HAKATA PARIS NEWYORK

今のファッションを斬りまくる辛口コラム

2013年05月

本業はファッション、グラフィックなどデザイン関連のクリエイティブディレクター。創る側の視点で今のファッション関連の事情を評論する。マスメディアはもちろん、業界紙誌も扱わないテーマに踏み込む。

高級専門店こそ、外商すべきではないか。

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 安倍政権が今年初めに閣議決定した緊急経済対策では、 地方でほとんどシャッター通りと化す「商店街の振興」にも、巨額の予算が投じられることになった。

 商店街の活性化事業と言えば、行政や商工会議所が家賃補助を行う「空き店舗対策」、中学生を対象とした「就業体験」、高校生が店舗運営を行う「インターンシップ」、大学生に街としての機能を復活させる「グランドデザイン」等々、これまでいろんな施策が行われて来た。


 しかし、どれをとっても場当たり的で、抜本的な対策にはならなかった。成功したのは、香川の丸亀商店街や大分の豊後高田くらいで、非常に少ない。何をやるにしても、資金を投下しなければ、実効性が伴わない。とどのつまりが、お国頼みしかないということだ。

 安倍政権としても盤石な基盤を持つには、「地方の商業票」が不可欠だから、商業・商店街振興に大盤振る舞いをすることにしたようだ。では、その中身とはいかなるものか。


(1)商店街まちづくり事業…全国商店街振興組合連合会が補助金で「基金」をつくり、活用するもの。アーケードの改修、街路灯や防犯カメラの設置、高齢者向けの商売に補助される。 総額200億円の予算で、補助率は最大3分の2、補助額上限は1億5,000万円と巨額だ。


(2)地域商店街活性化事業…住民や団体との交流、子育て・介護のサービス、女性や若者のチャレンジ、情報発信(マップ作成、機関誌発刊、WEB掲載等)などのソフト事業。こちらも予算は総額100億円と巨額で、助成金ゆえに経費の100%が助成(上限400万円)される。


(3) 地域自立型買い物弱者対策支援事業費… 買い物弱者に対し、民間企業などが共同宅配や移動販売等を展開するもの。総額10億円の補助金、補助率3分の2だ。


(4) 中心市街地魅力発掘・創造支援事業費… まちの魅力を高めるための事業化調査、先導的・実証的な取り組み、専門人材の派遣に対する補助。総額15億円、上限1,000万円、補助率2分の1である。


 以上の4つのプランだが、どれも従来の事業と変わりばえせず、予算規模が大きくなっただけに過ぎない。本当にこれらをやったからと言って、商店街にどれほど人がやって来て、賑わいを取り戻せると、言えるのだろうか。



従来と大きく変わらない事業ではお客は呼べない



 まず、(1)は廃れる商店街はハード面が課題だから整備が必要。というのはわかるが、アーケードを改修したところで、買いたくなる商品がなければ、買い物客は来ない。高齢者のために若者や女性が商売をするための補助事業も、要は店づくりの域を出ていない。女性はともかく、若者が高齢者のための商売をどこまで真剣に考えているかは、不透明だ。

 (4)の事業とも関係するが、高齢者が日常で求めているのは、何もファッション衣料ではない。まず食料品、いわゆる肉、魚、野菜といった生鮮三品、次ぎが医療・健康の病院や薬局(調剤)、3番目が趣味のジャンルになる。


 生鮮といっても、商店街の近郊に農家があれば、道の駅的な店舗はできるだろう。でも、朝獲れの野菜は扱えても、肉や魚の流通は簡単ではない。あれほどコンビニが発展して、それらを扱わずレトルトの惣菜に舵を切ったのを見れば、説明がつく。生鮮はロスが出るし、回収に手間がかかるのだ。

 病院や薬局についても、ニーズがあるかどうかだし、門前を嫌う薬剤師もいるから、出店やサービス提供は簡単ではない。まあ、車利用者にとっては、駐車場がないのが一番のネックだ。でも、この整備は補助金程度できる話ではない。


 (2)はいろいろなことが書かれているが、要は商店街でイベントをやったり、プロモーションのツールを作ろうというもの。ただ、これは商工会が代理店に持ちかけて、企画をプレゼンさせるケースが多いと思われる。

 しかし、今どき、廃れた商店街のマップや機関誌、WEBサイトで何を発信しようというのか。また、適当なコンテンツをでっち上げるのは目に見えている。それでは代理店や下請けの制作会社にカネが流れるだけだ。


 結局、イベントを仕掛けようということに行きつく。ただ、人気ゆるキャラでも持っていれば、コストパフォーマンスのいい集客ができるかもしれないが、子供に人気の戦隊ショーやタレントのプロモは内容次第で週末に限られてしまう。平日に集客イベントを展開するのは、それほど簡単なことではない。

 これから夏場になると「夜市」なんて企画も出てくるだろう。でも、それは確実に集客できる何かがあって、香具師や露天商も出店するのだから、その何か興しが難しいのだ。


 (3)がいちばん現実的だと思う。商店街のハード整備し、ソフトを充実させたところで、周辺環境が変わり、高齢者が増える中、お客が来るという保証はない。だったら、商店街から出て行くという手の方が確実性はある。

 足腰が弱り、車を持たないお年寄りは待ち望んでいるだろう。客が来ないから廃れるのか、廃れる商店街だから商売できないのか。でも、買う店がなければ、買い物弱者を生むのは当たり前。これは後ほど詳しく著述しよう。


 そして(4) まちの魅力を高めるための事業化調査、先導的・実証的な取り組み、専門人材の派遣に対する補助。これも実態がよくわからない。コンサルタントに分厚いレポートを出させるためのプランでしかないようにも思える。

 そこで、「ボランティアを活用しよう」なんて言われると、「お前らはカネもらっときながら、俺たちには無償でやらせるのかよ」と、突っ込みたくなる。

 


家賃補助で潤う地主、商売を知らない若者


 地方の商店街が何かやらないと、廃れるばかりなのはわかる。しかし、商売の3条件は「人」「もの」「器」だ。今回の大盤振る舞いで、手当てできるのは器くらいだろう。

 人とものについては、商店主が自己改革しないとダメなのだ。それができないから、店を誰かに貸そうということになってしまう。でも、行政に泣きついて自分たちの家賃収入は確保しようというのも、ずいぶん虫が良過ぎる話だ。 


 今どき、20坪程度のスペースが坪数万円、敷金24ヵ月もかかる条件で、商売がペイするはずがない。これではいくら新規参入者が出店しようとしても、初期投資やイニシャルコストにばかり頭が奪われ、ビジネスモデルも、MDもあったものではない。

 家賃補助があるうちは何とか店舗は開店していられるが、切られた途端に閉店の憂き目にあってしまう。つまり、ビジネスとしては成り立ってはいないのだ。 今はネット通販がそれに拍車をかける。 結局、「テナント募集」の張り紙が風に揺れるシャッター通りに舞い戻ってしまう。


 そんな時代に行政が掲げる「商業・商店街振興策」がどれほどの効果を発揮するのだろうか。周辺は人口がどんどん減少し、高齢化している。潜在買い物客が商店街をペイさせるほどの規模があるとは思えない。

 コンサルタントの中には、都会で夢破れ就職できない若者を呼び、1階が店舗、2階は住まいにして「町家コミュニティ」を作る手がある。そんなことを平気で宣う方々がいらっしゃる。 

 それこそ、「国が若者の人生設計に介入する気か」と、これ見よがしに言い出す政治家がいそうだが、 そんな方々ほど若者の実態をご存じなのだろうか。


 今日の若者は、コミュニケーションやテクニックを必要とする「販売」は嫌。売上げや利益といった数字を理解する「経営」なんかに興味無し。それで、だいたい共通している。

 さらに好きなブランドやアイテムを扱い、自分の好きな店づくりはやりたいが、それがゴールだと勘違いしている。だから周囲も気にせず店頭で喋りながら、ただ暇をつぶすだけだ。

 商売、商店経営の基本原理なんか、小難しいものとして向き合おうとはしない。それより、都会のメディア文化に包まれてずっと生きたい、寄らば大樹の陰で大企業で働きたい若者の方がはるかに多い。だから、簡単にUターンするとも思えないのだ。


 まして、欲の皮が突っ張った店舗オーナーが、商店街存続のために先祖代々の店を明け渡すはずはないだろう。



商店主が「人」と「もの」で、売りに出ていく番


 結局、既存の商店主が立ち上がるしかない。そのカギが「人」と「もの」である。多少のハード整備をしても、五月雨的なイベントを展開しても、持続的に集客なんてできない。お客が来なければ、人もものも生かせないのである。

 であれば、こちらから出て行くべきだ。いわゆる外商である。いくらネット通販が浸透したといっても、最大のネックは「試すこと」ができないことだ。

 ファッションの場合、高級品になると、試着無しで買うのは若者でも二の足を踏むはず。数千円もかかる宅配返品料さえ、ケチっしまう。そんな買い物文化のレベルなのだ。ネット通販とは。


 だからこそ、高級品を売る店は、売りに出かけるのである。中古のワゴンRなんかを改造して、オシャレなセールスカーに作り替える。派手なカラリングと目立つロゴは、ラッピングで簡単にできる。パリやNYを走っている花屋のヴィーグルのイメージだ。


 高齢者だってオシャレをしたいときはある。それは1年に一度かもしれない。でも、孫の結婚式に出るのに高価なスーツを着てもいいだろう。そんなマーケットを外商で掘り起こすのである。慣れてくれば、デイリーウエアや下着を扱ってもいい。

 さらに進めば、他店の商品についても、ご用聞きをすることはできる。まずは高い荒利がとれる高級専門店がビジネスモデルを作らないと、ソフト事業にはならない。こういう仕掛けがコンテンツなのだから、マップや機関誌、サイトに載せるネタにもなる。


 外商をしないときは、商店街の通路にとめてDJブースにし、街のスピーカーを通して音楽や情報を流せばいい。 商店街単位でいえば、中型のバスなんかで外販車を作れないことはない。これなら、生鮮品から日用雑貨まですべて網羅できる。

 しかし、それには街全体の意識統一が必要になるし、商売内容で温度差が生じるから容易なことではない。また、どこまでが(3)の事業の対象となるかは、不明確だ。

 NPOかなんかを作れば補助されるかもしれないが、個店でも車に商店街の名前を入れるなどやり方はいくらでもあるだろう。

 

 アーケード整備しても、空き店舗をコミュニティの場所にしても、待ちの姿勢ではお客は来ない。中学生の就業体験なんかやっても、潤うのはせいぜい昼食用の仕出し弁当屋だけだ。

 魚屋が捌き方を教えようとしても、わがままな女子学生に「手が臭くなるから嫌」と言われるの落ち。後は店頭で記念のピースサインを写メに撮って終わりだ。

 商店街の振興事業なんて言っても、これまでもそんな程度だった。今回のプランでも、結果は大して変わらないのは、予測がつく。

 

 だからこそ、どこかが立ち上がらないいけない。人とものを活用しなければならない。商店街の歴史、日本のファッションの栄枯盛衰とともに歩んで来た老舗ブティック、高級専門店が商店街の振興で果たす役割は大きいと思う。


産学連携は予算獲得の麗句と化したか。

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  今日、ファッションライターの南充浩さんが、ご自身のコラムで産学連携によるブランド開発は「絵に描いた餅」と仰っていた。実例として、「ファッション専門学校と生地産地の組合との帽子づくり」をピックアップされている。

 行政や学校が好きな言葉を借りれば、コラボレーションで生地産地が生地を提供、学生が帽子をデザイン・製作し、合同展示会に出展するというもの。出展先は繊研新聞などが主催するインターナショナルファッションフェアだったそうだ。

 

 産地はブランド化することができれば強力なPRになるし、専門学校もビジネスにつなげられると思ったのかもしれない。ところが、そうした思惑に反して、「受注ゼロ」に終わったという。

 つまり、産学連携とか、学生と業界のコラボレーションとか、行政は聞こえのいい言葉をあげるが、それは所詮、絵空事ではないかということだ。


 南さんはその理由としては、


1.もし数十個以上の注文が入った場合、学生に製造させるのは不可能だろう。

2.量産する場合、縫製工場に支払う工賃は、どちらが支払うつもりだったのか。

(注文した小売業者は、帽子が納品されて代金を支払うが、縫製工場は一部前金を要求としたり、縫製が完了すれば代金を請求するだろうから、そのタイムラグが生じる)

3.商品が売れた場合の追加発注に対し、在庫はどちらが抱えるつもりだったのか。


 をあげている。


 産学連携に限らず、一般のビジネスであれば、条件や契約内容まで想定して取引に及ばなければならない。当然、それらを左右するのは、コストや価格、売上げ、利益である。それを行政や学校がどこまで考えて、産学連携を押し進めているのか、甚だ疑問である。


 話を福岡に転じても同じようなことが言える。2008年にスタートした「福岡アジアファッション拠点推進会議」では、設立総会で配られた趣意書には以下のように記されている。


 「福岡県がファッション産業に一大拠点になる5つのポテンシャル」として、


1.自社ブランドにより全国あるいは海外展開している(しようとしている)デザイナー、アパレルメーカーの存在

2.全国有数のファッション関連教育機関から生み出される多くの優秀な人材の存在

3.デザイナーが連携できる関連産業・企業(素材・製造・流通など)が多数存在


があると。


 正直、これを目にしたとき、業界人として「えっ」「どこが」と感じた。こうした構造は福岡に限らず、東京や大阪は当たり前に言えることだ。なおさらそちらの方が優れているし、事業基盤も底堅い。ただ、行政がこうした美辞麗句を用いて、もっともらしく書けばそう思えてくるから、不思議なものだ。

 ところが、 福岡アジアファッション拠点推進会議の関連事業が始まって5年、これまで産学連携で事業に柱になるようなものは、ほとんど行われていない。事業資金の大半が客寄せイベントのFACoと、東京からの業界人をよんだ講演・セミナーにつぎ込まれているからだ。

 強いてそれらしい事業を見つけるとすれば、同会議の企画運営委員長が校長を務めるファッション専門学校がイオンのPB、トップバリュコレクション と組んだ量販ブランドの「FACo × Route 80」くらいだろう。


 それとて、専門学校生がすべて製造したわけではない。商品を見ると、おそらくスタイル画程度をイオン側に渡し、あとは商社経由でOEM生産したのだろう。いや専門学校生のレベルだから、「この程度ではとても縫製できない。仕様書をつけてほしい」とアパレル工場からクレームをつけられ、ODMにまで堕ちたのかもしれない。

 それはそれとして、商品が並ぶのは郊外に店舗を構えるイオンで、都市部のファッションビルではないから、産学連携が目的とする学生のモチベーションアップや事業化にどこまでつながっているかは未知数だ。

 もっともこの学校としては、「こんなことやってますよ」とサイトで公開し、学生集めやプロモーションに活用している程度だというのがよくわかる。


 まあ、公職にあるものが、公共事業の産学連携を自校の利益に利用するのはもってのほかだ。だが、それ以上に産学連携と言えば、崇高なイメージで受け取られる事業環境に問題がある。

 南さんは「受注ゼロのその後」まで詳しく論じていらっしゃらなかった。でも、その後の会議で「受注ゼロ」の理由として「アピールが足りなかった」という意見がでると、必ず「ポスターやチラシ、サイトなどのツールを充実させない」と結論に行きつくことが往々にしてある。今度はそれが広告やプロモーションの利権にすり替わるかもしれないのだ。


 公共事業には先に予算の確保が不可欠だから、担当者が企画立案において内容や効果を針小棒大に表現するのは、当たり前のことだろう。 ただ、それなら産学連携による「もの作り」に使われるべきなのだ。しかし、実際には産学連携という言葉だけが一人歩きし、何の効果も及ぼしていないように思える。

 それを絵に描いた餅と呼ぶか、絵空事と呼ぶか。 産学連携と事業企画書に書けば、予算獲得ができる美辞麗句であるのは確かである。利害関係者にとっては、格好の「打での小槌」になっているような気がしてならない。


人気は高し、思いは易し、就くは難し…。

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 文部科学省の12年度学校基本調査によると、日本の大学では09年の入学者数60万8,000人に対し、12年度の卒業者数は55万9,000人と、約4万9,000人が中退または留年しているという。

 一方、 厚生労働省が発表した資料(2003年3月卒~2011年3月卒の新入社員の離職率)では、 めでたく卒業しても「大卒の3割が3年以内に入社した企業を辞めている」そうだ。


 さらに従業員5人未満の零細企業では、「1年目で3割、2年目で5割、3年目で6割」が離職しているという驚くべきデータがある。その理由は、大手企業とで最も格差がある「教育研修の機会の不足」「OJTの不足」「将来的な給与格差」「安定した組織」などだという。

 当然、大学中退や3年以内の離職者は、大卒という学歴も職業経験も仕事のスキルもないのだから、そう簡単に再就職できるはずがない。だからであろうか、そうした若者をターゲットにした教育ビジネスが盛んになってきている。


 某有名ファッション専門学校VKの大阪校も、この10月から全日1.5年コースの「ファッションビジネス&スタイリストコース」を開講する。目的は「大学中退者やフリーターの再進学支援と即戦力の育成・輩出で、ファッションビジネス業界を活性化する」のだそうだ。

 筆者は学校経営に口出しする立場ではないので、学科を開講するのも大上段な目的を掲げるのも、ご自由にという気持ちだ。しかし、ファッションビジネスやスタイリストについては、何も知らない若者が「スポットの当たった華やかな仕事」と誤解している部分が多いので、専門学校を選択する前に業界人としてアドバイスしておきたい。



新卒の登竜門は「販売」に限られる


 まず、ファッションビジネスである。通常、わざわざ専門学校に通わないと勉強できないのは、「スタイル画」や「パターン」などのデザイン面の知識、技術だ。そのため、ファッションビジネスの勉強内容がどれほど価値があり、就職に役立つかは懐疑的である。

 ファッション業界、いわゆるアパレルメーカーや小売り業が「新卒を対象に募集する職種」は、いくら高度なファッションビジネスを勉強したといっても、ほとんどがメーカー直営店または小売業の「販売スタッフ」である。いいとこ「店長、マネージャー候補」だろう。


 しかも、条件は「学部・学科不問」が多い。つまり、業界ではファッション専門学校を出ていようが、いまいが一向に構わないのである。たまにアパレルの営業職の募集があったにしても、それは営業の仕事なのだから、1年半ほど学んだ知識やスキルは大した力にはならない。


 まして、マーチャンダイザーや生産管理、プレス、バイヤーなどの専門職、エリアマネージャーやスーパーバイザーといったラインスタッフは、まず「経験者」であることが条件になる。 

 最近は海外生産が当たり前になっており、渋谷109系などヤング向けのブランド企業が「インボイス(輸入仕入れ書)事務」を募集しているが、こうなると色や素材、デザイン知識などを勉強しても何の意味もない。貿易実務の知識や資格が必要になるのだ。


 いや、ファッション専門学校は業界とコネクションがあり、職業経験が積める「インターンシップ」があると、反論される学校関係者がいらっしゃるかもしれない。

 しかし、ファッションビジネスを勉強している学生のインターンシップ先は、これもほとんどが「ショップ」である。しかも、経験が全くない学生を売場に立たせて接客させたり、お直しや金銭授受に当たらせたりするショップがどれほどあるだろうか。

 大手チェーンやSPAならできなくはないだろうが、それならインターンシップではなく、アルバイトか、社員を雇えば良いだけの話である。そっちの方が企業にとっては都合がいいだろう。


 まして中小のショップになると、目先の売上げを追わなければならず、未経験の若者にOJTで接客教育を施すような余裕はない。だから、バックヤードでの商品整理や売場における品出し、あとはプロの仕事ぶりを傍観し、ディスプレイを替えるくらいが関の山だ。

 仮に「販売が好き」「接客やコーディネートが上手」「お客さんをドレスアップしたい」と思う若者なら、専門学校なんかいかなくても就職できる可能性は高い。むしろ、業界はそんな前向きな若者を待っているのである。



スタイリストに正社員、正規雇用はない


 次にスタイリストである。中退の学生や3年以内の離職者といった若者にとっては憧れの職業、また業界で販売経験をもつ人間もやってみたい仕事の一つかもしれない。


 では、そのスキルが専門学校でどれほど学べるのか。これについても懐疑的である。なぜなら、スタイリストの仕事は、大きく分けると「ファッション誌」か、「テレビ番組またはCM」か、そして「タレント衣装」を担当するものだ。

 だから、仕事の相手は集英社や宝島社、光文社などの出版社、TBSや日テレなどのテレビ局または番組制作会社、電通や博報堂などの広告代理店や下請けの制作会社、そして芸能プロダクションで、実際の現場ではカメラマンやヘアメイクといったスタッフと仕事をする。

 ギャラもこうしたメディア関連の企業から貰うわけで、アパレルメーカーやショップが支払っているわけではない。


 そこで必要なスキルは何かということだが、ファッション誌の仕事なら、最先端のトレンド知識やコーディネート術、カラーや素材の知識が多少はあってもいいだろう。しかし、ファッション誌の仕事はギャラが安い。
 それに雑誌はますます売れなくなっているし、i-PadやKindleの普及で紙媒体は少なくなり、撮影のギャラが減らされる傾向にある。だから、テレビ番組やCMにも携わらないと食っていけない。

 ただ、そこではファッションに長けたスキルはほとんど要求されない。なぜなら、テレビ局のプロデューサーや広告代理店のディレクターは、ファッションのプロではないからである。

 テレビ番組では俳優やタレントのキャラを重視した衣装で、他と被らない程度であればいい。これはタレントの衣装を担当する時にも言えること。またCMは事前に「コンテ」ができているので、そのイメージにあった衣装や「その他」を集めなければならない。それらもトレンドである必要はない。


 その他というのは、撮影に必要なあらゆる「小道具」まで準備しなければならないということである。だから、ファッションの知識よりも「どこに行けば、どんなものが集められる」という情報収集能力の方がカギになる。アパレルメーカーのプレスルームや知り合いのショップに行けばすべて揃えられるほど、CMの世界は甘くないのである。


 さらに五月蝿いディレクターと仕事をすることになれば、「あらかじめダメだしを覚悟で、探しておかなければならない」。つまり、一を言われれば、三を理解できるような「機転」と、OKがでるまで、各地を深夜まで探しまわれる「根気」が求められるのだ。

 もちろん、出版社、テレビ局や広告代理店、そして芸能プロダクションには、一流大卒のエリートがうじゃうじゃいる。自分たちがカネと権力を握っているという自意識から、スタイリストなんか「下請けの孫請け」にしか見ていない。理不尽な要求を突きつけるのは日常茶飯事。だから、それに堪えうる強靭な「精神力」がなくては務まらない。


 つまり、スタイリストに必要なのスキルは、機転と根気と精神力。それらはその人間が成長したり、おかれた環境で養われるもので、何も専門学校に1年半くらい通ったところで身に付くものではない。だから、懐疑的と言ったのである。

 若者の多くがスタイリストになるには、「事務所に入ればいい」と思っているだろう。それは間違いではない。しかし、事務所のほとんどが個人または10人以下の「零細企業」だ。それが何を意味するのか。



第二離職者を生むかもしれない現実


 冒頭で述べた「1年目で3割、2年目で5割、3年目で6割」が離職している企業に、スタイリストの事務所が当たるかもしれないということである。それに離職の理由に挙げられている大手企業との格差、いわゆる「教育研修の機会の不足」「OJTの不足」「将来的な給与格差」「安定した組織」をみても、まさにスタイリストの仕事そのものだ。


 コーディネートやスタイリングは学校で勉強できても、実際のスタジオ撮影やロケになると臨機応変な対応をしなくてはならない。「靴を履けばわからないストッキングの小さな伝線でさえ、『新しいものを用意してよ』というわがままなモデル」にも、嫌な顔ひとつせずに接しなければならないのである。


 まず現場で1から10まで説明されることはない。 ましてOJTができる余裕などない。 想像力を働かせて仕事をテキパキこなすしかないわけだ。スタイリングと多少の撮影ごっこを学んだところで、何の役にも立たない世界ということである。


 もともと、スタイリストは他人の褌で相撲をとるような仕事。だから、簡単にギャラが貰えて生活が安定し、名声を得られるなんてことがあるはずがない。 将来的な給与格差は当然のことだし、個人事務所が安定した組織足るはずもない。

 だから、離職率が多く、スタッフを募集するのである。ファッションビジネスも、販売スタッフの求人が多いというのは、何も新しいブランドの開発や新店のオープンが多いからではない。退職するスタッフが多く、それだけ人材の流動が激しいということだ。


 ファッション専門学校が大学中退者や第二新卒を集めてビジネスをする。しかし、それがまたフリーターや離職者を生むかもしれないのだから、全く皮肉な話である。若者諸君は以上をしっかり認識した上で、専門学校に進学するか、否かを選択してほしい。


「スタイリストがファッションに長けている」は、雑誌が作った虚像に過ぎない。

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 今年4月に出版界の異端とも言われる幻冬舎から発刊されたファッション誌「DRESS」。編集長には東京・護国寺にモデルストリートなる異名をもたらした光文社で、STORYや美stを軌道に乗せたY氏を起用。ターゲットは40代の独身女性を設定し、「結婚よりも恋」という大胆なコンセプトで社会を変えるなんて大風呂敷を広げたが、のっけから読者の不評を買ってしまった。


 永年、ファッション誌をチェックしている人間には所詮、男目線でやっていることがすぐに見透かされる商品セレクションやスタイリング。それさえ気づかず、大御所のメディア関係者が仕切っているから、必ず成功すると思っていたとすれば、何とも間抜けな話である。

 不評の責任はY編集長に向けられるべきなのだが、スタイリストのO氏に対する落胆の弁も少なくない。「ドレスがなかったということで。そんなOがドレスを提唱するのが、付け焼刃的な気がする」「顔は長いし、美人じゃないし、足が短くスタイルも悪い」「普段裏方に徹する方が着飾って誌面を飾ったところで、みっともないという印象しかありません」etc.


 これだけ辛辣に語られているのだから、読者はO氏に相当の期待をしていたのがわかる。しかし、元来、スタイリストがファッションディレクターだのと名乗ったところで、それは雑誌メディアが作り出した虚像、虚飾に過ぎない。

 スタイリストはアパレル=洋服の企画製造に関わっているわけではないから、自分がこんなイメージとか、こんなスタイリングと言っても、企画段階にある想像の域を出ない。

 彼らの仕事は「このブランドがこのアイテムを発売する」「今シーズン、このメーカーはこの柄を企画した」など、アパレル側の「でき上がった商品情報」をいち早く入手して、雑誌制作に携わっているだけなのだ。


 極論すれば、編集者やスタイリストが持ち得るのは、企画・デザイン力でも、カラーやファブリケーションのセンスでも、パターンメイキングの技術でもなく、単なる「取材や情報収集、加工の能力」である。

 メジャーなファッション誌の編集者には、何十倍もの就職試験を勝ち抜いた4大卒エリートという意識があるのか、どうも自分の能力を過信しているように見える。

 新刊が発売される度に、ことごとく読者を裏切っているのだから、旧態依然とした編集モデルが通用しなくなっているのを、スタイリストを含めいい加減に認識すべきではないだろうか。 


 いくら雑誌ビジネスを支えるのが広告収入であり、スポンサーの意向がコンセプトにまで及ぶと言っても、編集者やスタイリストが無難な路線を歩むのであれば、それはDRESSの「評価」に見られるように読者との乖離を生むだけである。

 ファッション誌の性格からすれば、40代女性というマーケットを区切る場合、「尖ったファッション」や「高感度なスタイリング」路線を歩むのが定石だろうが、それは欧米のラグジュアリーブランド、国内のデザイナーやNBアパレルを露出させることに限らないはずである。

 国内外の専門店系アパレルや個人デザイナーなど、企画力や素材感で勝負するところまでに裾野を広げ、積極的に新たなアイテムを掘り起こしていかないと、誌面が変わったようには見えない。

 

 目の肥えた40代女性がもはや大手百貨店や南青山のショップのみに飛びつく時代ではない。かといって、経験値から値段にはすこぶるシビアになっている。彼女たちにブランド=高額=価値があるという図式は通用しない。

 プレスルームからの貸し出し商品でイージーに構成し、スポンサーに媚を売るような編集スタイルでは、もう目の肥えた40代読者を捕まえるのは難しいだろう。だからこそ、編集者やスタイリストには、本来持っているべき取材や情報収集力に磨きをかけなければならないのだ。


 編集者やスタイリストにはわれわれのように生地を探し、 企画を立て、デザインを考え、サンプリングし、商品を製造し、ブランド化するクリエイティブワークなんてどだい無理な話しだ。

 だからこそ、徹底して商品を「探す」しか手だてはない。国内はもとより海外の産地やメーカーを足しげく回り、そこで探し出した商品を一つのテーマでエディトリアルしてこそ、毛色の変わった雑誌が作れると思う。

 コンセプトだの、テーマだのと能書きばかりこく前に、徹底して商品を見抜かなければならない。それができない編集者やスタイリストに、新しいファッション誌を作れるはずもないのである。


メンズ向けのエコバッグはどうだろう。

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 業界では雑貨業態の開発が目白押しだ。すでにマスマーケットの攻略にはウエアのみでは勝負にならないのと、海外勢の日本上陸が刺激になって、既存業態で雑貨強化に走ったり、新規業態を作り上げるところが増えている。

 ただ、ご多分に漏れず、雑貨アイテムでもメンズ狙いは、蘊蓄やこだわり、機能性が開発のキーワードに不可欠と思われているようで、どうしてもファッション性を追及したものはほとんど見当たらない。


 まして、使い捨ての代名詞のような「エコバッグ」なんて、売り出すメーカーなんかないし、いいとこセレクトショップのキャリーバッグか、欧米ブランドのノベルティを代用している諸兄がほとんどだろう。

 トラック用の幌を再利用したメッセンジャーバッグもあるけど、「まち」が狭くて入るのはせいぜい雑誌が2~3冊程度。最近はブリーフケースでさえ、i-padの普及で薄型になっており、ものを入れるには馴染まなくなっている。2リットルのミネラルウォーターや料理用の結球野菜なんかの買い物用ではスポーツバッグくらいしかないのだ。



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 これは作るしかないだろうと、ずっと考えていてようやく制作にこぎつけた。まずメンズバッグのサイズは、幅は40cm前後、高さ30~35、36cmが黄金比率だろう。それにまちは10cm以内。これ以上厚いと、ついものを入れ過ぎかえって重たくなってしまう。それに手提げは間抜けに見えるから、ショルダータイプが多少重たくなっても使い勝手がいい。


 問題は素材である。よくノベルティで配られている不織布やボリエステル素材で安っぽい。かといって革を使うと重々し過ぎてる。学生時代に一度、タオル地で信玄袋を作ったことがあるが、こしがないので重いものは入れにくい。昨年、11号「帆布」を使って試作品を作ってみたが、本体はミシンで縫えるものの、ショルダーベルトの袋返しが結構たいへんだった。


 それに帆布は無地だから、デザイン性を出すにはディテールに異素材を付けるか、出来上がりにブランドロゴなんかをシルク印刷するしかしない。そうした加工は1点ものには不向きだから、やはりプリントの生地がいい。ただ、街の生地屋では適当なものが見当たらない。女性向けの花柄か、子供向けのキャラクターがいいとこだ。


 意外だが、エコバックはわざわざ買うお客は少ないようだから、スタイリッシュなプリントものはレディスでも見当たらない。それゆえ、市販で袋向けの生地を探すなんて一苦労だ。そんなことを考えていた時、昨年、地元にオープンした北欧のインテリアストアにファブリックがあることを思い出した。


 ネットで検索すると、Anna Salanderというテキスタイルデザイナーのモノクロでグラフィカルなカンバス地がイメージにどんピシャだった。現物を確認するとで、柄のピッチも丁度いい。ただ、キャンバスといってもインテリア用ファブリックだから帆布ほどの厚みはない。そこでインテリア雑貨コーナーにあったクッションカバーを貼り合わせてリバーシブルにすることにした。

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 あとは幅40cm程度にまちの部分、口の部分の折り返しを加えて用尺を計算するだけ。作りは袋状にして両端をミシンで縫って、下の左右を三角形に折ってまちを作り、縫い代に留めた。口は5cmほどを二重に折り返し補強。肩ひもは余った帆布を貼り合わせてリバーシブルにし、口の両脇に上から挟んで縫い合わせただけだ。


 生地のみみにデザイナーとストアの名前がプリントされていたので、その部分を切り抜いて、ブランドロゴ風にして縫い付けた。出来上がりを見てふと思ったが、以前ならF・O・B COOPあたりが売ってそうなデザインだ。制作時間1時間、材料費:生地1m899円、クッションカバー499円也。量産すれば2,000円以内で納めることはできなくはないだろう。でも、世の男衆がどれほど持てる勇気があるか。意外に外国人男性に受けるかもしれない。


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