングしてテナントとのリーシング交渉を有利にした程度。集客力のあるイベント企画、ハウスカードによる顧客戦略などででは、取り立てて特筆すべきものはない。


 また「若者に強い」と言っても、客層は10代後半、20代前半、20代後半、感度もセレクト、デザイナー、ストリートなど多種多彩。自店の特性に合わせセグメントしきれているかと言えば、テナントの顔ぶれをみる限り必ずしもそうではなく、脱百貨店の手本になり得るかどうかは懐疑的だ。

 パルコ側はマーケットニーズに合わせてコンセプトを作り、そのコンセプトに合わせてリーシングするテナントとのパートナーシップに優位性があると言い続けてきた。しかし、リーシングの本流はすでにでき上がったブランドなりショップなりに対し、立地と家賃や歩率の好条件を出して引っ張っているに過ぎない。 

 運営管理や販促についても、テナントからの家賃収入や歩率で賄えるから、売上げの上がらないテナントは入れ替えればいいだけの話である。この程度のノウハウは何もパルコの専売特許ではない。


 ラフォーレ原宿が原宿発のファッションブランドをインキュベートし続け、渋谷109がギャルファッションの市場を創造した。このようなエポックメイキングがパルコにはない。もし、やっていればとうの昔にファッションマーケットはもっと活性化しているはずである。

 10年8月には日本政策投資銀行と資本提携し150億円を調達。中国などへの進出を本格化させると発表した。しかし、それは日本からテナントを連れて行って開発運営するのか、現地のテナントでそれを行なうかで、ハード面はもとより運営手法まで大きく違ってくる。

 商環境もお客の嗜好も違う海外市場において、日本だけでの知名度やノウハウでSC開発がスムーズに進むと考えるのはあまりに短絡的だ。まあ、150億円くらいの資金ではとても足りないだろうし、日本で限界が見ているデベロッパーの海外進出を投資家が評価するはずもない。


 では、Jフロントはなぜパルコを手中に収めたのか。それはショッピングセンター(SC/業態名としてはこれが正式)事業には、保証金などの様々なドル箱があるからだ。

 一流商業地では借地権が更地の時価の90%まで認められているから、当然、借家権も時価にスライドしている。しかし、SCだけは保証金は出店時の金額しか保証せず、金利は付かない。なのに退店で空きスペースができると、そこの保証金は時価で新規入店テナントに要求できるというメリットがある。

 他にも内装費のピンハネ指定レジの押しつけクレジット手数料収入など、デベロッパーにはおいしいところがいくつもある。

 つまり、Jフロント側は単なる委託販売や消化仕入れ、歩率商売といった百貨店モデルから、こうしたデベロッパーの「うま味」にも目をつけたということ。これが脱百貨店の本音かもしれない。顧客層の拡大なんて小売り面して、裏では資本を動かして儲けようという魂胆が透けて見えるのである。


ビジネス学科が服作りをしてもいい。

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 先日、あるファッション専門学校のマネージャーと話す機会があった。卒業制作やイベントが一段落すれば、来期のカリキュラム編成に入らなければならない。ファッション業界への若者の興味が薄れつつあることで、入学者をドロップアウトさせないためにも、授業の内容決めには慎重になっているようだ。

 ある学校ではコース名を「ファッションディレクター」や「ショッププランニング」に変え、名前のカッコ良さで学生の関心を惹こうとしたが、結局、徒労に終わった。別の学校はなるべく間口を広げ、クロージングから雑貨まで幅広く勉強できるようにしているが、こちらも奏功しているとは言い難い。


 そんな中、某校のマネージャーはビジネス学科の学生にも「アイテム制作にタッチさせたい」と切り出した。何とか、授業に興味を持たせる一心からだ。元来、ビジネス学科は販売スタッフやバイヤーを志望する学生が対象で、服を作る授業やそのためのノウハウ習得はほとんど行なわない。

 学生はスタイル画を描いたり、パターンをひく技術を学んでないし、既成服地の反物や芯地などほとんど見たこともないだろう。地方ではデザイン学科の学生ですら、街の生地屋レベルで素材を手に入れているわけだから、リアルクローズ足るものを作るのは難しいと考える方が正論かもしれない。


 ならば、逆に本格的にやればいいと、筆者は助言した。 昨今、リアルなアパレル現場だって、MDとデザインを自社で行うだけで、仕様決めからは外部委託しているのだから、学生にできないはずはない。

 コレクション情報を参考に、作りたいアイテムの簡単なスケッチを書く。生地問屋などから用尺分の素資材を買い、パターンは専門家に任せ、トワル作成、縫製はサンプルメーカーに頼む。

 縫製仕様書の作成はアパレル業界人がサポートし、仮縫いは自ら試着してチェックする。学生だから時間は十分あるし、一般旅行と大差ない海外研修に大枚をはたくくらいなら、その資金を回せばいい。学校側も新たな学生獲得の上でメリットがあるかもしれない。

 

 学生はセレクトショップのODM商品をオリジナルデザインと思い込み、平気で購入している。さらにデザイナーが手作りしたものをそのまま展示会で売っているなんて、無知な学生も少なくない。そんな誤解が解けるわけだ。 背景にある理屈を勉強するのは、決して無意味なことではないと思う。

 学生も自分オリジナルを着ることができるし、デザイン学科の学生とは違った意味で作品が残せる。出来上がりを写真撮影して、雑誌制作に踏み込めばプレスの勉強にもなる。 ただ、ビジネス学科なら「原価計算をきちんとやって、売価設定の仕組みを理解させることも重要」と付け加えた。


 生地やボタン、型紙、サンプル工賃などの原価を計算して、それにデザイン料や営業経費などを乗せて卸価格を割り出す。また小売りの値入れや荒利益についても考えるために、商品の販売価格を想定する。当然、量産を視野に入れ、 型紙制作費や営業経費を按分して、どこまで単価が下がるかにも目を向ける。

 学生は儲けようとか、ヒットさせようとかの目的はないだろうから、冷静にコストや価格に向き合える。「へえ~、服って意外に材料費は安いんだ」「中間にいろんな行程があるから、最終的にこんな値段になるんだ」が理解できれば、授業としての収穫は多いと思う。

 

 業界では荒利益をかさ上げするためにむやみに原価率を下げたり、無節操な値入れでべらぼうな売価を設定したりと、悪習がまかり通っている。学生時代に服作りのフローと価格の仕組みを学ぶことは、昨今のアパレルと小売りが見失ってしまった「共存共栄のために必要なこと」を考えるきっかけにもなる。これは決して理想ではないと思うのだが。

心配されるアンダーカバーの体力。

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 3月16日からユニクロとアンダーカバーとのコラボレーションブランド「U
U」が国内32の旗艦店、世界11ヵ国と地域で発売される。これまでデザイナーとの幾多のコラボレーションに臨んでいるユニクロだが、今度は裏原発のカリスマ的デザイナーと組み、新たなイメージ作りやマーケット開拓に挑む目論見だろうが、はたして勝算のほどはどうか。


 今年2月始めに発表された情報では、同コレクションは「家族をキーワードにベビー5型(990~1990円)、キッズ23型(790~5990円)、レディス34型(1500~7990円)、メンズ43型(同)のフルラインを揃える」という。

 また、商品イメージは「レディスでアンダーカバーの人気柄をポイントに使ったり、高橋氏と妻のRICOさんがデザインしたベビー、キッズは楽しい色柄や細かなディテールを取り込んだ。高品質でベーシックなアイテムにデザイナーらしいひねりを加える」のだそうだ。

 具体的なデザインや質感、クオリティについて現時点で、自社サイトのイメージ写真しか無いので何とも言えないが、価格面はベビー、キッズを差し置きレディス、メンズはかなりチープである。 


 それはライトな春夏アイテムだからってことでもなさそうだ。明らかに「家族でセット購入してほしいというMD、価格戦略が取られている」ように思われる。まあ、初っぱなの売れ行きなどを見て、秋冬も継続するとなれば、MDや価格の修正は十分あり得るだろうが。

 でも、アンダーカバー自身のビジネスモデルとは全く異なる。こちらはデザイナーブランドであるがゆえ、企画デザインや素資材調達に時間をかけ、小ロット生産しかしないので生産固定費が重くのしかかって、どうしても価格は割高になる。

 それゆえ、アンダーカバーファンはコラボで商品が安く買える反面、マス生産による感度の圧縮、クオリティやブランド価値の低下については、やきもきもしているのではないだろうか。


 もっとも、ユニクロ、アンダーカバーとも双方のスタンスの違いがあるのは、はなからわかっているはずだ。それであえてやるのだから、結果としての新市場の掘り起こしや、ブランド認知度のアップを重視しているのかもしれない。

 一つ心配されるのはアンダーカバー側の体力である。今回のコラボ企画はベビーこそ5型だが、キッズ23型、レディス34型、メンズ43型で総型数は105型にも達する。これはアンダーカバー自身の企画アイテム数に比べると3~4倍の規模で、ハイエンドなデザイナーブランドとしては、1シーズンの企画能力の限界を超えているのではないか。


 最初のコレクションは、協業が発表されて間があったから、企画に時間を割くことはできただろう。しかし、継続するとなると企画開発の期間は限られてくる。とどのつまり、このコラボ企画はアンダーカバー側が企画デザインとMD設計のみを行なって、仕様開発から後はアウトソーシングされ、ユニクロ来合いの素材や仕様に乗せられやしないかが懸念されるのだ。もし、そうなるとアンダーカバー本来のクリエーションがあまり表現されず、他のファミリーSPAとの差別化が難しくなるかもしれない。

 過去、ユニクロのコラボ企画では課題が少なくない。2006年のデザイナーズプロジェクトはクオリティの問題が解消できなかったし、プラスジェーではVMDの粗雑さでモード感性がガタ落ちになった。

 こうした課題を含め、今回はいかに学習効果を発揮して克服できているか。まずはデビュー後にじっくり見極めたい。


達成感のためであってはならない。

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 ZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイが東京証券取引所1部に上場する。ネット通販で急成長している企業だけに、これから経済誌の証券アナライズが熱を帯びてくるのは間違いない。


 同社は1部上場について「決意を新たに企業価値の向上、並びにファッションを通して、世界中の皆様に新しい体験と感動を提供すべくサービスの向上を目指す」というコメントを出したが、ネット企業が上場する主たる目的は会員企業、ユーザーの増加により嵩むサーバーやネットワーク費用のための資金調達だ。

 また、ブランド力、マルチサービスで先行する企業に対抗していくには、新たなビジネス戦略やM&Aなどが必要で、ブレーンのハンティングや技術者育成、技術の確立に上場益は使われなければならない。


 同社はバンド活動社やっていた前澤友作社長が輸入レコードやCDのカタログ販売からスタートし、若者向けのファッションブランドのネットモールに特化して、ブランド開拓からサイトデザイン、集客、物流までをすべて自社で行なうビジネスモデルを確立した。

 ただ、社員は「ファッションに携わりたい」とか「webデザインがやりたい」などで集まってきた20歳代がほとんどだ。しかし、インターネットを事業の柱に置くベンチャーである限り、社員は刻々と変化するビジネスソリューションを見極め、その先に何が求められるかを嗅ぎ取れる人間にならなければ、すぐに後発に追う抜かれてしまう運命にある。

 マイクロソフトがOS開発でPCをリードしたか思えば、グーグルは検索プログラムでネット環境を一変させたのもつかの間、今度はフェイスブックが世界中を席巻しようとしているのを見れば、一目瞭然である。


 もっとも、最近のZOZOTOWNを見ると、拙速にブランドを集めすぎたことによるページ制作レベルの鈍化、スペックなどの提供情報の粗さも目立つ。高田純次の起用でアダルトの開拓にも打って出たようだが、本来、試着を重視する大人に対して、それを超えるだけのサービスは何も提供されていない。

 また、 受託販売手数料はモール開設当初こそ20%程度だったが、今では新規導入ブランドは30%まで上がっているというから、まさに殿様商売としか言いようがない。確かに出店すれば、写真撮影からページ作成、受注、ピッキング、配送、代金回収まですべて行なってもらえるから、その分の手数料としては決して高くないという見方もあるかもしれない。

 でも、テナントにしてみると売上げの3割も持って行かれるのなら、リアルSCと大差ないと見ることもできる。こちらは接客も試着も現物確認も可能なのだ。「ネットモールは出店コストが安い」は幻想になりつつあるということである。


 1部上場により今後の可能性が期待され、高い株価が付くことが予測される。当然、60%近くを保有する前澤社長には巨額なキャピタルゲインが転がり込む。でも、それは資産であって現金ではない。ストックオプションを導入しているなら、社員の士気もあがるだろうが、今回はそのケースもなさそうである。

 むしろ、これまで以上に経営の透明化、ディスクローズが必要で、外国人投資家などの監視も厳しくなる。資金調達に見合うだけの新たな経営戦略が必要だし、投資家に対するリターンも求められる。ベンチャー企業として1部上場は、それをやってのけたという達成感だけであってはならない。これからもっと激しくなるビジネス環境で生き抜くための「前借り」に過ぎないのである。



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