HAKATA PARIS NEWYORK

今のファッションを斬りまくる辛口コラム

2013年07月

本業はファッション、グラフィックなどデザイン関連のクリエイティブディレクター。創る側の視点で今のファッション関連の事情を評論する。マスメディアはもちろん、業界紙誌も扱わないテーマに踏み込む。

イケイケの営業で必ずしも経営は好転しない。

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 先日、地元ファッション専門店の企業広告を制作した。この企業は普段、マス媒体による広告宣伝は一切行わないが、今年は節目でもあることで、大々的に資金を投下するとのことだった。その目的は、企業名の再認知だという。


 ヤングの場合、ショップ名は知ってても、その業態を運営する企業がどんな名前なのか知ることはほとんどない。これは就職活動を行う学生も同じようだ。まずはブランドやショップで選ぶから、企業研究をして初めて知る傾向のようである。


 この企業の場合もいろんなストアブランドを抱えている。営業的にはそれでもいいが、節目の年にはそれらと企業とのつながりを強調すべきだとの判断で、企業広告を出稿することに決めたという。

 ただ、そこらの代理店レベルなら、新聞の15段やテレビのスポットCMなどマス媒体に出稿してもらえば、それで終わりということになる。


 しかし、こちらはファッション業界で仕事しているだけに、知りたいことは山ほどある。沿革や変遷から業態開発の背景、MDやバイイング手法、店舗・販売戦略、マーケティング、財務面まで経営面の話を細かく突っ込んでお聞きすると、トップは快く答えていただいた。取材の仕事ではないにも関わらずだ。


 この経営者も現場からの叩き上げ、いわゆる「店長」からトップに登り詰めた人である。日本のファッション専門店は、どこも高度成長の波に乗って多店舗化した。それを支えたのが店長のマネジメントとチェーンシステム、そしてPOSの導入である。この企業も例外ではない。


 ところが、ある時、成長戦略が壁にぶち当たる。売上げはついても利益率は良くない。しかし、経営者は簡単に目標は緩められない。売りに走れば、売れる商品を揃える。 専門店なのに量販的なMDとなって、お客にそっぽを向かれ、マークダウンの連発。だが、目標は高いのだから、経費はバンバン使う。結果、思うように利益が取れなくなる。


 トップは店長を経験し、現場、現実、現物を見ていたからこそ、そうした問題点にようやく気づいたという。そこで、あえて「減収増益」を目標に、経営基盤を立て直し、利益体質を作ることに舵を切ったそうだ。売上げ─荒利益─経費=利益から、売上げ総利益─必要最小限の利益=使える経費にしない限り、利益はでないという考え方である。


 もちろん、利益がでないのは損益分岐点や労働分配率が高いこともある。これも切り下げたり、適正値にしたり。さらに資本回転率を上げる目的で、最小限の資産を残しすべて売却。銀行は担保になるものは持っていた方がいいと必ず言うが、遊休資産ならもっていても価値は上がらないためだ。こうして財務基盤を整え、無借金経営を実践するまでになっている。

 

 店舗戦略も大幅に見直した。福岡・天神における流通戦争の影響からだ。地場のメディアは第4次だの、第5次だのと冠を付けたがる。でも、九州の商都におけるファッションウォーズは、永遠に終わらることはないだろう。大手のセレクトショップやグローバルSPAが次々と進出し、一等地の路面や再開発のビルインに店舗を構えていく。


 デベロッパー側は、大手向けに運営計画を設定するため、初期投資や出店コストはうなぎ上りで、資金力のない地元専門店が店を出しても、消耗戦に飲み込まれるのは目に目ている。そこで同社は、最小限顔と存在感をもつ業態だけ天神に残し、基幹業態は郊外型にシフトした。


 米国のチェーンシステムでは、郊外はロープライス、ローコストオペレーションでないと攻略できないと言われてきた。でも、果たして本当にそうなのか。それを考えている時、スタッフから「郊外でもお客さんは意外に上質な商品は求めていますよ」とのひと言で、ストアブランド名、MD、店づくりはほとんど変えずに展開し、現在は軌道に乗せている。


 そして、全社的にプロパー消化率を向上させた。仕入れを見直し、委託取引や値引きもやめた。商品の回転率を上げると利益率もあがり、キャッシュフロー経営ができるということだ。また、環境問題を考えると「ムダなもの、ゴミ屑のように捨てられるものは、うちはやらない。人間としても、商売としても、それは心が豊かにならないからだ」と、専門店として従来から取って来た路線を再度、明確化した。

 

 他にインポートや別注を軸にエクスクルーシブして、独自のスタイルを提案する業態や、ガーリッシュを切り口にトレンドを意識した商品で編集する業態など、どれも店の特徴を際出させて、コアな客層をしっかりつかむ店舗・マーケティング戦略に切り替えている。まさに地域専門店として、独立独歩の経営を貫くのである。


 それをトップに言わせると、「当社は競争をしない会社」「お客様がライバル」なのだそうだ。店長出身で、地場のファッションマーケットの栄枯盛衰をしっかり見て来ているだけに、その言葉はまさに一家言たる響きを失わない。地場の専門店、小売り企業はここまで経営努力を重ねている。客観的に見るだけでなく、企業トップの考えに触れることも、業界の仕事をする上では、大変役立つ。


 まあ、奇しくも昨日が締め切りだった「ファッションウィーク福岡2014」の企画コンペ提出書類。この企画を立てる上で、大手のHを始め、中堅のADK、今年の事業を手がけたNAなどの代理店が、どこまで地場業界についてマーケティングをしたのだろうかと、ふと思った。


 企画運営委員長のY氏が宣った「企画を立てるにあたって、各商業施設さんへの直接の質問は避けていただきたい」を鵜呑みにするようでは、立てられる企画なんてたかが知れている。また「福岡にお客を呼ぶ」って「手段は達成した」との逃げ口上に終始するだけだろう。


 どちらにしても、地場のファッション企業が経営を続けていくのは、ますます厳しくなっている。そんな実態に触れる度に、行政が実効性を欠き公金をドブに捨てるような無策事業ばかりやることに、ほとほと呆れかえる。


アジア南下政策でクロージングは売れるのか。

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 ユナイテッドアローズが10月に台湾の台北に「ユナイテッドアローズ(UA)」の路面1号店を出店する。次いで「ビューティ&ユース(B&Y)」「グリーンレーベルリラクシング(GLR)」も出し、2022年には主力3業態で10店舗程度を展開するという。台湾には2年前に現地のセレクトショップを通じて、 B&Yのテスト販売を行い手応えを感じたことが、本格進出に踏み切らせたようだ。


 まずは同社のスタンダード業態、メンズ・レディス仕入れ&SPAのフルライン型の「UA」でブランド力を浸透させ、ファミリーやヤング向けの業態へと拡げていく戦略と見る。日本のセレクトショップでは6月に「ビームス」が瀟洒な路面店が並ぶ富錦街にコンセプトショップをオープンしているから、UAの出店でアジアでいちばんの日本贔屓、台湾にセレクトの2強が揃うことになる。

 

 もっとも、かつての香港、最近の北京や上海を見ると、アジアファッションの消費構造がよくわかる。最初に進出するのはルイ・ヴィトンやグッチ、セリーヌなど欧州のラグジュアリーブランド。この戦略は市場開拓、売上げ確保というより、ブランドバリュウの浸透が狙いだ。


 そして、経済発展により中間層の可処分所得、購買力が増すと、DKNY、トミー・ヒルフィガー、マーク・バイ・マークジェイコブスのようなブリッジからモデレートのラインが進出して、一気にマーケットを攻略する。そして国民全体の所得が底上げになると、 ローリーズファームやコムサ・イズムなどの低価格のカジュアルやベネトン、ザラといったグローバルSPAが登場する。台湾もこの傾向を歩んでいるのは間違いない。


 そして、世界で知名度のあるブランドが出揃えば、市場はやがて成熟する。消費者は個性や自分流の着こなしを求めるようになり、ブランド編集やコーディネート提案をもつ業態が威力を発揮する。セレクトショップのビームスやUAが進出するのは、台湾のファッションもいよいよこの領域に入りつつあるということだろうか。


 ただ、UAが台湾でどれほどニーズをもつのか。まず、同店のコンセプトを振り返ってみたい。UAは1990年7月、東京・渋谷で産声を上げた。ビームスの育ての親である現取締役会長の重松理氏が、アパレルメーカーの「ワールド」とジョイントベンチャーを設立。同店はその1号店だった。コンセプトは「21世紀の老舗」で「世界に通用する良い店とは、品揃え、売場環境、販売スタッフ、顧客……のどれもが、望み得る最高のレベルでそれを達成し、実現すること」だった。


 商品の7~8割は、英国製やイタリア製のインポートブランドで揃えたが、ブランド名は「ヒッキーフリーマン」、「グレンフェル」など大半が無名に近かった。ほとんどがサプライヤーブランドで、有名ブランドに供給しているメーカーの商品。つまり、同店はセレクトショップとしてブランドではなく、クオリティを優先することをポリシーにしたのである。


 また、同社は「ニュージャパニーズスタンダード」という目標を掲げた。スタンダードとは基準や模範という意味である。これは音楽のスタンダードナンバーのように、ヒットソングが時代ごとに受け継がれ、多くの人々に心に深く浸透することと同じ意味に解釈。つまり、スタンダードこそ、時代のメジャーになるという考えで、店を運営していこうとしたのだ。


 そして、ファッションだけでなく、ライフスタイルまでのカテゴリーを巻き込んで「新しい日本の基準」をつくっていこうというコンセプトで誕生したのがUAなのである。それが20数年の時を経て、この秋、台湾デビューを果たす。では、勝機はあるのだろうか。


 まず、UAが進出する大安区は首都台北でも金融・経済の中心。日本で言えば東京・丸の内のような立地だ。当然、ビジネスマンやワーキングウーマンが多いエリア。自分たちが台湾経済を支えているというプライドとグローバルな情報収集能力から、ファッション感性もそれなりに磨かれているのは想像に難くない。

 

 それゆえ、トラッドテイストを軸にしたビジネスコーディネート、いわゆるクロージングに対するニーズは旺盛かもしれない。英国やイタリアの上質な生地のスーツやシャツ、ウイングチップやローファーの靴、IWCの時計、レザーのビジネスバッグ、そしてメガネやアクセサリーなどなど。それらが落ちついた色合いの格調高い什器で陳列される。ビジネスマンやワーキングウーマンにとっては、そうしたショップで商品を購入し身につけることは、成功者の証しと思えるだろう。あくまで、イメージ的にであるが…。


 違いがあるとすれば、環境だ。特に気候は日本と大きく違う。台湾は俗にいう亜熱帯気候に入る。台北の平均気温は、最も低い1月が最低14℃、最高18℃、最も高い7月が最低27℃、最高33℃である。つまり、冬場でもジャケット1枚で十分過ごせ、ウールのコートなどよほど寒くならない限り、必要ない。


 7、8月になると、日本の猛暑日がほとんど毎日に続くのである。もちろん、オフィス内は冷房が効いているから、ワーキングウーマンにとって半袖では辛いかもしれない。しかし、営業で外に出ると、男女ともスーツ姿はかなり辛いはず。しかも、湿度は日本よりはるかに高い。

 終年が夏に近い台湾にクールビズなんてキャンペーンは存在しないだろうが、実態はクールビズスタイルの方が仕事はしやすいと思われる。また、大手紳士服量販店が手がける清涼スーツや洗えるウールなどの方が重宝するかもしれない。あくまで仮説ではあるが。


 こうした環境に機能優先とは一線を画するセレクトショップが進出するのである。ファッションリーダーとはかつての日本がそうであったように、肌寒い2月に麻のシャツを着て、残暑が厳しい9月にウールのジャケットを着るのを厭わない概念。台湾1号店のMDは日本と同様でスタートするということだから、重衣料を含むクロージングが売れるには、環境や気候に逆らってオシャレをするということになる。


 ファッションライターの南充浩さんがかつてご自身のブログ「ファッション業界の欧米至上主義は現実感が乏し過ぎる」(http://blog.livedoor.jp/minamimitsu00/archives/2899586.html)で、「例えば『半袖シャツはリゾートシャツであり、欧米ではビジネスにおいては長袖シャツが絶対だ』という主張がある。これなどはアホらしくて話にならない」と書かれていたが、台湾でUAの商品が売れるとなると、それはアホではないということになる。

 

 また、「ファッション雑誌の欧米至上主義は滑稽」(http://blog.livedoor.jp/minamimitsu00/archives/2901982.html)にある「人気セレクトショップスタッフが『シャツは長袖ですよね~。欧米だとそれが主流ですから』という提言は上記の流れをまったく無視しており、カッコ付けの欧米かぶれの独りよがりにすぎない」とのセールストークが、今度は台湾で当たり前として展開されるということだ。


 1986年に香港で制作され、世界中でヒットした「男たちの挽歌」では、主人公のティ・ロンやチョウ・ユンファはコートを着ている。キャラクター設定上の演出かもしれないが、この年香港は実際に寒かったようだ。しかし、亜熱帯の東南アジアでそうした気候が続くことは、まず考えにくい。


 台湾のサクセスしたビジネスパーソンが、我慢を取るか、実利を優先するか。当面は前者に軍配が上がるかもしれない。でも、成熟度合いも日本よりはるかに早いだけに、UAが台湾向けのMDに修正を余儀なくされることは、意外に早く来るかもしれない。その時、品揃えの肝はいったいどんな商品で構成されるのだろうか。


ブランド崇拝がアジアに浸透しはじめた。

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 いつものことながら、事務所前のコム・デ・ギャルソンは、バーゲンセールをダラダラ続けない。入口のドアに「SALE SALE」のPOPが貼られていたのもつかの間。今日、7月11日朝、事務所に来てみると、もう内装工事のスタッフがやってきていた。秋物第1弾の売場改装のためだ。


 9時過ぎで気温は30℃を超えている。でも、明後日には売場に長袖のシャツや梳毛のセーターが並ぶのである。その販売戦略が良いのか、悪いのか。一概には言えないけど、いつまでもクリアランスを続けて荒利を削るより、よほどマシだろう。


 昨日、ショップ前で懇意にするスタッフのMさんと遭ったので、前から感じていた「アジアからの観光客」の話を向けてみた。すると、「先ほども韓国からのお客さんを接客していました」「商品によってはアジアのお客様で完売したものもあります。特に…」とまでで、こちらから話を遮った。中国人といい、韓国人といい、開店前から店の前で待ち、ディスプレイされた「ある商品」を背景に記念撮影している。この「COMME des GARCONS PLAY」がアジアの観光客には人気があると、感じていたからだ。



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 こちらが「PLAYが売れているんでしょ」と言うと、Mさんからは「ハイ、ハートマークがアジアでもたいへん売れてまして、品薄になっています」との答えが返って来た。やはり、想像していた通り。これで裏が取れた。経済的に発展している中国や韓国の大衆にとって、豊かさの象徴、排他の価値観、差別意識の具現化は、ブランドを手に入れることだ。特に彼らにとってはブランド=記号なのである。でなければ、あんなに記号ブランドの偽コピーが出回るはずが無い。


 でも、こればかりは本物を自身がお金を出して買っているのだから、これ以上話を挟むつもりは無い。ただ、日本がそうであったようにアジアでも「ブランド崇拝」が浸透しはじめたのは、間違いないだろう。それについて、かつてのメディアや識者は快く思わず蔑むように評論した。

 作詞家の売野雅勇は、自身のインタビューでこう語っている。「まずひと言。ブランド品ブランド品って騒ぐのは、日本人ばかりだ。なんて決めつけているのは、単なるディスコミュニケーション。たぶん、ファッション・オンチのマスコミが、アンチテーゼとして掲げているだけ」。


 いかにも夢を売る芸能界のブレーンらしい発言である。まあ、アイドル歌謡の作詞で稼いだ印税でブルジョワな生活をできたのだから、当然と言えば当然かもしれない。別に売れっ子作詞家をフォローするわけではないが、ブランド崇拝は欧米でもあったことである。米国の景気が良かった80年代前半、旅行客はNYでも東京でもカメラ店の前に並ぶと、「ニコン、ニコン」とただひたすらにウィンドウを見つめていた。

 そして80年代後半の円高になると、今度は日本の女性がパリやミラノのブティックに群がった。要するに、経済的に豊かで、購買力をもつ国の国民は、比較的ブランドを購入していく。 日本人が成熟して、今はそれがアジアの中国人や韓国人ということである。


 「フランス人は、他に惑わされずに、自分に合ったものを選ぶ。日本人はすぐブランド品というだけで買ってしまう」なんて卑下する日本のメディアや識者がいる。でも、今のファッションに限れば、H&MやザラなどグローバルSPAが世界中に出店し、有名デザイナーとのコラボ商品が発売されると、パリでもNYでも早朝から長蛇の列ができる。つまり、オシャレの基本として、まず流行を追いかけ、ブランド品から手に入れていくのは、世界共通の行動ということだ。



PLAY













 COMME des GARCONS PLAYは、ポロシャツで1枚1万円弱。某SPAのUはノーマークだが1,980円。5倍の開きがある。だから、今のところは中国人も韓国人も、ハートマークのブランド価値だけで購入しているということだろう。


 でも、PLAYのポロシャツは、マークのワッペン一つとっても丹念な刺しゅう仕上げで、それをさらにミシンで丁寧に縫い付けている。シャツ本体は上質な鹿の子生地で、ボタンは貝ボタン、襟はしっかりしてガンガン洗濯してもヨレヨレにはならない。ワンポイントマーク、それも刺しゅうや顔料プリントというSPAとは、根本的に違う。定番アイテムだから5シーズンも持つと、コストパフィーマンスはUより優れていると言えるかもしれない。まさにメイドインジャパンだ。


 こうしたブランドの背景にあるもの作りの考え方を、中国人や韓国人が理解できるのは果たしていつのことだろうか。


旬のフランス映画は、リアルクローズの研究にもってこい。

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 「フランス映画祭」というイベントがある。在日フランス大使館が主催し、単館上映の封切り作品から話題作のリバイバルまで、ピックアップして上映するものだ。今年の福岡上映会は、6月の29日から7月5日まで2会場に分かれて開催された。

 小学生からずっとフランス映画を見て来たものとしては、せっかくなので何とか観るようにしているが、今年は時間がなくて1本だけにとどまった。タイトルは「恋のときめき乱気流」。原題も「Amour&turbulences」と、まさに恋と乱気流である。


 だいたいプロットが想像できるものは、イントロに出てくるキャスティングのフォント使い、カメラワークやカット割、衣装などを期待する。この映画もタイトルからしてラブコメのようだったので、ウィットに富んだ台詞や秀逸な演出、ヒロインのウエアに注意を払って観た。


 ストーリーはNYのアパートで暮らす、売れ出ないアーチストのヒロイン(リュディヴィーヌ・サニエ)が目覚めるシーンから始まる。着ているナイティは全面にplisséeを寄せステッチテープを貼った「Nuisette」(ベビードール)。セクシーというより、可愛さを残す少女のようなアイテムだ。この時はわからなかったが、そのテイストが映画全体でヒロインが着る衣装のコンセプトになっていると、ストーリーが展開するに従って気づいた。


 手短に身繕いをし、向かうは生まれ故郷のパリ。トップは白のBlouse、ボトムは赤のMini Jupe(スカート)。上には短めのManteauはTrench(トレンチコート)。 すっかり定着したインド人運転手のイエローキャブを迎車し、一路、JFK空港へ。

 白のブラウスはプロモーション写真で着ているものだった。フィルムではシャツカラーのプレーンなデザインにしか見えないが、写真を見ると地模様があって抜け感があるものとわかる。白のLingerieと合わさって清潔さを感じさせつつ、コンサバに見えないところがパリらしい。


 スカートは鮮やかなRougeで、ウエストからヒップ、ヒップからヘムが切り替えられたバイマテリアル。特に下の切り替えはレーシーでふわっとしたボリューム感がある。飛行機に乗って座席の下を覗いてるとき、隣の親父がスケベそうに尻を見るシーンでは素材感がよくわかった。妻から「何見ているの」と聞かれ、「スカートを見ている」の台詞が巧く言い当てていた。


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 隣に座ったのは、3年前に付き合っていた元カレ。ここからパリ到着までにドタバタ続きの回想シーンがフラッシュバックで展開される。パーティや個展、デート、ヒロインの自宅、元カノの部屋、ベッドと、ヒロインが身につける数々のリアルクローズは実に見物だ。

 パーティで着ていたのはsoiréeにありがちなbustierやnoireではなく、襟がつまり袖もついたRobe(ドレス)。ここにもヒロインのフェミニンさを表そうというスタッフの意図が感じられる。エッフェル塔の最上でデートをするシーンでは、金属糸をツィード風に織った素材で、光沢とグラデーションが利いた表情がパリの夜景に映える。

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 彼のプレイボーイぶりに散々振り回され、傷心状態のときに着ているワンピースは、モノトーン柄のimpriméでfluideのシルエット。恋に疲れた心情を表すかのように、広めの襟ぐりをうまく使って右肩を出す。余り背が高くないこともあって、細い脚を出した華奢な着こなしがヒロインへの好感を呼ぶ。

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 そして、寄りが戻り(実際はそうではないが)、ベッドインという時の Soutien-gorgeが、classiqueなTriangleタイプ。カップレスで透け感がありMamelonが見えそうなのだけど、キャミソール風でことに及ぶ前のいやらしさは少しも感じさせない。ここにもストーリー全体で貫かれる「Mademoiselle」のテイストが表れている。

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 ヒロインの リュディヴィーヌ・サニエは、パリ・ジュテームの「Parc Monceau」で米国人俳優のニック・ノルティと共演した。Courcelles通りをメトロのモンソー公園駅まで歩くシーンで着ていた衣装も、花柄のカットソーブラウスにフレアスカートというパリジェンヌの日常着だった。この時は1カットの長尺だったため、夜のシチュエーションでも衣装はよくわかった。

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 ファッションが話題になる映画と言えば、古くは「華麗なるギャッツビー」や「ティファニーで朝食を」、最近では「プラダを着た悪魔」など、ハリウッドが有名だ。でも、リアルクローズを見るには旬のフランス映画の方がいい。DVD化されないものも多いので、感性を研ぎすまして衣装研究に集中することができる。



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