HAKATA PARIS NEWYORK

今のファッションを斬りまくる辛口コラム

2014年03月

本業はファッション、グラフィックなどデザイン関連のクリエイティブディレクター。創る側の視点で今のファッション関連の事情を評論する。マスメディアはもちろん、業界紙誌も扱わないテーマに踏み込む。

正社員化に見え隠れするご都合主義。

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 先日、ファーストリテイリングが国内のユニクロで働くパート・アルバイト社員の約3万人のうち、1万6,000人を正社員にするという計画を発表した。これを受けて経済誌、ビジネス関連の媒体は一気に色めき、同社の取材記事が相次いで発表された。


 しかし、パート・アルバイトの正社員化を含め、地域限定社員などの多様な人事体制を始めたのは、ユニクロが最初ではない。TSIホールディングス傘下の「サンエーインターナショナル」が先で、ブランドのハコが増え始めた10数年前にすでに導入している。


 ワールドも2006年には、子会社の「ワールドストアパートナーズ」で、百貨店やSCのブランドショップに派遣するパート、アルバイトの販売スタッフで85%を正社員化すると発表。これには約5,000人が応募している。


 両社とも圧倒的に女性スタッフが多い。各業態の店長が実績を残すと、新規出店の切り込み隊長やエージアップによる大人業態への異動で、転勤せざるを得ない。ところが、女性スタッフだから結婚や出産によって自宅から通勤したいとか、転勤のある店長にはなれないが、販売は続けたいというニーズもあった。


 そこで、地域限定の販売スタッフとか、店長職には就かないが、販売職は続けられるような態勢を設けたのだ。また、店長、ベテラン販売員といったキャリアポストだけでなく、パート・アルバイトを戦力化していく教育制度の充実も図られた。


 もちろん、正社員化には待遇面でスタッフのモチベーションを上げ、販売職の魅力アップを図る意図があったのは言うまでもない。この頃はちょうど就職氷河期で、新卒の雇用情勢は厳しく、正社員についてもリストラが懸念されていた。


 だから、この2社における正社員化は、新卒の学生にも好意的に受け取られたし、販売員離れが進む中で応募者増をもたらした。それ以上に人件費のコストダウンが叫ばれる業界では、画期的なこととして受け取られた。


 まあ、両社ともSPA化を進める中、ブランド、店舗ともに増えていたため、人件費は十分に吸収できると踏んだのだろう。多店舗化を進める上でも、販売スタッフのスキルアップは、POSデータだけは読み取れない情報を企画にフィードバックさせるには欠かせなかったといえる。



  では、ユニクロの正社員化にはどのような目的があるのか。いろんなインタビュー記事には、「店長やスタッフを改めて教育してスタッフを主役にした個店を作っていく」「自分の創意工夫や取り組みの結果を実感しながら働ける環境を作っていこう」


 また「スタッフ全員が店舗の損益計算書を読めるようになって、利益を増やす方法を考えなくてはならない」「利益を出すにはどういう風に仕事をするのかをみんなで考える必要がある」「熟練した店長とスタッフが、さも個店を経営するかのような緊張感とやる気を持って店舗運営に当たる」とある。


 さらに東京・銀座や大阪・心斎橋の旗艦店、東京・新宿の「ビックロ」といった大型店のSS店長やFC店の店長では、「スタッフの指導育成から経費の使い方といったコスト管理まで経営者として能力が要求されてきた」。そのため、これをレギュラーの店舗にも浸透させていこうという狙いらしい。


 社員化では、特定の店舗や地域に勤務地が限定される「R(地域)社員」という位置づけだ。既存正社員も国内転勤はできるが海外は望まない、もしくはその実力がない「N(国)社員」と、海外事業にチャレンジする意思と実力を備えた「G(世界)社員」に分類されるという。


 つまり、ユニクロの正社員化は、チェーン店企業にありがちな本部一元コントロールや一律の待遇改善ではなく、各店舗の店長に「個店経営者」としての意識、自覚を促し、「店とスタッフをマネジメントできる人間たれ」というのが真の狙いのようである。


 ユニクロが生き残るには、経営感覚をもつ店長が求められるのは理解できる。いつまでも売れない商品が残る売場を見ると、この店は在庫コントロールができているのかと思うことがあるが、出店に店長育成が追いつかず、スキルがない店長もいたというから、当然のことだろう。


 ただ、ユニクロは高級品ではないため、スタッフに高度な接客能力は必要ない。店長やベテラン社員が率先垂範で接客して、パート・アルバイトがそれを見て技術を磨くような売場環境でもない。販売力はマーケティング力を発揮する商品であり、陳列、ディスプレイ、照明、POP、ツールを効果的に使うVMDである。


 また、ピンポイントで行うビジュアルプレゼンテーションや、客動線やゴールデンゾーンの作り方、スタイリング提案、什器の選び方などとった演出テクニックや売場づくりで、店長にはそれらをうまく使っていくオペレーション能力が求められるだけだ。


 しかしながら、MDは本部主導で行われるので、店長は仕入れる商品のバランスを変える程度で、商品企画そのものに口出しすることはできない。お客から「こんな商品が欲しい」と言われても、一店長では他のメーカーから仕入れることなどできない。


 バングラディッシュ店ではそれが可能となったが、あくまで緊急避難的なケースに過ぎなかった。商品に対する要望と言っても、せいぜい本部の商品部に上げる程度だろう。仕入れ責任者として「この時季にこんな商品は売れない」と思っても、「四の五の言わずに、本部が作った商品を売れ」となるのだ。


 売場づくりについても、マニュアル化されているので、店長に裁量権があっても、できる範囲は限られている。売場は固定されているから、什器やケースを自分で選定したり、レイアウトや照明を変えたりすることもできない。


 つまり、個店経営者といっても、できることは本部から投入された商品を売場でいかに売り減らし、利益を上げてくか。機会ロスを防ぐためには大量の在庫を抱えることを要求され、売れなかったら店長のマネジメントがマズいと追及され、結果はすべて数字で判断されるのである。


 これまで決算レポートでは、売上げが伸び悩んだ理由に「天候不順」や「商品投入の不備」などがあげられることが多くかった。でも、これからは店長が個店経営者なのだから、各自の「能力不足」が真っ先にあげられるかもしれない。


 極論すれば、「本部はちゃんとやっているが、店長がうまくコントロールできなかったから、売上げが下がった」と、言われることもあり得るだろう。でも、そこには本部サイドのご都合主義が見え隠れする。


 パート・アルバイトにとって正社員化という「アメ」は、個店経営者としての厳しい重責という「ムチ」が課されるということ。果たして社員のモチベーション向上が先か、それともサービス残業などによる退職増、過酷な労働被害の訴え続出が先か。どちらにしても、ユニクロの新政策には明暗、功罪がついて回ることだけは、間違いないようである。


セレクトショップに定義はあるのか。

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 3月17日から22日まで開催された「Mercedes-Benz Fashion Week Tokyo 2014-15 A/W」を観覧してきた。注目のデザイナーは何人かいたものの、全部のショーに招待されるわけではないので、観るコレクションは限られる。


 作品自体はどうしても好きなテイストがあるので、評価に主観がこもってしまう。そのため、この場での論述は避けたい。でも、招待客にはファッション系プレスをはじめ、量販するメーカーやレップなどが駆け付けていた。


 デザイナーズブランドをこよなく愛し、顧客に対して地道に販売する専門店バイヤーも多数招待されていた。これは東コレのクリエーション、デザイナーに対する一定の評価を裏付けるものと言える。


 ただ、バイヤーのほとんどが40歳前後で、20代にはカッコいい服は受けないということも浮き彫りにする。特に外国人デザイナーのクリエーションで、その傾向は顕著に見られる。冷静に考えると、全国どこでもイオンモールがあり、都市部の駅ビルでの展開ブランドは決まっている。20代は見るものが限られるので、しょうがないだろう。


 裏を返せば、セレクティングで提案するショップにとって、味の濃い商品は国内外のデザイナーをおいてはあり得ないということ。では、「真のセレクトショップ」とはいかなるものか。 東コレを見ながらつくづく考えた。


 セレクトショップとは、日本語訳で「編集型品揃え専門店」となるが、はっきりした定義で捉えられているわけではない。かつてのトラッド専門店、サロンブティック、レディス専門店などと、どこが違うのか。


 従来の品揃え専門店は、国内アパレル中心に仕入れ、編集するだけだった。オーナーに店舗経営の意思はあっても、世界観やコンセプトが強く反映されるとまではいかなかった。売れなければ、平気でブランドFCに切り替えるところもあったほどだ。


 1976年、ビームスが原宿に「AMERICAN LIFE SHOP BEAMS」をオープンした。この頃から店の方向性や考え方をしっかり決め、インポートを軸にバイヤーの蘊蓄やこだわりを全面に打ち出す店を、セレクトショップと呼び始めたように思う。


 それはユナイテッド・アローズによって、「世界に通用する良い店とは、品揃え、売場環境、販売スタッフ、顧客……のどれもが、望み得る最高のレベルでそれを達成し、実現すること」という概念が打ち出され、際立っていったように感じる。


 ただ、UAにしても英国製やイタリア製を仕入れてはいたが、メジャーなブランドはエクスクルーシブの問題から扱えなかった。同店はそれを逆手に取り、「ブランドではなく、クオリティを優先する」と訴えて、独自のセレクションを確立した。


 それ以降、日本では手を変え品を変え、様々な「自称セレクトショップ」が登場した。「シップス」「ジャーナルスタンダード」「アメリカンラグシー」「WR」「ボールルーム」「アクアガール」「オペーク」「ル・シェル・ブルー」「アーバン・リサーチ」etc.


 しかし、今日では業態の爛熟期に入り、ブランド力を浸透させられない店は、市場から撤退せざるを得なくなっている。元来、セレクトショップとは、展示会でセレクティングした1点もので勝負するはずなのに、商品が少ないと売上げな伸びないという皮肉な結末を迎えたのだ。


 現在、大手の中には母体がメーカーなら、中国製などのチープなショップオリジナルを投入し、小売りでもOEMやODMを咬ませて、PBをどんどん増やしている。ここまで来ると、もはや「仕入れ」で成り立つセレクトショップとは呼べないだろう。


 逆に中小ではバイヤーが海外のトレードショーで買い付けたり、工場まで向いて自分の目で素材を確かめ、ウエアや靴、バッグなどの別注のを仕掛けたり。自店の顧客をきちんと見きわめて、独自に提案するのは中小の方に多い。


 頑にキープコンセプトを貫き、たとえブランドは同じでも編集力や演出技術で、「似て非なる店」を作り上げているところもある。むしろ、そうした業態こそがセレクトショップではないかと思う。


 世界的にはパリの「コレット」「レクレルール」、ミラノの「アントニオーリ」「ビフィー」、米国の「オープニング・セレモニー」「エヴァ」、日本の「ドーバー ストリート マーケット ギンザ・コム デ ギャルソン」などが代表的だ。


 コレットやアントニオーリは、パリやミラノのコレクションを自店のフィルターを通して理解し、顧客に提案するラグジュアリーかつ高感度なショップだ。ブランド名を全面に出すのではなく、店独自の仕入れと編集技術で1つの世界観を見事に表現している。


 ショップオーナーとバイヤー、そして販売スタッフが同じ感性軸でつながるため、顧客に強烈なセレクションイメージを伝えることができるのだ。


 ドーバー ストリート マーケット ギンザ・コム デ ギャルソンは、プライベートブランドを含め、独自のオリジナリティを発揮する業態。クリエーターである川久保怜が別ブランドとコラボした商品を投入するなど、単なるブランドセレクトションにはない高い付加価値も持っている。


 オープニング・セレモニーやエヴァは、クリエーターのエッジの利いた「カッコいい服」をセレクトし、ニューヨークらしく常に新しさを提案し続ける。また、店づくりも虚飾を排したギャラリー的な空間で、服そのものの存在感を際立たせるのが特徴だ。


 こうした世界の代表的なセレクトショップを見てくると、クリエーションであろうが、リアルクローズであろうが、国内外のメーカーから100%仕入れるもので構成されるというフォーマットは共通する。


 また、1アイテムにこだわりをもって作る専業メーカーを中心に、バイヤーが自分の目で確かめ、別注やオリジナルを扱うにしても、顧客への提案に値する商品を仕入れることが、セレクトバイイングだと思う。


 だから、駅ビルやファッションビルに軒を並べる大手の業態がどこまでセレクトショップと呼べるかは疑問だ。第一、店舗が10店以上になれば、バイヤーがいちいち顧客の顔を浮かべながら仕入れることなんてできない。


 それをきちんと行っていたならば、ビームスやユナイテッド・アローズでの産地や品質の偽装問題も起こらなかったはずだ。純然たるセレクトショップの解釈からは、多店舗化するバーニーズ・ニューヨークやロンハーマンも、ズレて来ているような気がする。


ルールは主催者が決め、主催者が破る。

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 本日、3月17日から「メルセデスベンツ ファッションウィーク東京2014-2015A/W」が始まったが、わが街福岡でも8日から「ファッションウィーク福岡」が開催されている。


 福岡アジアファッション拠点推進会議が主催者となり、福岡市や福岡県、福岡商工会議所が共催し、地元商業施設などの企業が協賛する、ファッションウィークの名を借りた共同販促のキャンペーン週間だ。


 商工会議所の担当者は昨年7月のオリエンで、代理店やデベロッパーを前に「ガイドブック(10万部を印刷)やWebサイトのレスポンスが低く、スタンプラリーもあまり効果がなかった(旅行の懸賞応募538件)」と、前回の反省を述べた。

 

 企画運営委員長の御仁も、「高島市長から春にも何かやれと急に言われたので、あまり準備期間がなかった」と言い訳した。その反省と十分な準備期間を元に、今年のファッションウィークは企画されるはずだった。ところが…である。


 事業予算は700万円。それを原資にイベント、ガイドブックやポスター、特設サイトの制作まで行わなければならない。当然、事業をゲットする代理店には「協賛社の獲得」「スポンサー営業」も行うという条件が課せられたのは言うまでもない。


 でも、結果的に先立つものがないのだから、規模は大幅に縮小され、参加対象はカフェ等の飲食店、インテリア関係までに拡大された。期間は1ヵ月だったものが2週間程度と短縮され、メーンイベントはオープニング、ファッションマーケット、リサイクルとなった。


 オープニングイベントにしても、3周年のリニューアルを実施したアミュプラザ博多やディズニー映画「アナと雪の女王」のプロモーションを抱き合わせたものだ。リサイクルは古着を無料回収して換金し、東日本大震災への寄付にあてられる。


 主催者としては経費を掛けない苦肉の策を取らざるを得なかったわけだ。ファッションマーケットについては、概要発表時からメーンイベントに当てられ、以下のような「出店条件」が設けられていた。



ファッションマーケット出店者の募集について

F.W.F期間中のイベント「ファッションマーケット」への出店者を募集いたします。

■開催日時:2014年3月15日(土) 10:00~17:00〔予定〕

■開催場所:福岡市役所前 ふれあい広場

■対  象:個店、学校、クリエーター、スタイリスト等ファッション業界で活躍されている方、など

■出 店 料:個店/15,000円、クリエーター・学校/8,000円

■留意事項:

※バザーではありません。洋服・雑貨・アクセサリーなどのファッション発信の場となります。

※出店にあたっては審査をさせていただきます。(お断りする場合もございます。)

※出店者の小間割りのみを行いブース施工などは行いません。テーブル、椅子の貸出しは有料となります。なお、出店場所については、事務局にて設定させていただきます。

※雨天決行となります。(出店料の返金は致しかねますのでご了承ください。)



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 ところが、昨年10月から出店者の募集が始まったものの、1日限り、屋外というリスク、法外な出店料で、思ったような応募はなかったようである。


 あまりに酷いのは出店条件がゴロっと変えられたことだ。「※バザーではありません。洋服・雑貨・アクセサリーなどのファッション発信の場となります。」というのは、フリマのような「不要品の販売ではない」という意味では、理解できる。


 しかし、学生が出店するブースでは、堂々と「古着」が販売されていた。条件には「※出店にあたっては審査をさせていただきます。(お断りする場合もございます。)」とあるのだから、審査は形骸化し、条件が変更されたのは紛れもない。


 しかも、その学校とは、企画運営委員長の御仁がファッション部長を務めるところだ。自分らでルールを決めたのだから、平気で変えられると考えたのであれば、いったい何様のつもりだろうか。


 もっとも、個人の出店者レベルでは雑貨が主体で、ウエアの販売には限界がある。これも事前に予測はついたこと。店を構えていたり、卸先があるなら、こんな市場に出店する必要などない。そこで、主催者はマーケットの体裁を整えるために、地場アパレルにも出店を願い出ている。


 これまで「福岡アジアコレクション(FACo)」にも、「福岡発信」を口実に参加を請われたメーカーなどだ。別会社で専門店を運営しているところもあるが、ほとんどは小売りを取引先にする卸である。業界のルールとして、メーカーが直販することはまずあり得ない。


 推進会議の母体は福岡商工会議所だから、メーカー側も出店を頼まれれば嫌とは言えなかったのだろう。しかし、この中には別会社とは言え、このイベント会場から数百メートル先に小売店舗を構えているところもあるのだ。


 「小売店とは商品を替えて良い」「1日限りだから大目に見てほしい」と言われれば、メーカーとしては承服できなくはない。でも、主催者側が自らの都合で業界ルールを平気で曲げられると考えるのであれば、あまりに虫が良過ぎる。


 そもそも、上から目線の条件を決めたのは主催者だし、条件を受け止めて出店を断念したところもあるはずだ。主催者の目論見の甘さが露呈し、そのツケを地場メーカーが払わされるのは、あまりに迷惑なことである。


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 一方、いちばん経費がかかるガイドブックは、コストダウンを余儀なくされている。広告枠を切り売りして何とか制作費、印刷費を捻出する方法は踏襲されたが、ページ数は昨年の68Pから56P程度に削減された。


 昨年は協賛しなかった商業施設にも置かれていたが、今年は印刷部数を減らしたせいか、それもない。まあ、昨年のファッションウィーク期間中も、ガイドブックが手に取られることなく大量に余っていたことを考えると、選択と集中に舵を切ったとも言える。


 問題は表現やデザイン面、クリエイティビティである。7月のオリエンでは出席した代理店から、「えっ、来年もこれを使うの」と失笑されたからでもないだろうが、 昨年の「ロゴマーク」は使われていない。


 ただ、でき上がったデザインはあまりに酷い。表紙はイージーにファッション誌の「WWD」を真似ているが、タイプフェイスの使い方などを見ると、ファッションをあまり知らない制作会社、デザイナーの仕事であるのがよくわかる。


 メーンのキャラクターもプロのモデルを起用すれば、ヘアメイク、スタイリストといったスタッフが必要になる。とてもそんな制作費はないからモデルの代わりに「リカちゃん人形」を起用。それを擬人化して商業施設やイベントを告知させる手法を取っている。


 しかし、それが全体のイメージを落としたのは否めない。ちなみに東京や大阪でファッションビジネスに携わる知人に現物を見せての評価は、「玩具雑誌みたい」「FASHION WEEKという雰囲気は、まったく感じませんね」「学芸会みたいな考え方か?中学生でも笑うよね!」「大人は手にとらないだろう」etc.だった。


 また、同じようなファッション振興事業に携わる方々からは、「やっつけ仕事なデザインで、誰が手に取るのでしょう」「人形好きですかね。費用対効果はわるそうです」という意見が返ってきた。まさに的を射た評価である。主催者はこれを真摯に受け止めなければならない。


 まあ、イベント内容や広告媒体を見る限り、ファッションウィーク福岡の「福岡に来て服を買ってもらう」という目的自体が形骸化している。「経費がないからしかたない」という言い訳したところで、資金を出し協賛した商業施設には通用しない。


 そもそも700万円もの事業原資があるのだったら、スマホでクーポンでも配布した方がよほど集客、販促につながると思う。それなら多くの商業施設も参加は吝かではないだろうし、どこもやっていないことだから、福岡発信になるのである。


 また、事業予算が少ないのであるなら、FACoへの支援をカットして、こちらに回せば良いだけの話だ。すでにRKB毎日放送の「事業」と化し、こちらは単独でスポンサーを集めているし、NB主体の客寄せ興行であるのは明白だからだ。


 奇しくも3月16日には京セラドームで「関西コレクション」が開催された。FACoが「福岡発信」を強調するなら、エリアが違うのだから同じ日にぶつけてもいいはずである。それとも、できない理由でもあるのだろうか。


 どちらにしても、福岡発信は予算補助獲得のリップサービスにすぎず、すでに安っぽい陳腐な言葉に成り下がっている。ショーイベント自体が地元消費、販促に何らつながらないのは、多くのファッション関係者が認めるところだ。


 福岡市のカワイイ区を含め、一連の事業はテレビ局や芸能事務所、代理店、イベント&デザイン会社、印刷会社に資金が落ちるだけで、とてもファッション業界の振興とは言い難い。今回のファッションウィークを見ても、主催者と周辺の利害関係者の思惑で進んだことがよくわかる。


地方合同展示会は一考の余地がある。

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 3月17日(月)から「メルセデスベンツ ファッションウィーク東京」が渋谷ヒカリエ、他で開催される。期間中には東京コレクションなど、クリエーターによるショーもあり、観覧するのが今から楽しみだ。


 80年代頃までは展示会と言えば、春夏と秋冬の年2回。期中のフォローや定番の追加は除いて、この展示会がメーカーにとっては、営業の絶好の機会だったのだ。

 

 専門店側のバイヤーにとっても、アパレルがどんな商品を企画しているのか。サンプルを見て、見きわめることがシーズンの売上げを左右する。当然、東京以外に大阪・神戸のメーカーとも取引していれば、そちらも訪れなければならない。


 展示会はせいぜい3日程度で、開催日は各社ともまちまちだった。東京3日、一旦地元に戻って大阪・神戸にまた3日という出張のスケジュール。だから、地方都市に店を構えて、あれこれ見たいバイヤーには、非常に効率が悪かった。


 かつてあるバイヤーからこんな話を聞いたことがある。「青山、原宿、千駄ヶ谷のメーカーと20社くらい取引していると、3日では厳しい。1社との商談に2時間かかるとして、移動時間を入れると、せいぜい1日4~5社がやっと。立ち食いうどんさえ、食えない日もある」と。


 そうした全国のバイヤーのことを考え、始まったのが「東京ファッションウィーク」だったと思う。それでも、目利きのバイヤーをがっちり捉まえているマンションアパレルの中には、あえて期間を外してじっくり商談を行うところもなくはなかったのである。


 アパレルメーカーなんてワールドやイトキンのような大手を除けば、大半が年商5億円以下の中小零細企業である。ただ、量販される商品は他店にも並ぶ公算が高いから、あえて小さくても企画力のあるアパレルと取引するバイヤーは少なくない。


 でも、バブルの経済崩壊以降、ファッション業界全体が厳しくなると、メーカー1社ではなかなかバイヤーを集客することができなくなった。そこで、中小零細のメーカーが何社か集まって合同展示会を開催するようになったのである。


 カジュアルファッションを集めた「フロンティア」とか、アッシュ・ペー・フランスがプロモートする「rooms」とかがそうだ。大きなものでは、繊研新聞が主催する「IFF(インターナショナル・ファッション・フェア)」「プラグイン」「MaG」。雑貨を集めた「TREASURE」などがある。


 先日、ファッションライターの南充浩さんも、ご自身のブログで合同展示会について書かれていた。


 「良いか悪いかは別にして、『1社だけでは来場者数が増えないから合同展示会にしたら来場者数が増えるのではないか?』という考え方が業界にはある。ある意味でこれは正しい。


 1社で展示会を開催するよりも10社くらい集まって展示会を開催した方が、来場者数は増えやすい。だから昔からアパレル業界では合同展示会が盛んに行われた。

 

 その昔は『レディースブランド合同展』『カジュアルブランド合同展』『子供服合同展』なんていうのがあったし、今でもその名残でいくつかの合同展が残っている。


(中略)


 来場バイヤーを多数誘致したければ、レディースブランドとメンズブランド、子供服ブランドの混合合同展を開催する方が効果的といえるだろう。そこに雑貨類、インテリア類などがあるとさらに効果が期待できる。」と。



 合同展示会は東京、あるいは大阪・神戸のように全国からバイヤーを集められる都市なら有効だ。ところが、福岡のような地方都市での開催は、かなり厳しいと思う。


 なぜなら、ファッショントレンドが世界規模で流布し、マスマーケットがほぼ全国一律で形成される時代。フットワークの良い専門店バイヤーなら、直接、東京や大阪・神戸に出かけ、効率よくメーカー回りができる勘所をもっている。


 さらに海外のトレードショーで直接発注したり、工場まで出かけて自分の目で素材から確かめて別注するバイヤーさえ、もはや地方のセレクトショップにもいるくらいだ。


 確かに中高年向けの専門店を運営していたり、足腰が弱って遠くまで出張に出かけるのが辛いという店舗経営者にとっては、地方での展示会は好都合なのかもしれない。それにしても、合同展示会に参加するメーカーが自店のあった商品を企画してくれることが大前提だ。


 メーカーにとってはバイヤーが来てくれる展示会は、営業的に効率がいい。でも、専門店側にすれば、日頃からこまめに店を訪れてくれて、売れ筋を聞いてくれたり、企画ニーズの掘り起こしをしてくれるとかの「マーケティング営業」の方が本当はありがたいのだ。


 メーカーがプロダクトアウトの姿勢を貫きたい気持ちはよくわかる。しかし、これだけトレンドの変化が激しく、マーケットが細分化される時代。より単サイクルの生産体勢が求められるからこそ、展示会頼みの営業スタイルから脱却しなければならない面もある。


 福岡では、3月5日、6日の2日間、合同展示会「GOLDRUSH」が開催された。http://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/life/85/85798_17155090_misc.pdf


 この展示会については、当コラムでも過去に取り上げたが、正直、閑古鳥が鳴くほど来場者が少ない。企画をしているのは地元の什器メーカーで、知り合いのアクセサリーメーカーも参画している。


 ここ数年は福岡アジアファッション拠点推進会議、福岡商工会議所、福岡県や福岡市も共催に名を連ね、「福岡ファッションコレクション」というゴロの悪い冠も付いている。

 今回は昨年から始まった「ファッションウィーク福岡/FWF」の共催事業として、無理矢理位置づけられた格好だ。 それでも、地元専門店のバイヤーが大挙して来場する光景は見られない。


 RKB毎日放送は先日、早朝ニュースをパブ枠にして、GOLDRUSHの模様を報道した。1分程度の内容で、中高年のバイヤーとメーカーとの商談風景に、昨年の「福岡アジアコレクション/FACo」のビデオをインサートして、ファッションウィーク福岡と「福岡発信」をことさらに強調していた。


 ところが、実態は出展社37社中、地元アパレルはたった9社に過ぎない。後は雑貨やアクセリーの卸、そして大阪、東京のメーカーを加えて何とか体裁を保っている状態だ。RKBの報道に反して、実際に訪れているバイヤーは他県も含めて極端に少ない。 これで本当に「福岡発信」の機能が果たせていると言えるのだろうか。


 筆者の知り合いである関西のバッグメーカーも出展しているが、間に長崎の代行会社を咬ませてのものだ。出展料はもとより、出張費を含めると、展示会の経費もバカにならない。それで訪れるバイヤーが少なく、商談がまとまらなければ完全に赤字だ。


 間にレップを咬まして営業を代行してもらう。実に賢いやり方だが、こうしなければ中小零細のメーカーは生き残れない。おそらく出展社のほとんどがペイしていないのではないだろうか。でも、それが地方で開催される合同展示会の実態なのである。


 RKBにしてみると、自社事業の「福岡アジアコレクション/FACo」に商工会議所や福岡市から資金提供があるため、事実とはかけ離れた偏向報道もリップサービスのうちなのだろう。 まあ、ファッション音痴のローカルメディアに合同展示会の実態を正確に報道できるはずもないが。


 ただ、推進会議や自治体は立場が違う。公金を提供して支援する以上、「なぜ、地元のバイヤーに人気がないのか」「福岡を発信するための展示会とはどうすべきか」についても、主催者を交えてもっと考えても良いはずだ。


 地元の小売りに見向きもされない展示会が「福岡発信」のはずがない。根本から手法、内容を見直すべきだと思う。でなければ、メーン事業のファッションウィーク福岡すら、利害関係者の単なる「公金獲得事業」というレッテルを拭えないことになる。


ノウハウを買収する狡猾さ。

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 先週末、業界にビッグニュースが飛び込んできた。ロイター電が伝えたところによると、「ユニクロを展開するファーストリテイリングが米ブランドJ.CREWの買収交渉を進めている」というのである。


 ウォールストリート・ジャーナルも電子版で、同社が「米衣料品 J.CREW ・グループの買収に向けた話し合いを始めた。買収額は最大50億ドル(約5100億円)を見込む」と伝えている。


 すぐに業界人の間では「バーニーズ買収に次いで今度はJ.CREWか」「レナウンが一度、失敗しているのに」「オーバーストアの日本市場では難しいだろう」「株主、投資家への配慮」etc. 駅ビルのリニューアルなんてそっち抜けで、話題になっている。


 ファーストリテイリングは「2010年グループ売上げ1兆円」という目標を掲げ、ユニクロ事業の国内外展開と並行して、M&Aを積極化。仏のコントワー・デ・コトニエ、プリンセスタムタム、米のセオリーなどといった海外ブランドを傘下に収めていった。


 2010年8月期の決算では、グループ年商8148億円と1兆円には届かなかった。しかし、ユニクロ旗艦店の国内大都市展開、ジル・サンダーとコラボした「+J」の発売、NY5番街のグローバル旗艦店の出店などの話題を持ち上げて、目標未達がやり玉にあがるのを巧くかわした。


 それどころか、今度は「2020年グループ総売上5兆円」という壮大な目標を打ち出し、諸々の新商品開発、アジアでの積極展開、ジーユーの海外進出と、既存ブランドのテコ入れなど、新戦略をぶちまけた。


 もちろん、それだけでは5兆円という目標が達成できる保証はない。ファーストリテイリングが単なるグローバルSPAで終わらず、ファッションコングロマリットも視野に入れているとすれば、やはりブランド買収も選択肢に入っているのは当然だ。


 ファッション音痴の国内メディアは、今回のJ.CREWも日本市場でも店舗展開や市場性、レナウンの失敗例だけで捉えようとする。でも、そこは強かな柳井正会長のこと、そんな単純な考えで、買収に走ったとは思えないのである。


 ここからはあくまで推測だが、まず米市場に強いブランドを手中に収める狙いがあると思う。ユニクロがいくらNYの5番街に出店し、米国内でブランドの知名度を上げたからといって、ブランド力がどこまで浸透できるかは、2年を経過した今でも未知数である。


 また、米市場にはユニクロより格上のGAPが君臨しており、グレードではJ.CREWはさらにその上を行く。ならば、 全米に店舗をもつブランドを傘下に入れた方が、売上げ確保やシェア獲得には手っ取り早い。経営者ならそう考えるのは当然のことだ。


 そもそも、J.CREWとはどんなブランドか。1983年、「トラディッショナル・テイストのいつの時代も着られる衣料を手頃な価格で」をスローガンに通信販売からスタート。89年からは小売りにも進出したが、筆者がNYで仕事をした90年代半ばは、サウスストリートのシーポートに本拠を構える一SPAに過ぎなかった。


 ところが、96年から全米に店舗を拡大し、今では全米各州やカナダの各都市の他、英国のロンドンにも展開。通販では依然として高いノウハウをもち、アウトレットというバーチカルな消化システムを構築する一方、NY、ボストン、シカゴといった主要都市の旗艦店ではウエディング&パーティドレスも展開する。


 こうしたキャリアやアウトライン、経営戦略もさることながら、何より事業規模22億ドルという手頃さが米市場におけるユニクロとの補完関係にあると判断され、買収案件に上がってきたのだと思う。そのため、今回はこれまで失敗してきたコラボレーションなんかのリスクは踏まず、実現可能なら単なるブランド買収に落ち着くはずだ。

 

 まあ、以前にレナウンがこのブランドを導入したのは、都市部のデパートやSCで売れると踏んだからだ。ファーストリテイリングの傘下に収まった暁にも、同じく百貨店やSCが出店のオファーを出すことは、なきにしもあらずだろうが。


 それにしても、レディスの商品を見る限りでは、米国ブランドにありがちなコンサバ色は薄れ、ユーロブランドにも匹敵するクリエイティビティを有している。そのシャープで大人っぽいテイストは、昨今のNBには見られないし、ユニクロなんかが打ち出せるものでもないだろう。


 SCや駅ビルにある甘さ追求のSPA、あるいは陳腐化した百貨店のハコに飽き足りない層は、ネットの転送サービスなどを利用して購入していると思われる。


 経営的にも03年、GAPのミラード・ドレクスラーCEOが同社に移り、10年で売上げを3倍に伸ばし、赤字だった企業を一気に黒字転換させたのは有名な話だ。これは買収案件を持ち込む銀行サイドにとって、かなり目を引いた要素ではないだろうか。


 20年に5兆円企業を目出すファーストリテイリングには、これから可能性のある企業やブランドを買収して立て直すなんて悠長なことは言ってられない。それは柳井会長がいちばんわかっていると思うし、バーニーズに買収を仕掛けたことが何よりだ。


 グローバル競争では、優良企業の買収合併は当然のこと。業界では未だにブランドライセンスや商標権確保の次元で論じられることが多い。でも、M&Aで経営権を手にするのは、自社が持たないノウハウを得ること。そこに意味があるのである。


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