HAKATA PARIS NEWYORK

今のファッションを斬りまくる辛口コラム

2012年10月

本業はファッション、グラフィックなどデザイン関連のクリエイティブディレクター。創る側の視点で今のファッション関連の事情を評論する。マスメディアはもちろん、業界紙誌も扱わないテーマに踏み込む。

2年前に企画したコートが今年のトレンドに。

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 2年ほど前、かつて付き合いがあったメーカーから「メンズのコートをデザインしませんか」とのオファーが舞い込んだ。「えっ、メンズのコート?」「オレはレディスが専門だから」って一瞬ためらった。

 でも、「たまにはいいじゃないすか」「レディスのテイストは無視していいのですから」と頼まれ、それじゃと引き受けてしまった。スタイル画レベルで10枚ほどデザインを描いたが、結局、サンプルまでを作ろうとなったんは1点だった。


 こっちもせっかくのメンズデザインだから、レディスの感覚は捨て頭を切り替えて臨んだつもりだったが、無骨、堅牢、定番、機能性等々、いくらキーワードをあげても、メンズのデザインでは遊べない。

 インスピレーションが枯渇したかって思い始めた瞬間、誰もがとるメンズデザインの定石、ミリタリーが思い浮かんだ。これならイケるかもと、世界のミリタリーデザインでいちばん颯爽として、質実も秀逸、そして存在感を醸し出すドイツの軍服を参考してみた。

 ただ、単にドイツ軍のトレンチコートではあまりにベタなので、将校が着るブルーグレーのコートを究極までデフォルメしてでき上がったのがこれである。モードの匂いを出すために内襟のポケットのフラップの色を替え、袖をレザーに切り替えた。


 生地はイタリア製フランネルのスーパー150’Sと袖の革には軽めのラムを使った。素材はすぐに手に入り、パターン製作、サンプル手配と順調に進んだものの、なんせメンズの展示会でこんなデザイン優先のコートを付けるバイヤーなんてそうそういない。結局、オーダーは取れずVOIDになってしまった。

 あれから2年、今年の秋冬トレンドではメンズもレディスも異素材を組み合わせたアイテムを発表しているデザイナーは多い。例えば、グッチのフリーダ・ジャンニーニ然り、NYコレクションのケネス・コール然り。パリのメーカーもジャケットやコートでバイマティリアルをいくつも企画している。

 まあ、デザイナーなんて考えることは一緒だな…と思い切って完全に商品化してみることにした。運良くメーカーの作品資料として残っていたので、それを買い戻し、ディテールまで完璧に作り上げることにした。


 ただ、メンズのコートで肩のラインをきちんと出すのは簡単そうにみえて、実は難しい。ソフトな素材は肩山にぐし縫いを入れて丸みをつくっても、素材の甘さによって時間を経ると型くずれしやすくなる。 

 さらに問題は袖の切り替えである。フランネルとレザーという異素材の組み合わせになると、それぞれの生地の収縮率が違うし、袖はレザーだからアイロンでいせこみをするわけにはいかない。ここら辺の問題をどうクリアするか。工場の担当者と詰めるのに時間を要したのである。

 いつも、難しいデザインばかりで申し訳ない。詳しい縫製仕様を説明するには、時間が足りないのでき上がったときに解説するとしよう。この時期冬物の製造が一段落した工場が閑散期に入るため、快く引き受けてくれた。あとは上がりを待つばかりだ。


 いつもコラムで業界のアレコレにブツクサばかり言っていると、時々、「ど~も我々アパレル関係者に批判的なご様子。ワタシの友は、現役が多いのであまり愉快ではありませんね」「批判、問題定義も結構ですが、打開案を示して実行される様子なら関心も湧きますが、ど~も違うご様子」なんぞ、百貨店系アパレル、NBの企画担当者などからコメントをいただく。

 あまり自分の作品をひけらかしたくないのだが、そう言うならこの場を借りて誤解を解いておこう。そして、ひと言言わせていただく。専門店系マンションメーカー出身の感性と企画力は、売れ筋狙いの大手アパレルとは違うし、アンタらなんかに負けるかということを。


身内でロープレコンテストを行う意味とは?

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 小売業界は商品政策で差別化ができなくなっている。そのため、ミステリーショッパーだの、ロールプレイングコンテストだのと、接客技術や販売力で勝負しようとしているが、
その効果はなかなかすぐに出るものではない。

 最近もJフロントリテイリング傘下の博多大丸と福岡パルコが第2回の合同ロールプレイングコンテストを開催した。両店は以前から「母は大丸、娘はパルコ」をキャッチフレーズに共同販促・企画に取り組んで、三越伊勢丹グループの岩田屋や福岡三越、JR博多駅の博多阪急やアミュプラザに対抗。今回はさらなる接客技術や販売力の向上を目指そうと、2回目の合同ロールプレイングコンテストに踏み切ったようだ。

 博多大丸から11店、福岡パルコから9店が選抜されて、接客技術を競っている。しかし、このコンテストがはたしてどこまで両店の技術やスキルを高められるかは、疑問である。


 なぜなら、身内で行うコンテストの場合、その審査指標が相対的なモノに陥ってしまい、絶対的視点や客観性を欠くからである。競合店にはもっと優れた販売スタッフは、いくらでもいると考えられるし、そうした人間と競い合ってはじめて技術や能力は磨かれるのである。

 小売りサービス業界では、毎年全国SC(ショッピングセンター)ロールプレイングコンテストが実施されているが、このくらいのレベルで競い合わないと、自店、自分の客観的な技術や能力がどの程度のものかわからないのではないだろうか。

 ちなみに昨年の全国SCロープレコンテスト決勝大会には、九州地区から3名が参加する大健闘。あいにく福岡パルコのスタッフは入っておらず、パルコ全店でも静岡店から1名が参加できただけである。言い換えればその程度の次元で、競い合っていいのかである。


 そして、審査基準や審査員のレベルと、それを今後の接客教育にどう生かすかがもっと重要なのだ。審査基準では、まずお出迎えから、アプローチ、お客ニーズのヒアリングといったベーシックスキルから細かく見ていかなければならない。

 そして、問題解決力にまで踏み込むことが必要になる。「お客からこんなことを言われたときにどうする?」。それがマニュアルにあるような陳腐な受け答えでは何の意味もない。

 私がお客役をするなら、バイヤスやフェイントをかけることは当然ありうる。「あまりに定番的なものは着たことないからねえ」「やっぱり、この値段では今イチや」「セレクトショップなのに、これオリジナルじゃない」なんかの質問はぶつける。でも、それが解決できて適切な答えを導けてこそ、きちんと勉強したプロの販売スタッフと言えるのである。


 審査員については言うべくもない。接客のプロであるのはもちろん、陳列やディスプレイ、素材・繊維、商品知識、業界用語、カラーなどにも精通していなければならない。接客とは単にお客に接するだけではない。それを取り巻く環境まで含めて成り立つものなのだ。言うなればそれほど奥が深いものということだ。今回のメンバーは明らかになっていないが、前回はタレントを起用していた。でも、ロープレ審査はショップレポートとは違う。コンテストをバカにするにもほどがある。


 もっとも、ロープレコンテストを行っただけでは何の意味もない。まず、各販売スタッフの課題を洗い出し、必要な会話力を向上させること。そして、アプローチからお客の不安解消、クロージング、リピーター、顧客管理までの精度アップにつなげていかなければならないのである。

 はたして博多大丸にはここまでの一貫した接客教育のシステムがあるのか。また福岡パルコはデベロッパーとしてそこまでの仕組みを整えようとしているのか。話題づくりばかりが先行して、そこまで踏み込んではいないように思える。身内で行うマスターベーションでは、ファッション業界から「井の中の蛙」と言われてもしかたない。


ローカルテナントにも白羽の矢。

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 書籍の出版や東京出張などに時間がとられ、書くのが空いてしまった。この間、業界ではとくに大きな変化はなかったが、前回からの流れでファッションデベロッパーの動きで、少し気になったことがある。

 大手百貨店グループのJ・フロントリテイリング傘下に収めたパルコはじめ、都市型のファッションビル、駅ビルがローカルのテナントに触手を伸ばし始めていることだ。表向きは郊外SCで実績を積んだローカルテナントが独自のMDノウハウを都心部でも生かせると手応えを得たことで、出店を開始するといった感じで言われている。

 しかし、裏を返せば、それだけ都心型テナントが出尽くしてしまい、デベロッパーの争奪戦も激化しているってことだ。外資系を誘致するにもほとんどがチープなSPAばかりで、目の肥えた顧客を満足させるような商品はない。つまり、どの館も似通った顔ぶれの中で、差別化を図るには専門店系アパレル中心に仕入れ、編集しているローカルテナントをリーシングした方が好都合だからだ。「自社ではとてもできないが、テナントならできる」からと、バックにある百貨店幹部の思惑も何となく想像できる。


 ファッション音痴のマスメディアが「セレクトショップ」と呼ぶ有名小売りだって、15店舗以上を展開しているところのオリジナル比率は、7割くらいにまで達している。純然たる仕入れは一部のインポートと国産のウエア、小物、靴くらいだ。

 それをセレクトショップと呼ぶかどうかはさておいて、これらオリジナルをみると独自性を発揮するアイテム、デザインというより、マーケット対応型の売れ筋商品に思えてならない。売れ残りさせず、荒利益をとりたいという思いがひしひしと伝わってくる。

 つまり、大手セレクトショップというところは、すでにオリジナルで食っており、ショップ名は違えどもMDは似通って来ている。業界ではそれらをSPAバイイング型と呼んでいるが、まあ、ファッション音痴のメディアも業態区分はわからずとも、これくらいは感づいているのではないだろうか。


 こうした状況もあって、ファッションデベロッパーは、大手セレクトを安全パイにして数字をとり、差別化はローカルテナントに活路を見出そうとしているようだ。

 ローカルは店舗数が少ないからSPA化はできない反面、100%仕入れでMDを構築できる。しかも、セレクトというスタンスで、こだわり、上質、専門性を持つ。またセントラルバイイング制ではなく、ショップごとでの仕入れなら、スタッフのスキルも高くて、販売にも力が入るから、売上げも期待できる。お客にとってもきっと新鮮に映るはずである。

 それがファッションデベロッパーにとって好都合という根拠だ。九州でこうした都市型のファションビルから出店依頼が増えていると思われるのが、熊本に本拠を置くベイブルックの「ビンゴベイブルック」だ。

 今年4月に出したイオンモール福津店で5店体制となったが、ローカルテナントでSC向けに標準化されたMDで多店舗展開するところはなく、それぞれの店舗が独自の品揃えで支持を得ていることで、都心でも通用すると判断したという。


 まあ、デベロッパーが同社の店舗を視察したり、業界内部での情報を精査する中で、ビンゴならいけそうだと判断したのは、想像に難くない。ただ、都心型のファッションビルでショップを運営していくことはそう簡単ではない。

 内装費のピンハネや指定レジの押しつけ、クレジット手数料収入など、デベロッパーにはおいしいところがいくつもあるからだ。これを総合して郊外SCより有利であると判断できた時、出店するメリットがある。

 ベイブルックのことだから、デベロッパーからのオファーがあったとき、それらを十分検討したとは思われるが。デベロッパーの甘い言葉に誘われると、ろくなことはないのである。



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