HAKATA PARIS NEWYORK

今のファッションを斬りまくる辛口コラム

2013年02月

本業はファッション、グラフィックなどデザイン関連のクリエイティブディレクター。創る側の視点で今のファッション関連の事情を評論する。マスメディアはもちろん、業界紙誌も扱わないテーマに踏み込む。

サービスがドレスファッションを覚醒させる。

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 ブラウスやスカートなど1アイテムの服作りに執念を燃やし、都会的でスパイスの利いた商品を上質な素材と高い縫製で提供する専業アパレル。後発他社が練り上げたMD、スピード、価格を前に「専業」という独自性にコストと時間をかけるのは、完全に市場から見放された感がある。 

 「ブランドやトレンドを安くを手に入れればいい」が衣料消費の趨勢となりつつある中、最後の砦としてサービス力で勝負かけるのがドレスファッション業界だ。

 かつて専門店の売場には春秋の結婚式シーズン、冬のクリスマスホリデーに合わせ、ドレスコーナーが設けられていた。これが独立した業態としてマーケティングを強化し、ビジネスモデルを確立しつつあるのだ。


 ボリューム、マス市場のニーズはそれほどカネをかけない。そえゆえ、ドレスもレンタルで済ませる考えは従来からあった。しかし、タイム、プレイス、オケージョンがカギを握るフォーマルは、カジュアルウエアを購入する場合とは明らかに異なる。

 じっくり時間をかけ専門スタッフのアドバイスを受けながら、最高のドレスアップをしたいというのが消費者のニーズだ。特に女性の場合は、主賓、来賓を問わず同じ心理のようである。

 こうした背景から欧米ブランドのデザイン力や国内専業メーカーの仕様ノウハウ、それに専門スタッフのフィッティング技術を組み合わせた新業態、 結婚式場などと提携した「ドレスブティック」が地方都市でも少しずつ増えつつある。


 秀逸な点はマーケティング能力の高さだろう。ウエディング市場だけを見れば、少子・晩婚化、価値観の多様化が進み、市場は縮小するという見方が大勢を占める。

 しかし、モノからコトに消費が軸を移す中で、ドレスを着る=正装の機会は必ずしも減ることにはならない。つまり、いろんな「ハレの日」を仕掛けることで、老弱男女を顧客にしていこうという狙いだ。

 もう少し詳しく市場を見ると、2010年の20~29歳の結婚適齢人口は1740万人。それが2030年でも1350万人は維持されるという統計がある。

 人口減少に伴い結婚カップルは減ってはいくが、それでも1兆円超えのマーケットを維持されるわけで、ドレスウエアに対する一定ニーズは底堅いということになる。つまり、パーティやセレモニーなどを含めコト需要を作り出せば、人口15万人規模の都市でも十分にペイするということだ。


 ドレス業界は専業アパレルのジャンルに入る。かつてはKウエアという専業メーカーがあったが、販路を広げられず需要喚起の仕掛けも怠って、ファッション市場から姿を消した。

 目下、ウエディングドレスでは知名度のあるデザイナーズブランドの人気が高いが、それでも大手による寡占化が進んでいるわけではない。数%のシェアしかないところが大多数だから、新規参入もしやすいのである。

 しかも、試着が絶対条件だからインターネットの参入は難しい。仮に価格面で競争が激化しても、商品は数年で償却していくため、アパレルにコスト圧力がかかることは少ない。販売にしてもレンタルにしても、アパレルは十分な利益を確保して商品が納入できると言える。

 まあ、ショップ側はコンサルティングやフィッティングを売りにし、高度な接客サービス力をもつスタッフが業務に当たるため、今のところは価格破壊とも無縁だろう。


 だからといって、簡単に業態展開ができるわけではない。お客はそこらのショップで口にする「コレ、ください」で、商品を手にすることはない。きちんとした目的を持ち、TPOをイメージしてドレス選びに来るからだ。

 商品のタイプも、正礼装から昼間、夜間の準礼装までと幅広い。レディスではウエディングからオケージョナル、カクテル、PM、パラシュートやブラドレスまでと多種多彩。デザイナーズブランドはあえてメンズスタイルを取り入れたウエアを作り出すところもあるほど。

 メンズになると、正礼装のテールコートやモーニング、準のタキシード、略のブラックからディレクタースーツ。デーフォーマルやイブニングフォーマルでも使い分けなければならない。

 こうしたドレスコードの知識をもち、適切かつ的確にドレス選びのアドバイス、きめ細かなフィッティングまで行うには、高度な接客技術、優れたセールストークを必要とする。


 それゆえ、昨今のファッション業界が忘れかけている接客に長けた優秀な人間が求められる。一時期、若者に人気だったブライダルコーディネーターのさらに上をいく人材。ドレスウエアを知りつくした「人財」が必要になるのだ。

 憧れや情熱だけで就ける仕事でもないだろう。サービスや笑顔はその本人に備わる物理的、精神的余裕があって生まれるもの。だから、マニュアルや教育で習得するには限界がある。

 とある新興企業はこうした適正を見極めるために、新卒採用で6度にわたる選考を行うという。一流大卒でも不向きと見られれば不合格となり、専門学校卒でも適正があると判断されれば合格する。ファッション、ブライダルの勉強をしているかどうかも関係ないようだ。

 

 ドレスはある意味、階級社会、社交界といったヨーロッパが育んだ衣服文化と言える。ここらで冠婚葬祭というオケージョンでしか見てこなかった日本のドレスファッションが覚醒するか。ファッション業界を活性化する上、今後の動向に注目したい。

脱却のカギはセレクトSPA化?

 ユナイテッドアローズは昨年の4~12月、 連結業績は2ケタの増収増益を維持したものの、売上高の伸びを在庫の増加率が上回るという状況に陥った。これはB&Yユナイテッドアローズ、ユナイテッドアローズGLRといった稼ぎ頭のSPA化で在庫が増え、消化のためのセールが長期化していることを示す。


 特に春夏シーズンの在庫状況について、竹田光広社長は「ニーズに応えようとする意識が強すぎ、半歩先の提案が薄くなっていた。今春夏からシーズンの立ち上がりに、鮮度のある商品の提案を増やす」と解決策を語る。

 猛暑シーズンに販売する夏物はデザインで特徴を出しづらい。とすれば春・初夏物の方が多少なりとも遊びのあるものが企画できるし、提案しやすい。でも、7月にはセールに入ってしまうため、在庫は抑えながらプロパーで売り切って、定番で夏を乗り切ろうということだろうか。

 そもそも竹田社長は兼松繊維という商社の出身。中国などでのアパレル生産のノウハウやネットワークに長け、その実績を買われてU.Aのトップに就任した。言い換えれば、セレクトショップであった同社をSPA化していった陰の立役者と言えるだろう。


 SPA化とは「OEMやODMを含め、自社で企画したオリジナル商品を自社で販売する」という仕組み。本来のセレクトショップのようにメーカー仕入れではないから、荒利益率はグンと高くなる。反面、自社で商品づくりまで手がけるには、反つぶしなど一定規模の生産ロットが必要で、それを捌くためには店舗数の拡大が不可欠になる。

 例えば、B&Yのオリジナル商品は、アウターで2万円以下と値ごろな価格帯。これで50%以上の荒利益率を確保するには、相当量の生産規模を抱えないといけない。ユニクロが国内だけで850店以上を展開しているからこそ、あの価格を実現できていると言えば、説明もつくだろう。


 しかし、2013年2月時点で、U.Aの店舗数は36店。B&Yユナイテッドアローズは単独店33店、U.A取扱い店12店。いちばん多いユナイテッドアローズGLRでも56店しかない。オリジナル商品で値ごろな価格帯と50%以上の荒利益を確保するには、店舗の販売数量をはるかに超える生産数量が存在するわけで、それが在庫を増やす結果となったのだ。

 ゾゾタウンやアマゾンなどいくらネット販売が伸びているといっても、その消化を加えたところで、同社が言うように「売上高の伸びを在庫の増加率が上回る」のは否めなかった。その結果が在庫を消化するためにセールが長期化したである。


 具体的にどんなMDイメージかは想像つかないが、おそらくSPA化する前のU.Aイメージだろうか。昨今のU.Aはオリジナル商品がほとんどベーシックの域を出ていない。

 だから、商品の味付けを従来のセレクティングやヴィンテージ系の商品に近づけること。セレクトショップ本来の多少キャラクターの濃い、オリジナルより浮き上がって見えるスパイスの利いた商品。これを仕入れまたはオリジナルで賄い、ミキシングしたセレクトSPAとでも言えるだろうか。

 U.A全体ではSPA化によるオリジナル商品の拡大で、元来のセレクト色は薄まっている。だから、どこまでバランス良くMDが構築できるかが課題になる。


 しかも、こうした商品は、半歩先の提案として売場の鮮度アップには貢献するが、ビジネスとしてどれほどの収益をもたらすかである。ベーシックでパーツ化した商品に飽き足りないお客はいるが、それらは回転の良い商品ではない。歩留まり率や荒利益率も精査しなければならない。

 またオリジナルとコーディネートさせていくには、デザイン、テイストのバランスも重要だ。それをメーカー仕入れで、簡単に商品が手当てできるとは思えない。逆にオリジナルで生産するにはロットが必要だし、在庫リスクが発生する。

 ゆえにせっかく全社的にSPA化を進めてきたのだから、自社開発でキャラクター性をもつ値ごろ感の商品を素早く開発・調達してもいいのではないか。それは自社の企画スタッフと外部ODMのデザイナーや、OEMの生産スタッフが一致協力していけば、決して不可能ではない。


 U.Aと比較される企業にビームスがある。同社はオリジナルこそあれど、メーカー仕入れの比率がU.Aより高いのは売場を見れば一目瞭然。しかし、普遍のアイテム、上質な商品、変わらぬデザインテイストで、最近はお客離れが著しい。

 セレクトショップとしてブランド力、ポジショニングを確立した両社だが、今日の差はSPA化というビジネスモデル以外にはないと思う。だからこそ、U.Aはそのシステムに磨きをかけ、社内外のスタッフが同じ目標のもとで、新しいセレクトMDを創造していかなければならない。

 まずはU.Aのスタッフがリスクを踏んで、ダメなら首を賭けるくらいの姿勢で臨むこと。でないとODMのデザイナーも、OEMのスタッフもやる気にならないはずだ。「鮮度のある商品の提案を増やす」をスローガンで終わらせないためにも、U.Aの本気度が試される。

指導者の頭が古いのはアパレルも一緒か?

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 大阪・桜宮高校バスケットボール部の体罰問題に始まり、今度は柔道日本女子代表のパワハラ指導が発覚した。双方ともトカゲの尻尾切りで幕引きどころか、訴訟にまで発展する様相だ。

 これらは日本独特のたて社会、組織を維持するスタンダードで、長らくそれが全体の秩序を守っていきたことに起因する。勝利のために一致団結することにもつながり、運動部には好都合だったのである。

 その点、アパレル業界はそんな事は無く、上下関係もフラットで和気あいあいで仕事をする…。そんなイメージがあるが、どっこい指導者の頭の古くささ、進化の遅れ、不勉強さなどの点では、体育会系なんぞ比ではない。


 おそらく、ビジネスや技術変化のスピードはIT業界に次ぐくらいなのに、未だに洋裁学校の価値観で物を語ったり、システム面の進化から目を逸らすように旧態依然とした技術ばかりを押し付ける輩が少なく無い。

 “昔取った杵柄”という諺がある。それはいくら時代が進歩しても、自分の腕に自信があれば食いっぱくれはない、という意味で解釈される面が多い。確かにアナログ的な、職人技的な面ではそうかもしれない。

 例えば、染色では微妙な色合いやあえてムラを出すような技法には手作業が向く。また、ジャケットの袖付けを美しくするいせこみ、肩のラインを自然にするパット作りも職人技が光る。シャツのボタン付けなども手縫いの方がほつれない。


 オートクチュールでは、まだまだアナログ的な人間技が生かせる部分は多い。しかし、既成服、いわゆる量産製品になると、そうはいかない。アナログ的な部分で機械化、デジタル化される部分はどんどん増えている。

 さらにデザイナーの感性をコンピュータが表現する「デジタルデザインクリエーション」が誕生しており、欧米のファッション業界ほどそれを取り入れている。

 欧米メーカーでは一般的になっているデジタルクリエーションは、自分で描いた柄、織り地、編み地などをパソコン上で加工してデザインに仕上げるもの。フラットな生地やニットはもちろん、組織が複雑な織や緻密なイラストまで、見事に再現される。

 まさに服作りはデジタル時代の感性を取り入れたクリエーションに昇華したということである。


 アパレルメーカーの服作り、ファッションデザインは、だいたい10工程ほど。企画のテーマ設定から、素材選定、デザイン画制作、パターン作成、立体ドレーピング、仮縫い、パターン修正、青焼きコピー、型入れ、裁断、縫製までという流れだ。

 これにデジタルデザインが加わると、素材選定とデザイン画作成の間にデジタルプリントの作業が入り、そしてプリント出力で何度も確認ができる。

 また、デジタルプリントの良さは、布帛はもちろんのこと、メリヤスなどのジャージ系素材に直接プリントができるようになっていることだ。


 以前ならデジタルでの服作りは単にパソコン操作に長けるだけでは難しいと言われていた。デザイン画、パターンを経験して、デザイン画のどの辺に配置するとか、パターンの切り替えにどのように当て込んでいくかを理解していなければならなかったからである。

 ところが、Adobe社のデザインソフト「Illustrator」や「Photoshop」が発売されてからは、平面だけでなく立体的な加工もできるようになり、より詳細なデザインを表現できるようになった。

 Illustratorにはペンツールがあるので、アイテムのアウトラインを描くのに使える。 Tシャツやセーターなどシンメトリーのものは、片方のみを描いて、リフレクトすればいいから作業効率は格段に良い。シャツやパンツは応用できるパスはコピーし、アールや曲線はマウスまたはタッチペンで手描きできる。

 

 これにスキャナーで読んだ素材の画像をPhotoshopで加工し、Illustrator上に配置してクリッピングマスクでトリミングすれば、 容易に「Schematic Illustration」を作成できる。

 欧米メーカーはすでにこれからCADパターンにトレースして型紙をおこしたり、そのデータをそのまま裁断機にリードするところもある。デジタルデザインはもはや量産化には欠くことのできないシステムになってしまったのである。


 もっとも、デザイナーや企画職を育成する立場の人間の多くが、こうしたデジタル化に付いていっていない。ひたすらフリーハンドでスタイル画を描かせようとする。

 絵心のある人間なら、それでも時間さえかければ上手くなるだろうが、無試験で入学した学生が1~2年くら勉強したところで習熟するはずもない。また、そんな人間を雇って1人前のデザイナー、企画職に育てようというほど余裕のあるメーカーはない。

 前にも書いたが、染色や縫製の世界では未だに職人技が残る。しかし、それがすべてのように思い込み、訴えるチュートリアルは少なく無い。大きな勘違いだし、逆にそんな職人の世界に率先して脚を踏み入れる若者が多いとはとても思えない。

 デジタルとアナログの分業は時代の趨勢で、デジタル化はどんどん幅を広げている。教える側が明らかに浮き世離れ、認識不足なのである。


 フリーハンドでデザインを描くのは、人によって差がある。しかし、デジタルはその技術差、能力差を縮めてくれる。絵が下手でもデザインはできるって学ぶ側を良い方向に導くこともできる。

 なのにチュートリアルにあたる人間がメカニカルの進化やそれへの投資、学習を怠って、旧態依然としたスキルと能力だけで物を語るのは、時代錯誤でしかない。自分の食いぶちを守るためだけに、若者の夢を煽って焚き付けているように思えることさえある。

 ファッションデザインには欠かせなくなったデジタルを学び、投資し、技術を進化させるには、相当の時間とコストがかかる。それより自分が持てる技術や能力だけで手っ取り早く稼いだ方が良いとでも思っているのだろうか。

 自分に対して進化も投資も学習もしていない人間が蒼くさい教育論を語ったところで、業界の変化に付いていける若者が育つはずがない。ましてアパレルで企画やデザインに携われることなど、まずあり得ないのである。


アベノミクスで業績が回復する業態は?

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 安部晋三首相は日銀のインフレ目標2%設定を提案。とたんに円高が進み、株価も上昇。メディアはアベノミクスと宣い、バブルの再来を期待するかのように報道合戦を繰り返す。

 ただ、経済学者やエコノミストでは、意見が分かれている。まず、中央銀行によって名目金利が引き下げられれば、企業や家計の支出が増えるから、結果的に商品の生産量や給料は上がり、インフレ率は上昇するという意見だ。


 一方で、インフレ率は財政政策によって決定されるという意見もある。日本のように企業が物価や給料を決めていると、この理論は今いちピンとこない。しかし、海外では政府の借金が非常に多い国がハイパーインフレを引き起こしている。ニュースなんかで見かける市民が大量の札束を持って買い物する光景だ。

 どちら考えが正しいのか。一介のクリエーターに過ぎない筆者には判断がつかない。まあ、日本人は街頭インタビューなんかで「政府に経済政策や財政再建を期待している」と言いつつも、そのパーセンテージは決して高く無い。

 つまり、どこかに政府は借金を国民に回してくるとの予感があるから、税金が上がるのもしょうがないと自覚しているのだ。だから、ハイパーインフレなど起こり様も無い。

 海外ニュースに出てくる光景も、ほとんどが発展途上国で物資に乏しい国だ。物余りで高齢社会の日本で、国民全体がカネを出してでも手に入れたいものがそれほどあるとは思えない。この理屈なら、筆者にも理解できる。


 ということで、ファッション業界はこれからどっちに向かうのか。インフレターゲット2%ならプチバブルが起こり、少しの贅沢、高感度で上質な商品の売れ行きに期待が持てる。結果、百貨店や高級専門店の業績が回復するという識者もいる。

 しかし、こうした期待値を嘲笑うように、今年に入って日本版のファストファッションが続々登場している。アーバンリサーチの「センスオブプレイス」、 トリニティアーツの「アンデミュウ」、「リップサービス」の「シエルバイリップサービス」などだ。


 三者はセレクトショップ、レディス専門店、渋谷109系と母体は違うが、ディレクションを英国のクリエイティブ集団に委託したり、海外のトレンドを意識したり、モード感を取り入れたりと、従来の日本にないテイストで、マーケットを開拓する点は共通。ただ、それがファストファッションであるということだ。

 また、ファーストリテイリングの「ジーユー」も、 今春夏物で、最多価格である990円の商品の割合を、従来の約4割から約5割へと引き上げるという。インフレで景気が良くなったとしても、日本の消費者の財布のひもは急には緩まないという懸念があるようだ。


 逆に考えると、これらのFFは日本だけでなく、海外市場も意識しているため、むしろ将来の経済発展を見越した囲い込みがあるだろう。ファストファッションでお客を捕捉し、収入がアップしたとき、ベターゾーンに移行してもらうという狙いだ。

 とすれば、業界のインフレ、プチバブルは起きても、その恩恵を受けるのは一部の業態に止まるということかもしれない。それが百貨店なのか、専門店なのか。

 仮に百貨店であるとしても、一旦海外に生産拠点や素材調達を移してしまった同系のアパレルが簡単に上質で、モード感のある商品を企画できるとは思えない。百貨店側が国内アパレルを諦め、インポートを中心に探すにしても、取引条件で折り合わないのは目に見えている。


 また、ヤング系、セレクト系と駅ビル、ファッションビル系のテナント導入の歩率体系に踏み込んだまではよかったが、Webサイトによるネット販売は遅れている。これに踏み込むことを奨励する向きもあるが、単なる写真とスペック表示だけならゾゾタウンと変わらない。

 接客販売を重視する百貨店なら、ヴァーチャルフィッティングやお直しなどの機能アップをしなければ差別化はできない。現状のWebプログラム環境や技術では不可能だろう。しかし、そこまでのグレードを持った時に、百貨店のサイトは違うと顧客は判断する。


 だから、この程度だと景気が回復したとしても、百貨店の業績につながるとは考えにくいのである。むしろ、筆者はベターゾーン以上の商品を扱う品揃え専門店に期待する。なぜなら、専門性の高いバイイングのスペシャリストがいること。メーカーや商社、インポーターの信頼が厚い=共存共栄の精神があること。販売力=売り切る力の潜在能力が高いこと。そして、何より商品1点1点に対する目利きと愛情があることだ。

 メーカーも専門店系アパレルについては小ロット対応が可能だし、コストをかけてもいい(掛け率アップ)なら企画、仕様開発、生産ラインと素材確保まで踏み込むノウハウをもつから、グレードアップは難しく無いと思われる。


 何も品揃え専門店を庇護するわけではない。百貨店やSPAと比べた時に業績回復の可能性が高いということだ。課題は情報発信力と集客力だが、何もWebに多大な投資をする必要は無いと思う。

 ここ数年のネット販売の活況は、「地方に住むヤングが近所で買えないブランドを購入したいが、都市部まで行く交通費はかけたく無い」程度の傾向だ」と、筆者は思うからだ。

 本当に服を着てオシャレに、カッコ良くなりたければ、自分で素材や色を見てフィッティングして着心地まで確かめるだろう。景気が回復すればそうした消費者が増え、ネット妥協客も店頭に回帰する可能性が高い。そこが専門店の狙い目なのである。


 1店舗のテリトリーは限られるので、広域からの集客は限られる。だから、メーカーやインポーターとタッグを組んで、ブランドや品揃えの情報発信をさらに強化すべきだ。これまではバッティングの問題があるから、必然的にテリトリーで競合はなかった。

 ネット販売は同じエリアでも同じブランドを着るお客が出ることになるが、むしろ異エリアの店が連携して、売り切れやサイズ・色違いで相互対応をするのだ。個店同士の店間移動とでも言おうか。これまでは自店の消化ばかりを考えてきたであろうが、ネット連携は双方の共存に活用することができなくは無い。


 「あの店がお客さんをオーダーを回してくれたから、今度はこのお客さんのニーズを紹介しよう」というギブ&テイク。お客も同じようなテイストや感度のお店は、数軒あった方が買いものには好都合である。今まではそれをネットで時間をかけて探していたが、景気が回復して懐にゆとりがあれば店に行けば良いのである。

 ただ、専門店は暖簾も経営感覚も商習慣も違うから、簡単にはいかないかもしれない。でも、これだけSNSが発達した時代にあって、商売の活性化に利用しない手は無い。これをメーカーを交えそれぞれが納得すればいいわけだ。


 こうした手法は縦割りで納入メーカー、ブランドが決まっている百貨店同士にはできない。未だに百貨店のグレードによって品揃えされる商品が左右されているのだ。

 バブル崩壊後の一時期、百貨店の経営者は口々に「共生」という言葉を発した。しかし、M&Aや経営統合で規模を拡大し、覇権を狙おうとする昨今の百貨店に共生などありえない。景気が回復した時、洋服好きをうならせる専門店が活性化することに一縷の望みを託したい。


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