HAKATA PARIS NEWYORK

今のファッションを斬りまくる辛口コラム

2012年09月

本業はファッション、グラフィックなどデザイン関連のクリエイティブディレクター。創る側の視点で今のファッション関連の事情を評論する。マスメディアはもちろん、業界紙誌も扱わないテーマに踏み込む。

錯誤の連続にならなければいいが。

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 H&Mが出店先を変えてきている。これまで都市部の一等地や郊外SCに出店していたが、駅ビルや空港といった立地にもシフトしてきたのだ。日本法人のC.エドマン社長は、「都心で大型店の出店先は限られてくるので、小さいスペースにも可能性を広げたい」と、新たな出店政策の理由をこう語る。


 9月14日、東京駅に隣接するヤンマー東京ビルの地下にオープンした「H&Mトウキョウ・ステーション店」はその1号店で、日本では初めてとなる地下展開。駅利用客や丸の内、八重洲などのオフィスで働くビジネスマン、OLをターゲットにし、ベーシックな商品や小物に絞り込んだMDを特徴とする。

 売場面積は200坪強と同社にしては小ぶりだが、メンズ、レディスのバランスを半々として、ビジネス対応のウエアを主体とする。郊外のように広大なスペースが確保できない立地では、商圏の特性を見ながら業態を開発していくようで、そのプロタイプが駅構内や空港といった「トラフィック業態」ということだ。


 これまでの郊外店は東京・武蔵村山のイオン、埼玉・新三郷のららぽーと、岐阜・本巣のモレラ岐阜とまだまだ出店は少ない。ただ、同社の場合、フリースタンディングでの展開は考えにくいので、イオンモールや三井不動産などの開発案件次第ということになる。

 となると、残された立地はそれほど多くなく、既存SCでテナント入れ替えがあれば検討ということになるようだ。そこで、都市部でまだ掘り起こせていない好立地が集客力のある駅や空港ということだろう。

 でも、同社が小商圏のニーズをどこまで攻略できるかには、やはり疑問符を付けなければならない。


 なぜなら、H&Mが攻略を得意とするのは、「トレンドを押さえたホットなボリューム市場」で、商品は流行の先端を行きながら原価や中間コストを削った低価格品である。いわゆるファストファッションだが、はたして都市部の小商圏、特に駅や空港にそんなニーズがあるだろうか。おそらくないだろう。

 大雑把に言えば、日本のマーケットはユニクロに代表されるベーシックなボリューム市場と、デザイナーブランドを主体としたトレンド市場に分かれる。つまり、ユニクロや無印良品が駅ナカに出店できたのは、ベーシックな下着や靴下、旅行グッズなどが売れるマーケットがあるからだ。

 また、ユナイテッドアローズが羽田空港や新東名の清水PAに出店した業態も、旅行に付随するスーベニアニーズをブランド力で捕捉するもので、高額なウエアを販売する目的ではない。



 それゆえ、H&Mが現状のMDの範囲内で、都市部、駅や空港など狭い商圏を攻略できるとは到底思えない。もう少し詳しく分析すると、日帰り出張のサラリーマンが急遽泊まりになって、着替えのドレスシャツや下着を持っていないとき、同社を選ぶかってことだ。そこそこのスーツを着ていたら、下着はともかくあのテイスト、質感のシャツは不釣り合いだ。

 また、仮に突発的なニーズがあっても、価格を基準に考えると、上はメーカーズシャツくらいになるだろうし、下は100円ショップが探し出せればそれで十分ではないか。中途半端な価格でトレンドに触れた同社の商品は買いにくいのである。

 まして、都市部で働くビジネスマンやOLが目的買いの対象であるスーツやジャケットをH&Mで買おうなんて思うはずがない。同社のMDでは、やはり広域から集客できる都市部の一等地か、または幅広い品揃えでファミリーに対応するSCに、大型店を構えるのがいちばん合致する。


 某SPAの幹部はH&Mの商品について「ワンナイト・パーティグッズ」と揶揄したそうが、都市部の働く目の肥えたOLにとっては、それさえも腰が引けるのではないだろうか。アクセサリーなども小物類にしても、狭い商圏でどれほどのマーケットを開拓できるかは懐疑的である。

 H&Mが都市部など近隣商圏を攻略したいとする戦略を否定するつもりはない。ただ、現状の日本市場を考えたときに、同社のMDでそうした市場ニーズを捕まえきれるとは思えないのだ。

 もし、同社が日本の小商圏ニーズに合わせた商品を開発するなら別である。しかし、スウェーデン本社に企画デザイン部門を集約させ、アジアや東欧等の協力工場で生産する体制ができ上がっている以上、日本独自のイレギュラー企画なんかかえって効率が悪くなるはずである。

 その意味でトウキョウ・ステーション店が錯誤の始まりにならないことを祈るばかりである。


客寄せ興行で、服は売れない現実。

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 アパレル業界はテレビなどマス媒体による販促手段はずっととってこなかった。それほどコストをかけられないこともあるが、服そのものにスポットを当てる必要があったからだ。そこでとった販促策がプロモーションビデオである。商品はまずショップで顧客の目にとまるから、売場で流せるPVの方が有効な販促手段になったからだ。


 筆者もプレス会社時代にはよくブランドメーカーのプロモーションビデオを制作した。モデル1~2名を使い回し、シーズン商品を30着程度着せてスタジオで何度もキャットウォークさせ、撮影した。全身のシーンは引きで、アップは服のみで撮り、カット割りを増やしたり、照明のテクニックを駆使して、いかにも多くのモデルが着ているように工夫した。

 音入れではムーディなBGMのみにして臭いナレーションはカット。当方が服にマッチするコピーか、ワンフレーズのスクリプトを書いてインサートした。もちろん、スタジオにこもって 編集、ミキシングに立ち会い、“完パケ”を作り上げた。今でも実に有意義な仕事だったと思う。


 ブランドメーカーのPVは何より“服の本質”をクローズアップさせることが重要だ。カラー、素材、質感、 カッティング、 ディテール、全体のフォルム、着心地イメージが流れるように伝わらないと、目の肥えたお客には売れない。ファッション音痴のテレビ関係者なんかより、服を熟知したわれわれがディレクションに当たった方がよほど洗練された映像ができ上がり、取引先のショップにも好評だった。こうしたマス媒体によらない販促手段を取るのは、ビギなどの大手ブランドメーカーも同じだった。


 ただ、アパレル業界でプロモーション携わった人間からすれば、10年ほど前からのメディアが関わるファッショイベントはとても販促とは言い難い。安っぽい商品を二流のタレントに着せて、ランウェイを歩かせることが“コレクション”だと勘違いしているのも、目に余る。 

 ショーの演出も度派手な音響と品がない照明でごまかしているだけで、クリエーションの発信力やプロモーションの意図は少しも感じさせない。さらに地方で展開される事業になると、ローカルテレビのプロデューサーが平気で、「リアルクローズだの、NBだの」と抜かす始末。糸へんはもちろん小売り、ましてクリエーションなんて判りもしねえ門外漢が全く寝ぼけた話だ。


 先日もファッションライターの南充浩さんが「使命を終えた東京ガールズコレクション」のタイトルで記されていたが、まさに筆者が指摘していた通りである。http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20120914/236812/?P=1

 「神戸コレクションに端を発するリアルクローズファッションイベントも、やや閉塞感が出てきているのも事実である。まず、集客数が飽和点に達している。つまり大きくは伸びておらず、むしろ少し減り気味でさえある。次に、出展ブランドにとって、実際の店頭での売上高増につながっているとは言いにくくなってきたこともある」と。

 さらに「 何より、観客のほとんどは、「タレント」を見に来ているのであって、決して「服」を見に来ているのではないという点が最大の問題である」とも。筆者が神戸コレクションの亜流である福岡アジアコレクション(FACo)(企画制作は大阪毎日放送と系列のRKB毎日放送、イベント協力は双方ともアイグリッツ)について「客寄せ興行」「タレント物見遊山」と評価してきたことと全く同じである。


 ファッションと言ってもカネを稼ぐ以上、商売の鉄則は免れない。マーケットを睨みコツコツと商品開発(調達)とショップ運営を続けて、顧客の支持を得ないと発展しないのである。一時の派手な仕掛けで人気を盛り上げるイベント商法は、やはり続かないということだ。 

 ましてローカルテレビが関わるイベント企画なんて、外部の専門会社に丸投げして上前をはねるのが関の山。地元ファッション産業の振興なんかを真剣に考えているはずはない。

 とにかく福岡のメディアはどうもタレント起用がお好きなようだ。福岡市が手がける「かわいい区」も同様の傾向。おまけに無理矢理FACoと絡め中国・大連にまで進出し、イベントを行う始末。期日が反日暴動より数日前だったから事なきを得たが、日本でとっくに使命を終えた客寄せ興行の行きつく先が中国の地方都市ってところに、企画の先細りが垣間見える。


 第一、今度は学芸会を思わせるAKB的興行で、地元ファッション業界が潤うわけでも、福岡市の税収が増えるわけでもない。どうせ利害関係者の思惑が有り有りだろうが、所詮、事業を仕切るローカルテレビとクギを刺せない行政の凡庸な脳ミソではしょうがない。

 企画担当者は事あるごとに、一連の事業をファッション振興のための「手段」だと声高に叫ぶが、一体いつになったらまやかしのデータではなく、「真の目的」が達成している根拠を示してくれるのだろうか。

デザイン物は期中企画の方がイケるかも。

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 7月の頭だったか、懇意にするメーカーから「綿ドットの残反があるので、何か面白いアイテムをデザインしませんか」って依頼が舞い込んだ。面白いデザインと言ったって残反だから、製品化する枚数には限りがある。メーカーとしても期中の差し込み用として、バイヤーに好評なら来年本格的に取り組むデモ商品にしたいようだ。

 生地はコットンポプリンの白黒、大小の4種類。デザインで遊ぶにしても限界があるが、素材がオールシーズンいける素材だから、昨今の気候ならアウターで10月下旬まで、インナーでも12月までは着られるだろう。

 ならばドットというプリント柄をグラフィカル&マルチに活用してみたわけだが、商品があがってみると意外にも出来がいい。アウターとしての存在感のみならず、ブラックジャケットのインナーに来てもメリハリが利くと思う。 


 先日、デザイナーのNobukuni Taishiさんがやはり小さめのドットを使って、衿、身頃、袖、ポケットをすべて色を違えたクレイジーパターンのシャツをデザインし、フェイスブックで公開していた。大手メーカーの庇護のもと、ゼロから素材を手配できて、企画デザインに時間をかけられるなら、大いに遊んだデザインも可能だろう。

 しかし、こちらはそんな悠長なことは行ってられない専門店系アパレルの立場。ありものでやってくれと言われたのなら、「ハイ、ハイ」と応えるしかない。それでもオリジナリティがあって、クリエイティビティな商品を作れるから、金銭関係なくやりがいもあるというものだ。

 まあ、メーカーにしても、営業企画の商品だから数字は望んでいないし、バイヤー側も在庫負担にはならないから、すんなり付けてくれて“完売”というか、スムーズな“消化”だったようである。


 これまでマルチデザインは、某デザイナーブランドの十八番だった。生地合わせの手間がかかるし、用尺の問題からロスが出るので、大手NBはほとんど企画しなかった。しかし、工場側も小ロットを受けてくれるようになった今、セレクトショップでもクレイジーパターンの企画で1万5000円程度のシャツを投入するようになっている。

 もちろん、生地合わせや縫製の手間を考えると国内産だろうし、値ごろとは言えない価格を見ても海外では無理というのは容易に想像できる。ただ、大手セレクトの柄はストライプがメーンで、ドットにまでは踏み込みきれていない。デザイナーブランドやミニマムメーカーの動向を見ながら、マス化するかの様子見と言うことだろう。

 こちらにしても残反流用の売り切れご免企画だから、リスクはほとんどない。シーズン初めからデザイン物で勝負するには、相当のブランド力が必要になる。また企画で失敗すれば、ずっと在庫抱え、期中マークダウンの憂き目に遭う。


 しかし、アパレルにとって期中企画なら生産量も限られるし、売り切れご免のフォロー無しだからリスクはない。逆に小売りにとっても、デザイン物は大量には売れないから、マニア&顧客対象の売り切りで構わない。それにシーズンインならお客さんの衝動買いも誘発できる。

 昨今のお客さんは、メジャーなインポートブランドでもない限り、シーズン当初に先買いするなんてことはない。トレンドセッターでさえ、シーズンインでじっくり買う時代である。

 先日、某有名ファッション通販サイトが幕張メッセで一般ユーザー向けの展示会を行った。この売上げは2日で1億5000万円。来場は1万人というから平均客単価は1万5000円になる。ただ、200社も出店した割にその程度の売上げだから、ファッションに敏感なヤングでさえ先買いはそれほど多くないと解釈できる。 専門店系マンションアパレルにとっては、期中のデザイン企画は一考かもしれない。

器買って、中身あらずにならないか。

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 さる8月27日、かねてから子会社化に動いていたJ・フロントリテイリングがファッションビルのパルコを手中に収めた。株式の65%を取得し、これも買収を目論んでいた森トラストとイオンを排除するかたちとなった。


 では、なぜこうまでして各社がパルコを手に入れたいのだろうか。デベロッパーの森トラストは、オフィスビルや高級マンション、ホテル&リゾートの開発がメーンのため、新たにファッションビルが加れば、営業メニューが格段に広がると考えたのだろう。

 東京ではまだまだ都市再開発が発生する可能性があり、知名度の高いパルコを持っていれば案件を手にできる公算は高くなる。1999年、実際に西武百貨店からパルコ株の譲渡を打診された時は、不良資産の多さに戸惑っている。それを徐々に整理しながら財務改善を進め、ファッションビルとして再生。実績は十分ある。


 一方、イオンはスーパーのジャスコを中心に“狸や狐が出るエリアに店を出す”政策で、ローカルマーケットを攻略してきた。その路線はイオンモールの開発でも変わらず、ジャスコを各店舗にそれを補完する形でローカル向けの専門店をリーシングしてSCを展開した。地方の都市部ではフォーラスも展開していたが、単なる商業ビルの域を出ず、パルコほどのネームバリューを得ることはできなかった。

 さらに中国への進出を目論む上では、郊外はイオンが押さえるとしても、都市部展開の器を持たないため、パルコはぜひとも提携を進めたい相手先に他ならなかったのである。


 しかし、筆者は今のパルコに買収するほどの意味があるとは思わない。なぜなら、パルコのブランド価値は、80年代、DCブランドを軸とした先端ファッションをリーシングした商業ビルとしての先駆者、そして劇場運営や出版物刊行など、堤清二&西武セゾングループのクリエイティブ戦略の栄光と遺物でもっているに過ぎないからだ。

 確かに田中一光や石岡瑛子、浅葉克己、山口はるみや糸井重里など、希代のクリエーターを起用して渋谷の若者文化を発信、牽引し、単なる商業施設では味わうことのできない付加価値を創造した功績は大きい。でも、それはあくまで文化的価値の域を出ず、未来永劫と活用できるビジネスモデルとは言い難い。ましてクリエーターたちに支払った莫大なギャラが残したものは、クリエイティブクロニクルと有利子負債の一部だったわけで、それが成熟した21世紀のファッションビジネスで多額なリターンをもたらすとは考えにくいのである。


 当のJ・フロントリテイリングは、傘下の百貨店である松坂屋や大丸がじり貧状態であるため、若者に強いパルコを買収することでヤングテナントのリーシングで優位に立ちたいと、買収の狙いを語る。しかし、都市部の商業ビル開発におけるテナント争奪戦は熾烈を極めており、必ずしもパルコが優位に立てる状況ではない。

 すでに往年のクリエイティブ&カルチャーパワーを持ち合わせていないパルコに諸手を上げて出店するテナントがどれほどあるかってことだ。テナント側にとっても、出店するなら保証金や歩率家賃、内装費のピンハネの有無、指定レジ、クレジット手数料などの条件でいちばん有利なところにするはずである。

 デベロッパーのうま味に目をつけたとしても、思惑通りに行く保証はないのである。


 現にこの秋に改装する各種商業施設を見ても、コンテンツの不足は否めない。ファッションビルにとっては新規テナントとしてリーシングしたブランドかもしれないが、大半はすでにあるものばかりだ。

 ここ数年、大手セレクトショップが力を入れている駅、空港、PAの業態やファミリー向けの値ごろなライフスタイルショップにしても、別に珍しくも何ともなくインパクトを欠いている。テナントの多くはターゲットを広げた雑貨業態ばかりで、アパレル主体の目玉ショップがほとんど無いから、ファッションビルの顔が保てるはずはない。


 残るは外資系SPAだろうが、米系ブランドはすでに出揃ってしまい、日本市場でこれ以上求められるとは思えない。あとはアジア系のチャールズ&キースやシャンハイ・タンに活路を見い出すしかないだろう。ただ、これらもLVMHやリシュモンといったファッションコングロマリットに買収されているから、おいそれとビルインに出店してくれる保証はない。

 つまり、J・フロントリテイリングがパルコを傘下に収めたことが百貨店グループの戦略を優位にさせるとはとても考えにくいのである。仏作って魂入れずではないが、器買って、中身あらずにもなりかねないのが今のファッション業界なのだ。 いくらファッションビルを持っていてもテナントが無ければ、デベロッパーのうま味も享受できないということである。


客寄せ興行であるがゆえのリスク。

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 いくら週刊誌のスクープとは言え、前々からファッションイベントとしては、問題点を感じていただけに今回は論じておきたい。週刊文春9月6日号に掲載された「東京ガールズコレクションを朝鮮総連系企業が買収」について、である。


 記事によると、東京ガールズコレクション(TGC)の運営会社「F1メディア」を昨年、朝鮮総連系企業を経営するY氏の不動産会社が株式を100%取得することで買収。そして、同氏がTGCの実行委員長に就任したというから、その目的はいったい何のだろうか。

 あくまで推測の域は出ないが、だいたいところは以下のようなことではないか。一つはTGCが先のイベントでもわかるように完全な「客寄せ興行」である点だ。買収者としては、4万人ものお客を集客できる「興行権」を手中に収めたかったのだろう。芝居にしても相撲にしても、興行ものに得体の知れない勢力が介在するのは、昔も今も変わらない構図なのだ。

 もう一つは、イベントに出演するのが旬のタレントであるがゆえ、芸能界への人脈、パイプづくりがあると思われる。記事に書かれたY氏の足跡を見ても、芸能界の谷町になるのは非常にわかりやすい行動と言える。


 TGCは興行的には成功していたが、もう一つの柱である「ショーを見ながら携帯サイトでタレントが着る服をその場で買える仕組み」は、意外にもコンバージョンレートが低く、販売手数料が伸び悩みイベント収支は赤字に陥っていたのだ。

 もともと当イベントは、アパレルや雑貨、コスメのネット販売とイベントによる情報発信で広告や協賛を募るメディア企業の「ゼイヴェル」が始めた。モバイルサイトのガールズウォーカーはそのルーツで、プログラム開発やサイト制作の初期投資、メンテナンスといった管理など相当のインフラコストがかかっている。イベントを連動させても手数料が伸びなければ、コスト回収はままならないというわけだ。

 その後、ゼイヴェルはブランディングに社名を変え、イベントも継続されていた。だが、記事によると「株式の一部が流出し総会屋が保有する等」の問題を露呈。11年1月には創業者の退任に至っている。ベンチャービジネスを興し、株式を公開するまでは順調でも、その途端に得体の知れない勢力に乗っ取られるということを、図らずも今回のケースが裏付けたことになる。


 実際、TGCの主催権、通販事業権、商標権は切り売りされており、通販事業は赤字ということを考えればY氏の不動産会社が保有してもメリットは少なそうである。だが、興行主催権、商標権からは莫大な利益が生まれる。TGCは海外や地方でも開催されており、興行主催権や商標権は各地の主催者に販売できるからだ。

 単なる客寄せ興行だから、興行主は誰でもいいのではって考え方もあるだろう。しかし、事はそう簡単には行かない。まずイベントに商品を提供するアパレルメーカー、ブランドへの影響である。メーンの客は素材や縫製には興味がなくノリで買っていく層だから関係ない、とは言えないはずだ。

 朝鮮総連のバックには「かの国」がある。将軍さまの三男が権力者の座に就こうとする中、日朝交渉の再開では総連が暗躍しているとも言われる。しかも、拉致問題が一向に進展しない一方で、平然と総連関連企業に資金が流れるのを、大多数の日本国民が許すはずはない。まして自分たちには関係ないとファッション業界が静観するなら、その見識が疑われるということである。


 また、イベントは国が推進するクールジャパンの一つとして、 外務省、観光庁、東京都などが後援し、税金が投入されている。経産省が後援していた東京コレクションは、国の事業仕分けで税金投入がカットされる一方、TGCは支援を受けられるのは縦割り構造の問題であるが、資金の行きつく先が総連関連会社なのだから、東コレ関係者は異議を唱えても良いだろう。

 それだけではない。このコラムでも取り上げたが、昨年12月には宮崎県でも観光事業の一環としてTGCは開催されている。もし、買収がイベント開催が決定した時点より先だったら、これは大いに問題である。少なくとも議会は自治体の担当者を追及すべきだろう。行政は事業入札では得体の知れない輩を排除するルールを作っているわけだから、知らなかったでは済まされない。


 でも、どうしてこうした問題が起きるのか。それは日本のファッションがメディアからあまりに軽んじて見られているからである。その場限りで人気があがれば御の字という考えがあるため、客寄せ興行というプロモーションに甘んじてしまう。そして集客するには手っ取り早く芸能人を使えばいいという考え方にたどり着く。イベントに関わるメディアの企画力などその程度だから、ファッションなんて二の次に置かれるのである。

 こうならないためには日本のアパレルが大同団結し、高感度で上質なクリエーションの発信舞台こそ、「コレクション」であると、叫ぶべきだ。また、ファッションイベントを主催する団体は、非営利で非上場であるのが条件だろう。コレクションはあくまでファッション文化の醸成であり、プロモーションの場。投機やマネーロンダリングの対象になってはならないのである。


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