HAKATA PARIS NEWYORK

今のファッションを斬りまくる辛口コラム

2013年08月

本業はファッション、グラフィックなどデザイン関連のクリエイティブディレクター。創る側の視点で今のファッション関連の事情を評論する。マスメディアはもちろん、業界紙誌も扱わないテーマに踏み込む。

広域集客が絵空事になりつつある商業施設。

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 ここ2日ほどは大雨のせいで、猛暑が静まって過ごしやすい。それと連動するわけではないだろうが、ブランドによって黒やグレー、カーキなどのアイテムが動き出している。素材はコットンで、端境期対応がうまいアパレルの商品は、順調な滑り出しのようだ。


 ところで、商品と並んで動くのが商業施設のテナントである。新ブランドが店舗展開を始めると、いち早くリーシングされるものもあれば、定期借家法をたてに追い出されたり、売上げ不振で自ら退店していくショップも少なくない。


 福岡天神では、ソラリアプラザが改装計画第1弾と銘打って、ケービーエフ、リベット&サージ、リベット&サージなどをリーシングし、この秋冬商戦を戦おうとしている。


 ただ、すでに多少のブランド入れ替えを図っても、大して市場を刺激するまでにはいかないようだ。特に開発に相当のコストをかけている商業施設は、新規テナントにとってもかなりの初期投資が必要だから、そう易々と出店はできない。


 逆に販売力や顧客をもつブランドは、出店については一等地で商業施設の格で選ぶことができる。だから、デベロッパーの安易なリーシングなんかに乗らなくていいわけだ。結果として商業施設側が「九州初上陸」なんて冠をつけてブランドをかき集めたところで、特別に毛色の変わった商品でない限り、新たな市場を拓くとまではいかないのである。


 典型的な施設が3年前に鳴り物入りで誕生したJR博多シティではないだろうか。アミュプラザ博多、博多阪急ともに初年度が好調だったのは、開業景気や新しいもの好きを集めたことに尽きる。ところが、13年3月期の売上げはアミュプラザ博多が342億4100万円、前期比で2.1%減少した(博多阪急は非公開)。2年目にしてもう客離れを招いたのである。


 この施設は駅ビルで、メーンターゲットは駅利用客。JR九州の唐池社長は開業時に「アジア全域から集客できる」と広域集客の可能性について豪語したが、それは開業景気と外国人旅行客があればこそ言えること。物販面でそれほど広域集客の力が発揮できるわけがないのは、最初からわかりきっている。


 リーシングされるブランド側の論理から言っても、福岡の一等地は天神なのだからそれを差し置いて博多駅出店とは考えにくい。結果として、ファッションテナントの多くがどこでもあるようなテイストで、2年目には「近場で買えば良いか」とお客の購買心理にも影響したのだ。


 ところで、先日贔屓にしている「Y-3」からDMが届いた。秋冬ラインナップの告知かと思いきや、既存店の閉店と新規オープンの案内だった。このブランドは福岡にショップがないため、商品を購入する時は、東京・青山の旗艦店を出張に合わせて訪れるか、ネットでチェックしてスタッフに詳細を確認し、通販してもらっていた。


 九州では唯一、小倉の百貨店、井筒屋に店舗を構えていた。そこが閉店し、福岡に新規オープンするというのだ。ならば、伊勢丹グループの百貨店、岩田屋が順当なところだが、そうではなく完全な路面展開。しかも、当事務所から歩いて5分程度の大名のストリートなのだ。


 すぐ近くにはメーンストリートの天神西通りがあり、アディダスのコンセプトショップをはじめ、ザラやアバクロ、ディーゼルなどのグローバルブランドが軒を並べる。恐らく新しいY-3福岡店は初期投資やランニングコストの低減はもちろんだが、マニアックなファン客御用達だからメーン通りから外れても集客できると踏んだのだろう。


 百貨店以外の展開は、アイテム仕入れを行っている地方専門店を除き、福岡が初めてだと思われる。筆者のようにDC世代でワイズの流れ組むモード感が好きなお客にとっては、地元にあれば直接商品を見て、試着もできるから、願ったりだ。


 しかし、そうしたマニアックな客層は、昨今のトラッド&アメカジ系譜の全盛時代には、稀少だろう。おそらく天神にやってくるフリー客を捉えるまでもなく、コアなファン客のみでどこまで売上げを伸ばせるか。チャレンジで実験的な部分は否めないと思う。


 まあ、売上げが芳しくなければ、岩田屋が引き受けるかもしれないが、天神ではヨウジヤマモト、ワイズともにメンズは撤退しているので、Y-3も同じ轍を踏まないとは限らない。とはいえ、ファンとしては少しは売上げに貢献できるだろうから、何とか頑張ってほしいものである。


 ところで、もし博多阪急がY-3をリーシングしていたら、個人的に買いに出かけることは間違いない。同店がオープンする前に広報に問い合わせたが、ブランドリストには入っていなかった。これは博多阪急のコンセプトに合致になかったこともあるが、やはりブランド側が「博多駅よりは天神に商業施設に出す」という格を選んだことに他ならない。


 Y-3は製造卸こそアディダスジャパンが担っているが、ブランドロイヤリティの維持にはヨウジヤマモトの意向が重視されている。同社は一度経営破綻したとは言え、決してブランド力が揺らぐものではない。だからこそ、一等地である天神地区を選択したわけだ。


 仮に博多阪急がY-3を導入したとしても、筆者のようなコアなファンしか購入しないのだから、大した売上げにはならないだろう。それは井筒屋を撤退したことが裏付ける。


 ただ、アミュプラザ博多を含めたJR博多シティは、リーシングしたテナントが九州初、福岡初=広域商圏を狙っている割に肝心な足下商圏すら深耕できず、お客の天神への回帰が進んでいる状況だ。


 当初に出店したブランドの多くが天神とのバッティング覚悟で出店したのだろうが、館全体がどれも似たり寄ったりのテイストや業態ばかりでは、いずれ需要が減退していくのは眼に見えている。すでにオープン3年目の契約更新時期に入り、退店をするテナントもあるようだ。


 その穴埋めに南側の商業施設「デイトス」から、地場の好調専門店などをリロケートさせる案もあるというから、唐池社長が宣った「アジア全域から集客できる駅ビル」も、3年にしてもはや空しい響きにしか聞こえない。


 もっとも、駅ビルがもうこれ以上伸びようがないファッションや服飾のテナントを入れ替えたところで、広域商圏の開拓も足下商圏の深耕もできないのは言うまでもない。ハウスカードのポイント還元しか販促策がない中で、「確実にお客が買い物するテナントとは」の科学的かつデータに基づく検証を行うことが先決ではないのか。


 商業施設は広域集客なんてものが絵空事になりつつあることを真剣に考える時期に来ていると思う。


スタイリストで食いたきゃ、撮影知識をつけてこい。

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 バブル時代、アパレルメーカーの多くが銀行の乱発融資とキャッシュフロー経営の導入で、こぞってレストラン事業に進出した。おかけで、アパレルからデザインに移ったこちらには、リーフやポスターなどの仕事が数多く入って来た。


 とにかく食材は豪勢で、キロ5万円の松坂牛や特大越前ガニなどの食材を使った料理の撮影は、枚挙に暇がないほどだった。ただ、博多でガキの頃から地元食材を食べて来た人間からすれば、メディアに躍らされるだけの大して美味くもない店も少なくなかった。

 

 クライアントにはそう言うわけにもいかず、いかに「美味そうに演出するか」がポイントだった。まあ、クリエイティブワークを請け負うからには「コースターや箸袋、マッチなんかはやらんぞ」と大見栄切りつつ、それらはそこらのデザイン会社に外注し、メーンのリーフやポスターで勝負していた。


 アパレルメーカーの依頼で、ファッション専門学校を出て2~3年のスタイリストがスタッフとして加わることがあった。ディレクターとして何気なく小道具を探してくるように命じた。箸や器などの小道具が盛り付けを演出し、味のイメージを決める重要な要素なのだ。


 ところが、彼らは何を聞くでもなく、キョトンとしている。日頃はアパレルで服のコーディネートしかしていないのだから、料理の撮影なんて門外漢と言わんばかりである。さらに仕事が進んでも撮影用語を全く知らずコミュニケーションが進まない。学校ではファッションしか勉強しておらず、お人好しの講師陣におだてられたのか、天狗になって撮影という仕事の本質など、まったく理解していなかった。


 こちらはクライアントから制作費をもらい、その範囲内でデザインやコピーなどのクリエイティブワークを組み立て、予算を割り振って仕事をしている。それがプロの仕事である。だから、最低限の知識は学んできてほしいだけ。それが機転を生み、気働きにつながるからだ。


 フードスタイリストという職種がある。料理の撮影専門で、素材はもとより、器などの道具を集めて撮影をアシストするスタッフだ。料理専門誌や食品のCMを制作をする場合は、こちらを起用する。しかし、ゴーストやハレーション、寄る、かじる、シズル、ハコ馬やレフ、けつカッチンくらいは、スタイリストと名乗るなら知ってて当たり前の撮影用語である。


 用語を理解すれば、スタッフコミュニケーションが円滑になり、撮影というものがどんな仕事かがよくわかる。それはファッションでも、料理でも変わりない。所詮、他人の褌で相撲を取っているとか、月給5万円程度のブラック業界とか言われる職種だ。


 しかし、元請け孫請けのバーチカルシステムの業界は変えようがない。それを超えたいのなら自分が行動するしかない。こちらがクライアントから予算を預かり、制作全般を仕切っている以上、限られた時間と資金で最高のものを目指すのは当たり前である。


 だからこそ、彼らが自由にできることなどはない。知識をつけてカメラマン他のチームスタッフの中で、スムーズに仕事を進めていく能力や知識が求められるのである。スタイリストになりたければ、学校では「ファッションより撮影の知識を学んでこい」ということである。


イベントはもう販促にはつながらない?

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 渋谷パルコが創業40周年を記念して、10月18日~28日に「シブカル祭。」なるイベントを開催する。今年は同館内やミュージアム、広場などで、アート作品の展示やライブ、ダンスパフォーマンスなどを行うという。同イベントは過去2回、来場者が約50万人と好評を博している。そのため、今年は「応援」をテーマに才能を発掘し、新しいチャレンジに取り組む女性クリエーターたちの様々な作品を発表するそうだ。


 もともとパルコは文化事業、カルチャー発信には積極的だった。その後、長い低迷を抜け、再び攻勢に出てからも、イベント事業に注力する方針は変えていない。裏を返せば、ファッションビルの看板、有名なブランドやショップをリーシングするだけでは、館全体にそれほどの集客効果は見込めないということだろう。


 テナントに力があれば、個の売上げは十分に上げられるが、全部が全部そうとは限らない。ただ、パルコはイベントを集客の手段にはしているものの、販促につなげているとは思えない。イベントそのものが商材的な要素で、お客はそれを求めてやって来ているからだ。デベロッパーとしての期待度も、結果的に売上げにつながってくれればという程度にしか見えない。


 今年の場合、「若手クリエーター」ということからしても、決してビッグネームのタレントではないが、カルチャー色が全面に出ることでパルコらしさは際立つ。それはストレートに集客効果を狙うというより、参加型にすることでSNSなどで情報が拡散されれば、逆に集客が図れるかもしれないというものだろう。今の時代のイベントはこういう手法の方が実効性が期待できるということである。


 一方、テナント側はイベントに販促効果を期待するのは言うまでもない。イベント経費はテナントの売上げ部率に内在する販促費が当てられている。当然、集客が図られるのなら、売上げにつなげたいだろうが、館自体がお客で賑わっても皆が商品を買うとは考えにくい。むしろ、集客=販促にはつながらないのが、昨今のイベントの特徴とも言える。


 パルコの場合、2012年決算は増収増益だった。同社はその理由について売れ筋テナントのリーシングとカルチャーイベント、そしてハウスカードの「ポイント還元」が相乗効果を発揮したと見ている。ただ、月次売上げでは、13年7月はバーゲンという夏の最大販促イベントを展開したにも関わらず、対前年比では渋谷店(93.9%)、池袋店(94.6%)、名古屋(89.4%)と大都市の店舗は苦戦した。全店を見ても昨対をクリアしたのは、札幌や福岡など5店に過ぎない。


 セールになればプライスダウンするのだから、お客の購買点数を増やさなければ、売上げは伸びない。つまり、割引は集客効果にはなっても、もう販促にはつながらなくなっているのだ。だからこそ、デベロッパーはレギュラー月にハウスカードのポイント還元率アップというキャンペーンを展開するし、テナント側もこれの実効性があることで不満は漏らすところは少ない。ただ、テナントの中には、デベロッパーが代理店に企画から丸投げするイベント内容に異議を唱えるところがあるのも確かだ。


 パルコほどカルチャー色が出せない駅ビル、JR博多シティが1周年記念イベントを実施した。企画は競合プレゼンで、某代理店のものが通った。それは地元で活動するクリエーターによるオリジナルレターセットの展示だった。これにはさずがに販促効果を疑う声が出たのは、言うまでもない。しかも、「筋が違う」との声もあちこちから聞かれた。


 先に天神のイムズでも同じようなイベントが行われていたから、カルチャー色の企画として通りやすかったのかもしれない。それにあまり経費をかけない条件もあったようだ。代理店側も子飼いを含め地元のクリエーターに「営業の場」を与える約束で参加させたのは容易にわかる。ただ、その経費は間接的にテナントが部率から支払われているのだから、不満が出るのは当たり前だ。


 大都市のパルコが示すようにブランド乱立の中で、イベントが販促効果を発揮するのは難しくなってきている。だから、イベントそのものを商材にする戦略はわからないでもない。テナントもイベントによる販促効果に期待する時代ではなくなったことを自覚すべきだろう。イベントで集客が図られれば、プロパーで販売することに力を入れるべきなのだ。


 ただ、集客や販促といった目的を考えるイベントなら、少なくともその達成度合いが明確に検証されなければならない。巨額な公金が使われるものではなおさらだ。奇しくも、今月末には8月9日にプレゼンが実施された来春実施の「ファッションウィーク福岡2014」の事業委託業者が決定する。


 企画運営委員長のY氏は、代理店各社が雁首揃えた説明会で「福岡に多くのお客さんを呼び、服を買ってもらう。イベントはその手段」を強調していた。まあ、天神などで商業施設を運営するデベロッパー各位も出席していたため、リップサービスもあたっただろう。それに福岡アジアコレクションの大義を当初の産業振興や人材育成から、「集客に貢献している」とすり替えたことを見てもよくわかる。


 しかし、パルコほどのカルチャー色を出せず、やはり売上げ効率を求めるデベロッパーが集客効果だけで満足するはずがない。また、700万円という事業資金には市民や県民の血税が含まれている。この再配分が代理店や都市部の商業施設だけで良いはずがない。一般の小売店だってファッションを売っているところはいくらもあるし、多くのお客に来てほしいのは共通の願いだ。代理店の企画を発展させ、適当なところで線引きすることは許されないのだ。


 説明会が終わった後、代理店は早速、イベント会社に会場設営の見積もりを取っていたようだ。もう頭の中はイベント一色なのである。でも、その程度で集客を図り、それを販促にまでつなげられるはずがない。 Y氏は前回の失敗原因を「準備期間がなかった」と、突貫企画のせいにしていた。でも、今回とて代理店が企画に時間を割いたのは10日程度。業者が決まればその企画内容で進めていくだろうから、そんなものは言い訳に過ぎない。


 イベントに対する期待や効果は、集客すれば良い、販促につながらないと無意味。主催者や委託業者と小売業者で、温度差がある。ただ、結果は数字であり、それがイベントによるものなのか否かは、きちんと検証されなければならない。失敗すれば企画当事者が詰め腹を切るくらいの覚悟は当然だろう。パルコのような上場企業はもちろんのことだが、市民の血税を使う公共事業ならなおさらである。


バッティングによる縛りを云々する時代か。

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 先日、ファッションライターの南充浩さんがご自身のブログで、「某百貨店に常設店を何年間も展開し続けているブランドが、別の百貨店に1週間だけ期間限定売り場を出した。…当然のことながら、常設店のある百貨店からそれなりの「嫌がらせ」「嫌味」の類があったというのだが、さもありなんである」とブランドを取り巻く「バッティング」の問題に言及されていた。


 アパレルメーカーと小売りの関係で、バッティングやエクスクルーシブは長らく続く商慣習と言っても良い。ネット販売の浸透で、このルールは崩れてきたとも言えるが、リアル店舗では今でも厳然と残る不文律である。

 南さんのご意見は、「(このブランドの売上げ規模) せいぜい5億円程度だろう。予想よりも売れていたとしても10億円弱であろう。となると、そこまで過敏に「囲い込む」必要があるのだろうかと個人的には疑問を感じる」と、だった。


 確かに、日本の場合、アパレルメーカーと小売りとの関係では、圧倒的に小売りの方が強い。だから、メーカーは小売りから圧力をかけられると、従わざるを得ない場合もある。南さんが書かれていた「嫌がらせ」「嫌味」の類いは、その一つと見れなくもない。

 これが海外ブランドになると真逆だ。経営トップ自らブランドの本社に日参して、誘致に奔走する。パリやミラノ、NYで徐々に人気を集めたブランドは、まずインポーターや中堅商社の手で日本に持ち込まれ、まずは専門店の手で少しずつ販売されていく。


 それがブレイクすると、百貨店は大手商社などと組んで、根こそぎかっさらっていく。それを自店の顔にするためだ。アニエスb.もアルマーニもドルチェ&ガッバーナもみなそうだった。ところが、こうした海外ブランドがジャパン社を設立し、直営展開を行うようになると、状況は一変する。百貨店でもこれからブレイクしそうな海外ブランドに目を向けなければならない一方、国内ブランドも手当てせざるを得なくなるのだ。当然、エクスクルーシブやバッティングも問題が起きてくる。


 メーカーは百貨店に対しエクスクルーシブを楯に、一定ロットの仕入れを要求する。百貨店はそこで他店とは「バッティングさせないでくれ」と頼む。ここでめでたく契約成立となれば、百貨店にブランドのハコやコーナーができるという構図だ。ただ、日本のファッション市場は、F1層を中心にトレンド重視になっており、アパレルも小売りもじっくりブランドを育てていくような状態にはない。

 

 アパレルはとっかえひっかえデザインを発表し、それをタレントによるプロモーションでブランドへと昇華する。百貨店も売り上げ効率から中高年ばかり意識しておられず、旬のブランドへのリーシングに走る。ただ、ファンドなどからブランドの開発資金を得ているアパレルは、短期の収益拡大が至上命題で、SPA化して売上げ規模を拡大しなくてはならない。そこで、最大化する在庫の処分として、並行してネットチャンネルによる直販も行うのである。


 となると、エクスクルーシブもバッティングも、意味をなさなくなる。だから、差別化のために希少なリアル店舗のブランドほど囲い込みたくなるのだ。南さんは売り上げ規模という観点から、それをすることに疑問を感じるという論調だった。加えて筆者は百貨店のバイイングや編集のノウハウが一向に進化していないこともあると思う。これについて、専門店と専門店系アパレルとの関係では、違った手法が取られている。


 百貨店は所詮、ハコレベルだが、専門店は店舗を作りこむ。アパレルはある程度、商品を量産しなければならないから、卸先においては当然バッティングが起こってしまう。そこで専門店の中には業態から開発してコーディネート編集で売ることで、ブランドが同じでも似て非なる店を創り上げるところが、少ないながらも存在する。ディレクターなり、バイヤーなりが完全にその頭の中にあるMD像で、商品編集を具現化していくのだ。


 他に同じブランドやアイテムを扱っている店がいくらもあるかもしれない。でも、一般にこのアイテムとこのアイテムは合わせないだろうと思うところを、うちはコレでいくという外し崩しの手法をとる。 スタイリング提案から考えれば、いくらでも独自性を出せるのだ。言い換えれば別のバイヤーが行えば、別のMDが構築され、店の顔が変わっていく。セレクトショップとは本来そうした業態で、これは百貨店のハコやコーナーでも十分可能なはずである。


 自店が狙うコアな客層をしっかりイメージし、個々のブランドやアイテムでスタイリング提案する。それである種のトレンドやムーブメントを起こすことは十分可能だ。あるいはメーカーに対し、リスクを承知で別注をかけるという手法もあるだろう。ならば、エクスクルーシブもバッティングも関係ない。お客さんもそこしかない商品なら、プロパーで買ってくれる。バイヤーとは、バイイングとは本来そうあるべきなのである。


 メディアは百貨店がじり貧状態にあるとは報道する。しかし、その根本原因の一つにバイヤーの能力不足、バイイングや編集の進化遅れを上げるところはほとんどない。ファッションマーケットが完全に成熟している時代に、まさしく「ブランドの新規性と希少性に頼っている」ようでは、百貨店に明日はないと思われる。


この秋は柄もののジャケットもいい。

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 猛暑が続く中、店頭にはチラホラと秋物の第1弾が並ぶようになった。でも、インパクトを出す立ち上がりは、生地や組織を凝らないと毛色の変わったデザインにはならないと思う。


 秋冬の生地はウールのギャバやフラノ、ツィードなどの定番が主流で、グローバルSPAですら調達の手軽さから企画の大半に採用するようになっている。つまり、でき上がるアイテムもトラッドの焼き直し風ばかりで、全く面白くないのだ。


 それゆえ、秋の立ち上がりでは、毎度のことながら個性的な生地を探しまわり、できるだけ企画に盛り込もうと腐心している。あれこれ探すうちに「コレ」と思ったのが見つかった。スタイル画の段階ではよくわからないけど、メーカーが仕上げるとこんなデザインになっていく。


 一つ目はここ数年、ジャケットのトレンドになっているジャージストレッチ。普通なら無地がほとんどだけど、黒地にグレーのハート模様が小粋さを感じさせる。

 素材はヴィスコース95%とスパンデックス5%の混紡で、伸縮性をもちながらこしもある。レディス畑しか歩んでこなかった割に、ジャケットはシャきっとした生地がでないとダメが持論。一発で気に入った。


 デザインは軽めに仕上げで、1つボタンのテーラーカラー、着丈は60cmと短め。でも、多少ディテールにはこだわり、襟の切り込みを浅めに、ポケットを大好きな玉縁に、センターベンツなど、しっかり仕上がっている。

 コムデ・ギャルソンのプレイはワンポイントマークだけど、ハートのテキスタイルもモチーフもなかなか良い。白地に赤のハートなら、間違いなくコムデ・ギャルソンが作るかもしれない。


 もう一つはポリエステ糸で織り上げた光沢のあるチュール地。パターンは前のと同じで生地換えなんだけど、個人的にはこちら単独でもいけるかもしれない。

 ただ、見た目に反し、生地が柔らかでこしがない。レディスのジャケットだから妥協できるが、個人的には納得はいかない代物。もう少し上質の生地なら良かったんだけど。


 そして、三つ目がB級映画にでも出てきそうな架空国家の国旗のようなプリント柄。こちらもテーラーカラーの1つボタンで着丈60cmのショートジャケット。ポリエステル素材ながらこしがあって、ペプラムも効いてシルエットがきれいに出ている。


 秋を感じさせるアイテムは、なんと言ってもジャケット。さて、バイヤーは他の企画も含めて、どんなデザインを付けてくれるのだろうか。そして、どんないい女が着て、街を闊歩するのか。待ち遠しい。

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