HAKATA PARIS NEWYORK

今のファッションを斬りまくる辛口コラム

2016年03月

本業はファッション、グラフィックなどデザイン関連のクリエイティブディレクター。創る側の視点で今のファッション関連の事情を評論する。マスメディアはもちろん、業界紙誌も扱わないテーマに踏み込む。

打ち上げ花火は要らない。

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 ファッションウィーク福岡も、主催者側も穿った見方とは対照的に、大した盛り上がりも見せずに先週末で終了した。的外れのポスター、むなしく旗めくフラッグ、賛同をでっち上げるための門外漢の参加店、ミーハー好みで中身がないイベント…。


 ファッション業界がますます疲弊していく中で、常套句の「服を買ってもらう」「活性化」を口実にしたところで、潤うのは利害関係者だけというのが、よくわかるイベント週間だった。


 行政はこの事業に多額の税金を投入しているが、行きつく先はメディア、芸能界、業者であって、地場業界が活性化する糸口すら全く見えない。参加した大手商業施設も所詮、主催者側の事業費を出してくれるスポンサーにでしかないことがよくわかる。


 ファッション業界が今、どんな状況なのか。ノー天気なイベント事業に隠れて実態はほとんど浮かび上がっていないのが、実情である。


 そんなことを考えながら、立ち寄った博多駅で、4月21日に開業する博多マルイが、「つながるプロジェクト」と題して、下取りキャンペーン&リユースマーケットを実施していた。オープンすれば、「競合」いや「共生」することになる博多阪急の目の前でである。


 博多駅前広場は所有するJR九州が「賑わい交流空間」として、観光PRや物産展、演奏会や発表会、行政や企業の社会貢献活動などに貸し出している。使用要領によると、朝の9時から夜の9時までのフル借用で、料金は全面使用が平日324,000円、土日祝が540,000円、2分の1使用が平日194,000円、土日祝32,4000円と、高額だ。


 マルイの場合は小規模なスペースだから、料金は平日、土日祝共通の54,000円の枠ではないかと思う。ただ、経費の問題ではない。マルイがオープン前から地元に密着しようという姿勢がとても感じられるのだ。


 下取り対象品は、衣料品、婦人靴(1回につき最大15点まで)。持ち込んだ下取り品1点につき、博多マルイで利用できる200円割引券と交換される。この割引券は同日1ショップの買い物合計税込2000円ごとに1枚使用できるようになっている。


 この開催にあたっては、地元の西南学院大学商学部の佐藤ゼミとタイアップしている。1人でも多くの人々に衣料品や靴を持ち込んでもらうために、ゼミの学生がリーフレットを作成し、さらに「マスクを使って、家内を掃除をして」との学生のアイデアで、大学と丸井のロゴが入った1000個のマスクも駅前で一緒に配布した。


 また、学生の声かけで50名以上の人々が賛同し、ゼミのツイッターではイベントを告知する動画を発信している。


 マルイにとっては、200円の割引券がそれほど販促、実売に結びつくとは思っていないだろう。むしろ、地元密着の中で資源保護やリサイクルといった社会的活動を先行させる一方、リユースを促進させることで市場の活性化につなげる狙いもみられる。マルイが経費をかけてそこまでやっている点は見習うべきだと思う。


 業界では下取りやリユースはどんどん広がっている。一時は紳士服量販店が実施していたが、ECの浸透で個人が新古や中古の商品を堂々と販売できるようになった。これまでリサイクルショップに買いたたかれていたが、時空を超えて「買いたい人」がいれば、相応の値段で取引される。それがプロパーの販売に影響を及ぼせば、好循環となるはずだ。


 リユースはまだまだヤング人気のブランドが主体だが、「大人向けの上質なブランド」も踏み出してもいいのではないか。中高年でも着ていない服はかなりあると聞く。それをタンス在庫にしておくのはもったいないし、リユース市場に乗せることが新たな販売機会を呼び起こせるかもしれない。


 大人向けブランドはヤングのように知名度はないが、専門店で販売しているような商品は高価格、ハイクオリティな商品が少なくない。であれば、リユース市場は十分にあると思う。それをどうして喚起していくかなのである。


 話をファッションウィーク福岡に戻そう。それこそ「服を買ってもらう」という大義があるのなら、チンケなイベントよりも購買環境の活性に踏み込むべきではないのか。服はどんどん売れなくなっている。これは紛れもない事実である。だからこそ、売るための施策が必要なのだ。リユースは間違いなくその一つになる。


 例えば、春先にイベントを実施するなら、冬物のセール中から1~2ヵ月程度リユースキャンペーンを張っても良いと思う。福岡中のショップ、専門店に呼びかけ、顧客から着ない服を集めてもらう、それを揃えてファッションウィークの間に大々的なリユースマーケットを開催するのだ。


 着ない服を持ち込んでくれた顧客には、福岡中の全店共通の買い物割引のチケットを渡せばいい。(将来的には電子ポイントになると思うが)ポスターやビラよりもはるかに経費はかからないで、効果が期待できる。なおさら、全店参加型のキャンペーンとなれば、エリア的な不公平感もない。


 マーケットの場所は、市役所前の広場か、岩田屋前、博多駅前が良いだろう。2年前のファッションマートでは、「クリエーションの発信」「バザールではありません」なんて大上段に宣言していたが、所詮、出店者の程度は知れた。そんなことは端からわかっていたはずだ。ノー無しの企画運営委員長が自分の権威づけに宣っただけで、本人も大方想像はついたはずである。現に自分の学校の学生には古着を売らせたのだから。だったら、最初からリユースマーケットにすれば良かったのである。


 リユース品を回収して、イベント期日までの商品管理は、市役所や商工会議所の空き室を利用すればいい。商品展開に必要な什器は地元メーカーや店舗業者から貸し出し提供してもらう。もちろん、提供スポンサー名は必ず告知し、マーケット開催中はエンドレスで名前を告知する。


 スタッフは大学生や専門学校生にボランティアで協力を願う。同時にリユースマーケットの派手なロゴマークをデザインしてもらい、採用する。もちろん、ロゴはウィンドブレーカーの背中にレイアウトしてユニフォームを作れば良い。


 同時にお客さんにリユース商品を持ち帰ってもらうためにリサイクルバッグも作り有料で販売する。もちろん、派手なロゴ入りだから街中に溢れるとキャンペーン効果は抜群だろう。経費がかかるのでSP衣料やパッケージのメーカーをスポンサーにするという手段もある。


 取引は1人何点までと点数を決めて無料で渡しても良い。おそらく、ストリートパーティなんかの俄イベントよりも、はるかに集客効果はあると思う。どんなリユース品が人気があるか、簡単なデータをとっても良い。それを学生にリポートさせることもできるだろう。そうすれば、福岡のファッションを売るためには何が必要かをショップ、お客さんの両方にアピールすることができるはずである。


 有料の場合は売上げを東日本被災者に支援して良いと思う。処分できない在庫は、リサイクルに回すか、アジアの発展途上国に寄附するという手段もある。とにかく誰かが喜んで着てくれれば服は甦るし、活性化の糸口にもつながる。


 リユース商品の回収にも学生のマンパワーを借りれば良い。地元の大学生がゼミを通じていろんな地域活動をしているのは、筆者もパンフレットを制作したことがあるので、よく承知している。


 むしろ、ファッションを学ぶ専門学校生ほど参加すべきではないのか。イベントショーのために服をデザインしたところで、企画、デザイナーの道が開けるなんて未だに考えているとすれば、業界知らずも甚だしいところだ。


 服離れでファッション業界は売上げ不振、アパレルメーカーはどんどん疲弊している。簡単にデザイナーへの就職があるはずもない。クリエーションや技術教育を否定はしないが、服が売れなければ、そもそもの展望が開けない。だからこそ、服を売るためには、買う側の視点で考えることも必要なのである。


 リユースに持ち込まれた服の回収に当たることで、「なぜ、着なくなったのか」「タンス在庫の理由は何か」「着るとすればどうすればいいか」等々。企画やデザインに当たりたい人間にとって、大事なことが学べるはずなのだ。


 福岡は商業の街である。ファッション業界は小売りが活気づくことで潤うのだ。そんなことさえ考えず、単なる活性化を口実にノー天気なイベントを行い、販促にもつながらない「物」の制作にカネをかけたところで、業界が活気づくはずはない。


 所詮、ファッション業界は、メディアや業者にとって行政から事業費を捻出させる打ち出の小槌にされているのがよくわかる。


 派手な打ち上げ花火を上げることほど無意味なことはない。売れる環境を創造するための地道な取り組みが不可欠なのである。博多マルイの愚直なまでの活動を見て、福岡に何が必要なのかをわかるような気がする。


後継なら可能性はある。

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 The FLAG ISSUE 「学生はファッション業界に夢を見る?」について。今回はメディアによって作られた虚像が崩れたことが、業界離れという反動につながったこと。また、実像は子供の頃から環境に身を置いていた方が理解しやすいことについて考えてみたい。


 筆者は商業の街、博多の生まれで、小学校の同級生には下川端通り、寿通りに店舗を構えるファッション専門店のご子弟がかなりいた。


 大学を卒業して、一旦アパレルの道に進んだ時、同僚や先輩たちは口々に「店をやりたい」と言っていた。それはオーナーであり、経営者であり、一国一城の主ということで、ファッション業界での成功を意味することだったのかもしれない。


 こうした考え方、価値観は1980年代から90年代初め、いわゆるバブル経済が崩壊するまでは業界ではいたって一般的だったと思う。しかし、平成不況に入ると、価値観が変わったというか、業界構図の変化とともにショップ経営よりも、業態や職種そのものに注目が集まっていった。つまり、雇用される側、賃金労働者ということだ。


 不況で地方の専門店がジリ貧になる中、台頭した中央のセレクトショップは、インポートを中心にバイイングして国産ブランドと編集し、バイヤーという職種は世界中のコレクションや展示会を巡るジェットセッターとしてクローズアップされた。ここで若者には「バイヤーってカッコいい職業」とのイメージが摺り込まれたと思う。


 マスメディアは「コレクションで買い付け」「これはうちの別注です」なんていかにも業界人らしい会話を臆することなく垂れ流した。実際には一介のショップがエクスクルーシブを要求する海外の有名ブランドと簡単に取引できるわけがない。


 1ブランドでシーズン仕入れが数千万円にもなると、それはセレクトではなくブランドショップだ。実際にはブランドメーカーとショップの間に商社や二次卸、インポーターをかませての仕入れで、ショップ側が主導権を握ったバイイングではなかった。


 マスメディアはそうした複雑な構造は伝えず、カッコいい仕事のイメージだけを煽り、若者に対してセレクトショップの「バイヤー」=凄い職業という虚像を作ってしまったと言っても過言ではない。


 ところが、大手のセレクトショップは人気を集めるほどにセレクトSPA(製造小売業)化していった。海外ブランドほど売れないリスクもあり、収益率は悪化する。それより、オリジナルの方が粗利益は高くなるからだ。ショップロイヤルティを持てばなおさらプライベートブランドの方が売りやすい。セレクトSPAではバイヤー職は残っているといってもごく一部で、大半は商社やメーカーと組んだオリジナル商品の開発担当になってしまった。


 本当のバイヤーなら実際に展示会に出向き、商品を自分の目で見て、仕入れるか仕入れないか、どう編集を組立てるかを判断する。しかし、規模が大きくなったセレクトSPAは商社やメーカーが持って来る大量をサンプルを一つ一つ確認することなどできない。スペックが書かれたアイテムの書類、いいとこサンプルの写真を見ながら商談する程度ではないのだろうか。


 結果、ルーマニア製の商品が「メイド・イン・イタリア」、普通のウールなのにカシミア100%というような「嘘」が平気で横行するようになってしまった。現物を見れば、判るはず、いや判らなければならないのにそうする術も時間もない。SPA化しても、イメージはセレクトショップのままでいたい。そんな見栄が産地偽装に走らせてしまった。社内ではわかっていた人間もいただろう。


 しかし、ある程度のキャリアを積んだ社員なら、それを告発すれば自分の立場も危うくなる。まさにサラリーマンとしての保身。そんな空気がまん延していたのも事実だろう。大企業になったがために病理に蝕まれていったのだ。


 一時はジェットセッターとして、世界中の展示会を回っていたバイヤーがいつの間にか、ステイタスもポジションも失ってしまう現実。真のバイヤーを続けるには、自分で個店を出すしか選択肢は無くなったのも否定はできない現実だ。


 大手アパレルも卸先専門店の販売力の低下、売掛金の回収不能リスクからSPA化していった。企画生産の仕組みはシステム化され、OEMやODMを活用してよりスピーディで、利益を残せるような構造に変わっていた。


 企画部でデザイナーがひとつひとつ商品をスケッチし、そこからトワルを作って、修正を重ねてサンプルを上げる。それを展示会でのバイヤーとの商談の末に修正を加え完璧な商品に仕上げ、小売店に卸す。そんな時間をかけた企画生産卸の態勢ではなくなった。


 学生がファッション業界に夢を見なくなったのは、マスメディアが作り出した虚像の化けの皮が剥がれ、こうした業界が抱える構図、病巣がインターネット時代において流布し、少しずつ理解され始めたということだろう。


 いつの時代でも企業は効率を追う。売れると猫も杓子も同じ商品や業態を作り始める。それは競争を激化させ、勝ち負けをハッキリさせ、やがて適正な規模に落ち着いていく。つまり、若者の多くがファッション業界に夢を抱かなくなったのは、業界としてはむしろ適正化した証拠ではないだろうか。


 確かな信念もない若者が夢を煽られ、虚像に騙され、まやかしを鵜呑みにする。そんな業界で真っ当な技術や能力が身につくはずもない。競争激化の中で淘汰されれば、その先のポジションはないのである。そこに優秀な人間が集まるはずもない。


 ただ、ファッション業界もビジネスには変わりない。グローバル化は著しく、有能で希少な人材を求めているのも確かだ。大手アパレルや大手小売業は一見すればコマのような人間の集まりで無駄に思えるような仕事をしているが、そこでは非常に高い付加価値を生み出す力をもつ。


 一方、個人オーナーのショップや叩き上げの実力経営者が仕切るアパレルでは、その人個人の能力やカリスマ性が高い付加価値を生み出していく。それが変化が激しい市場でどこまで通用するかは未知数だが、自らアイデアを形にし、仕組みを整え、営業することが吝かでないなら、若者が挑戦してみる価値はあると思う。


 仕事の面白さややり甲斐は、決してマスを狙い、規模を追求することではないはずだからだ。某スポーツジムのコピーではないが、結果にコミットすれば良いのである。


 ファッション業界はおカネにならない。だから、魅力が無く、一生働くところではない。それはマス化で価格競争が厳しく収入が少ないという一端しか見ていない。本当にカネを儲けたければ、どの業界もやることは一緒だ。儲かっている企業を選ぶか、自ら儲かる仕組みを作るか。それができるかどうかが重要なのである。


 トヨタが最高益を上げたと言っても、円高に振れるとそんなものはあっという間に吹っ飛んでしまう。グローバル化の波に飲まれる企業で働くほど、一生安泰なんてことはありえない。

 

 どうすればビジネスが軌道に乗るかを考えていく。そんな気概とバイタリティがあれば、ファッション業界も見捨てたもんじゃないと思う。大企業=安心、中小零細=危険ではない。ワールド、イトキンの例を出すまでもなく、効率を追いすぎたところはみなありふれた商品在庫の山に埋もれて、自らの方向性を見失っていく。


 ならば、目が行き届く中小零細の方が自分の力でコントロールしやすい。アパレルなら1億円以下、セレクトショップなら5店舗くらいだろうか。そのためには学習が必要である。アパレルやショップでなくてもいいと思う。きちんとしたビジネスシステムが確立した企業なら、勉強できることはいくらでもあるだろう。


 筆者はむしろ世襲が大事だと思う。子供は親の背中を見て育つ。つまり、環境が人を育てるのだ。親が商売をしていたのなら、その環境は大いに大事にすべきだ。店を持っているなら、小売りをやれば良いし、業態を転換させることもできる。工場があるならメーカーだって出来なくはない。要は資産があるなら、それをできるだけ有効に活用してリスクを減らせばいいのである。


 夢を見るだけでなく、自己実現の目標として挑む。野心や野望があれば、なおのこと良いと思う。少しでも可能性があれば、チャレンジする価値はある。ゼロからのスタートより、一歩も二歩もリードできるチャンスはそうそうないのだから。


買うリスク、着る勇気。

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 さる3月4日、「ユニクロアンドルメール」で最後となるSPRING SUMMER 2016が発売された。今回も事前に告知がなされ、一部のサンプルが公開されていた。


 前回の秋冬企画は、オープン1週間で完売の商品が続出したため、商品をくまなく見ることはできなかった。そこで、今回の春夏企画はオープン日から2日連続で、キャナルシティ博多店を訪れてチェックしてみた。


 全体的な印象は明るさを出しつつトーンをやや落とした感じ。デザインはディテールでクリエーターらしい処理を施し個性を主張している。ただ、生地感はこれまでの春夏企画と大して変わらず、それほどのクオリティは感じなかった。


 目新しいのはシアサッカーだ。この生地は比較的薄手の織物だと理解しているが、ユニクロが採用すると張りやこしが劣り、ペタっとした印象は拭えない。


 だから、ハンギングしたワンピースが棚の狭いスパンに無理矢理に押し込まれると、アメリカンアパレルのように見えて、せっかくデザイナーファッションが台無しになる。


 ところが、ネット通販では違った。そうしたVMDを見ないから、購入の判断材料はモデルによるイメージショットと商品写真しかない。その点が逆に奏功したのか、シアサッカーでは完売した商品がすでにある。

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 ノースリーブワンピースのレッドがそうだ。亜熱帯地域でも旅行しない限り、春先の日本ではまだまだ必要ない。でも、他のSPAが出させていないヴィヴィッドカラーで、筆者が女性ならギリギリ損はないと購入したと思う。


 購入者の多くが同じ様な考えで先買いしたのではないか。前シーズンでもすぐに完売した商品があり、買い逃して残念な思いをしたお客もいたはずだ。そうした気持ちが購入に走らせたのだと思う。この辺はネット販売の妙と言えるだろう。


 このワンピースに対するコメントを見ると、生地感の目新しさ以外にも、カッティングからくるシルエットのきれいさ、これだけの感度で値ごろなところなどが30代にウケたようだ。


 同じく半袖のワンピースのレッドも完売している。こちらはマタニティウエアやウエストを別のベルトでマークすれば個性が主張でき、夏場の部屋着にも利用できることなどから、売れたようである。


 もともと、シアサッカーは凹凸の「しぼ」があるので、しわが気にならないような素材なのだが、街着にするとなるとやはりクタっとしたのは着にくい。いちいちアイロンをかけるのは面倒だから、楽なケアの方法なんかSNSで公開していただけるとありがたい。


 エクストラファインコットンのワンピースは、コメントにもあるように筆者も生地の薄さが難点との印象を受けた。この傾向はユニクロが「エクストラファインコットン」と称しているすべてのアイテムで、以前から感じていることだ。


 ブラックは「修道女のように見える」と感じた人もいるが、これからのシーズンは暑苦しい。辛うじてホワイトの方が使い勝ってが良いのかもしれないが、汗で生地がクタっとすればカラーに関係なく最悪である。この生地感なら実際に着た時の汗ジミも想定されるから、洗濯後のケアも気になるところだ。


 言い換えれば着こなしのうまい人にとっては、それだけド・ストライクのアイテムになるわけである。その辺がうまいパリジェンヌなんかがどんなレイヤードスタイルで着こなすか。ストリートショットをぜひ見てみたいものである。


 一方、ニットは春夏らしくメッシュを取り入れているが、肝心の糸質は価格からして量販レベル。ニューヨークあたりのデパートに売ってそうな感じに思えた。また、メッシュは見た目は涼しげで良いのだけど、何かに引っ掛けて糸がほつれる心配もある。


 筆者はリボンヤーンで何度も経験しているから、これが非常に気になった。かぎ針で伸びた部分を引っ掛けて裏に引きづり出せばいいのだけど、編み物の経験、技術が必要なのでそこが心配である。サイトではその辺の対応も告知してほしかった。


 スピーマコットのメッシュポロセーターは、マスタードがプロモーション写真に起用され、価格が安いことから、ネットではSサイズが完売している。同素材のクールネックセーターも同様に、カシミヤブレンドのタンクトップやボディーセーターとレイヤードする方法がいやらしさを感じずしっくりくると思う。


 企画の段階でこうしたトランスペアレントを想定し、カシミヤブレンドのボディーセーターを今回MDに加えたのであれば、それはそれで中々秀逸と思う。


 布帛であるオックスフォードのワイドパンツ、ガウチョパンツはネットでは素材感がわからないので、特に店頭で確かめた。白は透けると思ったが、やはり購入者も同じ印象だったようで、「返品した」とのコメントは少なくない。

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 逆にコットンツイルパンツは上質に感じたし、こちらは白でも透けない印象だ。ここ数年続いたスキニー、タイトなシルエットではなく、メンズライクでアンクル丈。ひと昔前に流行ったトラウザースをやや短くした感じだろうか。


 新鮮なデザインではあるのだが、デザインはまだ万人向けではないと思う。ユニクロ側がアンドルメールをテストマーケティングにして、レギュラー企画に採用することも想定しているのなら、陳腐化したパンツシルエットの中で、どこまでトレンド化させられるかがカギになると思う。


 筆者が専門のウィメンズを見た印象はざっとこんなところである。一方、メンズは専門ではないので、一消費者としての感想になる。


 全体的にはカラーがウィメンズに反して、中間色系でボケた印象を受けることだ。ジャケットにしてもブルゾンにしてもパンツにしてもである。


 売場の最初に目にとまったのは、正面向きにハンギングされていたコットンパーカ。素材がしっかりしている印象を受けたが、ボタンフライで共地の短冊布を継ぎ足した前合わせ、スクエアのフラップポケットと、いかんせんフロントデザインがダサい。これがルメールのデザインなのかと疑うほどだ。


 コットツイルのシャツブルゾン、シャンブレーのシャツブルゾンもデザインが今イチだ。ピンが甘いプロモーションフォトではモデルがブルーを着ていたので、シンプルな印象しか受けなかったが、いざ商品をみるとげんなりした。


 どうみても工場で働く人たちの作業ジャンバーにしか見えない。まさか企画の段階で、そうしたワークウエアを意識したとも考えにくい。おまけにユニクロの春夏生地は総じてこしがなく薄いので、どうしてもデニムジャケットなんかと比べがちだ。ファッションとしては失敗ではないだろうか。


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 スピーマコットを使ったクールネックセーターは、メッシュでこれからシーズンには良いのだが、店頭ではユニクロのメンズではどうなのかと思った。後で通販サイトを見ると、全色、全カラーが完売になっていた。よくよく考えると、購入者が目新しさを感じたのは、これくらいだからだろうか。


 長袖のTシャツやニットは、従来の企画とさほど変わらない。筆者の周辺では、「スピーマコットのTシャツは生地が薄い」とか、「ユニクロは春夏商品の企画製造が苦手なように感じる」との意見も聞かれる。この程度の価格帯なら限界はあるのかもしれない。


 チノパンはコットン100%になる。レギュラーのスリムパンツのようなストレッチ性を出す合繊が入ってないので、この先のシーズンには爽やかで穿きやすいと思う。


 パンツで印象的だったのは、ユニクロのデザイナーズコラボで「ツータック」が復活したことだ。DCブランド全盛期のトレンドだったことを考えると、デザイナーズでは30年ぶりくらいになるだろうか。当時を知り、実際に穿いていたものとしては懐かしいが、ファッションとして今さら穿く勇気はない。


 パンツトレンドとしてはメンズもスリムからワイドへの揺り戻しがないわけではない。

果たして、20代、30代の若者がどう反応するかである。


 ただ、DCブランドの時はシューズが革靴であろうとスニーカーであろうと、穿き丈は長めでくるぶしは見せていなかった。短めのトレンドのままで、ツータックが浸透するにはよほど脚が長く、トップとのバランスが良くないと難しいのかもしれない。


 アンドルーメールを見た全体の印象は、2シーズンでは企画の消化不良が否めないところである。ルメール側にもやってみたいことはいろいろあっただろうが、デザイナーズコラボは契約上のリスクもあることから、ユニクロとしては引っ張らない戦略のようだ。


 ただ、事前にネットで見ていろいろと購入を検討し、いざ店舗でチェックすると幻滅した商品も少なくない。近くに店舗がなく、取り扱いの無い商品はネットで購入するしかないお客にとっては、返品した商品も少なくないようだ。やはりそうした問題はずっとついて回るし、ECではしかたないことだ。


 そうした課題にどう取り組んでいくか。次なるデザイナーの起用と合わせて、今後どう改善されていくかが気になるところである。


メディアお抱えのFWF?

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 今年も3月19日から27日まで、ファッションウィーク福岡(FWF)2016が開催される。


 福岡アジアファッション拠点推進会議が主体となり、事業費は福岡市や福岡県、福岡商工会議所などが支援するものだ。


 ただ、昨年の例で言うと、福岡市が拠出する資金は、「コンテンツを核とした国際ビジネスの振興」予算枠の中の「クリエイティブ関連産業の振興」として、約3373万円が拠出されている。


 ファッションウィークと言っても、神戸市が行っているものとは似て非なるものだ。福岡には「テキスタイル」や「アパレル」といった産業がそれほどあるわけではない。だから、メーン産業である「小売り」を主体とした、特に都心部の天神や博多駅とその周辺エリア向けの客寄せイベントに過ぎない。


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 なおかつ、福岡市から拠出される3000数百万円のすべてが、この事業に使われるわけではない。ファッションウィークのしんがりを務める福岡アジアコレクション(FACo)を含めて2000万円程度が費やされているのではないかと推測される。


 行政が拠出する予算は税金なのだから、市民感覚からすれば、決して少ない額ではない。きちんとした事業目的やコンセプト、成果があればいいのだが、それが明確でないところもこの事業が問題とされる部分だろう。


 事業自体は、企画の段階から代理店に丸投げされているし、その代理店がファッション業界、特に小売りの実態や販促ニーズを把握しているわけでもない。結果、客寄せイベント程度の企画に落ち着いているのが実情だ。


 昨年までは、物議を醸した問題事業「かわいい区」の予算も活用されていたが、今年はそれもない。例年、大した成果も上がっておらず、成果の検証もいい加減だ。


 公共事業全体の予算が削減傾向にあるので、今年は一般から企画を募集する有り様だった。それがどんな理由で作用され、どんな目的で実施されるか。詳細が広報されていないのでわからない。


 専用サイトを見ると、昨年の動画を使った告知がされている。大学生の企画なども盛り込まれている。おそらくこの辺りが目新しいものだろう。今年は天神や博多駅の商業のほとんどが協賛(ミーナ天神は不参加、ビブレも不参加だが、イオンショッパーズ福岡店が参加)している。これはこれまでにはなかった傾向だ。


http://fwf.jp/


 各社は春物の実売期に入っているので、館ごとに販促をかけている。だから、本筋の企画としては、それらをファッションウィーク福岡(FWF)が大々的に告知化して、相乗効果を狙う程度の内容に落ち着いたようである。

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 つまり、告知をするには、メディアの力を借りなければならず、今年は新聞社、テレビ局、ラジオ局、フリーペーパー、Webなど、地場で活動するところがほとんどが後援している。これもこれまでになかった特徴ではないか。


 後援が実際のスポンサードなのか、それとも単なる名前貸しかどうかはわからない。スポンサードする上では、メディア側にもファッションウィーク福岡(FWF)を取り上げることで企画枠や特番を組み、スポンサーを捉まえられるとの算段があるだろう。


 では、集客のための「ギミック」=仕掛けはいったい何なのか。それが今イチハッキリしない。一応、天神のきらめき通りを利用したファッションショーなどのイベントがあるようだ。


 まあ、天神か、博多駅かで、イベントをしかければ、買い物客は寄ってくる。しかし、一方で、どちらかに位置する商業施設からは反発を受ける可能性は無きにしもあらずだ。協賛金は取られときながら、大量動員の恩恵は受けられないでは、済まされないからだ。


 企画立案がパッとしない中で、そうした利害調整が水面下で行われ、事業資金は福岡アジアコレクション(FACo)分も確保しておかなければならないため、こうした内容に落ち着いたと類推できる。


 メディア各社を協賛させたのも、そうした課題に批判の矛先が向けられないためだろうか。


 結果的に各社各様のミ二イベントに個別のイベントが玉石混合、細切れで合わさることで、本当に大々的な集客が図れるのか。また、天神や博多駅の周辺エリアで店舗展開する一般参加店がどれほどあるのかである。


 特に一般店舗の参加は、主催の福岡商工会議所、行政とて気になるところだ。しかし、サイトでは3月9日現在、天神他、大名や今泉、薬院、警固などで123店舗。これはファッション、ビューティだけでなく、飲食店も含まれ、中には日本料理や焼鳥店もある。


 ファッションウィークと言っておきながら、一般店の賛同を取り作ろうために何でもかんでも勧誘する。逆に考えると、純然たるファッション専門店への販促効果がなく、ファッションウィークへの期待の薄さを露呈するものだろう。


 一般参加店を増やしたいなら、事前に店舗や品揃えを取り上げておかないと、プロモーション効果はない。各店とも春の商戦が絡むわけで、イチ押しの商品をピックアップし、売りにつなげてあげることが天神や博多駅周辺の個店へのフォローとなる。


 店舗選択の公平性は、どれだけの店舗が前向きに自店や商品をアピールしたいか。そのやる気で判断すべきだ。また、アパレルメーカーやお客さんの推薦があってもいいはずである。そんなものはSNSを利用すれば、どうとだってできる。


 当然、主催者側が店に入っていくことも必要になる。準備期間は昨年秋からあったはずである。それが元締めの仕事、地元ファッションを理解している人間ならできるはずだし、やらなければ福岡のファッションにとって何の意味も無い。


 ところが、実態はどうなのか。天神地区や博多駅地区のイベントが盛り上がるほど、周辺にはお客が流れないのは、過去2回のイベントでも経験済みのはず。


 しかし、それでは公共事業は通らない。何より福岡市は決算説明で、成果・実績を公開する。27年度の資料では「参加店舗260店・社」とあり、今年の目標は300社以上と掲げる。これをクリアするために、主催者側はギリギリまで勧誘を続けるつもりだろうか。それとも、行政お得意の名前だけ借りて、数字を水増しするのか。


 どちらにしても、大儀なき事業であるのは確かだ。「盛り上がった」「好評をいただいた」というのは、何も持ってそう言えるのか。全く根拠を欠くし、客観的なデータを示しての説明は何一つ無い。


 「今年は予算が減ったから、大掛かりなものはできない」では、理由にならない。ただ、何でもイベントができればいいという企画は継続しているのだ。


 器を用意したから、勝手に参加してくださいとは、あまりに高圧ではないのか。そんなことをやってて商工会議所の組合員や繊維部会のメンバーが増えるはずはないのである。


 福岡アジアファッション拠点推進会議では、昨年秋から企画を募集し、準備を重ねて来ているように言っているが、その結果がこれではあまりに薄っぺらい。まして、ファッションウィークと言っときながら、それを口実にメディアやイベント事業者が潤うに過ぎないような内容である。


 ところで、メーンビジュアルのイラストレーションも苦肉の策がうかがえる。予算がFACoはじめイベントの方に費やされるため、ファッションウィークの広告デザインには経費がかけられない。


 そこで天神や博多駅、大名、今泉といったエリアを歩く女性のストリートスナップをイメージイラスト化している。プロのモデル起用、カメラマンやスタイリスト、ヘアメイクを手配すれば、莫大な撮影費がかかる。また、一般人を勝手に撮影すると、いちいちお掲載の許可を受けなければならない。


 だから、イラストで逃げざるを得なかったのだろうが、そのイラストも「HAKATA LADY」「TENJIN GIRL」「IMAIZUMI LADY」「YAKUIN GIRL」「DAIMYO GIRL」という各タイトルを含めて、全く意味不明だ。


 例えば、 IMAIZUMI LADYは、今泉地区に店を構える多くのショップテイストとそのエリアを闊歩するお客の実態と、モデルイラストが合致しない。どう考えても、ソラリアプラザやイムズに店舗を構えるショップで購入するお客向けのテイストである。


 また、YAKUIN GIRLは「ガール」と言っておきながら、モデルはワンピースにスプリングコート。明らかに30代のヴェリー系ミセスのテイストだ。


 代理店がお抱えのデザイン会社が子飼いのイラストレーターに発注したのだろうか。それにしても、適当にファッション雑誌を見て、描き起こしたようなふしが随所にみられる。せめてエリアやストリートをリサーチしてから描くべきではないのか。


 エリアのファッションテイストを際立たせたいなら、リサーチと同時にストリートスナップを撮影する。それをそのまま掲載するには肖像権が絡むので、ウエアのみ現物を利用し、顔や手足はモデルのイラストにする手もあるだろう。


 イラストレーターには罪はない。要はディレクションの問題である。全部をイメージイラストにしたところで、福岡のリアルなファッションは伝わらないし、販促にも結びつかない。この程度の感度、感性では福岡のファッションが評価されるどころか、内外から小馬鹿にされる素地を生んでしまうということである。


 企画に参画している代理店や関係者の詰めの甘さ、ファッション音痴ぶりが窺い知れる。ファッションウィーク福岡と言っておきながら、福岡のファッションを全く見ていないということがよくわかるのである。


ITが誂えを錯誤させる。

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 先週、立て続けに2企業からメンズの「オーダー」に注力するというニュースが発表された。オーダーと言っても、純然たる誂えではなく、セミやカスタムといったカテゴリーである。


 筆者はレディス畑オンリーで来たので、メンズに対して偉そうに言える立場ではない。だから、今回は一男性、お客の視点で考えてみたい。


 メンズスーツはバブル崩壊後、紳士服量販店の価格攻勢により、専門店の閉店や業態転換が相次ぎ、百貨店のレディス特化も影響して縮小均衡。新たに登場した2プライス業態も販売数量は底を打ち、一次の勢いは影を潜めている。


 マーケットの主力を占めるカジュアルウエアは、売上げ減に歯止めが掛からない。だから、少しは可能性があるリクルートやビジネスに対して、大手がオーダーで活路を見出そうという戦略は理解できる。


 特にジャケットやスーツについては、身体にフィットしたものを着たいというニーズは根強いと思う。再就職を含めた面接、取引先との商談など、自己主張や客観的な印象でウエアがカギを握る部分は大きいからだ。


 そうした気持ちを実需まで誘導し、本格的にマーケットの活性化を目論んでいるようである。2企業とは1社がユニクロで、もう1社は洋服の青山だ。


 ユニクロの「セミオーダー」はジャケットで、レギュラー、スリム2タイプ、64パターンから袖丈を1cm刻みで調整するもの。生地は3種類が用意されており、合計2112通りの組み合わせから自分にあったものが選べる。


 ボトムのパンツもウエスト67cmから120cmまで3cm刻みであり、生地はジャケットと共地を含む5種類を展開する。スーチングはもちろん、セットアップのジャケットスタイルも可能になる。


 一方、洋服の青山はヤング向けのザ・スーツカンパニーとセレクトのユニバーサルランゲージで、この春から「カスタムオーダー」をスタートする。


 お客を3D撮影してバーチャル試着ができる「フィッティングアバターシステム」を独自開発し、i-Padで撮影したお客の頭部部分を画面上の仮想ボディにはめ込んで、完成品の着用をイメージできるようにするものだ。


 青山というわけではないが、昔、某紳士服量販店のチラシでは、撮影費のコストダウンをはかるため、スーツを来たモデル写真を何度も使い回し、その生首だけをすげ替えていたことがあった。


 インチキ臭いエステサロンのチラシでは、太った身体に痩せたモデルの首だけをすげ替えたのを見かける。これは明らかに確信犯で不当表示になるわけだが、紳士服量販店の場合は同じモデル写真ばかりだと、購読者に飽きられてしまうことを想定したものだ。


 当時は今のようにPhotoshopがあったわけではない。印刷会社のレタッチさんがモデルの元画像をきれいにホワイト切りして、見事にすげ替えたいたのだから、それはそれで職人技だった。


 ところが、それがデジタル技術で、生首を自動で切り抜いてアバターにし、バーチャルフィッティングで売りにつなげられるわけだから、隔世の感がある。


 実際にはシャツからネクタイ、靴までのコーディネート、それを着こなした360度の姿、色柄やデザインも差し替えて試すことができるというから、バーチャルによってオーダーのハードルを下げようということだ。


 生地は国内外メーカーの1000種類を揃え、パターンも8モデルから選べるという。おまけに機械縫いの他にハンドメイドも選べるというから、既存のオーダーメイドに限りなく近い感覚を印象づける狙いもあるだろう。


 これらのオーダーシステムの特徴は、IT技術を利用して実際に試着したり、仮縫いの手間を省くものである。また、現物の生地反を店舗に置かないで、見本帳や写真画像で確認するはずだから、省スペースで店舗コストの削減にもつながる。


 ジャケット、スーツといった規格がはっきり決まった商品は、売れる売れないがわからない在庫を持って販売する方が時代遅れだ。物流センター等に商品や生地をストックし、必要な時点で店舗に送り込んだり、縫製に回した方が効率はいい。


 つまり、厳密にはオーダーというより、オムニチャンネル化の一環だと見受けられる。ユニクロも青山もまずはそこに目を付けたということだろう。


 ユニクロは主力のカジュアルアイテムで、爆発的なヒット商品が生まれにくくなっている。同社は否定しているが、値上げがお客離れを生んだのではないかについても、疑心暗鬼になっていると思う。


 だとすれば、ある程度確実な市場開拓に期待がもてるジャストフィットのビジネスウエアに照準を当て始めたのは当然だろう。


 青山はローコストの郊外に店舗を抱えているが、冠婚葬祭やリクルーティングのシーズンを除けば、それほどニーズも集客も無いと聞く。平日にはお客はそんなに訪れていないだろうし、外商をしているとの話も聞かない。


 だから、年中一定の需要が見込める都市部のビジネスウエアにおいて、ジャケットやスーツの活性化を図る狙いということだ。特にヤングはITに抵抗はないはずだし、オムニチャンネルも利便性が上回るならすんなり受け入れると、踏んだのではないか。


 このマーケットで手応えをつかめれば、郊外店でもアダルト、シニア向けに導入していくのかもしれない。


 郊外店を訪れる地方のお客にとって一度スーツを買えば、それほど買い替えることは無い。アジャスター付きなんてセコいことは言わずに、ジャストフィットするスーツ文化を浸透させていけばい良いのである。


 もっとも、業界の大命題は客離れをいかに食い止めるか。その大本命がECを含めたITの活用で、ネットとリアルを併用したオムニチャンネル化に他ならない。


 ただ、ITとオーダーメイドということで考えると、まだまだ課題はある。ユニクロの場合、サイトで注文するには、自分の身幅、着丈、肩幅、袖丈などを入力しなければならない。


 しかも、手持ちのジャケットを目安に自分で計かって入力するなど非常に手間がかかる。


 サイジングは0.5cmでフィット感やシルエットが変わるという人もいる。一応、計測法のマニュアルが書かれているが、お客は手持ちのジャケットに問題があるから、オーダーを選択するのではないのか。 


 そもそも、既成服にジャストフィットなんてあり得ない。 生地やデザインでもサイジングは異なるし、長く着るほどにフィット感も変わってくる。


 だから、そのまま同じ数値を入力した場合でも、違いを想定して数センチプラスやマイナスを入力した場合でも、イメージするようなフィット感が得られる保証はない。


 そうした疑問があったので、実際に店舗に行って、オーダー専門スタッフに要領を確認してみた。取り扱い店舗には2種類、レギュラー、スリムの各5サイズほどのサンプルが置いてある。



 「サイトの入力法通りでいくなら、着丈を長くすることはできるのですか」と訊ねると、「サイズはチェストに合わせて、肩幅2種類、着丈も2種類程度しかありません」とのはっきりしない答えだった。


 つまり、 自由にサイズ調整ができるのは袖丈のみ。肩幅、着丈についてはお客が希望するサイズを入力しても、在庫がないものはエラーがでるのかもしれないのだ。


 ただ、お客はサルトリエではなければ、モデリストでもない。サイズ測定についてはずぶ素人だ。それはネットオークションで、多くの出品者がコメントを入れていることを見てもわかる。


 また、お客は自分のヌードサイズを正確に知っているわけではない。また、知ったところで、既成服を買う目安になるはずもない。あくまで試着をしてサイズが合うか、合わないか、至ってアナログな感覚で確かめ、購入するか否かを決めているはずだ。


 お客が自分のウエアの正確なサイズを知ったところで、たいして意味は無いのである。だから、お客に自分で計測させ注文させるというのは、企業側にとって効率のいいシステムだと言わざるを得ない。


 正確に測ったつもりでオーダーしても、試着や仮縫いをしないわけだから、送られてきた商品がフィット感が今イチだったってことは、往々にしてあるのではないか。


 倉庫にある在庫品をデリバリーするのため、「返品、交換が可能」になるのは良いが、結局、計測は徒労に終わってしまうことになる。 


 一応、店舗まで行けば、専門のスタッフが採寸はしてくれる。だから、入力の面倒を考えると、サイトでの注文には二の足を踏むだろう。


 「オーダー風」というからには、細かなサイズ調整をし、お客も納得の上で、ジャストフィットな商品を見つけられる仕組みが重要だ。その辺が現状のITでは限界なのかもしれない。


 ユニクロのセミオーダーは、やはり店舗とのシンクロが伸びるカギを握るのではないかと思う。


 一方、青山はアバターにより、自分が商品を着たイメージはわかりやすい。しかし、それはあくまで「仮想試着」である。スーツ姿に自分の顔が乗っかったアバターを見たところで、自分の身体にフィットしたものではないわけだ。


 報道では、3Dカメラがお客の体型を正確に割り出して、サイズを算出し、そこから型紙や裁断にかかるというまでの仕組みがあるかの言及は無い。おそらく無いのかもしれない。


 自分がオーダースーツを着た時のリアルな姿、フィット感がわからないと、こちらも購入はギャンブルになるのではないか。


 3Dで自分の現在のサイズが計測されて、それに沿って生地が裁断され、仮縫いまで行われるわけではないだろう。つまり、仮想試着と言っても、それはフィッティングの感触が味わえるわけではない。


 採寸や仮縫いなどの手間を省き、コストダウンにつなげて、値ごろ感のあるオーダー感覚のセットアップやスーツを提供する。その気持ちはわからないのでないし、お客の方だって望んではいると思う。


 詳細の仕組みがわからないので、現時点では憶測の域を出ないが、仮縫いがなくて肝心のフィット感が試せないのであれば、何のためのオーダーメイドなのかということになる。


 そのためにはユニクロ同様にリアルなサンプル試着、専門スタッフによるサイズ調整がギリギリの妥協点かもしれない。


 ITシステムだけという引き算のビジネスではなし得ない。アナログ感覚の大事さに、リアル店舗を融合させた足し算のビジネスモデル。それが広くセミオーダー、カスタムオーダーに関心を持ってもらう上では重要ではないか。


 果たして、お客やマーケットも反応はいかに。こればかりは、買い物に失敗したからといって、ユーズドサイトで売り捌くわけにもいかないだろうし。

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