HAKATA PARIS NEWYORK

今のファッションを斬りまくる辛口コラム

2014年12月

本業はファッション、グラフィックなどデザイン関連のクリエイティブディレクター。創る側の視点で今のファッション関連の事情を評論する。マスメディアはもちろん、業界紙誌も扱わないテーマに踏み込む。

女性のおかげでメシが食える業界。

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 安倍内閣が内閣改造の目玉の一つにした「女性の活用」。経産大臣や法務大臣などの主要閣僚に女性議員を起用し、国民にも国の政策をアピールしようとした。


 実際には政治とカネのスキャンダル閣僚を出すなど、無知な女性議員を利用したに過ぎなかったという笑えないオチがついた。まして、民間企業レベルでは女性の活用なんてそう簡単に行くはずはない。


 ただ、ファッション業界は対象商品はもとより、働くスタッフも圧倒的に女性が多い。


 筆者はずっとレディスアパレル畑を歩いて来た。デザイナーやプレス、店長やバイヤー、雑誌編集者、グラフィックデザイナー、イラストレーター、モデル、スタイリストなどと一緒に仕事をする中、女性の活躍を身をもって体験して来ている。


 でも、20年以上前は彼女たちも言わば、使い捨てのような状態だった。「キャリア」というのは単なるゾーニングの範疇に過ぎず、本質的に彼女たちのキャリア形成に業界が力を入れていたかというと、決してそんなことはなかった。


 仕事が好きな子がスキルを付けて、 デザイナーやプレス、 店長やバイヤー、スタイリストなどの仕事を続けるが、それは独身だからできることだった。まあ、今ほど少子化が叫ばれることもなかったので、業界自体も深く考えていなかったと思う。


 では、今はどうなのか。マーケットにおける構成比は、レディスが7割以上あり、それほど変わっていない。でも、たとえスローガンであっても、女性の活用が際立って来た以上、業界も何らかのアクションを起こさないといけないのは確かだ。


 これについてこの間、懇意にするアパレルメーカーの社長が話してくれたことがある。奥さんに言われたこととして、「あんたの会社も取引先のショップも、女性のおかげでメシが食えているんでしょ」と。


 これはレディスアパレルを手がける上では、当たり前のことだ。しかし、実に含蓄のあるメッセージでもある。業界の男たちには当たり前過ぎて、彼女たちのキャリア形成やライフステージを意識していないことへの警鐘と言えるからだ。


 女性の活用ということ自体が「上から目線」の言い方だと思うし、「女性が活躍してくれないと服も売れないわけだから、そこら辺をもっと考えないといけないのでは」と、アパレルの社長と意見を一致させたのだった。


 では、具体的にどうすればいいか。先日、当コラムにも書いたイオンモールにリーシングされるテナントのスタッフ不足。その辺の課題から真剣に考えなければならないと思う。


 販売職であれば、現地作用を基本に彼女たちをどこまで育てていくかである。


 まず研修制度を充実させて彼女たちのスキルを磨き、それに見合う報酬とポストを与えることである。そしてキャリアアップした彼女たちが働きたくなるような「より魅力ある新店や新業態」を作り上げていかなければならない。


 同時に県外に新しいショップを出店する時、「ぜひ、そこで働かせてくだたい」と、自ら申し出る子が現れるようにしないといけないだろう。


 またそんな子が結婚、出産を経て、また働きたいと戻ってくれるような制度もいる。所謂、「子育て支援」である。ご主人が転勤になれば、そのまま店舗を異動させてあげる。それが無理なら、別の企業への再就職を斡旋してあげるくらいのフォローも必要だ。


 主婦をパートアルバイトで採用する時、扶養手当てがカットされることで、長時間労働を避ける人も多い。ならば、「当社ではより上のポストを目指してくれれば、収入はもっと増えますよ」くらいの姿勢と待遇で臨むべきだ。


 さらに郊外SCの販売スタッフが全員女性なら、仕事を終えてレジ締めした後、夜間に田んぼ道を帰宅するのはたいへんである。ならば経営者として、スタッフ採用では「脱イオンモール」も、今後のテーマとして考えなければならない。


 女性の活用はスローガンではなく、きちんとしたキャリア形成ができる環境づくりが大切なのである。いかに彼女たちに仕事のやり甲斐を見いだしてもらうか。そして、ライフステージを支援できる仕組みを整えるか、である。


 業界を見ると、販売スタッフの上に店長がいて、その上にはラインスタッフのスーパーバイザーがいる。こうした職種にも女性をどんどん起用すべきだろう。


 女性の店長が圧倒的に多いのだから、彼女たちの悩みを聞いて経験値からアドバイスをするには、女性の方が絶対に良いはずである。


 業界では店長やバイヤー、デザイナーが妊娠すると、一人目はともかく二人目になると、暗に「もう今まで通りの仕事はできないだろう」という空気を漂わせ、ポストを奪ってしまう企業が少なくない。俗にいう「マタハラ」ってやつだ。


 しかし、それこそが女性のおかげでメシが食えていることをわかっていない証拠だ。現場を支えてくれるのは女性なのだから、そんな女性をどんどん取締役に起用してもいいはず。また経営会議にもそんな女性を参加させて、忌憚のない発言をしてもらえばいい。


 単純に考えて、働く女性を早く家に帰すにはその分、男性陣が早く出社すればいいだけの話。そんなことも理解できないような経営者では、ファッションビジネスはやがて頭打ちになる。


 話が少しズレるが、銀座のクラブでバイトをしていた女子学生がテレビ局の女子アナ採用内定を取り消されたニュースがあった。


 メディアでは、「局側の幹部連中はそうしたクラブでカネを使っていながら、女子学生に働くなというのはおかしい」という女性擁護論まで飛び出した。


 もっともな話として、企業の男性幹部が深夜までクラブで酒を飲んでいながら、女性が早く帰宅するのを妨げるのでは筋が通らない。でも、内定取り消しにしても、擁護論にしてもそんもんは所詮、アッパー階層の与太話である。


 一般庶民にとっては、クラブだろうとショップだろうと、働かなければ生活していけないのである。


 大企業に勤務する一部の連中が銀座のクラブでカネを使い、女子学生がそこで稼いでブランドを着飾ったところで、日本の景気がよくなるのか。そんなことをマジで考えている経済評論家がいるなら、明日から職探しすることをお勧めしたい。


 やはり一般庶民の多くの女性が仕事に就き、結婚、出産を経て、また仕事に戻れるような環境を作ることが個人消費を活発化して、景気を上向きにするのである。


 筆者は別にフェミニストでも、ゲイでもない。 女性だからではなく、同士として扱って、協力できる部分は業界として、また男性がどこまでサポートできるかだと思う。


 ここまで書くのは、活躍する女性が増えてくれた方が上質でカッコいい服が作れるし、売れるから。ただ、それだけである。



ハコ作って、人足らず。

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さる12月5日、岡山市の中心部、岡山駅のほど近い場所にイオンモール岡山がオープンした。 


 SCとしては、県庁所在地の一等地に建つ地下2階、地上8階の施設。1階から4階までの吹き抜け。2000人が集まれるパブリックスペース。300インチの巨大スクリーンやテレビスタジオ等々。ハードはどれも従来の郊外SCとは一線を画すものだ。


 館の愛称にスカイツリーのソラマチならぬ「ハレマチ」を掲げ、「岡山の文化や情報の発信基地を目指す」と、イオンもモールとしての新たな挑戦を公言する。


 だからと言って、ファッションテナントの顔ぶれを見ると、郊外SCにリーシングされているものと大差ない。いくら都市部出店と言っても所詮、SCなわけなのである。


 まあ、百貨店が時代のニーズに合わなくなっていることを考えると、NBを導入したところで勝負にならないのは明白の理。だから、せいぜい客寄せのためにハード面で奇を衒うしかない点は理解できる。


 ただ、モールは出店コストが安い郊外だからこそ、オオバコでも何とか維持することができた。それを都市部展開で高層という莫大な初期投資に踏み切る発想には、「トンチンカンさ」を感じざるを得ない。


 せめてファッションで、何か新しい業態のテストケースでも試すのなら、注目もできるが、アパレル側が乗り出さないと、手の打ち用がないところにデベロッパーの無能、無策ぶりを露呈する。


 そんなことを考えていると、繊研新聞が別の切り口でこのSCを取り上げた。12月9日付けネット版の「アパレル求人難、人材確保に不安材料」と題した記事だ。


 「岡山でファッション販売員の求人がこれまで以上に難しくなっている。大型のイオンモールの誕生で表面化した」

 

 「各テナントでは時給を引き上げて人員を確保しているが、いまだに必要人員を採用できていないところもある」

 

 「アパレル店舗運営や接客にたけた人材を獲得するためには、企業規模の大小にかかわらず、長く働ける環境作りなど、待遇の改善が必須課題だ」と。(以上、原文のまま)

 

 記事はテナントがスタッフ確保で苦しんでいるとの内容だ。地方都市にSCが出店すると毎回、地域のハローワークは、「職業安定所開設以来の求人数」などといったコメントを出す。SCはそれだけ地域雇用に貢献してきたことは間違いない。

 

 しかし、景気が少しずつ上向いていること。接客サービス業の人気が落ちていること。若者のファッション業界離れを考えると、スタッフの確保は容易ではない。

 

 さらにSCを開発するデベロッパー、テナント出店するアパレルや小売りの出店計画にスタッフ育成が比例しているとは思えない。SCの開業計画が持ち上がる度に、スタッフ確保はハローワークをはじめ、求人情報誌の合同説明会に乗っかる程度に過ぎない。

 

 これが都市部のファッションビル、駅ビルの新規出店なら、若者は「都会で働けること」から、少しは色気を出して正社員に応募しているかもしれない。

 

 地方のSCではどうだろうか。しかも、アルバイト採用となると、一気に応募意欲は下がるはずだ。マイルドヤンキーなる趨勢を見ても、SCは働くより買い物&レジャーに行くところという考えが浸透しつつある。

 

 若者の職業意識もSCの業態に魅力を感じているとは思えない。大学生は依然として知名度やブランド力がある大手企業志向が強い。サービス残業訴訟でユニクロが敗訴したことも、SPAやチェーン店の店長候補の採用には、少なからず影響しているはずだ。


 業界の構造がほとんど理解できていない専門学校生は、好きなブランドで求人を選ぶだろうから、知名度の低い業態は必然的にスタッフ確保は難しくなる。


 アルバイト採用はなおさら深刻だろう。企業側が営業的なピークにスタッフ態勢を合わせるとすれば、フルタイムでスタッフを確保する必要はない。人件費を抑えることを考えると、アルバイトで賄おうとするのは当然だ。


 しかし、働く側としては高々時給が850円では、身入りが少ない。フリーターならなおさら効率よく収入が上がる職種を選ぶだろう。だから、時給が低いファッション販売員は敬遠されるのである。


 となると、アパレル側がアルバイトスタッフを確保するには、時給を上げるしかない。そのためには荒利が取れる商品を開発し、販売しなければならないというところに行きつくわけだ。


 販売価格が高い商品なら、そこそこの知識、接客技術に裏打ちされる販売力が必要だから、人材育成にも積極投資しやすくなるはずだ。あくまで理論上はであるが。


 また、販売スタッフの待遇や地位向上、将来設計まで併せて考えてやらなければ何の解決にもならない。つまり、アパレルや小売りは企画から販売、教育、福利厚生までのフローを根本から見直す時期にさしかかっているということだ。


 最後に最近の若者の傾向とSC勤務との関係について、個人的な見解を述べてみたい。


 郊外SCに勤務する場合、自宅か、転勤かで、働く人間のライフスタイルも大きく変わる。自宅ならその地域出身者がほとんどだろうから、家族や友人などが近くにいて精神的にも、経済的にも余裕があるだろう。


 ところが、転勤で縁もゆかりもない地方都市に赴任すると、店舗の売上げが安定するまで仕事漬けの毎日が続く。そのストレスたるや、いかばかりだろうか。まして切り込み隊長的な役割を担わされると、それが何年もずっと続くことになる。


 中には「いろんな土地に行けて良い」というノー天気な方がいるかもしれない。でも、カルチャー的土壌が希薄な地方都市、しかも郊外での生活が転勤者にとってそれほど魅力があるとは思えない。たまの休日の過ごし方が極端に制限されるからである。


 博多のど真ん中、東京、ニューヨークと都市部ばかりで生活してきた人間からすれば、なおさらそう考えてしまう。


 最近の傾向からして、自分のライフスタイルは守りたいと考える若者は少なくない。であるからこそ、大学生や専門学校生が地方転勤、しかも郊外店の勤務があるような企業に、進んで就職を決めるとは思えないのである。


 私の記憶では、ユニクロが海外勤務、現地給与体系を発表した途端、日本の大学生の応募が極端に減ったように感じる。


 いくらグローバル企業と謳ったところで、アジアの辺境地に自ら進んで赴く若者は、それほど多くなかったということ。仕事は旅行とは違うからだ。


 それよりも日本の地方はまだマシかもしれない。でも、最近、地方に住む若者たちが「SCがあるから十分」と堂々と宣うようになったことを考えると、裏を返せばそれしか生活の魅力がないことにもなる。


 また、仮に地元で有能な社員が確保できたからといって、その人間をずっと1カ所の店舗に縛っておくことができるのか。有能は店長であれば、別の店をオープンする時に転勤させたいのは、企業側にとって当然のことと言える。


 地域限定社員で雇用すれば、そこは制約を受けざるをえない。女性の活用が大流行りの昨今、主婦社員に対し簡単に「新店への転勤辞令」など出せるはずはないのである。


 とすれば、アパレル側が取り組むべきは時給アップや待遇改善だけではない。若年社員の生活スタイルとライフステージとの関係で魅力を提示できなければ、スタッフ確保の問題は解決しないと思う。


現物あってこそ伝わるクリエーション。

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 先日、ファッションライターの南充浩さんがご自身のブログで、「ビジネスとして成り立たない東コレブランド」と題した論評をされていた。http://blog.livedoor.jp/minamimitsu00/archives/4247634.html


 成り立たない理由をかいつまむと、ファッションビジネスの環境が年々厳しさを増す中で、こうしたブランドは「知名度の低さ」「営業力の乏しさ」から中々脱却できていないことがある。


 その結果、生産数量は増えずにコスト高で販売価格は高止まり、競争力はつかずに売れ行きは伸びず、売上げも1億円程度から数億円に留まっている。


 しかしながら、コレクションという舞台には、巨額の投資をするパラドクス。ショーイベントに必要な服は1型、1サイズでいいから、サンプル程度の生産で十分だが、会場費、演出やスタッフなど、別のコストがかかってしまうというものだった。


 コレクションとは本来、服をショーを通じてバイヤーに見てもらう場。そこからオーダーを取って生産に入ってこそ、やる意味がある。なのにその先の営業には踏み込めていない。つまり、ショーが手段ではなく、目的になってしまっているのだ。


 これでは本末転倒であろう。オーダーがあってもせいぜいロットが10枚~20枚では、アップチャージがついて縫製工賃が高くなるという負の連鎖。全くもって仰る通りである。


 売れない理由はそれだけではないだろう。若手デザイナーの特徴として、テクニックが修練されていない点もある。それゆえ、発表される服がいたって「定番」に偏りがちだ。


 彼らも一生懸命に考えた末に、デザインした点は理解できなくはない。また彼らが自分と同じマインドのターゲットを意識するあまりにそうなったかもしれない。


 さらに凝ったデザインでは工場の縫子さんは慣れるまでに時間がかかる。南さんが言うところの生産効率が悪さである。デザイナーと工場に間に入る「振り屋」も枚数が増えた方がいいから、縫いやすいデザインを逆提案するのは想像に難くない。


 先のコレクションでは、この冬のトレンドとなったダッフルコートや裏毛のジャージをコレクションで発表していたデザイナーもいた。



 でも、見ていて「えっ、これってクリエーション?」って思ったバイヤーも少なくなかった。商品を販売する側としては、もう少しシーズントレンドを出してくれないと、お客さんにアピールできないという気持ちは強い。


 特に裏原ブームから十数年経過したが、どうも東コレブランドの若手の中には、まだまだアメカジの流れをひく「定番」を自分流に解釈しただけで、作品づくりに甘んじている傾向があるように感じる。


 それがロゴをプリントしたTシャツやトレーナーであり、あるいはジャケットやコート、ミリタリーなどオーソドックスなデザインのアイテムに落ち着いているという点だ。


 別に定番のデザインが悪いわけではない。しかし、ブランド力をもつエルメスやグッチが発表するならいざしらず、知名度がないブランドがそれでは、自ずと限界は見えている。


 おまけに生産ロットが増えないと、コスト高で販売価格は下がらない。お客は知名度が低いブランドの定番アイテムに高いお金を払うくらいなら、知名度がそこそこのSPAで十分だというところに行きつくのは当然の流れだ。


 ビジネスを考えれば、南さんが仰るように、今の時代、「卸売り先を増やすこと」と「直営店とウェブショップの売上高を増やすこと」しかない。


 ただ、デザイナーが営業をできるわけがない。この辺の理解度がまだまだなところもあるだろう。これはデザイナーを育成する専門学校が作品づくりや技術にばかりに一生懸命で、卸や小売りのメカニズムをほとんど理解させていないことに尽きる。


 また「褒めないと育たない」というネジ曲がった教育論から、「自分で作って、自信を持てばきっと売れるよ」って穿った考え方が正論化され、若手デザイナーの間で大きな錯覚を生んでいるように思う。


 そうではなくて、服を作る人間と売る人間は同一ではないこと。クリエイティビティとリアルクローズのバランスを計るには。卸に徹する場合と店を出した場合で収益構造はどう変わるか。そんなビジネスの基本的な理屈を教え込まなければならないのだ。


 デザイナーズブランドが隆盛を極めた1980年代。意外にもそれを成功に導いたのは、確固としたビジネス理論だったし、ブランド側がマーチャンダイジングをしっかり行ったからこそ売れたのは、業界では有名な話である。


 もちろん、売れることばかりを意識すれば、全部が売れ筋になって面白みに欠けてしまう。その辺のバランスをどう取るかが、永遠のテーマになる。デザイナーブランドがいちばん売れた頃は、営業7、デザイン3の意見調整だったように記憶している。


 卸を行う、直営店やウエブショップを展開する上でも、この辺のバランスは非常に重要だ。ただ、個人的にはデザイナーだからといって、毎シーズン奇を衒うようなデザインを考える必要はないのではないかと思う。


 トラディッショナルなデザインからより現代にマッチした服に仕上げることで、テクニックを磨いていく方法もある。パターンやカティングの技術、フォルムを単純化した場合の分量の取り方、着心地とデザインとの融合などである。


 それらを追求すれば、服が売れる条件である着回しやコーディネートのし易さは、クリアできるはずだ。デザインには足し算と引き算があるが、余分な装飾を排除することで、クリエーションを売れる方向に持っていくことはできなくはないと思う。

 

 ただ、これには「素材が上質である」ことが条件で、コレクションブランドとして体を成すには言うまでない。そこにコストをかけてこそ、価格対価値が生まれ、お客は納得して購入してくれる。コレクションショー云々はその先の話なのである。


 最近はITがもてはやされる時代になり、クリエーターとメーカーなどをマッチングさせるサイト「展示会.com」なるものまで登場している。http://www.tenzikai.com/


 ファッションに限らず自分を売り込みたいクリエーターとクリエーターを探している企業をつなげるもののようだ。こんなシステムなら、私の友人も20年ほど前に出版社を退職し、「極楽座」なるサイトを立ち上げていたから、珍しくも何ともない。


 彼のものはサイト上で作品を公開し、めでたくビジネスが成立したら、手数料をいただくという仕組みだった。しかし、マッチングは増えず、長続きはしなかった。


 なぜか。それはファッションにように現物の商品を見て価値判断がなされ、契約につながる「営業の場」は、ネットのようなバーチャル環境では不向きだということである。これは素材の質感や微妙な色合いが重視されるインテリアにも言えることである。


 やはり服を卸売るには、現物のサンプルをしっかり作り、それをリアルな展示会(インスタレーションやコレクションを含む)で、しっかりバイヤーに見せることから始まる。またその前の段階でも、完成度の高い作品ありきであるのは言うまでもない。



 自分を売り込むと言っても、デザイナーなら現物の作品があってからの話だ。また営業スタッフ(営業代行業者のレップに頼む場合も)が直にショップに売り込みにいくなど、地道な活動が不可欠である。


 そうした中で、すでにビジネスで成功しているデザイナーが別のデザイナーをバイヤーに紹介してくれるという連鎖が生まれ、ビジネスにつながっていくのである。サイトが増え過ぎているからこそ、現物に対する信頼がより重視されるのは言うまでもない。


 ファッションをビジネスにする以上、クリエーションを形にし、マーチャンダイジングを施し、セールスを行って、オーダーを受け、生産に入り、卸という仕組みは変わらない。


 売名の段階でネットに頼るのは少々虫が良過ぎるし、それが平気でビジネスに発展すると考える業者はリアルなクリエーションをあまりにバカにしていると思う。穿った言い方をすれば、こうしたサイトには別の目的があるような気がしてならない。


 ネットですべてが事足りるなら、なぜ有能なアーチストがギャラリーを借りて個展を開くのかということである。競争が激しい欧米ですら、そうなのである。


 コレクションもインターネットのサイトも、それは商品をアピールし、販売するための手段でしかない。デザイナーこそ、それを肝に命じるべきである。

 


クリスマスデコレーションを考え直してみよう。

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 12月とともにクリスマス商戦がピークを迎えている。1年でいちばん消費意欲が盛り上がるだけに、各店はあの手この手で集客にしのぎを削る。でも、クリスマスと言えば「これ」というベタ過ぎるデコレーションには、いささか食傷気味の感もある。


 サンタクロースの衣装が「赤」になったのは、コカコーラがプロモーションのために自社のコーポレートカラーを使ったというのは有名な話だ。当時としては、それこそ画期的なアイデアではなかったかと思う。


 時代が移り変わると、巷にあふれるクリスマスのデコレーション、ディスプレイ、各種媒体のデザインのマンネリ化は否めないようで、街行く人々の注意や興味につながっているのか。また、販促につながる効果があるかは、疑問である。


 ファッション業界、特にアパレル小売業には、「リテール・プロモーション」という手段がある。ただ、日本ではまだまだ理解されているとは言いづらい。ほとんどがツリーやオーナメントによるもので、最近ではイルミネーションというややオープン化した手法で完結している。


 筆者がマンションアパレルにいる頃、日本のアパレル専門店の巨塔であったワールドの「リザ」と「鈴屋」。リテール・プロモーションでは両社は際立っていたし、仕事をしていた90年代半ばのNYではこの考え方が定着していたので、ずいぶん参考にさせてもらった。


 例えば、店内販促用の「エクステリア・グラフィック」というカテゴリー。所謂、二次元でプリントしたものだ。次に「マーチャンダイジング&ディスプレイ」。商品そのものパッケージや展示である。3つ目が「テイクホーム」で、紙袋やキャリーバッグだ。


 他にも壁や天井、フロアなどが媒体のポジションになり、それらをシーズンごとに使い分けていろんな販促展開をするという考え方である。尤も、店舗やビルをトータルでみてプロモーションを行うには、より引いて見た感覚でデザインを考えなければならない。


 こうした作業には、二次元でプリントする「グラフィック」と言っても、チラシやカタログ、せいぜいポスターしか制作していないデザイン感覚では厳しいだろう。クリエーターにはオープン広告や3Dに近い制作能力が求められるということである。


 米国ではこの辺の線引きがしっかりしているが、日本ではまだまだ曖昧なところは否めない。それに日本のクリスマスプロモーションは最近、イベント化してきている。LEDライトによるイルミネーション、さらに今はプロジェクションマッピングが大流行りである。


 確かにこうした装飾やコンテンツは、「人を集める」「注目させる」という広告的意味で、多用されている。でも、どこまでセールスプロモーション、いわゆる販売促進につながるかは疑問である。


 特に自治体や商工会議所、デベロッパーがこうしたイベントにカネをかけながらも、各小売り業、店舗には「独自で販促を行ってください」ということには非常に違和感を憶える。その前に納税者や会員、テナントへの営業指導としてヘルプするのが先ではないかと思うからだ。


 まあ、文句ばかり言ってもしょうがない。小売業にもかつてのリザや鈴屋のようにクリスマスプロモーションを見直す面は大いにあるだろう。では、実際にどうすればいいのか。それはまずお客さんへの販促ポジションはどこかを考えてみることである。

 

 大きく分けると、店舗の場合、ウィンドウ、壁面、天井、フロアの4つである。最大のポイントはウィンドウだ。最近の店舗ではウィンドウを設置しないところもあるが、筆者はお客の視線を惹き付け、洗練されたVMDを構成するには欠かせない場面だと思う。


 欧米のラグジュアリーブランドがその価値を高めているのは、ウィンドウのディスプレイが秀逸だからという面もある。そのため、クリスマスのデコレーションに力を入れるブランドは少なくない。これには小売業者もお客も意外に気づいていない。


 ただ、有名ブランドのようにカネをかけたからと言って、必ずしもいいデコレーションになるとは限らない。やはり自店がアイデアを駆使し、思い思いに表現してみることが先決だ。細かい作業が必要だと思うと敬遠しがちだが、デコレーションは大胆な表現こそインパクトが出る。


 一例をあげると、タペストリーなんかも大いに復活させていいと思う。最近は販促ツールを制作するデジタル機器が発達したことで、ツール制作も随分コストダウンできるようになっている。


 PCでサイズを決めてデザインすれば、紙から塩ビのシートまで自由にプリントアウトしてくれる。しかも、1m×1mがカラーで3000円程度だから随分安くなった。昔ならB全のポスター1枚を印刷するのにいくらかかっただろうか。雲泥の差である。だから個店にも推奨できるのだ。


 クリスマスモチーフのデザインを起こし、塩ビシートに出力する。後は巻物のように上限に芯をつければ、天吊りは可能だ。芯にする丸木やつり下げる天蚕糸は、100円ショップで簡単に手に入る。


 肝心なデザインはどうだろうか。オープンにディスプレイされているクリスマスツリーはありふれて、インパクトはない。オーナメントでデコレーションし、スノースプレーで演出したところで然りである。インパクトを出すには引き算のデザインで、できるだけシンプル化するのだ。


 もみの木をモチーフにするなら、極限までデフォルメしてはどうだろう。それをプリントアウトしてパネルに貼り100円ショップに売っているLEDライトを仕込めば、即興でイルミネーションタペストリーができる。


 いくらグラフィックソフトが高度な表現力を持つと言っても、光の軌跡を表現するまでには行かない。これはやはりリアルなライトの方がふさわしい。


 今は身近にいろんな資材が溢れている。アイデアさえあれば、それを利用していろんなデコレーションを作ることは可能だ。むしろ今はコストをかけずに、いろいろと面白いツールが制作できる環境にある。


 何でも業者に任せるのではなく、まずは自店でやってみることがクリスマスプロモーションを活性化される第一歩ではないかと思う。

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