HAKATA PARIS NEWYORK

今のファッションを斬りまくる辛口コラム

2015年06月

本業はファッション、グラフィックなどデザイン関連のクリエイティブディレクター。創る側の視点で今のファッション関連の事情を評論する。マスメディアはもちろん、業界紙誌も扱わないテーマに踏み込む。

既成服とオーダーの間を狙う。

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 先日、繊研新聞のネット版、繊研plusに「40~50代女性主力の新市場」と題したシリーズ企画が掲載された。


 今年も来ましたか。というか、業界系メディアも、もうこれしか打つ手はないのかって感じがする。


 ヤングマーケットがボリュームからバジェットまで行き着き、売上げ、利益ともに厳しい状況。逆にヤングの頃にトレンド、上質な服を着てきた40~50代のミドルエ-ジでは、ボリューム化した今の商品には飽き足りないとの声は少なくない。


 そのため、メーカーや小売りでもかつてのリモデルやヒットブランドのリプロの話が出ることもあるが、具体的にどんなデザインの商品がいいのか、ここ数年は暗中模索の状態が続いている。


 ナチュラルでリラックス感のあるものは、無印良品やグローバルワーク、ニコアンドなどがSCを中心に出揃っている。が、カジュアル過ぎて、クオリティも今イチ。当然、価格は安いから、シーズン頭に飛びつくというまでにはいかない。


 駅ビル向けのセレクトショップでは、フレームワークやユナイテッドアローズ・GLR、バンヤードストーム、サロンデュラトリニーテ/ディッシーがある。


 フレームワークやバンヤードストームはトレンドを押さえクオリティもそこそこ。ただ、カジュアルの域を脱していないので、街着志向、価格対価値ではどうしても購入に二の足を踏んでしまう。


 GLRは街着にはなるが、SPA路線でマスマーケット狙いが色濃い。この夏のレコメンドアイテムが「ガウチョパンツ」って、ユニクロも作ってんだろうと、突っ込みたくなる。


 サロンデュラトリニーテ/ディッシーは、値段もそこそこにトレンドも追っかけ、リラックス感もある。ただ、40代にとっては上半身、下半身のどちらかにコンプレックスがあると、どちらにボリュームを持たせるか。スタイリングが容易ではなさそうだ。


 番外編として、地場SPAのリンクイットが展開するブージュルードがある。30代狙いだが、旺盛なコンサバ感と値ごろな価格帯で、40代までしっかりつかんでいる。


 セレクトショップやサプライヤーなど業界側の評価は、一様に「おばさんクサい」だ。でも、だからこそおばさんにはウケているわけで、年商100億円規模のマーケットを獲得しているのが何よりの証拠。だが、好きになれない層がいるのも確かだ。


 50代になると、SCや駅ビルではまずお目にかからない。というか、現状ではデベロッパーも百貨店に譲っている状況だ。


 ところが、百貨店ではシャネルやグッチ、プラダといったラグジュアリーブランドを除き、サイズ対応型カジュアルか、あるいは高級プレタの域を脱しきれていない。


 DC系のレキップ、wbを含め、NBはコンサバエレガンス路線を引きずっているので、セレクト系のショップブランドを卒業した層の受け皿にはなり得ていない。


 結局、カジュアル、リラックス感を追求してしまうと、繊研plusの写真にあるような天然色素で染めたような工芸系ブランドに落ち着いてしまう。良いとこ、プランテーションくらいだろうか。45Rはジーニングカジュアルだから、オフィシャルは難しい。


 街着対応では、ブレインピープルのようなセレクティングもあるが、ファッションアイテムはコンサバ寄りで、化粧品や食品など抱き合わせて集客している状況だ。


 マーガレット・ハウエルにしても、インポートブランドというプレステージ性で売れているわけで、服そのものが持つ完成度ということではないだろう。


 店頭で商品を見れば、エージに対するフォーカスは多少ボケていく。また、セレクトショップの販売戦略も別にエージで区切っているわけではなく、来たお客さんなら拒まずに接客するはず。たが、商品がストライクかというと決してそうではない。


 ファッション雑誌と見ると、さらにはっきり線引きされている。 ヴォーグやシュプール、ヌーメロといったモード誌は、取り上げるのはコレクションブランドを主体としたハイファッション。


 エージレスだが、イメージ先行で実需向きではない。先日、NHKの女子アナも言っていたが、誌面を小さくしているものもある。規格を小さくして印刷コストを下げ、何とか生き残ろうということで精一杯なら、ファッション発信どころではないだろう。


 リアルなファッションスタイル誌では、 40代狙いは小学館のドマーニ、光文社のストーリー、鳴りもの入りのドレス、集英社のマリソルと並ぶ。が、これらもインポートを含め、メジャーなブランドのラインアップに終始してしまっている。


 読モスタイルや着こなし提案もあるが、感性が磨かれ成熟した40代、50代にとって、今さらブランドオンリーでは情報量として物足りなさも感じているのではないだろうか。それが雑誌が売れない理由の一つでもあるのだが。


 その点では、アンアンの系譜を継ぐGINZAやクロワッサンも見逃せないところだが、スタイリストのリサーチ不足か、アパレル側のプレス体制が脆弱か、中々目新しいブランドが発掘されていない。というか、不在ということではないか。


 どうしても、ザラやユニクロといった低価格ファッションでは、捕捉できない40~50代のマーケットは一定量あるはず。


 ただ、「ある」と言っても、売れるために必要なデザイン、サイズ感(パターン)、素材や縫製といったクオリティ、プライスライン、販路などを総合的に考えざるを得ないから、熟慮すればすれほどターゲットにフォーカスしづらくなっていく。


 それが繊研plusが書いているように「一筋縄ではいかない客層」ということだ。


 ワンピース1~2万円のゾーンが売れているのは、ブージュ・ルードがまさにそれである。しかし、それではマスマーケット狙いになってしまう。


 それで満足できない層にすれば、高くても良いから気に入ったものがほしいのである。


 素材や縫製のクオリティは下げなくていい。だから、プライスラインは上げ止まる。当然、デザインも秀逸でないと着る気がしない。結果、インポートのコレクションブランドしかないのだが、あまりに高過ぎると手が出ない。


 こうした40代、50代の声なき声を拾い集めて、形にしようというムーブメントが登場している。それは膠着したファッション業界の発想ではできないことから、門外漢であるITのプロジェクトリーダーたちが進出している。


 彼らがそんな大人の女性にアプローチし始めている。ネットのグローバル環境を生かし、九州の熊本で活動を始めている企業もあるようだ。


 全国の縫製工場とアパレルデザイン側とファッションリーダーをネットでつなぎ、市場ニーズを形にしてサンプルを仕上げていく。あとはいかに営業をして量産に結びつけるかなのだが。


 トレンドの移り変わりが激しいヤングなら難しいが、年2回のコレクションブランドになれたアダルトなら時間的な猶予はあるだろう。


 ただ、こうしたシステムが既存アイテムのサイズ調整やデザインの焼き無しであっては、何の意味もない。あるいはメディアコラボーレッションくらいのレベルでは、彼女たちの感性は満足させられないと思う。


 量産、OEMやODM、QRといった既成概念からはずれる。既成服とオーダーメイドの中間的な服づくりで、大人のトレンド切り込むということか。そんな時期に来ているのではないかとも思う。


 ファストファッションやチープなSPAはいい加減に飽き飽きした。年に何着も必要ないから、気に入ったものがあれば、大枚はたいていい。いろんな服を着てきた大人の女性だからこそ、ある程度の理解は得られるのではないかと思う。


専門店系アパレルは復権するか。

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 5月中旬、アパレルメーカーのワールドが直営の500店舗を閉鎖し、全体の15%にあたる10~15の不採算ブランドを廃止すると発表した。


 大手アパレルと言えども、構造的なファッション不況からは抜け出せず、大胆なリストラ策を講じなければならなくなったと言うことである。


 経済紙誌系メディアは、かつてのワールドについて「1990年代に入って成長が加速、特にビジネスフォーマットをSPAに転換し、百貨店やSCに売場を確保したことが成長の原動力になった」と伝えている。


 それが「リーマンショック以降は、1世帯当たりの被服費支出額が2007年には12,933円だったものが、11,983円に減少するなど、財布の紐が固くなった」こと。


 また、「ユニクロのような低価格業態の台頭で、 中価格帯中心のワールドに恩恵は届かない」ことが、不振の原因と分析している。


 被服費支出が1000円くらい減少したからと言って、それがワールドが低迷しだした大きな要因とは思えない。ただ、百貨店やSCへのショップ展開が同質化競合を生み、高級品もなく値ごろ感もないワールドは、不採算店を増やしてしまったのは確かだろう。


 つまり、いつの間にか量産した中途半端なブランドを消化するだけの出店戦略に陥ってしまったということである。


 ネット販売という新たな販路拡大も力不足と言われる。もはやファッションビジネスでは当たり前で、ブランドによってはそれが主力のものもある。こうした戦略への遅れが売上げアップの芽を削いでいるということだろうか。


 それも量産在庫の単なる消化チャンネルに過ぎないと見れば、販路拡大することがかえってブランド価値を下げ、陳腐化を招く恐れもあると、個人的には思うのだが。


 経済系メディアの論調は、会計レポートや現状を分析し、不振要因を読み取るだけだか。もう少し、ワールドが不振に陥った元凶を考えてみたい。


 そもそも、ワールドとはどんなアパレルなのか。これまで受け継がれて来たDNAを見ると、不振脱却のヒントが見いだせるかもしれない。


 アパレルメーカーとはファッション衣料を企画製造し、小売店に卸販売する企業を差す。それらを取引先で分類すれば、専門店系アパレル、百貨店系アパレル、量販店系アパレルとなる。


 ワールドはもともと専門店系アパレルの部類に入り、繊維や製造産地を背景として神戸に本拠を置き、全国各地の「高級ブティック」と取引して成長した。


 いわゆる中高年のお金持ち女性を顧客にもつファッション専門店で、ワールドはそうしたお客をメーンターゲットに上質でリッチ感のあるコンサバ&エレガンスのファッションを提供し、売ってもらってきたのだ。


 そうした戦略が日本の高度成長とうまくシンクロし、アパレル、またブランドとしてワールドのステイタスを築いていったと言ってもいいだろう。


 「ルイ・シャンタン」のようなブランドはショップ化し、販売力のある専門店にFC経営を任せることで拡大した。一方、「リザ」という小売り業態も開発し、自社ブランド編集による直販体制を整えて、百貨店や商店街への展開にも乗り出したのだ。


 営業スタイルは取引先を対象に展示会を行い、商品を仕入れてもらう。従来はその頻度が春夏、秋冬の年2回だった。バイヤーは半年以上前にオンシーズンに何が売れるかを決めて、商品を発注しなければならなかったのである。


 ところが、ワールドとは対極をいくDCブランドの登場、ラルフ・ローレンやジョルジオ・アルマーニなどインポートの進出、ヤング向けのセレクトショップやストリートファッションの市場創出等々、ファッションマーケットは時代とともに成熟した。


 当然、選択肢が増えてお客の嗜好は多様化し、いろんなテイストの出現で目は肥えていく。マーケットが成熟する中では、大手アパレルと言えど、お客が求める商品を短サイクルで作っていかないと、成り立たなくなったのである。


 ワールドがメーンの取引先であった地方の高級ブティックは、市場に成熟により次第に勢いを失っていった。あるものはヤングブランドなどのFC運営に切り替え、あるものは取引条件がゆるい弱小アパレルにシフトしていった。


 もっとも、経済系メディアは報道しないが、地方の小売り専門店では、こんな光景がずっと繰り広げられていたのである。


お客:「こんど、PTAがあるから、お洒落なワンピースがほしい」

販売員:「これがいいですよ。メーカーは◯◯◯◯だし」

             : 

お客:「これ、いただくわ。でも、今、お金がないから、来月でいい?」

販売員:「ええ、お得意さんですから…」


 ある種、酒販店の商売とも似た部分があるだろうか。酒屋はお客の自宅に酒やビールを届け、空瓶を受け取りに行く時に「ツケ」を回収するスタイル。それをカバーし、現金収入を得るための手段が法律の間をついた角打ちだったとも言えるが。


 まあ、ファッション専門店でも、顧客商売として「掛け売り」が行われていたのは事実だ。あるいはクレジットカードがまだインプリンターを利用している時代、購入限度額に達したお客の伝票を1ヵ月先送りしていた店も、あったくらいである。


 販売員は売上げがほしい、店側も大目に見る。だが、メーカーに支払う現金はない。景気が良ければ、2~3店舗でそうした問題があっても、全体収益の範囲内でカバーすることはできた。


 ところが、成長が鈍化すると、そのしわ寄せはもろアパレルメーカーが被ることになる。営業マンが地方の専門店に集金に行くと、オーナーがレジをあけて「今、お金が無いのよ」と、露骨に言われたという話を聞いたのは一度や二度ではない。


 相手は高級ブティックと言えど、中小零細の小売業者。売掛金が回収できずに、焦げ付いたのはニュースにならずとも、相当数に及んでいたのではないか。


 こうした状況下で、ワールドは卸部門を縮小する一方、オペークやアクアガールのようなSPA複合型、SPAバイイング型のセレクトショップを開発したが、大半のブランドは完全SPAへと舵を切っていった。


 というか、アパレルとして商品を確実に現金化していくには、自社で商品を企画製造し、自社の店舗で販売するというシステムが手っ取り早かったということである。


 店頭の情報はPOSによって企画デザイン部門にフィードバックされ、売れている商品はQRですばやくフォローできるから、収益を上げられる。当然、すべて自社ライン上で売上げ管理ができるので、売掛金の回収には困らないし、焦げ付きの心配もない。


 こうしてワールドはそれまで手薄だった百貨店市場に食い込み、また値ごろなファミリー向けや雑貨といった業態で、SCにも販路を広げていったのである。


 でも、それは卸出身のワールドに販売力が付いたという意味ではない。販売員派遣専門会社まで作ったにしても、販売員という人間は簡単に育たないし、システムが顧客を増やすわけでもない。


 小売りのファッション専門店には、代々小売りをやり続けた中でしか培かえない技量があり、その延長線上でお得意さん、固定客、顧客が生まれていくのだ。


 百貨店との取引は商品を買い取らない消化仕入れであり、派遣販売員の給料や返品分のコストが価格に転嫁される。さらに長引く不況で、百貨店は売価の低下させるが利益を確保したいがために、アパレルは原価率を圧縮せざるを得なくなっていった。


 こうした手法をとる中で、素資材の調達やアジア生産でのコストダウンが助長されるようになり、専門店系アパレル時代と比べると、商品のクオリティも下がっていった。ワールドもこれに近い状況だったはずである。


 一方、ワールドは小売り進出で内装費や保証金などの出店コストも嵩んだはずだ。にも関わらず、販路拡大による売上げ増を真の販売力と過信し、収支のバランス感覚が麻痺していったのではないか。今頃になって、不採算店と言い出すのは、あまりに遅過ぎる。


 SPAシフトの代償もある。小売りに注力するため、アパレルとしての上質なものづくり、プレステージ性をもつブランド開発、商品のリッチ感が弱体化したことだ。一部はオペークやアクアガールで展開されてはいるが、ファッションとして目立つほどではない。


 大半のブランドがSPAにシフトし、POSとQR頼みのビジネスが主導されていく中、そうした商品を購入していたお客は見過ごされ、次第に上顧客の離反を招いたのは否めない。これらすべてがリストラに踏み切らざるを得なかった元凶ではないだろうか。


 ワールドの主要顧客だった層は高齢化し、シーズン毎に高級服を買うお客は確実に減っている。ただ、マスマーケットではなくなっているが、まだまだファッションにこだわりをもつ60代、50代は全国各地に存在する。


 オペークは丸の内、大阪、京都、広島の4店舗のみ。上質な商品を求めるお客は全国に点在するわけだから、ネットとは違ったアプローチでコンタクトできないものか。


 店舗閉鎖やブランド廃止だけなら、それは負の戦略である。少なくとも収益を回復するには、売れて利益が取れる商品を生み出さなくてはならない。


 SPAを続けるにしても、「今のファッションはつまらない」と感じている洋服好きの意見に耳を傾けるくらいのことは必要だ。でなければ、もともと小売りをよく知らずに入った袋小路から抜け出すことは容易ではないと思うからである。


 バブル崩壊、平成不況、リーマンショックと、景気の低迷はあれど、売れているブランドはある。決して効率に走らず、確かな商品を少しずつ作って売り、確実に利益をとっていく意思が脈々と受け継がれているアパレルブランドは存在する。


 小売り側はクレジット審査が厳しくなっている。レジを通さないと、商品は持ち出せない。もう過去の商慣習は通用しないということである。であれば、アパレルにとっての与信環境は改善されているはずだ。


 専門店系アパレルの復権とは言わないまでも、そのDNAがワールドの中に少しでも残るのなら、少しずつ増殖することはできないものか。そこから具体的に正の戦略として何をなすべきかが、見えてくるかもしれない。


SC業態+日本製が出す答えは。

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 ビームスがSC向け業態として2012年から展開する「ビーミング・ライフストアbyビームス」が、この秋から日本製の「ビーミング・ベスト・ベーシック」を発売するという。


 振り返ると、都市部展開がメーンだったセレクトショップがSC向け業態を開発した草分けは、ユナイテッドアローズの「ユナイテッドアローズ・グリーンレーベル・リラクシング(GLR)」だろう。


 20代でユナイテッドアローズで買い物していた客層が結婚して家庭をもち、独身のときほど自由に買い物できなくなったが、引き続きUAテイストのファッションは楽しみしたい。そんなニーズにフォーカスしたのが、GLRだった。


 仕入れが中心となるUAに対し、GLRはOEMやODM中心のオリジナルでまとめたSPA型セレクトで、価格帯もファミリーが買いやすい値ごろ感のあるゾーンでまとめていた。


 初期の頃の品揃えはトラディッショナルだけでなく、ストリートやモードのエッセンスが入ったデザインアイテムも投入。店舗は百貨店やSCにあったので、UAよりも入りやすく、買いやすかった。


 筆者もストリート寄りを何度か購入し、その中にはベトナム製だが10年以上穿いているパンツもある。SCで1本買って帰る途中に大人買いの虫が動き出し、そのまま百貨店のショップに寄ってもう1本発注したほどだ。


 SPA化したとは言え、さすがユナイテッドアローズ。マーケットをしっかり確保する企画力は侮れないなと、当時はずいぶん感心したものだ。近年とは大違いである。


 そんなUAに遅れること10年あまり。ビームスもようやく重い腰を上げたのか、あるいはデベロッパー側のたっての願いを聞き入れたのか、SC業態に乗り出した。それがビーミング・ライフストアだ。


 ターゲットはGLRとほぼ重なるだろう。お客側の購入目的も共通するはずである。ビームスとて、20代メーンだったお客が世代交代する中、30代、40代を置き去りにするわけにはいかない。経営戦略上、捕捉したいのは当然だ。


 特にここ数年、都市部のビームス業態を見た感想では、ヤングの集客に窮しているように感じていた。いくらセレクトの雄と言えど、マーケットの変化には逆らえない。


 とすれば、ブランド力を駆使して「在庫処分価格」で集客するアウトレットに舵を切ったのは、致し方なかったのかもしれない。ただ、それが「専用品」販売にまで及んだことでネットを中心に流布されてしまい、ブランド力の低下を生んだのは誤算だったと思う。


 ならば、最初から生産コストを下げたオリジナルで価格勝負する、SC業態の方がはるかに顧客の信頼を損なわなかったのではないだろうか。


 むしろ、ビームスほどのブランド力をもつ企業が、 SCがマーケットを掘り起こした随分後に、ビーミング・ライフストアを開発したのは、遅きに失したと言わざるを得ない。


 マーケット開拓の遅れを、今度は「メイド・イン・ジャパン」で取り戻そうという思惑だろうが、果たしてうまく行くのだろうか。


 ビーミング・ライフストアは、出店から3年で既存店が21店舗にも増えた点を見ると、一定の評価は得ていると思う。ただ、SCマーケットはどんどん裾野が広がりつつあり、ビームスコアのお客だけ狙うのでは限界があるのかもしれない。


 ユニクロがあれだけSCでも集客できているのは、やはりある程度のマスを意識したMDやプライスゾーンを実現しているからだ。


 個店のレディス業態の中には、SCとは言え専門店系アパレルのセレクティングで、顧客を捉まえているところもある。SC=チープをいうイメージを逆手にとって、上質な商品を好むマーケットを掘り起こしたところもある。


 ならば、ビームスとてSCの集客力や市場を生かして、ビームスを知らない層にもアプローチしていく。そのカギが日本製のビーミング・ベスト・ベーシックということになるのだろうか。


 では、今秋発売のそれに、お客はどんな印象を受けるのだろうか。アイテムの写真を見る限り、アメカジの定番デザインをSCというグレードに合わせてオリジナル化したと見受けられる。


 チノパンならディッキーズ、トレーナーならチャンピオン。そんなブランドをビームスオリジナルに焼き直したという感覚だろうか。そこに他のSC業態ではまず見られない「メイドジャパン」の付加価値を付けることで、競争力を持たせようという狙いだろう。


 商品についてはまだ発売前だし、顧客ひとりひとりの期待や思いを聞いたわけではないので、あくまで憶測の域は出ない。だが、ビームスファンならだいたい想像できるだろうから、こんな意見になるのかもしれない。


 「日本製だから、安心して購入できる」「ユニクロほかのSPAまでは落としたくない。この辺の価格帯なら許容の範囲」「ビームスの世界観を維持していることが重要。価格はあくまで選択肢の一つ」「SC業態にしては、価格が高かずぎ」etc.


 ざっとこんな感じだろうか。個人的な意見とすれば、海外生産より1~2割高く設定するということだが、それはメイド・イン・ジャパンのコストが乗るわけである。割高だからと言って、外国製よりクオリティが特別に高くなるわけでもないだろう。


 その辺の微妙なところは商品ができてみないと、何とも言えない。


 だから、ビームスファンはある程度、納得して購入するかもしれないが、ユニクロやグローバルワークなどで購入し、満足しているお客まで呼び込めるかと言えば、難しいかもしれない。


 アイテムはカットソー、シャツ、ボトムでも、キレカジ系だろうから、むしろITやマスコミなど「ビジカジ」のマーケットを捕捉する方が確実かもしれない。完全なカジュアルダウンしたアイテムなら、SCにはいくらもあるからである。


 既存の出店先が「ららぽーと」や「イクスピアリ」といった都心に近いSCを選んで出店しているところを見ても、なおさらだ。つまり、完全郊外のリージョナルSCでは、マーケット的にターゲットをセグメントしづらいと思う。


 だから、攻略する市場は都市部に近い「アバーバン立地」。都市に近い方が人口集積も高いし、ビジカジを必要とする客層は多いだろうからである。地方に住むお客はネットで購入するしかないようだ。


 わが街福岡にはまだ出店されていない。完全郊外のSCはイオンモールやゆめタウンだから、まずないだろう。ただ、福岡市は支店都市で人口150万人を突破した。ビジカジのマーケットは十分に存在する。


 これまでの展開が都市型SCに限定されることを考えると、可能性としてはキャナルシティ博多か、来年開業のマルイ博多か。リバーウォーク北九州がギリギリで合格だろうか。


 JR九州が駅ビルのアミュプラザを2012年の博多駅に続き、今年は大分駅にも開業した。ここには「ビームス業態」が定番でリーシングされている。


 ファミリー向け業態のため、JR側はほしいコンテンツの一つには違いないが、カニバリゼーションを考えると、出店は難しい。


 既存店がクローズドモール中心ということを考えると、中央区六本松の九州大学跡地で計画が進むCSCも無理と思われる。東区の人工島がお台場のようにようになれば別だが、まず期待できない。


 商品がデビューしたら東京出張時にでも、見て着てみたいと思う。という落としどころで、今回は締めることにしよう。

Y-3とUAの明暗は、代表者の感性差。

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先週は筆者にとって注目するニュースが二つあった。一つは2002年のデビューの時から注目しているブランド、Y-3が世界
的に売上げを伸ばしているという話題だ。


 2014-15年秋冬コレクションから舞台をNYからパリに移したこと、また、世界的にスポーツのラグジュアリーブランドに注目が集まっていることが要因らしい。


 巷にはチープなSPAカジュアルが幅を利かせ、エッジの利いたモードブランドがほとんどない。


 そんな中、Y-3はスポーツファッションとは言え、Y’S、ヨウジヤマモトというDCブランド系譜をもつところに、惹き付けられるファンは少なからずいるということだ。


 ㈱ヨウジヤマモトは2009年10月8日、民事再生法の適用を申請し、経営破綻した。負債総額は60億円にも達したが、投資会社インテグラルの支援で、直営店および百貨店インショップ、国内外の卸事業は継続されている。


 当時、パリコレから緊急帰国し、記者会見に臨んだ山本耀司さんの姿は印象的だった。かつてない悲壮感、堕ちたカリスマイメージetc.。でも、ブランドの世界観、デザイン、クリエイティビティを愛してやまないファンは世界中にいる。だから、今がある。


 ものづくりについては、Y’S、ヨウジヤマモトはメイドインジャパンを基本に、一部のアイテムにはフランス生産なども投入されている。しかし、Y-3は中国、タイ、トルコなど生産基地は多国籍に及ぶ。


 コラボ先であるアディダスの素材を使用したり、提携工場のラインを使ったりすれば、そうなるのは当たり前だ。でも、実際に何着も着てきたが、どの国の製造であっても、クオリティには全く問題はない。


 メイドインジャパンにこだわると、製造コストが高いため販売不振になれば利益率が悪化する。一度、苦い経験をしているだけに、同じ轍はもう踏めない。だから、コスト削減できる多国籍生産は、インターナショナルブランドとしては当然の選択だ。


 投資会社の狙いはブランドを再生し、企業価値が高まった時点で転売しようという目論見だろうが、ファンにとってそんなことはどうでもいい。ブランドが存続して、好きなアイテムを店頭で見つけて購入し、着ることができればそれでいいのである。


 「韓国のアイドルグループBIGBANG(ビッグバン)のリーダーG-DRAGON(ジードラゴン)が着用したスニーカーを求めて店頭に行列ができる」という報道もあるが、俄ファンの動向など取るに足らない。


 目下、Y’S for MENが休止中だけに、男性ファンはヨウジヤマモト、はてはY-3にカタルシスを求めているのは、間違いないだろう。


 Y-3とてシステムは、古典的SPAであることには変わりない。だが、隅々にまで妥協のないデザイン性、それが生み出すもの作りの秀逸さ。DCファンはそんな世界観が単純に好きなのである。耀司氏が引退するまで、ファンの気持ちは揺るぎないと思う。


 もう一つの話題は、ユナイテッドアローズの苦戦ぶりである。2015年3月期の連結業績は、営業利益が前期比16.8%減の113億円。6年ぶりの減益に落ち込んだ。


 決算報告書よると、「価値と価格のバランスを欠いた商品群」が店頭に並んだことによる売上げ不振。また、円安によるコスト増を吸収するため、秋冬のシャツやカットソーなど「定番品」を一律値上げしたことが裏目に出て、10月以降に客数が急減したという。


 これを受け、アウトレット店や催事セールを増やし、10~20%の値引き販売によって在庫処分や廃棄処分に踏み切ったため、粗利率が悪化したのだそうだが…。


 ユナイテッドアローズは上場企業であるだけに、投資家向けには苦戦の理由をきちんと説明しなければならないのは理解できる。しかし、ファッション業界的にみると、商品企画の段階で結果の発生は、わかっていても良さそうなものと感じる。


 「ユナイテッドアローズ・グルーンレーベルリラクシング」「ビューティ&ユース ユナイテッドアローズ」は、 UAの中では店舗数が格段に多く、稼ぎ頭と言ってもいい。 イメージこそセレクトショップだが、実質は完全SPAに近くなっている。


 SPA化したこの2業態はメーカーが企画した商品をバイヤーが1点1点吟味して仕入れる形態ではない。シーズンテーマとアイテムのアウトラインだけ決め、あとはアパレルメーカーや商社にOEMやODMで企画してもらっている方が正しいだろう。


 自社企画のオリジナルの方が仕入れよりも利益が出るから、上場企業としては当然その方向に向かう。本来ならセレクトショップだから、「価格以上に価値」を優先して商品を揃えるべきなのだが、現実は決算報告にある通りになってしまったということだ。


 ただ、筆者はもう一つの見方もしている。それは2業態の商品デザインが完全に「トラッド化」してしまったことである。特に昨年の秋冬のアイテムを見ると、コートにしてもセーターにしても、パンツにしても完全にトラッドなデザインとなっていた。


 しかも、クオリティをだいぶ下げているように感じた。円安で材料費や工賃が上がっているわけだから、適正利益を確保するには原価率を下げなければならない。


 利益率を高めるには量産が必要になる。当然、在庫消化を前提にすれば、結果そうならざるをえなかったではなく、最初から通販やアウトレット販売も見込んで生産しているのではないかと思えるくらいだ。


 2業態の売場に並んでいるのは、トラッド=当たり外れのないベーシックなアイテムばかりで、商品の完成度はさほど高くない。売上げ不振は、最初から通販やアウトレットを前提に生産していることを、お客に見透かされたからではないだろうか。


 セレクトショップを公言するなら、本来は選り抜かれたアイテムであるはずなのに、お客が期待するほどの商品でなければ、売れるはずがないのである。


 特にこの傾向は竹田光広社長が就任してから、顕著になってきたように感じる。


 一方、Y-3は山本耀司という類いまれなデザイン感覚と才能をもった一人のクリエーターによって創り上げられていく。今は経営の第一線からは退いたものの、商品化にまで首を突っ込んで厳しくチェックしている。


 だからこそ、デザイナーズブランドとして、秀逸なクリエイティビティ、高い完成度、妥協を許さないデザインが維持できるのだ。


 洋裁師の息子として東京に生まれ、ぎょうせいから慶応義塾大学の法学部と進み、文化服装学院を卒業後、デザイン活動を始めた。


 勉強しても簡単に入学できない大学と、技術を見つけなければ卒業しても意味のない専門学校。まさに環境が人を育てるという典型的な例である。


 旧㈱ヨウジヤマモトの時代は、カリスマデザイナーでありながら、クリエーター系の社長として君臨していた。この企業の基礎を築いたのは、まさに山本耀司氏本人である。その功績は決して色褪せることはないだろう。


 民事再生法に至ったのは、同社を発展・躍進させる段階のマネジメントで、それに携わるものが躓いてしまっただけに過ぎないのである。


 かたや、竹田光広社長は福岡県の生まれ。大分大学経済学部を卒業後、中堅商社の兼松江商に入社。同社が兼松繊維に社名変更したことから、商社マンとしてアパレルに携わり、その経験を買われてUAに入社したということになる。


 国立大卒のエリート商社マンから日本を代表するセレクトショップのトップに。そこで「今一度、ブランド価値の向上に取り組む」と言えば、実にカッコいい。しかし、今決算を見る限り、図らずもそうしたキャリアが通じない面を露呈したと思われる。


 商社マンとしてネットワークや人脈をもち、素資材や工場手配の経験から、ファッションビジネスに携わることはできるのかもしれない。しかし、トレンドがつかみづらく、マーケットが変化する中で、その経験が小売りに生かせるかは未知数である。


 今回の苦戦はそうした能力の限界が現れたということではないだろうか。


 ファッション業界人には経営者、バイヤー、デザイナー問わず、感度、感性、気づきがどこまでいっても求められる。時代のうねり、お客の変化、流行の移り変わりを見逃さず、瞬時にリアクションを起こして、方向を修正しなければならない。


 商品に対する感性能力は親から受け継いだ遺伝子はもちろんだが、その人間が育ち生活した環境にも大きく影響される。感度、感性、気づきは少なくとも22歳くらいまで培われるから、それまでにそうした環境に身をおかないと習得できない。


 だとすれば、どうだろうか。竹田社長がそうした環境に身をおき、感度、感性、気づきの能力が培われているかである。


 話は少しズレるが、4月16日に竹田社長が青春時代を過ごした大分市に「JR大分シティ」が誕生した。


 核テナントは2012年、博多駅に開業したJR博多シティと同じ「アミュプラザ」で、同じデベロッパーの力関係からリーシングされているテナントも共通するものが多い。


 「ユナイテッドアローズ・グルーンレーベルリラクシング」「ビューティ&ユース ユナイテッドアローズ」も、定番テナントとして顔を並べる。


 大分シティの関信介社長はメディアのインタビューに対し、「大分から新しいファッショントレンドを発信していければ」と語った。額面通り解釈すれば、それまでの大分にはそれほどトレンドを発信できるような商業施設がなかったということになる。


 九州の中では、ことトレンドファッションにはいちばん縁がなかった地域と言ってもいいのかもしれない。


 ただ、そんな大分だからといって、お客からそっぽを向かれたこの2ブランドを含め、通販でも購入でき消費者のほとんどが知るSPAブランドを揃えて、「何かトレンドの発信」なのだろうか。


 大分ではトキハ百貨店の前からは10分おきに高速バスが出発し、10年以上前から買い物客を福岡に持ち出してきたのである。


 「お客さんからすれば、何を今さら」である。関社長のコメントは全く失笑ものと言うしかない。言い換えれば、竹田社長はそんなファッションマーケットの大分で青春時代を過ごしたのである。


 とすれば、ファッション業界人に必要な感度、完成、気づきは、培われているのだろうか。それとも、今期の決算はそうした理由を如実に表したことなのか。


 竹田社長はある業界誌の対談で、「(UAの)オリジナル商品が付加価値でない存在になってきた今、商品力の強化、クリエーティビティの強化が大きな課題です。自社企画商品のクオリティアップやレベルアップは永遠の課題です」と、語っている。


 しかし、そうした言動とは裏腹に稼ぎ頭2業態の売場を見る限りでは、セレクトショップの商品とはかけ離れた量販&通販レベルのクオリティだ。また、トラッドSPA化というクリエイティビティとはほど遠い感度、感性に成り下がっている。


 筆者もUAでも購入したことはあるが、かつてはグルーンレーベルリラクシングも、ビューティ&ユースも、素材のクオリティが高く、モードまでは行かなくともそれなりにトレンドを打ち出したアイテムは存在していた。それが今では…である。


 それを竹田社長は気づいていたのか。気づいていたにしても、組織が肥大化した今のUAに、すばやく修正できるほどの機動力はないのか。


 結局、値下げやアウトレット消化しか手の打ちようがなかったということである。それではイオンなど量販店の衣料品売場で行われていることと何ら変わらない。


 もっとも、商品の劣化に気づいていなかったのなら、ファッションビジネスに携わる経営者としては、基本的な能力や素養を欠くことになる。


 対談で語ったように「永遠の課題」と言えば、経営者としてモラトリアムできると思ったのか。でも、それで株主や投資家がそれで納得するとは思えない。


 田舎の大学を卒業した経営者が理屈でファッションビジネスをコントロールしようとしても、送った大学生活のファッションライフが知れるなら、やがて必ず反動が来ると思っていた。その兆候がシーズンごとに顕著になっていると思う。


 国立大学卒、商社のエリートコースを歩み、ネットワークや生産背景、数値管理に長けていても、売場に投入する商品を一瞥しただけで売れるか、売れないかの見極めには、やはり鋭いファッション感性が欠かせない。


 そうした能力を欠く経営者に「ジャパニーズスタンダードを標榜したセレクトショップ」の威光とDNAを継承できるのかと言えば?を付けざるを得ない。


 そうした意味からも、Y-3の躍進はファッションの本質を語っていると思うし、UAの苦戦は小売り専門店の効率経営が限界に来ていることを指し示す。少し穿った書き方になったが、こうして見ると対立構造は、実にシニカルで面白い。


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