HAKATA PARIS NEWYORK

今のファッションを斬りまくる辛口コラム

2013年09月

本業はファッション、グラフィックなどデザイン関連のクリエイティブディレクター。創る側の視点で今のファッション関連の事情を評論する。マスメディアはもちろん、業界紙誌も扱わないテーマに踏み込む。

ファッション雑貨は単品か、コーディネートパーツか。

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 アパレルビジネス、いわゆる衣服の製造販売はすでに頭打ちだ。デベロッパーは器の新設でテナントリーシングに腐心し、既存の商店街や施設は空き店舗対策に四苦八苦。こうした中、とみにクローズアップされているのが「ファッション雑貨」である。従来は服を引き立てる脇役的な存在だったが、ここに来てメーンの商材にする業態が次々と生まれている。


 一口にファッション雑貨と言っても、実に幅広い。地金や石、布のアクセサリーからヘア&イア、巻物、革小物まで、服以外の小物も雑貨と言えば雑貨である。百貨店ではハンカチやストール、帽子や手袋、ネクタイなどの服飾小物は雑貨と呼ばず、洋品というカテゴリーで括られている。でも、量販チェーンではこちらも雑貨のジャンルに入っている。


 企画生産の手法も100%国産オリジナルから、ブランドのライセンス、サブライセンス、チープな海外量産品までと、実に多種多彩。老舗メーカー・ムーンバットのように企画力で勝負するところは、素材を吟味しデザインを練り上げたマントやポンチョまで作りあげている。一方、ヤング系のチェーンやSPA化するセレクトは、商社や企画会社に生産を委託しているので、素資材の調達がカギを握っている。


 ファッション雑貨が脚光を浴び始めたのは、10年ほど前からだろうか。業態開発力をもつ小売業が開発輸入とオリジナルでまとめ、3プライスなどの仕掛けを加えて一気に多店舗化していった。また、100円ショップといった生活雑貨店が少しずつファッション分野に触手を伸ばしたことが刺激となり、ファッション業界が仕掛ける雑貨がビジネスの表舞台に立つようになっていったのである。


 ファッション雑貨は古くはワイズフォーリビングやクロワッサンの店がアンアン世代の御用達だった。無印良品は西友のPBから派生してMDを拡大し、FOB COOPはグローバルな感性でアーリー層を開拓した。ヤングではパルグループのラティスがすでに22店舗にまでに成長し、ポイントのミィパーセントもポップでエッジの利いたアクセで多店舗化を狙う。


 タイムレスコンフォートやダブルデイはインテリアがメーンだが、そのセンスで一部のファッション雑貨にも切り込む。イオン系コックスのチキュートLBCは、SCを中心に店舗を拡大。小売りでは、昨年開業した渋谷ヒカリエが5階を雑貨フロアに仕立てたし、そこにリーシングされた「オクタホテル」はもともと福岡で誕生。他にも「アトリエ・ブルージュ」は卸と直営の2本立てで、全国展開を視野に入れている。


 ただ、業態によって取り扱われるアイテムは様々で、荒利益の確保を狙ってデイリーウエアまで取り扱うところも少なくない。どれがファッション雑貨店の標準型にふさわしく、どこまでのMDが効率がいいのか。各社とも熟慮に熟慮を重ねているようで、まさにファッション雑貨の業態は玉石混淆といった様相である。


 さらに昨年くらいからファッショングッズの売上げ回復が鮮明になってきたこともあり、アパレルメーカーやSPAも続々と開発に力を入れている。レディスアパレルのアスプリは、雑貨セレクト「リーフリーフ・クヌッフェル」の出店を加速。クロスプラスも製造卸部門では「雑貨を強化する」と表明した。ライセンス管理会社のビリーフは、マウジーと雑貨のマスターライセンス契約を結び、サブライセンシーを結ぶ各専業メーカーの力を借りてバッグや財布、帽子など販売に乗り出した。


 遊心クリエイションは、今年3月に地元大阪に「アソコ」をオープンしたが、美術館のような展示とスタイリッシュな空間が奏功し、売り切れ続出の人気ぶりだ。メソッドを展開するシーズメンは、女性をターゲットにした和柄雑貨の販売をスタート。百貨店の松屋は同社が編集した「ミエルプラス」を東京駅や銀座インズ内に出店。このほどクロスカンパニーが「セブンデイズサンデイ」で、アメカジテイストのオリジナル雑貨の販売に参入した。


 ざっと見ただけでこれだけの企業がファッション雑貨の販売に乗り出していて、こうした動きは当分続くと思われる。背景にはウエア市場が飽和状態で、企画がマンネリ化していることもあるだろう。そこでアパレルや小売り各社は、専業メーカーの独壇場だったにウエア製造やセレクトのノウハウで切り込めば活路はあると踏んだようだ。


 ただ、雑貨はウエアに比べ単価も低いし、荒利益も薄い。既存店を数多く抱えるSPAなら収益を上げられる可能性は高いが、仕入れのノウハウしかない小売業がやっていくのは、厳しいと言わざるを得ない。渋谷ヒカリエも百貨店流の場所貸し、委託販売だから成り立つわけで、テナントではSPA化して利益率を高めないとペイしないと思われる。


 バブル時代、東京・御徒町で商売をするジュエリー問屋の部長がこんなことを言っていた。「好景気を背景にアパレルメーカーがオリジナルジュエリーの販売に参入するようだ。洋服の企画生産のノウハウを生かし、自社の服に合うジュエリーをデザインするという。でも、我々宝飾業界がジュエリーが引き立つ洋服をデザインするなんて、まず無理だ」と。


 じっとしていても宝飾品が売れていた時代。先を見通す経営者はちゃんと自らの業界の課題を察知していると、ずいぶん感心した。商品単体で存在感をもつジュエリーでさえ、ファッションとは切っても切れないと考える人がいるのである。ならば、チープなファッション雑貨ほどウエア全体を見通せるアパレルの方が、単体メーカーより一歩リードするのかもしれない。やはり売れるには服との着こなしやコーディネートを考えた企画がカギになるからだ。


 少なくとも、市販の布や革を使ったヘアアクセやネックレス、ブレスレットなど、カルチャー教室の延長線上のようなファッション雑貨がどこまで競争力をもち、ビジネス商材として通用するのかは、懐疑的である。雑貨のデザイナーやクリエーターを自称する諸氏は、アパレルファッション全体のトレンドをつかみ、それに沿った企画力やデザイン性、完成度で臨まないと、激戦のファッション雑貨マーケットで生き残るのは難しいと思われる。


郊外SC=アメカジ、ファミリーの定石をくつがえせるか。

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 先月、ネットに「地方の若者はなぜ『イオンモールを目指す?』というタイトルの記事が掲載された。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130804-11300029-webhon-ent


 そこには、山内マリコ氏の小説「ここは退屈迎えに来て」からの引用として、「ファスト風土」として地方の風景が描写されていた。それが以下である。「ブックオフ、ハードオフ、モードオフ、TSUTAYAとワンセットになった書店、東京靴流通センター、洋服の青山、紳士服はるやま、ユニクロ、しまむら、西松屋、スタジオアリス、ゲオ、ダイソー、ニトリ、コメリ、コジマ、ココス、ガスト、ビッグボーイ、ドン・キホーテ、マクドナルド、スターバックス、マックスバリュ、パチンコ屋、スーパー銭湯、アピタ、そしてジャスコ。」


 全国津々浦々の地方都市で、ステレオタイプのショップ羅列になってきている。すでに多くの流通関係者が感じていることだろう。さらにその背景や理由についても、作家先生よりは正確かつ詳細に分析しているはずである。日本の郊外マーケットは、バブルが弾けた90年代半ばに脚光を浴び始めた。洋服の青山などの紳士服量販店が安さを武器に一気呵成に出て、それとリンクするように専門店もロードサイドへの出店を加速した。その中にはユニクロもあった。


 一方、流通システムでは自国が一番と言ってはばからない米国は、「円高は日本が内需を拡大しないせいだ」とへ理屈をこいて、大規模小売店法の改正に踏み切らせた。これがCSCやRSCといったショッピングセンター、ディスカウントストアの開発に弾みをつけさせた。ある意味、米国の外圧によって、日本の郊外マーケットを開発されたと言ってもいいだろう。その手先となった企業がジャスコ、今のイオンではないだろうか。


 ところが、労働力となる若者は、まだ東京を目指していた。仕事=ファッション=都会という図式が地方の若者には根強かったからだ。それを助長したのが裏原ファッションの台頭だろう。Macでデザインしたフラットなパターン、ロゴマークがついたカットソーや裏毛のトレーナー、ファッション雑誌がタイアップ記事を掲載。たちまち全国にブランド情報が伝播し、販売日には早朝から若者が集まり、長打の列を作る。

 

 しかし、裏原ブームの終焉、さらにネット通販が登場して、若者の消費構造は完全に変わる。それ以上に産業構造の変化や能力格差が地方の若者を襲った。昔のように高校や大学を卒業しても、地方には安定した雇用がない。かといって上京しても正規社員として採用されるケースは少ない。地方でも都会でも非正規雇用が主流になる中で、ファッションだのクルマだのに消費意欲をかき立てられる時代ではなくなったのだ。


 上京しても正社員になれなければ、たとえ雇用に恵まれても生活のリスクが伴う。そうであれば親元で暮らした方がたとえ非正規でも、生活は安定すると考える。例えば、現在、地方で唯一大量雇用の場となっているのは、自動車や家電、情報機器の部品工場。ここも親会社や発注元のサプライチェーンに組み込まれているわけだから、製品の売上げ状況で生産調整に入らなければならない。そのリスクヘッジとしてスタッフを派遣社員で賄うのが当たり前になっている。


 ここでは都会で夢破れ帰郷したものや、地方の企業が倒産し解雇されたものが働いている。こうした層は自宅があり、両親や祖父母が健在であれば、我が子可愛さから「頑張って社員を目指すか。他のチャンスを待つか。ぼちぼちやんなさい」って庇護されがちだ。これも地方独特の社会構造なのだから、否定するつもりはない。当の本人たちも「厳しいビジネスシステムの中で、働かされるよりも今の方がましだ」と思うと、気分的にゆとりが出てくる。それが一定量になれば、マーケットになるということである。



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 こうした「しょうがない。でいいか」って層は、イオンモールや郊外店の格好のターゲットになると言える。モールやロードサイドには衣食住+生活サービスのカテゴリーがほぼ揃っている。テナントやショップの商品は、一定以上の感性レベルをキープしている。吉祥寺に行く度にカレー用のスパイスやフォーションの紅茶を買った「カルディコーヒーファーム」が、今はイオンモール鹿児島にもあるのだ。こだわる人間にとって全く不便はないのだから、彼らにはなおさらのことだろう。


 ファッションについては、ナショナルチェーンがほぼ出揃っている。レディスについてはクオリティを除けば、感度、テイストとも幅広い。でも、メンズはアメカジが主流で、今後もオールドネイビーやアメリカンイーグル、ホリスターが控えており、同系テイストには事欠かない。モード感のあるものは、大人向けのザラ、TKタケオキクチ、アズールバイマウジーと、ブランド力をもつテナントは少ない。それほどのマーケット規模はないからと、開発に二の足を踏んできたと思える。


 ところが、ここにきて変化が生まれている。郊外マーケットに手応えを感じたデザイナーズ系のメンズアパレルが、SC向け業態の開発に力を入れ始めたのである。Men’s Bigiの「ユニオンステーション」は、シルエットやサイズを完全に若者狙いにシフト。バッグや小物も充実させ、30代以上の攻略も狙う。Nicoleは「ハイダウェイ」で、郊外のデザイナーズ市場の開拓を進める。店舗には玩具や小物も置いているため、父親狙いだ。PAZZOの「リクエスト」も、まだ2店舗ながら、今後は増えていく可能性は高い。


 従来のSCには、お兄系のおとうさんが好むショップや商品がなかっただけに、郊外マーケットが一定量に達した今では差別化戦略として有効かもしれない。裏を返せば、ビギにしても、ニコルにしても、都心のビルインで販売効率を上げていくのは難しいということだろうか。それが郊外なら店舗スペースに余裕があり、MDでも冒険ができると踏んだのだろう。あとはどこまでリピーターを増やし、郊外にブランド力を浸透させられるかである。


 でも、かつてのDC世代としては、クオリティや感度の面でやはり満足はできない。かといって都市部でも、それらを十二分に備えるブランドや新業態が生まれる雰囲気はない。やはり海外から持ってこないと無理だろう。都会からも郊外からも外れている人間のファッションライフは、しばらく続きそうだ。


女性を解放するシルクって何なのだろう。

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 ユニクロがこの秋、シルクで製造したアイテムの販売を始めた。素材から開発する同社にとって、シルクはウール、コットン、リネンに次ぐ天然繊維となる。果たして吉と出るのか、凶と出るのかは、市場の反応を見るしかない。

 ただ、アパレルで仕事をしてきた人間からすれば、この素材について言っておきたいことがある。シルクは「繊維の女王」と呼ぶにふさわしい素材だ。光沢、 風合い、肌触り、色合いなど、他の繊維を寄せ付けないと言ってもいいだろう。


 素材の中ではいちばん価格が高く、ポピュラーなアイテム「ブラウス」にすると、売価は2万円以上付けなくてはならなかった。ゆえに、専門店系アパレルにとって、高級ブティックやアーリーオピニオンを狙うには、格好の商材となったのである。

 もともとは着物の素材でもあったわけだが、戦後のライフスタイルの変化で、アパレルファッションの分野では伸びていった。ある時期まではである。


 シルクはいわゆる「蚕」が吐く糸を原料とするのは、多くが知るところだと思う。動物性であるがゆえに素材は「タンパク質」で、その分子は引っ張ると引き伸ばされて小さな繊維の束になる。蚕が作る繭は、蚕が分子を引き伸ばし、それを揃えて作る2本の繊維の表面をタンパク質が被った組織構造と言える。 繭ひとつでとれる繊維はだいたい1,000m~1,500mだから、それだけ長くつながった長繊維でもある。 つまり、シルクの構造は、蚕が糸を吐くことで1本の繊維を作り、それを2本揃えてタンパク質で接着させたものなのだ。


 そのためコットンのように硬すぎず、化繊のように柔らかすぎず、適度なこしをもつ。繊維が細いのでドレープ性が出せる。つまり、トップアイテムにすればそれだけ存在感があるというわけだ。また、天然素材で吸湿性がある一方、水分を発散するので、服飾素材としての機能性も兼ね備えている。これは化学の授業で出て来た「親水基」が分子に数多く含まれると言えば、理解できる諸兄も多いだろう。親水基は直接染料をつなぎ止める働きをもつため、いろんな染料で着色できるのである。これもプリントなどファッションアイテムに向く理由だ。


 また、シルクは繊維が天然、動物性ということで、均等に揃っているわけではない。だから、糸に束ねられた時、繊維と繊維の間に多くの空気を含む。それがバリアとなるため、外部からの熱を通しにくく、逆に保温性も高いのである。特に湿気を吸収するとき、熱を発散して温度を保つから、外部の急激な温度変化にもいたって柔軟に対応できる。

 そして、一番の特徴が光沢や風合いが優れていることだ。肌触りがよく、下着にもOK。アレルギーの人がシルクに変えた途端、治ったというのはよく聞く話しだ。


 ただ、長所ばかりではない。小説や歌のフレーズによく使われる「衣(きぬ)ずれ」が起こる。シルクの糸や紐を手でもむと、キュッ、キュッと音がするが、あれは「絹鳴り」。衣ずれとはシルクの布と布が擦れ合って出る音のこと。天然繊維で組織に凹凸があるため、布が擦れると音がでるのである。これが意外に気になって嫌だと言う人もいる。でも、そうした特徴は小説や歌に登場すると、ドラマのシチュエーションにもなるのだ。


 また、糸が細く長いため、耐摩耗性、摩擦強度は高くない。長く着ていると、すれてケバがたち、酷くなると穴があいてしまう。ブラウスで言えば、袖口や肘がいちばん摩耗しやい。そして、時間とともに黄ばんでくる。「純白のシルク○○○○」と言えば、カッコいいのだが、経年とともに変色する。この原因は熱や光によるものだが、熱はアイロンをかけるときに注意できるが、光酸化反応の防止は光を当てないこと。きちんとたたんで引き出しにしまうしかない。汚れについては、中性洗剤を使って水洗いするか、専門のクリーニングを頼むということだ。


 ある専門店の店長からこんな話を聞いたことがある。「シルクタフタのブラウスは高級アイテムだから、販売したお客さんにはアフターケアまで受け持つ」と。あるお客からブラウスにシミを付けたと相談されると、専門の職人がいるクリーニング店に持っていき、染み抜きをしてもらっていたという。仕事はいつも完璧で、新品と遜色ない仕上がりだったそうだ。ところが、ある時、同じように依頼したところ、いつものような出来映えとはいかなかったとか。理由をたずねると、店主である染み抜きの職人が亡くなり息子が後を継いだのだが、先代の技とまではいかなかったようである。


 シルクという素材はそれだけ奥が深く、デリケートなのである。それゆえ、紡績から紡織、染色までで手間がかかり、その素材を使って作り上げられる服は、それだけの価値を有している。養蚕の段階からいろんな人間が関わっているのだからコストがかかり、それが最終の売価に跳ね返るのは当然だ。さらにデリケートゆえケアに手間をかけ、気を配ることが必要になる。先に「ある時までは」と言ったのはバブル崩壊まではのこと。それまでは高級品のシルクアイテムは、売っていたし、売れていた。


 ところが、ファッションの低価格化に伴って、高級品であるシルクはだんだん市場から求められなくなった。高級ブランドや縮緬などで一部は残ってはいるが、デザインの多くがおばちゃん向けでとても若者をひきつけるようなファッションではない。さらに、シルクに似せて企画された化学繊維では、素材のバリエーションが広がった。ビスコースやポリノジックの登場である。これらはプリント加工もしやすく、肌触りも適度にいい。まして、価格競争力はシルクの比ではない。こうしてシルクを主力に扱っていったアパレルでは倒産の憂き目にあうところ、後ろ髪を引かれるように化繊オンリーにシフトしたところが少なくない。




高級素材の敷居を低くしたいとの意図はわかるが…



 そんな状況から20年ほどが過ぎ、ユニクロというSPAがシルクにチャレンジするという。成功するのか、失敗するのかを語るのは時期尚早だろう。しかし、シルクの製造過程を考えると、相当のコストがかかっている。それを低価格を売りにするユニクロが販売するというのは、どこかにカラクリがあるのは、多くのアパレル関係者が思うところだ。養蚕、絹織物はかつては日本の基幹産業だった。ゆえにシルクは日本を代表する繊維でもあった。しかし、その構造はもはや中国に移り、シルクの紡績紡織の8割を占めるようになったと聞く。それはユニクロが参入を決めた理由でもあるだろう。


 化繊慣れした昨今の消費者にすれば、あまりピンこないだろうが、シルクは化繊よりはるかにスタイリッシュな着こなしができる。事例をあげておこう。70年代の後半、米国のニューヨークに端を発した「キャリアウーマン」スタイルが世界中に広がった。その一コーディネートに、ボトムは細身でくるぶし丈のパンツでハイヒールを履き、トップスはシルクのオーバーブラウスを着て、ウエストをベルトでマークし、ブラージングするのが流行った。このスタイルはブラウスの身幅が細くなり、肩パットが取れたくらいで、今でも世界中のモード誌を飾るほど定番になっている。


 シルクのブラウスを仕入れてくれた専門店には、よくこのスタイリングを店頭ディスプレイで提案したものだ。時間がたっても、形がくずれることはない。シルクという繊維にこしがあり、摩擦があるから可能なのである。ところが、長く飾るとウエストあたりに皺がよるため、バイヤーや店長は売りものだからと、あまりしたがらなかった。でも、什器にハンギングしたり、たたんで棚に置くだけでは、シルクの良さはわからない。これが化繊のブラウスだと確かに皺はよらないが、時間の経過とともに繊維の重みで下に下がていく。ブラージングは消えて、ウエストマークのベルトのみのストンとしたスタイリングになる。


 同じことをモデル撮影でも経験した。モデルに同じようなスタイリングをして、リハーサルやドライなどで時間を要しても、シルクのブラウスだとブラージングが消えることはない。これが化繊のブラウスなら、撮影に前に何度も手直ししないと、スタイリッシュな着こなしにはならない。それだけシルクが優れた素材ということの裏返しでもある。こんなこと、そこらの三文スタイリストは、気づく由もないだろう。繊維を知り、服を企画し、それをプロモーションし、販売して来た人間だからわかることである。


 最後にシルクを販売するユニクロのコピーについても、論じておこう。サイトには「ユニクロは『シルク』を、世界中の女性たちに解放します。」とある。この「解放」は何を意味しているのか。つまり、高級素材であるシルクを値ごろ感のある商品として女性に提案します。あるいは従来は女性にとって高かったシルクの敷居を下げます。ということだろうか。それが真意ならば、解放ではなく、「開放」の方が適切ではと言うアパレル関係者もいる。


 「解放」というフレーズで思い出したのが、70年代半ばにコピーライティングの世界にエポックを起こした「ラングラーギャルズ」のシリーズ広告だ。コピー年鑑やADCのクロニクルでは、デニムの帽子を目深に被った外国人モデルがしかめっ面をしているビジュアルが有名だ。そのキャッチコピーは、「ケネディーは好きだったけど、ジャックリーンは嫌いだ…」だった。他には「自分に正直になれるほど、女は評判が悪くないのです…」「初めてブラをつけた時より、捨てた時の方が嬉しかった…」「別れるとき、涙がいっぱい溢れてきたけど、心の中ではベロを出していた…」である。


 それまで、家庭や職場で抑圧されてきた女性が社会で解き放されることが、この広告のコンセプトだったと思う。女性に解放という言葉がつながると、どうしてもこんな風に考えたくなってしまう。当のユニクロは価格が高かったシルクについて、値ごろな商品として女性に解放するという意味で解釈したのだと思う。でも、今どきの女性がそれにどこまで共感を持ってシルクを購入するのだろうか。しばらく様子を見守りたい。 


過度に行政の恩恵を受ける学校もある。

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 先日、「有名専門スクール、パワハラ&強制退職の実態「つなぎ着て掃除しろ」他社へのスパイ行為も」というタイトルで、「株式会社バンタン」の社員が、退職強要で会社を辞めさせられた、と東京地裁に訴えたという記事がビジネスジャーナルに掲載されていた。

http://biz-journal.jp/2013/08/post_2796.html


 要約すれば、このファッション専門学校では裁判に訴えた社員が社長やマネージャーの指示で、他の学校を情報を収集。実態や特徴を調査し自社へ報告するものだった。


 ところが、酷暑の中“スパイ活動”を続けるうちに、この社員は体調不良に陥り、病院で診断された結果、熱中症、胃潰瘍の疑いありとなった。しかし、会社側は配置転換をした挙げ句、パワハラを受け、退職勧告まで受けていたのだ。


 真偽のほどは裁判で明らかになるだろうし、どちらに軍配が上がろうとさして興味はない。当コラムで言及したいのは、「ファッション専門学校」の営業活動に「公共事業」を利用している学校があるということだ。これは税の公平性からみても、追及しなければならない。

 

 ファッション専門学校にとっての営業とは、簡単に言えば、学生を集めることである。それがバンタンのように行き過ぎること、あるいはこれから論じる学校のように公金まで当てにするというのは、全国的にファッション専門学校への入学者が激減しているからである。

 ある学校の理事長に言わせると、「現在、全国のファッション専門学校に通う生徒の総数は1万2,000人ほどで、10数年前の半分に落ち込んでいる」とか。


 だから、とにかく学生を集めるために日頃からの紙媒体やインターネットによる学校案内、夏休みなどのオープンキャンパス、進路決定時期にさしかかるとCMの集中投下、そしてエントリーシートや問い合わせをうけての電話での入学勧誘である。


 それには相当の労力と資金がかかる。必然的にできる専門学校が限られてくる。ファッション業界人を対象としたセミナーを開講している友人が言っていたが、「何も知らない若者を集めるには多額の広告宣伝費をかけざるを得ない。こちらは対象が大人だし、そんな余裕はないからSNSを使うだけ」と言っていた。


 であれば、ファッション専門学校が次に当てにするのは何か。自らコストをかけなくても、気軽に乗っかることができる公共事業はもってこいだ。折しも、教育機関の思いとは裏腹に、若者の中で向学に積極的な者は、偏差値ピラミッドの頂点近くの少数派。でも、産業構造の変化で、実業系の高校を卒業しても以前のように100%就職とは行かなくなっている。


 こうした進路環境が若者を孤立させ、進学も就職も厳しい袋小路に追い込んでいる。ただ、大学や専門学校が到達点ではなく、その先には社会人として働くことが待っている。こうしたどっちつかず若者の状況をいちばん憂いているのが行政だ。働く意欲を持たない若者が増えるのは、そのまま税収の減少につながるからである。


 そのため、福岡市では2012年度から「中高生夢チャレンジ大学」なる公共事業を実施している。パンフレットには、高島宗一郎市長が学長として、「家庭、学校、塾、部活などでは学ぶことのできない体験を通し、感性を磨き、創造力を発掘し、自分の強みや個性を生かした職業を考えるとともに…」と能書きこいているが、要はフリーターやニートを増やさないという施策だ。


 行政サイドの説明によると、偏差値ピラミッドの頂点近くの層は目的意識も強いから、この事業の対象からは除外。むしろ、その下の進学も、就職も考えていない層がメーンになるのだそうだ。つまり、「ファッション専門学校」にとっては、格好のターゲットになるのである。しかも、中学生から行政が公費で集めてくれるのだから、自校は全くコストをかけずに青田買いができるかもしれない。

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 2012年度の報告書、2013年度のリーフレットを見ると、ファッション専門学校では「大村美容ファッション専門学校」が参画している。このコラムで何度も取り上げている福岡アジアファッション拠点推進会議の企画運営委員長が「ファッション部長」というダサい役職名を務める専門学校である。


 一つの公共事業だけでは飽き足らず、この中高生夢チャレンジ大学でも、学生集めに利用しようとしているようだ。その営業活動、商魂たるや全く恐れ入る。ただ、一つ問題がある。なぜ、このファッション専門学校がこの事業に参画することが出来たかである。


 「何か、福岡市とかなりの利害のある学校が参画しているような気がしますが」と質問してみると、主催者サイドは「そんなことはない。学校の選定は間に入るコーディネーターに任せてある」「偏差値ピラミッドの頂点より下の層が対象でも、実際にチャレンジ大学に参加するのは、その層の600分の1」との答えだった。


 つまり、「ファッション専門学校にとって利害になるまでにはいかない」というニュアンスなのだろう。でも、コーディネーターという職業ほど、胡散臭いものはない。それらと学校がグルになれば何でも自由にできる。現に福岡市にはファッション専門学校は何校もあるのだから、2年連続で同じ学校というのは「何かあるのでは」と言われてもしかたないだろう。


 また、600分の1と言っても、もしその子を中学校から洗脳できれば、入学者にできる可能性は高い。それがたとえ1人であっても200万円程度の学納金が確保できると計算する。入学者が激減しているファッション専門学校にとってそう考えない方が希だし、まして商魂逞しいファッション専門学校なら当然のことだろう。


 もっとも、高島宗一郎+福岡アジアファッション拠点推進会議+企画運営委員長という蜜月は、地元ファッション業界の多くが知るところ。その裏側にあるものは、ミーハー+政策レス+事業失敗+無責任=自己利益という構図で一致する。


 もうおわかりだろう。ご想像の通りである。当コラムを読んでいただいているインテリジェンスの諸兄には、これ以上の多弁は必要ないと思う。


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