HAKATA PARIS NEWYORK

今のファッションを斬りまくる辛口コラム

2013年10月

本業はファッション、グラフィックなどデザイン関連のクリエイティブディレクター。創る側の視点で今のファッション関連の事情を評論する。マスメディアはもちろん、業界紙誌も扱わないテーマに踏み込む。

ブームに潜む偽装のカラクリと誤認。

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 2001年の雪印牛肉に端を発した産地偽装事件は、その後、ミートホープや浪速酒造の原材料偽装、赤福や石屋製菓の消費・賞味期限偽装、三笠フーズや太田産業の食用偽装と、毎年のようにメディアを賑わしている。


 そして、ここに来て阪急阪神ホテル、傘下のホテルリッツカールトンのレストランメニューでも、永年に渡り「誤表示」を繰り返して来たことが明るみに出た。すると、違うホテルでもメニューとは異なる食材を使っていたことが、ぞろ発覚した。


 メディアはよってたかって、トップの悪意や指示、組織ぐるみの偽装と、景品表示法や不正競争防止法違反を持ち出して追及。それに企業トップは「知らぬ存ぜぬ」で応戦する。いつ見ても全く変わらない光景、というか実に見苦しいものである。


 まあ、冷静に考えると、背景には食のトレンドをステマまがいに加工・発信するマスメディア、そこで生まれるグルメブームに乗せられる消費者、にわか景気に乗じて収益アップを狙う外食企業のトライアングル構造がある。


 でも、それを生む原因は、メディアにおける報道と営業の乖離、消費者の食育低下、企業の儲け主義があるのはいうまでもない。こうした構造が続く限り、似たようなケースは今後も続くだろう。


 話をファッションに戻そう。こちらでも、産地や原材料の偽装は過去に何度も発生している。中国のようにコピー商品が日常的に出回るのは論外だが、日本企業とて確信犯のように疑われたケースは少なくないと思われる。


 それをあえて蒸し返してみることにする。まず、2004年に起こったインポーターと有名セレクトショップによる景品表示法違反と、公正取引委員会が出した排除命令だ。


 インポーターとは八木通商、有名セレクトショップとはビームス、トゥモローランド、ベイクルーズ、ワールド、ユナイテッドアローズである。八木通商は輸入したジー・ティー・アー社製のパンツを、セレクトショップ5社に対し、ルーマニア製にも関わらずタグには「イタリア製」と表示していたのである。


 これが景品表示法の「原産国の不当表示」に当たることで、公正取引委員会はこの6社に対し、排除命令を出し、併せて日本繊維輸入組合に対しても、組合員が同様な行為を行うことがないように表示の適正化を要望した。


 ところが、これで終わらなかった。2007年、ユナイテッドアローズはカシミアが1%入っていないストールを「カシミア70%入り」と偽って、1050枚も販売した。この商品はインポーターなどを通じ、現地工場に70%とカシミアの混用率を指定して発注。しかし、途中で羊毛などにすり替えられたようだ。


 ユナイテッドアローズは「素材チェックが書面だけだったため、偽物が消費者に流通する危険性は高かった」と反省。公正取引委員会も「有名店が書面だけで確認を済ませていたのは、あまりにお粗末だ」というだけで幕引きを図り、お茶を濁した感は否めない。


 まあ、行政処分となって、刑事罰は与えられなかったが、もし、バイヤーが「悪意」を持って行ったとしたら、「詐欺事件」は免れない。では、なぜこうしたケースが繰り返されるのか。それは前出のメディア、消費者、企業のトライアングル構造に照らし合わせると、よくわかる。


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マスメディアが言うことは正しいのか。


 まずメディアはファッション系雑誌&業界誌とテレビでは、知識面で大きな差がある。雑誌の編集者やライターは永年、素資材や商品の展示会で、現物に触れていることもあり、素材に対するある程度の知識はもつ。でも、テレビメディアはショップの店頭で商品を見るケースが多いから、素材名や混用率はもちろん、 その真贋のほどに疑いを持てるはずはない。


 さらにローカルテレビになるともっと酷い。深夜番組などでニューオープンのセレクトショップをレポートする時、ショップスタッフが「この商品はうちのバイヤーが独自に買い付けて来たんです」と言うと、レポーターは頭の中で勝手に想像してしまうふしがある。


 「買い付け」=「インポート」、「インポート」=「欧米現地」=「希少性」という図式だ。全く勉強不足も甚だしい。一介のセレクトショップが、いちいち欧米まで買い付けにいくなんては考えられない。間にインポーターや卸が介在し、そこが開く「展示会」で仕入れるのが一般的だ。それに担当のディレクターやプロデューサーが突っ込むを入れることなど全くない。


 マスメディアは一般大衆が対象であって、我々のような業界人ではないから、無理もない。しかし、それで馬鹿を見るのは消費者である。「メディアの言うことは正しい」と信じてしまうからだ。結果として、有名セレクトショップが扱っている商品の表示が「偽物」だとは、誰も疑いもしないのである。


 筆者は母親がオートクチュールの洋裁師で、同級生には高級ブティックや生地屋、服飾材料店の小倅がいた。子供の頃からウールギャバやカシミアドスキン、シルクジョーゼットを触り、綿や絹、化繊の縫い糸や裏地、芯といった素資材の知識を付け、オーダーと既成服の縫製、始末の違いを知らず知らずのうちに学んでいった。でも、こんな人間はそれほど多くない。


 ほとんどの消費者がもつ知識は、書店やコンビニでファッション雑誌を立ち読みして得られる程度だ。一部は海外ブランドやデニムなんかで蘊蓄こくが、大半は雑誌で得た知識しか持ち合わせないから、テレビの情報も鵜呑みにする。結果、ショップに行けば、スタッフの言うことを疑いもせずに信用してしまう。とても真贋の見分け方をもつほどではない。


 原因はマスメディアが発行部数や視聴率ばかりを重視し、大衆に迎合してジャーナリズムの視点を失っていることもあるだろう。「なぜ、こんな値段で販売できるのか」。素材から手配、現地工場の確保、大量生産によるコストダウンなどを簡単に説明するだけ。その根拠を突っ込んだり、詳しく解説したりするメディアはほとんどない。


 前出のセレクトショップでは、こうしたリテラシーがない中で「偽装」が行われたのである。店舗数が少なければ、バイヤーがきちんとメーカーから商品を仕入れて販売できる。ところが、店舗数が増え、ブランド力が付いて来ると、企業は効率よく収益を上げることを考える。


 当たり外れがある「仕入れ」より、確実に売れる「オリジナル生産」を好むようになる。しかも、利益率をあげるには、原価率を下げることが必須条件。イタリア製よりルーマニア製が製造コストは安く、カシミアよりもウールの方が素材調達の価格は下がるのは言うまでもない。


 つまり、商品はこれまで担当バイヤーが展示会で仕入れたものから、メーカーや商社発注の開発輸入やOEMへと変わっていく。そこでは商品1点1点を直に見て確認しなくなることで、偽装や誤表示が生まれるケースは限りなく高くなるのだ。


 マスメディアはチェックすべきなのだが、有名雑誌はトレンドやブランド情報の発信がメーンで、ビジネスの裏側に深く切り込むことはない。まして、テレビが偽装や誤表示を疑えば、営業に響いてしまう。そして、ビームスのパンツは疑いもなくイタリア製、ユナイテッドアローズのストールはカシミア混紡で当たり前という、間違ったイメージができ上がってしまうのだ。


 ジャーナリズムとしての無作為により、消費者が騙される形で、ツケを背負わされるのである。マスメディアが食育ならぬ「服育」に踏み込まない故の悲しい結末なのである。


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学ばなければ消費者がバカを見る。


 それどころか、今年はマスメディアが陳腐化したダウンに変わるネタとして、またカシミアに目を向け始めている。報道の視点は某大手SPAの安いカシミアと、百貨店などが販売する高級カシミアを対比するだけだ。


 まあ、せっかく仕掛けるカシミアブームに、懸念を持ち出せば水を差してしまうという配慮があるのはわかる。でも、アウトレットブームが起きた時も、安さの理由は「キズものや廃盤品」と報道するばかりだった。


 業界の常識として、そんな商品の色柄、型、サイズがきちんと揃うはずはないのに、マスメディアがそれを突っ込むことはなかった。結果として、いつの間にかアウトレット専用品が受け入れられる素地を作ってしまったのである。


 「安かろう、悪かろう」は死語になってしまった。しかし、質の高い素材を使い、確かな技術で生産すれば原価、コストは高くなる。イタリア製の素材で、日本の匠が製造すれば、何千円で出来るわけがない。日本にはこうした手法でまじめにものを作るメーカー、それらの商品をきちんと販売している小売業者はいくらでもいるのだ。


 なのにマスメディアと大手企業による偽装や誤表示が表に出て、まじめなビジネスがかき消される現状は何ともやるせない。安さの背景には必ず理由があるし、それを生むカラクリが潜む。であるからこそ、消費者はマスメディアを鵜呑みにするのではなく、業界人がミニコミ的に発信する情報にも目をむけるべきだろう。


 ソーシャルメディアの時代、マスが◯で、ネットがXに根拠はない。消費者は身近なネットを通じてもっと服育、ファッションリテラシーを受けてほしい。そして、正しい知識のもとに商品を吟味されることを切に願う。少なくともファッション業界の経営陣が頭を下げる光景は、カッコいいスーツ姿には似つかわしくないと思うのである。


専門学校生レベルに堕ちた販促キャンペーン

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 先日、来年春に実施される共同販促キャンペーン「ファッションウィーク福岡2014」の概要が発表された。7月に説明会、下旬に企画書提出、一次審査、プレゼンを経て、8月下旬に発注先が決定していたものだ。めでたく?代理店のA社が事業を手中に収めたようである。


 企画提案に当たって、商工会議所の担当者は「今年はガイドブックやWebサイトのレスポンスが低く、スタンプラリーもあまり効果がなかった」と仰った。販促の肝とされたスタンプラリーの応募総数がたった538枚じゃ、反響どころの騒ぎじゃない。企画運営委員長は「高島市長から春にも何かやれと急に言われたので、あまり準備期間がなかった」と言い訳したが、共同販促キャンペーンとして「失敗に終わった」のは間違いない。


 しかし、来年度の事業内容を見ても、新たに「ファッションマーケット」という一般参加型イベントが加わっただけで、媒体戦略は今年と同じ。なんせ、福岡アジアファッション拠点推進会議から拠出される総事業費は700万円。それで、集客イベントはもちろん、ガイドブックやポスター、Webサイトの制作まで賄わなければならない。代理店にとっては、あまり旨味がない仕事というのが本音だろう。


 でも、代理店を擁護しても始まらないので、来年度事業の問題点を挙げてみよう。

 まず、開催期間は2014年3月8日(土)~3月23日(日)と、今年より1週間ほど短い。これは単年度事業のため、3月中に予算を使わなければならないからと思われる。実施エリアは福岡市内全域を謳いながら、主に博多・天神・大名・薬院・今泉・警固エリアとの但し書き。これも同じだ。ただ、今年はイオンモールが郊外SCでも有料協賛し、逆に天神地下街や天神ビブレ、福岡三越などは中心部にありながら、有料協賛はしていない。


 つまり、大手各社はキャンペーンの企画内容と自店の戦略やターゲット、整合性など検討した上で、有料協賛か否かの判断したのだろう。その温度差を埋めるのが、事業をゲットした代理店の営業力になるのだが、今年の惨憺たる結果を見ると、むしろ有料協賛社は減るのではないかと思われる。


 キャンペーンの内容も参加商業施設や個店が行う各種セール・イベント、オープニングイベント、制作する媒体はガイドブック、Webサイトなど今年と全く同じだ。 有料協賛すればガイドブックやサイトで、独自の企画を告知できるメリットはあるが、それがどこまで自店の集客、販促につながるかどうかは懐疑的だ。



個人や学生のフリマで広域集客ができるのか?



 目新しいのは、ファッションマーケットである。福岡市役所前のふれあい広場を利用し、3月15日(土)の1日限りで行うフリマだ。総予算が700万円しかないのだから、有名タレントを呼べるはずもないし、コストのかかるステージングを行うにも無理がある。行きついた先が、一般参加を募ってイベント色が出せるフリマだったというわけだ。


 しかし、参加店は出店料が個店15,000円、クリエーター、学生8,000円と、法外な料金を取られる。しかも、留意事項には「バザーではありません。洋服・雑貨・アクセサリーなどのファッション発信の場となります」「出店にあたっては審査させていただきます」「出店者の小間割りのみを行いブース施工などは行いません。テーブル、椅子の貸出しは有料となります」「雨天決行」とある。 公金を利用するキャンペーンの割に、ずいぶん主催者目線の横暴な条件だ。


 まあ、この手のイベントが成り立つには、まず広場を埋めるだけの参加店を集めるのが前提だ。さらに販売される商品に魅力があり、多くお客を集客できるかになる。おそらく公共スペースだから使用料は取られないと思うが、 何らかのマス告知をしないと、集客はできないだろう。もし代理店が出店料を原資にテレビスポットなどを打ち、局から相応の手数料バックを受けるようなことがあれば、それは本末転倒である。


 ただ、出店者は自ずと決まってくる。店を持ってても立地にハンディがあるか、個人でもの作りを行っているか。商品は服と言ってもバリエーション無しの1点もの、雑貨やアクセサリーもほとんどが手作りだろう。きちんと商品を製造し、卸を行っている業者なら、わざわざ露天に出して商品のイメージを下げる必要はないからだ。だから、専門学校生が作るような商品か、それに毛の生えたアイテムになるのは間違いない。


 でも、1日限りで高額な出店料を支払って、ビジネスとしてペイするはずはない。学生は学校が参加料を負担してくれたにしても、出店するだけで売上げという評価がなされなければ、勉強にはならない。所詮、個人や学生のレベルなら、「ファッション発信」が安っぽくなるのは、目に見えている。


 また、雨天決行だから、一応テントは用意されるだろう。でも、今年のように桜の開花が早ければ、今度はお客自体が来なくなる懸念もある。どちらにしても、「お客さんに福岡に来てもらって、ファッションを買ってもらう」という目的では、集客の起爆剤になるとは考えにくいのである。



誰も手にしないガイドブックはゴミ屑同然



 一方、制作媒体は今年と同じ、ガイドブックとWebサイト。余裕があればポスターも作るのだろうか。今年はガイドブックで期間中に行われる推進会議や有料協賛施設のイベント、FACoなどが告知された。残りのページは参加店舗の有料広告枠で、これを代理店が子飼いの会社に、会員名簿を頼りに大手から個店まで営業させた。それで1000万円ほどの収入を確保し、ガイドブックの制作費と印刷代を捻出したようだ。


 ところが、7月の説明会でも報告されたように、ほとんど販促効果につながらなかったのだ。キャンペーン中に関わらず、ガイドブックは商業施設によっては写真のように大量の在庫が残っていた。またWeb媒体も公式ホームページはアクセス数が6万8000程度。 Facebookにいたっては「いいね」がたった230人と、とても知名度を云々するレベルではない。


 来年はガイドブックの広告枠が30,000円と50,000円になっている。おそらく今年より枠の料金を下げて、多くの有料協賛店を集めようという狙いだろう。しかし、販促効果はほとんどなかったわけだから、百貨店や各デベロッパーがおいそれと協賛するとは考えにくい。


 個店は対象を美容室やカフェまでに広げたにしても、もともと余裕がないのだから有料協賛は厳しいと言わざるを得ない。それでも、ガイドブックを制作するのはなぜだろうか。もしかしたら、商工会議所出入りの印刷業者に仕事を出すという水面下の取り決めがあるのだろうか。ここまで来ると何のための、誰のための事業なのかと思えてくる。


 説明会に代表的な商業施設のデベロッパーを出席させたのは、「お前らにタダで仕事はやらんぞ。ちゃんと販促につながる企画を立て、スポンサーも捉まえろ」とのプレッシャーをかけたようにも受け取れる。どちらにしても代理店が収益を出すには、スポンサー次第ということになるだろう。でも、福岡市民の血税、商工会議所会員の会費を使う以上、成果が見えず実効性が薄い事業をやっていいはずがない。


 期間中にはFACoも開催されるが、多くの商業者が言っているように、「ショーイベントをやったところで、それが服の売上げにつながることはない」のである。また、物議を醸した「カワイイ区」との連動も、新区長就任がズレ込んだため、時機を逸している。仮に連動したにしても、せいぜいいいとこトークショーが関の山だ。


 先日も書いたが、ショールーミングアプリの時代に突入し、お客にリアルショップからEコマースまであらゆる販売機会を提供しないと、服は売れなくなっている。なのに未だに「イベントをやれば、お客が来て商品を買ってくれる」と考える方々の脳みそには呆れるばかりだ。「福岡がファッションに染まる春」というキャッチコピーもちゃんちゃらおかしくなってくる。

店を見直す契機にしないといけない。

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 やはり書かなければならないだろう。今月31日からゾソタウンが始める新サービスのことである。専用アプリ「WEAR」をダウンロードしたスマートフォンで、商品のバーコードを撮影すればそのままゾゾタウンのサイトにジャンプして、商品が購入できるというものだ。

 

 また、商品を展開するブランドの担当者やショップバイヤーなどから、コーディネートのアドバイスを受けることもできる。お客にとっては「リアルショップで買うか」「家に帰って検討してから買うか」と、いろんな条件を踏まえられるなど、これまでにないショッピングの価値が生まれていく。


 当然、ゾゾタウンとブランドがバッティングする百貨店や駅ビル、ファッションビルは、猛反発。ルミネにあってはすぐさまテナントに「WEARによる行為禁止」を通達したと言われている。百貨店やデベロッパーは、ブランドやテナントの歩率家賃を得ているわけで、店舗がショールームや試着だけの場所になってしまうと、収入が確保できなくなるのだから無理もない。


 もちろん、ゾゾタウンに加盟しているブランドやショップが新サービスに参加することが条件になる。加盟社の中には、クロスカンパニーのように「当面は路面店を中心にサービスを広げる」と、デベロッパーとの全面戦争を避けようというところもある。


 しかし、リアルショップとEコマースの両方で販売戦略を行っているユナイテッドアローズは、「確実に売上げに貢献する」と前向きにとらえる。もし、加盟して格段に売上げが伸びるようなことになれば、ブランドやショップは五月雨式に新サービスを受け入れていくと思われる。


 デベロッパーの中には、同業者の諜報活動を阻止する目的でとってきた「館内撮影禁止」を拡大解釈して、「お客さんがスマホで商品タグを撮影する行為に出くわせば、このルールで対処する」ところもあるようだ。 裏を返せば、テナントに対し「撮影行為を止めなければ、それは契約違反」と、言わんばかりである。


 さらに「路面店とビルインでバーコードを付け替えれば」なんて言い出すところもあらわれた。ご当人はデベロッパーとテナントとの全面戦争を避ける「懐柔策」として表明したのだろうが、そんなことをすれば現場が大混乱することが全くわかっていらっしゃらないようだ。


 実際、どうなるかは蓋を開けてみないとわからない。ただ、若者の間ではスマートフォンが定着。購入した商品の画像をFacebookなどにアップして、SNS通じてあれこれ言い合うというライフスタイルは日常化している。そこにWEARが登場すれば、さらに購入の時点でいろんな価値をもたらすわけで、ショッピングの楽しさが増すのは言うまでもない。


 結果として、リアルショップがショールーム化するかもしれないが、それをお客のマナーを持ち出したり、あるいは強権をもって阻止するのは時代遅れのような気がする。それでも絶対阻止するということになると、とどのつまりはクラシックコンサートでホールが採用している携帯電波の遮断しかないだろう。



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 米国は日本とは違い、百貨店でも商品は「買い取り」である。だから、売場に並べるだけでなく、Eコマースにも対応して、お客にあらゆるショッピングの可能性を提供している。つまり、実店舗、チラシやカタログ、DM、Eコマースなどを統合した「オムニチャンネル・リテイリング」がいちばん「顧客を創る」ことだと考えられているのだ。

 

 写真はNY在住の知り合いから送ってもらったショールーミングの手法だ。NYはこれからサンクスギビングデー、クリスマスホリデー、ブラックフライデーと、コマーシャル月間に突入する。お客は店舗が混雑するとゆっくり買い物できない。ならば店頭のコードをスマホでスキャンし、カフェでゆっくり商品を吟味して、購入するかどうかを検討できる方がはるかに便利だ。


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 つまり、米国ではビルインのリアルショップでも、お客がスマホ撮影~Eコマースへの行為はまったくフリーになのだ。法的にも「商品の所有権を持たない=デベロッパーが商業者(店舗)の商行為を不当に制限できない」と、解釈できるからである。


 これが日本でも適用されるかどうか。大学時代、商法の講義で、教授がこれに近いようなことを語っていたような記憶があるが、手元に六法全書を持たないので法的根拠はわからない。少なくとも、日本の商法も「商行為は独立した営業者に認められる」スタンスだから、百貨店やデベロッパーが法廷闘争に出るとすれば、民法の「不法行為」を立証するしかないだろう。


 筆者はEコマースは頻繁に利用するし、ゾゾタウンのサービスはむしろありがたいと思う。それは百貨店やデベロッパーにとって死活問題というのも理解できる。ただ、百貨店やデベロッパーがどこまでテナントの営業指導を行って来たかと言えば、首を傾げたくなる。


 定期的なハウスカード会員向けのポイント割引は、かなりの効果があるようだ。しかし、それ以外はイベントによる集客策ばかりで、それが販促につながっているとは思えない。本当に営業指導に力を入れるのなら、テナントごとの販売力向上、ホットスポットやクールスポットの分析、品揃えへのフィードバック、顧客の購買行動分析など、ディーラーヘルプに踏み込むことも必要だろう。


 「お客さんに来てもらって、洋服を買ってもらう」と、巨額な税金を使う共同販促キャンペーンに携わるお方が代理店に企画を丸投げし、上がったものがゴミ屑同然のパンフレットと、アクセスが少ないWebサイトと、ブツ切れの媒体ばかりいいのか。広告枠が売れてもそれは制作費と印刷代の原資が生まれただけで、子飼いの会社に仕事を出せる程度に過ぎない。


 そして、真っ先に予算を投入するのは「タレントを呼ぶイベント」ばかり。巨額な税金を使いながら、オムニチャンネル戦略など一切考えない方々に、百貨店やデベロッパー、商店主は「事業から、速やかにご退場願いたい」とはっきり言っていいはずである。


 むしろ、せっかく紙やWebを制作するなら、ジャパネットたかたの「AR」まで踏み込むことも考えられる。まあ、コンテンツは都心部の有名ショップから、郊外の路面店まで、スマホで撮ってもらった商品アピール用の動画でも十分だろう。それを専用サイトにどんどんアップしてもらえばいい。そのためのインフラ構築に税金が使われるのなら、口を挟むつもりはない。


 ショールーミング化からEコマースの流れには、リアルショップでの販売手法や顧客作りも重要なカギを握る。今のお客は「店舗で見て、ネットで買う」だけでは満足しない。「ネットで見て、店舗で買う」ことも十分考えられる。ショップでの感動やドキドキ感も、お客にとってはショッピングの醍醐味だし、衝動買いを生む条件になるからだ。


 オムニチャンネル・リテイリングは、単にリアルショップとEコマースの融合ではない。肌感覚で勝負するショップを見直すことこそ、オムニチャンネル・リテイリングは有効に機能していくのである。



マーケティングに強い米国人起用の成功例。

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 さる10月2日、仏革鞄メーカーの「ルイ・ヴィトン」は、1998年のプレタポルテ進出を機に起用したクリエイティブディレクター「マーク・ジェイコブス」の退任を発表した。


 思えば、米国人デザイナーが仏のラグジュアリーブランドで、高級既成服をデザインするというニュースは衝撃的だった。ちょうどこの10年前頃は、伝統と技術に裏打ちされた仏のモード&メゾン界にグローバル経済の波が押し寄せた時期である。それはバッグメーカーのルイ・ヴィトンも例外ではなく、87年にはシャンパンメーカーのモエ・ヘネシーと合併し、「LVMHグループ」として活性化の道を探り始めた。


 伝統のマークと熟練の技を守りつつ、ブランドビジネスを維持していくには、モードファッションの世界に進出してグローバルに情報を発信しながら、世界中の一等地に旗艦店を構えて上顧客を獲得するしかない。そのためには旧態依然とした家族経営を脱皮し、ビジネスの原資をマーケットに求める戦略に舵を切ったとすれば、いたって正しい選択だったと言える。


 一方、LVMHグループとて、 巨大ファッションコングロマリットの標榜する上では、規模を追及しなければならない。仏の国立大学を卒業後、80年代前半に米国で不動産事業を行っていた総帥、ベルナール・アルノーも、モードファッションへの参入はM&Aというごく普通のビジネス手法で入っていった。


 84年、不動産で稼いだ資金を元手に老舗ブランド、クリスチャン・ディオールを所有する繊維会社のブサックを買収。当時、放漫経営から資金難に陥っていたブサックは、資本を右から左に動かす不動産経営者にとって、値下がりした土地と同じように「買い時」に見えたのだろう。


 ただ、 ファッションも不動産同様にリスクを伴う。デザイナーの感性や知名度におんぶされるだけに、大火傷をする可能性は否めない。そこで、アルノーは高級洋酒とバッグ、宝石や時計、香水を精力的に販売していく。商品はバラバラで何の関連性もないようだが、「高級ブランド」であることは共通する。 そして、これらをつなぐと、アルノーが目指したビジネスの到達点が見えてくるような気がする。


 まず、いろんな業種を手がけること。そこでは一つの大ヒットより、いくつかの小ヒットを狙うこと。 それは原価は安く、売値は高いものであること。つまり、儲けの大きい業種に限るということだ。こうした条件でビジネスが成り立つには、ズバリ商品が売れなければならない。だから、いくつものブランドを傘下に収めることで、リスクを分散しているのである。


 高級ブランド=売れる商品であること。これはルイ・ヴィトンがプレタポルテに進出する上でも、必須条件であったのは言うまでもない。であれば、起用するデザイナーも頑に職人技を追及するラテン系よりも、マーケティングに長けたアングロサクソン系の方が向くと考えるのは当然だろう。


 ディオールには英国人のジョン・ガリアーノ、セリーヌには米国人のマイケル・コースが起用されていた。そして、ルイ・ヴィトンは、NYでも無名に近かったマーク・ジェイコブスに白羽の矢を立てたのだ。就任前年には日本のオンワード樫山の支援で企業を設立し、自身の名前でコレクションデビューしたばかりの若造である。


 しかし、そこにはルイ・ヴィトンの強かな計算があったと思われる。もし、ペリー・エリスやカルバン・クラインのように知名度や実績をもつデザイナーなら、契約料はバカ高い金額になったはずだ。また、プレタポルテが思うような売上げを上げられなかったら、契約解除の問題でこじれることが予想されたからである。


 その点、コレクションデビュー間もない新人デザイナーなら、クビを切ることもそれほど難しくない。ただ、役職はデザイナーではなく、クリエイティブディレクターだった。その違いは単に既成服をデザインするだけでなく、ヴィジュアルマーチャンダイジングやショップづくり、広告制作にまで関わることである。


 ここでマーク・ジェイコブスは、期待以上の働きをする。それまでのルイ・ヴィトンは高級ブランドとは言え、モノグラムマークの爺婆くさいイメージがつきまとっていた。そこにNYのエッセンスである都会的でモダンな雰囲気、あるいはスパイスのきいたシャープな感覚を持ちんだ。売場に並ぶクロージングから小物までが、ルイ・ヴィトンを一気にあか抜けさせたのである。


 マーク・ジェイコブスは就任以降、LVMHのグループ力、ネットワークを最大限に活用し、プレタポルテを微に入り細にわたって作り上げていった。とても一人でできる仕事ではないから、優秀なブレーンもいたはずだ。店づくりから広告展開までを十分に理解してくれ、一を伝えると十わかってくれるようなフランス人スタッフの存在である。


 ルイ・ヴィトンを活性化させるプレタポルテのデザインとコンセプトを説得力をもって本家首脳やスタッフの腑に落とす手腕。優れたコミュニケーション能力無しには、とてもなし得なかったであろう。しかも、老舗ブランドという組織の中でそれをマネジメントし、スタッフをねじ伏せたわけだから、その能力たるや計り知れない。


 マーク・ジェイコブスの仏進出は意外な副産物も生んだ。世界中のメディアが彼を取材し報道することで、自身のブランドプロモーションにもつながったのだ。それも計算していたとすれば、ルイ・ヴィトン以上に強かだし、卓越したビジネスセンスだ。初めて名前を聞いたとき、「ジェイコブス≒ヤコブ。ユダヤ系だな」とピンと来たが、まさにその名に恥じない才覚の持ち主だったと言える。


 日本ではレナウンルック改め、ルックがファーストラインの「マーク・ジェイコブス」やセカンドラインの「マークバイ マーク・ジェイコブス」を輸入し、販売。出版社の宝島社が大人向けのストリートファッション、着回しの利く提案としてこぞって取り上げ、雑誌の「インレッド」や「スプリング」の部数拡大にもつながった。


 当時、若い子に「好きなブランドは?」とたずねると、「マーク・ジェイコブス」と答えるものが多かったのも、雑誌の影響があったのは言うまでもない。その背景にファッションコングロマリットと米国人デザイナーの強かな考えがあったことを口酸っぱくして説明したのが、今となっては懐かしい。


 マーク・ジェイコブスのような仕事は、トレンド、イメージなどの条件が評価される消費材的な商品を生み出し、売って行く業界だからこそ、認められる。金融機関や素材、機械産業ではその価値は理解されないと思う。さて、彼に次ぐデザイナー、クリエイティブディレクターが誰になるのか。こちらも興味津々である。



意外にミセスはいけるかもしれない。

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 先日、東京に出張し仕事を終えた後、アパレルの代表とゆっくり話す機会を得た。そこで話題に上がったのが、「最近、ミセスの服はどうよ」だった。ヤング向けの商品は、安もんのタレントタイアップからファストファッションまで市場には吐いて捨てるほど、出回っている。ところが、ミセスで「これはイイ」というブランドや業態が見つからないと、この代表はいうのだ。それで、以下のような話の展開になった。


 ミセス服はどうしても「おばちゃんファッション」と受け取られる嫌いがある。しかし、それはリサーチ能力が乏しい百貨店バイヤーやファッション音痴の三文メディアの認識だろう。ミセスといっても、20代から50代と幅広い。エージで区切ると、体型の問題からパターンが決まってくるため、身幅が広いおばちゃん服のイメージが強くなる。しかし、マインド&エージレスで見れば、企画のリソースは格段に広がるのだ。


 さらに眼の肥えているミセス層は、ヤングのようにブランドやプロモーションでは飛びつかない。素材のクオリティ、サイズ感や着心地、カッティング、手の込んだ装飾など、服を選択する条件は別のベクトルになる。そんな層はマスマーケットにはならないが、全国各地にピンポイントで存在する。だから、業態を開発するのではなく、専門店系アパレルが卸で中小のブティックやセレクトショップ向けに対応していかなければならないのだ。


 市場は百貨店やファッションビル、郊外SCにテナント出店してショップの顔を見せるほどの規模にはないから、一般的には見えないだけなのである。ただ、百貨店のハコはキャリアにしてもミセスにしても、バブルが弾けてから以降、その存在価値を確実に失っている。景気が回復しているとは言っても、肝心な商品は百貨店側の利益確保が優先され、アパレル側の掛け率に値下げ圧力がかかって、価格のわりに質、感度とも良くない。


 ファッションビルや駅ビルは、ヤングやOLがメーンターゲットで、ミセス向けは置いていてもセレクト系のスピンオフ。商品もカジュアル色が強く、ナチュラル系のトーンで編集され、顔写りがよくない。郊外SCもミセス系のテナントはデイリーウエアが主流で、売れてるニコアンドもどちらかというとライフスタイル寄りになる。強いてミセス受けするブランドと言えば、独特なカラートーンと装飾を加味したドレスが秀逸な「ブージュルード」くらいだろうか。


 それゆえ、マインド&エージレスをコンセプトに、上質でカッティングの良いウエアやクロージングは、開拓の余地は十分あると思う。上質というとどうしてもメイドインジャパンやインポートを連想する方々が多いが、アジアにもフランスやイタリアのアパレル生産で定評のあるメーカーはいくつもある。もちろん、国内の専門店系アパレルも数は減っているが、良い商品を企画するところは残っている。ただ、如何せん、業態開発、小売り直営までにいかないため、商品の顔や欲するターゲットが見えないだけなのだ。


 筆者の周りにいる30代、40代のミセスは、雑誌の編集者やイラストレーター、グラフィックデザイナーなどの仕事をもっているが、みな今のファッション流通には満足しきれていないようだ。百貨店はインポートやラグジュアリーなら感度的に納得できるが、価格面でとても毎シーズン購入するというまでにはいかない。かといってファッションビルや郊外SCでは、素材も色もデザインも満足いかず、価格も安過ぎるのである。


 唯一の頼みがネット通販になるのだが、ヤングと違って素材感や着心地が購入条件になるため、失敗や返品の手間を恐れ、購入には二の足を踏む。都市部や郊外で路面展開しているブティックやセレクトショップを回ればきっと見つかるはずだが、実際は時間的に不可能だ。ならば、都市部でお披露目の催事をやってもいいのではないかと思う。百貨店が納入アパレルとの関係で無理なら、ファッションビルではできないだろうか。また、自治体はどうなのか。


 巨額な税金を使うファッションウィークの目的を、「お客さんに来てもらって、服を買ってもらう」と宣うのなら、タレント呼んでステージングに何百万円もかける企画に実効性があるはずがない。メジャーになりにくいが、上質で高感度なミセス服を企画する専門店系アパレルの展示即売会を実施した方が、はるかに服は売れるはずだ。ただ、業界慣行上、アパレルの直販は難しい。ならば、そうした商品を扱う中小の小売業者を一同に集め、彼らにイベントスペースを提供すればいいだけの話だ。


 ファッションビルなどの商業施設は客層がバッティングしなくても、営業上、難色を示すことが想像される。だったら、公開空地など公共の場を提供してあげられないのか。そこでの販売は営利目的だから公共性がないと言うなら、芸能事務所所属の外国人に税金でギャラを払うことは公共上許されるのかということにもなる。ファッションマーケットは大手流通や商業施設ですべてが攻略できるほど、単純ではない。ニッチから多少膨らみ始めたミセスマーケットこそ、狙い目だと思われる。


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