HAKATA PARIS NEWYORK

今のファッションを斬りまくる辛口コラム

2012年11月

本業はファッション、グラフィックなどデザイン関連のクリエイティブディレクター。創る側の視点で今のファッション関連の事情を評論する。マスメディアはもちろん、業界紙誌も扱わないテーマに踏み込む。

クリスマスプロモにも工夫がほしい。

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 米国では11月23日の「ブラックフライデー」を境に年間でいちばん個人消費が盛んになると言われる。
今年もディスカウントストアのウォルマートは、22日だけで約2,200万人の客数があったと発表。また、この日に売れたのはタオル180万枚、テレビ130万台、人形130万体、自転車25万台というから、この日で1年分の利益を取り戻して店を黒字化にしていくというのも頷ける。


 ただ、今年はプロモーションのやり方が変わったようだ。米CEOのビル・サイモン氏は「お客はもうチラシやCMは見ないから」と、ストレートに店舗の臨場感を伝えて需要を喚起する手法に切り替えた。

 それは自らはじめ役員や店長らがカメラに向かって年末商戦開始日の感想を語ったり、店を訪れたお客から買いたい商品や価格ついてのコメントを拾ったりして、その動画をネットにアップするといった今までにないものだ。まさにSNS先進国の米国らしい販促手法である。

 マス媒体を使う時代はとうの昔に終わったということだろう。今さらそんなものを使うくらいなら、その分を価格に還元した方がよほどリターンは大きいという判断のようだ。


 一方、ニューヨークでは、25日からクリスマスの飾り付けが急ピッチで始まっている。こちらはカルチャルな街らしく、あちこちに巨大なクリスマスを象徴するモニュメントが飾られる。

 アーチストが創作したオブジェは、 ウォルマートとは打って変わって、 いたってアナログな世界観だ。ミッドタウンビル前の噴水プールに置かれた円球型の巨大オーナメンは圧巻だ。ユ二ークなものではリップスティックか、カラフルなミサイルか、おそらく夜間には点灯するであろうオブジェもある。

 とにかくクリエーターやアーチストが思いのままに表現して、街のクリスマスムードを盛り上げている。デジタル、アナログの両方が混在するのも、プロモーション先進国の米国らしい。


 日本はというと、今年のクリスマスキャンペーンは不景気や選挙モードからか、いまいち盛り上がりに欠けている。ハロウィーンが終わると、いきなり商業施設ではクリスマスツリーが飾られ始めた。おそらく11月にボーナスが出る官公庁を当て込んだと見られるが、あまりに早過ぎて何かピンとこない。

 おまけにNYと違ってクリスマスツリーや飾りが非常にチンケだ。経費が欠けられないからだろうか、どれもパッとしない。ならばウォルマートのようにトップ自ら「来て見て買ってください」なんて言っても良さそうなものだが、それも経営者としてのプライドが許さないのか。

 結局、オーソドックスなツリーやオーナメント、加えてマス媒体を使ったおざなりの広告戦略。キラーコンテンツって言っても、あげくの果てがAKBってことしか能がないようだ。


 しかし、カネをかけなくてもいくらでもクリスマスプロモーションはできる。そこで筆者がここ数年に制作したアイキャッチャーやデコレーションを紹介しよう。

 まず、円球型のオーナメントにヒントを得たのがカラー電球を使ったもの。クリスマスカラーの赤と緑のコントラストをモチーフにごくごくシンプルなクリスマスアイキャッチャーを考えた。

 ただ、撮影は意外に難しかった。グリーンの電球を赤バックで撮影すると、中は真っ黒になってハイライトが出ない。中のフィラメントを映し出すにはトップからのスポットが必要になるが、そうすると今度は陰が出なくなる。筆者のアートディレクションは秀逸でも、カメラマン泣かせのクリスマスワークだった。

 でも、費用は1個数百円の電球とキャンバス地の布、そして撮影費のみ。アイデアだけで経費はほとんどかかっていない。


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 続いて考えたのが、一筆書きのデフォルメしたツリーイラストに、装飾用のLEDライトを組み合わせたもの。イラストレーターには申し訳ないが、紙面にランダムに穴をあけて裏からライトの先を出して被写体は完成。あとはライトが点滅するので、シャッタースピードを遅くして撮影した。

 イラストレーターだけでも、グラフィックデザイナーだけでもできないアートディレションの妙と言えるアイキャッチャー。こちらもLEDライトは100円ショップで調達したから、費用はイラスト代と撮影費くらいで、それほどかかっていない。

 そして、ここ数年でいちばん労力をかけたのが、本物のスギの枝やスマイラックスなど使ったモニュメントだ。 金アカのジャケットは、テキスタイルメーカーからベルベットの生地を調達して、オリジナルで制作した。


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 ボトムのクリノリンラインは、どうして出したかというのは、スカート同様に枠組みを作っただけ。詳細は企業秘密にしておこう。それにしてもこちらも経費もそれほどかかっていない。杉の枝はスタッフの実家などから切っておくってもらったものだからだ。

 クリスマスといっても、日本ではロックフェラービルのようなツリーは少なく、商業施設ではここ数年はペットボトルやLEDを使ったエコ&ハイテク路線が主流だった。しかし、それらもたいして珍しくもなく、デベロッパーやそこに出入りする代理店の企画はマンネリ化している。

 下請けのクリエーターもどきも、限られた予算でやるのは難しいと言い訳がましく語るだろうが、要はそれらのクリエイティビティも限界に来てるってことだろう。とどのつまり、予算をかけてもタレント呼ぶのが関の山になってしまう。


 クリスマスキャンペーンのオーナメントやデコレーションは、一考すべき時期に来ている思う。ならばこの際、SP業者なんかに丸投げするより、若者のアイデアに期待するのも一つの手ではないだろうか。

 プロのクリエーターでは自分のスキルの範囲内しか融通が利かないので、素材を無視した発想でどんどん遊んでもいいのではないか。また、スタイリストもここら辺まで作り上げて一人前と言われるのではないか。何もファッションショーや雑誌の衣装揃えだけが仕事ではないはずだ。

 経費経費というしがらみに縛られる代理店やその配下のマンネリクリエーターより、制約がない素人の若者の方がクリエイティビティなオーナメントやデコレーションができるような気がする。もちろん、彼らをコントロールするディレクターに資質が必要なのはいうまでもないが。


三越伊勢丹はアルマーニになれるか。

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 三越伊勢丹が国内の委託工場を活用してオリジナルウエアを開発するという。大西洋伊勢丹社長が年頭所感で語ったことが実現に向けて動きだしたようで、業界では賛否について持ち切りだ。

 これまで百貨店オリジナルはアパレルメーカーに丸投げするもので、店舗が少ないからコストがかかる割りにロットが少なく、実質赤字になるケースがほとんどだった。

 三越伊勢丹はこうした問題をクリアするために、アパレルを超えて直接工場に発注しようといことである。それでも業界ではアパレルメーカー的な開発するにしても、デザインやパターンのスタッフは。仕様は。素資材の手配は。企画から納品までのスケジュール管理は。ハコのVMDは。販売スタッフや接客は。価格帯は。山積みの課題をどうするのかとの声が少なく無い。


 仮に既存のバイヤーが担当するにしても、まずはMD企画から考えなくてはならないし、デザインやパターンは外部の企画会社を活用することになる。バイヤーが考える通りの商品企画を外部スタッフが形にするには、相当のコミュニケーションが必要になるのは言うまでもない。

 商品コンセプトを十分に理解してくれて、バイヤーが一を言うと十理解してくれる優秀なスタッフが必要なのはもちろん、バイヤーにも類を見ないオリジナルを独自の感性と説得力をもって、スタッフの腑に落とす能力が要る。つまりディレクター足らなければならないのだ。

 三越伊勢丹のバイヤーがいくら有能とはいっても、クリエーションの部分では素人同然。クリエイティビティの優秀さではひけをとらないクリエーターを起用するなら、バイヤーにはそれを組織の中でうまくマネジメントするディレクターの力量が要求される。


 ここまで書いてしまうと、じゃ、三越伊勢丹のオリジナルは実現できるの?ってなってくる。しかし、どの百貨店もやってこなかったわけだし、百貨店業界の厳しい現状を考えると、挑戦してみる価値はある。むしろ挑戦しなければ、明日はないと思う。

 では、どうすればいいか。あれこれ複雑に考えるのではなく、単純に考えてはどうだろう。それは模倣である。といっても商品をコピーするのではない。過去に成功しているビジネスモデルを俯瞰で見ながら真似てみるのである。代表例がイタリアのジョルジオ・アルマーニ社だ。

 デザイナーのアルマーニはデビュー以前の1960年代、ミラノの大手百貨店、リナシェンテに勤めていた。ここは米国をモデルに最先端の流行を発信する百貨店に生まれ変わろうとしていた。オーナー、代表とも世界を向き、建築家、デザイナー、広告クリエーターなどの創造力を寄せ集めて、次々と企画を実現しようとしていた。


 ここでアルマーニは、生地の選び方や洗練されたコーディネート、斬新なスタイリングに出会い、修得していったのである。その後、テキスタイルメーカーのセルッティで、生地を学び、しだいに柔らかな生地やクールな色合いを選んで若々しいソフトスーツを体現する。 こうしたモデルを真似てみるのである。

 つまり、商品からではなく、素材から入っていくのだ。それは百貨店バイヤーが全くしてこなかったことである。だから、とにかくきめ細かく生地を見分け方や扱い方、個々の素材が持つクリエイティビティを見抜き、よりよい形で利用して服にしていくのだ。

 シルク、ウール、コットン、革等々。世界中の上質なテキスタイルに注目して活用する。もちろん、素材、色、柄がなければ生地から作るくらいの覚悟も必要だ。1年、2年と時間がかかるかもしれない。でも、そうでなければオリジナルなんて代物が作れるはずがない。


 もちろん、並行して国内の協力スタッフを探さないといけない。ここからは前述の課題が頭をもたげていく。しかし、素資材がしっかり手当てされていれば、かなりの部分でNBアパレルやSPAと差別化できるはずである。今の日本市場に出回っている商品の多くがありものの素材を使っているからだ。

 尾州や関西には優秀な技術をもつのに埋もれているテキスタイルメーカーが少なく無い。そちらを活用するのも手だ。おそらく、大西社長もそこには気づいているはずだ。それが適えばパターンはまだしも、デザインの部分には百貨店のスタッフが踏み込んでいいと思う。そこまでのモデルを作り上げて、初めて委託工場を活用する意味が出てくる。

 アルマーニも学校では建築の勉強こそしているが、ファッションデザインは仕事をしながら現場で修得している。最初は商品単体をつくり、徐々にMDを組み立て、VMDのフォーマットを築き、ブティック出店にこぎ着けた。じっくり時間をかけておこなえば良いのである。

 

 尤もアルマーニのクリエイティビティは折り紙付きだ。そうした人間が三越伊勢丹にいるかどうかになる。ただ、クリエイティビティなるものは、最初から備わっているわけではない。来る日も来る日も基礎的な学習を重ね、経験を積み重ねる中で発揮されるものだ。

 三越伊勢丹に入社したほどの人材なら、そうした素養をもっているはずだし、また自ら学び、育てていかなければならない。そして、「私がやります」「私にやらせてください」という野心的な人間が出現してこそ、オリジナルは生み出せるといっていいだろう。

 筆者を含め、とかく百貨店は批判の俎上に上げられるケースが多い。でも、そうするのは百貨店が現状の問題点を少しも変えようとしないからだ。三越伊勢丹がオリジナルで、それに一歩踏み出すのであれば応援するのは吝かでないし、大いに期待したい。


 現状では課題が山積みだ。しかし、閉塞感が漂う日本のファッション業界で、「こりゃ、オシャレだ」って商品をぜひ三越伊勢丹がデビューさせてほしいものである。

R・ローレンのラグビー撤退が暗示するもの。

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 ラルフ・ローレン社はこのほど、「ラグビー」事業から撤退すると発表した。ラグビーは2004年にボストンで誕生した同社のスピンオフブランド。ラルフ・ローレンのテイストを生かしながら、若者向けに振った典型的なキャンパスカジュアルだ。

 イメージは米国アイビースクールのトラッドファッションで、ヴァン世代、メンズクラブの読者にとって青春そのもの。流行に左右されないアイテムということで、団塊ジュニアにも受け入れられやすかったようだ。

 まあ、セレクトショップのビームスは、こうしたアメリカンカジュアルのアイテムを素材やカラーを変えて独自のMDを作り出していった。言わば、ビームスの底流を成すベーシックアイテムと言えるだろう。


 ところが、わずか10年もたたないのにブランド事業を閉鎖したのはなぜか。考えられる理由は二つある。一つはこうしたアメカジライクなキャンパスファッションは、デザインが不変でアイテムも出尽くしており、すでにSPAなどの絶好の模倣ターゲットとなっていたということだ。

 例えば、鹿の子のポロシャツや裏毛のトレーナー。キャンパスファッションの基本アイテムだが、素材は出来合いのものがあり、デザインも定番だから、同じようなアイテムを作り出すのはいとも簡単である。

 ダウンベストやスタジアムジャンパー、パーカー類も同じだろう。パターンは決まっているし、素材さえ手配できれば、韓国はもとより、中国のアパレルでも作れる。完全な偽造コピーではなくても、ロゴマークやラインを変えたものがラグビーの5分の1~10分の1の価格で市場に出回っている。  


 ラルフ・ローレンが好きな人々なら、ラグビーのブランド価値も理解できるかもしれない。しかし、単なるアメカジテイストで良い層は、高い金を払ってわざわざラグビーを購入するとは思えない。

 つまり、いくらラルフ・ローレン社が資金と人材を投資して、ブランドとして育てようとしても、見てくれが同じようなものはすでに多く存在していたということだ。結果的にロゴマークを付けたくらいの付加価値では競争力にはつながらず、一定のマーケットシェアを確保するとまではいかなったのだろう。

 同社側はラルフ・ローレンより多少価格を下げれば、ヤングマーケットを攻略できると踏んだのだろうが、それほど今のカジュアルマーケットは甘くなかったってことである。


 もっとも、ラルフ・ロレーンファンにとっては、カジュアルでもラルフ・ローレンそのもののデザインを好むのではないだろうか。あまりに定番すぎるラグビーでは物足りなかったのかもしれない。

 また、ラルフ・ローレンにはメンズではブラックレーベル、レディスではコレクションラインがある。ブラックラインはアメリカントラディッショナルが源流のラルフ・ローレンにあって、シャープで都会的なテイストをもつファッションだ。シーズントレンドがハッキリ打ち出されているので、モダンなテイストを好む層はこちらを選ぶ。

 コレクションラインはメンズのパープルレーベルと同様に素材、縫製のすべてのおいて最高級品で、イタリアで生産されている。こちらはロゴマークなどは一切入っていないし、アイテムはオンタイムからフォーマルがドレス主体になる。これらを好む層は、おそらくラグビーなんか全く眼中にはないだろう。

 

 ラルフ・ローレン社が日本で主力に狙いたいのは、収入が一定レベル以上の富裕層だから、ラグビーは異質なものになったのではないだろうか。それが世界的にも競争力を持てず、ブランドとしてのポジショニングを確立できなかったということになる。

 これはドルチェ&ガッバーナが日本市場ではD&Gの販売から手を引いたのと似ている。それだけカジュアルマーケットは価格競争が激しく、ブランドのポジションを確立するのは容易ではないのである。

 有名ブランドがディフュージョンラインやバジェットラインを打ち出すのはビジネスとして理解できる。「お金が貯まったら、もっと良いものを買いたい」って思うのは消費者の素朴な願望だし、ブランド企業側のボトムアップ戦略としても当然のことだ。


 しかし、バジェットラインは量産が基本だし、アウトレット消化まで計算しなければ収益は上がらない。結果的に並行ものが出回ったり、コピー商品の格好のターゲットになる。ブランド管理は難しく、ポジショニングもあやふやになるリスクをはらむのだ。

 ラグビーもポジション設定は行っていたはずであるが、何せ競合が多かっただけに独自のポジションをつかみづらかったということだ。撤退はこうした有名ブランド特有の市場構造にも起因している。 これが2つめの理由だ。

 ラルフ・ロレーンは米国では確固としたブランドであるし、世界戦略を進める上でブランドのプレステージ性を保つことが不可欠だ。トップダウンでディフュージョンラインを増やすのビジネス戦略上は必要だろう。

 しかし、テイストやデザインを変えずクオリティを下げるだけで、簡単にカジュアル市場を攻略できると考えるのは浅はかというもの。ラグビー事業の撤退はそれを如実に表す結果となった。


老舗菓子舗と専門店系アパレルの共通点。

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 先日、地元博多で100年以上の暖簾をもつ老舗菓子舖、IMD社のI社長とお話する機会を得た。IMD社の菓子は、博多で生まれ育った人間として、子供の頃からその味に慣れ親しんでいる。次々とスウィーツのトレンドがやってくる昨今でも、決して凌駕されることない菓子といえるだろう。

 I社長と面と向かってお話するのは今回で2回目だが、筆者と高校、大学こそ違えど、博多奈良屋校区、博多山笠大黒流れの大先輩で、同じ風土で育っただけにものの考え方、感性の面で共通点が多いと感じた。経営観という大げさなものでなく、物作りでいかにマーケットを刺激していくかという点でも、である。


 I社には、鶴の玉子をモチーフにした菓子がある。米国からマシュマロの技術が伝来したことで、それを和菓子に応用して作り上げたものだ。同社にとって100年以上売れ続ける不朽の銘菓となっている。

 しかし、I社長は商品に頼り過ぎること無く、この菓子を核にマシュマロデーを発案して、新たなムーブメントを興した。それだけではない。ラスク、バウムクーヘン、ロールケーキといった近々のブームにも動じず、それらを一も二も工夫した商品を開発し、年商7億円の大ヒット商品に仕立てている。

 それでも「菓子のマーケティングなんて簡単。いかにお土産市場を開拓するかだよ」とサラリと言ってのけるが、その陰ではきっと菓子づくりに心血を注いでいるのだと思う。


 菓子を作る材料は出尽くしている。和菓子なら小麦粉、砂糖、玉子が基本だ。洋菓子ならこれに生クリームやチョコレートが加わるくらい。後は季節の食材を加えて、旬を出せばバラエティに富んでくる。

 しかし、それでも味にバラツキがあるのは、素材へのこだわり、伝統が培う技が違うからだ。そして、マーケットを読んだアレンジ力もあるだろう。それが100年以上続く銘菓を生むのである。

 三文メディアが味音痴のレポーターを使って仕掛けるスウィーツブームとは違う。ブームは一過性のもので、2年3年とは続かない。昨年、あれほどにぎわった博多阪急の3大スウィーツも今ではラスクを除いて行列は無いのが何よりの証拠。

 やはり、老舗が作り出すカステラ、羊羹、餡ころ餅…は、メディアが扱わずともコンスタントに何百億円を売り上げているのだ。


 専門店系アパレルも同じではないだろうか。原料は決まっている。綿、ウール、シルク、革、合繊。それを織り編んで作るサテン、シフォン、タフタ、ギャバ、ベネジャン、カルゼ、ツイード、レース、ベロア、天竺やフライス、パール等々の生地。そしてプリーツ、オパール、フロッキー、エンボスなどの加工。

 これらに企画とアイデア、デザイン感性、そして技術を駆使し、ボタンや飾りなどの付属品を付けて服が生まれていく。その善し悪しはまず上質な素材選びで決まり、次に鋭い感性、最後はこだわりを表現する匠の技である。

 欧米のラグジュアリーブランドだから上質なのではない。日本のアパレルでも質の高い素材、斬新な企画力と洗練された感性、そして高い技術力をもつ職人という条件が揃えば、商品は生み出せる。


 老舗菓子舖と専門店系アパレルの違いは、やはりマーケットだろう。銘菓は直営店、FC、デパ地下、駅や空港、高速のPE、そしてインターネットと、販路の広がりに伴って市場は確実に広がっている。

 しかし、ファッションはどうか。若者のコーディネートセンスの進化、デザインさえ気に入れば品質は気にしない感性の退化。トレンドだけに特化して品質を削ぎ落としたトレードオフの商品が台頭などがある。

 トレンドに圧縮されたファストファッションであればいいという意識が浸透。専門店系アパレルのような品質や作りにこだわる服は業界の玄人発想に過ぎず、素人の消費者に必要でなくなってきている。販路は広がっても、上質な感性マーケットは縮小しているのだ。


 ならば、専門店系アパレルは、確実に捕捉できる市場だけを狙うしかない。上質な素材で、優れた作りの服をわかってくれる人だけに伝えれば、それでいいのではないか。ゆえに量を売るという必要もないと感じる。もうビジネスにはならないかもしれない。

 チープでトレンドだけ追いかけるファッションは、三文メディアが二流のタレントに着せてみせる客寄せイベントで拡販すればいいだろう。だから、専門店系アパレルはファッションビジネスにおいて、マスに対する責任感なんか一切感じなくていいと思う。

 上質で確かな作りのファッションを愛する人々は、そうでない人々より洗練された時間と空間に身を置くことができ、お洒落に対して潤いのある会話を楽しむことができる。チープなファッションには絶対できない。伝統の銘菓を口にする時の気分と同じ。それでいいと思う。 

パキスタン製レザーが台頭してきた。

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 元来、メンズのレザーは米国代表されるハードなライダースやフライトジャケットが定番だった。今でも、アメカジファンの間では丈夫なカーフレザーで、いろいろ蘊蓄がこかれている。

 しかし、ファッションがよりカジュアル化し、メンズにもレディスのテイストが入ってきた昨今、セレクトショップのファイスを飾るのは、アメリカンレザーでは不釣り合いになった。

 大手NBショップのMDは、レザーについても中国製を採用しているが、2年ほど前からセレクトショップの店頭では、パキスタン製のレザージャケットが増えてきている。 柔らかいラムやシープを使ったもので、仕上がりも中々上質だ。


 パキスタンといえば、それほどアパレルのイメージはない。ただ、古くから製靴産業が盛んで、アッパーの裁断から縫製、靴の組み立てまで一貫して行われてきた。製靴メーカーに革や靴底などの付属品の製造業者も多い。

 大半が家内工業的な零細メーカーだが、ドレスシューズからカジュアルシューズまでこなしており、縫製の技術力もなかなかのもの。布帛のシャツ、デニムジーンズのような大量生産なら、中国アパレルが向くだろうが、レザーのようにそれほどロットが増えないアイテムには、中小メーカーの方が適している。そこに欧州や日本のアパレル企画会社や商社が目をつけたというわけだ。

 写真はフランスのメーカーに発注したシープスキンのレザーのジャケット。毎度の黒では能がないので、限りなく深いモスグリーンを選んでみた。革が柔らかく薄手のため中綿を入れてこしを出し、背中にはキルティング加工を施した。防寒にも十分対応する。


 結果的にユーロラインのライダースに仕上がったので、ヴェスパやトライアンフが似合いそうだ。背中にはアクションプリーツを施したわけではないから、バイクに乗るには少し窮屈だけど、タウンで着るには十分だと思う。

 それにしても、パキスタン製のレザーは良い。袖から背中にかけての切り替え、補強を施したパイピング、虫食いや毛玉の心配がないレザーリブ。革と同色の太い糸を使い、専用ミシンで仕上げた丁寧な縫製etc. デザイン仕様はかなり複雑なのだが、きめ細かく対応している。

 すべてメーカーの注文仕様にも関わらず、完璧に仕上げてくれた。中国メーカーなら仕様書の段階で、嫌な顔をするだろう。NBクラスのロットがないと応じないかもしれない。しかし、パキスタンのメーカーは嫌な顔一つしなかったようだ。

 

 すでに中国アパレルも外注先に使い、無理難題を突きつけていると聞く。あいつらならやりかねない。ただ、彼らと長く付き合っていくには、ヨーロッパのOEMメーカーも、日本のセレクト系メーカーも、フェアトレードな精神で適正な工賃を支払い、ウィンウィンのビジネスをやって行くべきだと思う。

 彼らがわれわれクリエーターの感性を具現化してくれるのだし、クリエーターは何も価格やコストありきではないのだ。末端の消費者も良い商品なら、そこそこの価格になるって意識をもってほしい。同じアジアの中で、途上国が経済発展するのを嫌に思う日本人なんていないだろう。ヨーロッパと日本の中間に位置するパキスタン。一クリエーターとしては今後も大いに期待したい。


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