HAKATA PARIS NEWYORK

今のファッションを斬りまくる辛口コラム

2016年09月

本業はファッション、グラフィックなどデザイン関連のクリエイティブディレクター。創る側の視点で今のファッション関連の事情を評論する。マスメディアはもちろん、業界紙誌も扱わないテーマに踏み込む。

秋物がもう値引き?

lofttag1 9月もそろそろ終わりが近づき、秋物を違和感なく着こなせるようになった。ただ、トレンドを追っかけるにしても「コレだ!」と思える商品はなかなかない。もともと、婦人服が専門の人間だけについついレディスの方に目が行き、着ることができないけど買ってみたい商品はチラホラある。そうした感覚が衰えない限り、メンズにも応用できるはずだけど、如何せん買いたいものがほとんど見つからない。

 特別にブランド贔屓ではないから素材、デザイン、価格という条件が合致すれば、購入に踏み切れる。しかし、これがなかなか噛み合わない。素材が上質だとデザインが気に入らず、デザインが好みだと素材の質が落ちる。お金をかけてもいいのだが、今度は生地とパターンが決まってくる、と言った具合だ。わがままなのだから、仕方ないんだけど、あれこれ考えているうちにシーズンが終わってしまいそうだ。

 まあ、街中のビルインからストリートまで片っ端から探せば、お気に入りが一つくらい見つかるかもしれないが、それは時間的に無理に近い。だから、「お見分け」候補はネットに頼りっぱなしになる。あちこち回らなくてもいいし、お気に入りにしておけば、ショップで現物を確かめられる。購入するしないは別にして、ショッピングの効率は格段に良くなっている。

 しかし、実際に現物を観て見ると、ずいぶん違っているケースが少なくない。デジタル画像では拡大できたにしても、微妙な組織まではわからない。 ニットの編み地はともかく、布帛は質感が全く想像つかない。 特にダーク系の色は柄物でも無地に見えてしまう。もちろん、肌触りやフィット感になると、着てみないとわからない。

 ブランド側は次々にトレンドを仕掛けるから、結構、新しい素材のアイテムがラインナップされる。個人的な印象ではここ数年、ウール100%とか、綿100%といった天然素材がずいぶん減って来た感じだ。代わってポリエステルやアクリル、ポリウレタンなどの合成繊維を半分以上から100%にしたものか、合繊と合繊の混紡のみがかなりの割合で増えているように思う。

 理由は何なのだろうか。知り合いのメーカーさんは軽くするためと言っていた。他にはグローバルSPAが台頭し、素材調達でも主導権を握ってきたからか。原料高や円安で天然繊維ではコストが合わず、原価率を下げるための合繊シフトか。テキスタイルメーカー自体が合繊ブレンドをトレンドとして仕掛けているからか。いろいろ考えられるとは思うけど、実際のところはよくわからない。それらがどんどん企画され商品化されていくところを見ると、若者を中心にあまり素材を意識しなくなったということだろう。

 「触ってごらん、ウールだよ」なんてキャンペーンのコピーがあった。上質な100%ウールは、もはやオーダースーツの生地見本くらいでしか、出くわさないのかもしれない。厚手のコットンギャバなんかにしても、SPAやセレクト系の商品ではほとんどお目にかかれなくなった。すでに合繊混紡のリサイクル技術が確立されている。合繊はエタノールと化学繊維に分離した後、さらにナイロン、ポリエステルなど別々に分けられることで、繊維原料として再生できるからだろうか。余計なことまで考えてしまう。

 だからと言って、当方はなかなか素材、特に生地の質感では妥協できないので、時間を見つけてはネットにキーワード入力を繰り替えしてヒットするのを待っている。このままではこの秋も、昨年同様に何も買わないで、過ぎ去っていくかもしれない。


 ところで、先日、大手ファッション通販サイトを見ていて思ったことだが、「アイテム名」のみを入力すると、ブランド、色柄が取り混ぜてアップされる。しかも、プロパーとセール用、さらにクーポン対象商品、タイムセール品が混然一体と出現する。「えっ、秋物がもう値引き?」。では、なかった。検索性を重視するシステムだからしょうがないのだが、問題はセール品が春夏ものなのか秋物なのかよくわからないことだ。

 おそらく9月いっぱいは春夏のセール在庫を売り減らしていくはずだし、春物だと秋口に着られなくもないからだろう。ただ、商品名に麻や薄手のカットソーなど明らかに春夏の素材名が付されているといいのだが、写真を見て商品説明を読むだけではわからないアイテムも多々見受けられる。

 消費者はセール品や値引き商品にはどうしても惹き付けられる。 プロパーを探していても、価格に釣られて安い方を買うことは無きにしもあらずだ。そうした心理をつき、検索機会と滞留時間をアップさせることを狙った巧みな商法とも言える。

 ECの場合は、あらゆるケースで検索者の目に触れさせ、クリック数を確実に増やして購買に結びつけ、消化率もアップさせるというビジネス論理なのだろう。欧米の通販サイトではシーズン持ち越し商品を別枠で括り、アウトレットコーナーを儲けているところもあるが、日本のサイトではほとんど見かけない。もともと価格が安いし、クリアランスセールで売れないと、課税の関係から処分されていくのだろうか。

 ただ、ヤフーや楽天になると、検索キーワードだけで「中古品」まで一緒にアップされてしまう。お目当ての商品が何ページかスクロールして見当たらなければ、通常価格で再度検索し直せばいいのだが、これが面倒だし煩わしい。事業者にすれば、ごった煮になるのが商店街でいいのかもしれないが、プロパーで勝負する店舗側は一緒に並べられてどう思うのだろうか。お客だって端からプロパーを探している場合には見たくもないはずだ。リアルな商店街なら素通りもできるが、サイトではそうもいかない。

 IT識者はアップデートだの、コンテンツだの、またEC礼賛の諸兄はマーケティングだの、ターゲティングだのと言っておきながら、肝心なWEBサイトではアクセスばかりを重視しているように感じる。楽天なんかは画面レイアウトが整然としなくなったことがイメージ低下、客離れを招いた要因の一つではないかと思う。アマゾンが集客力を増しているところを見ても、一理あるはずだ。


 ところで、今年の秋物を見ていて、もう一つ感じたことがある。昨年よりもさらに価格が上がっているような気がするのだ。昨年も1~2割アップしているとの声を各方面から聞いた。でも、今年のアイテムは昨年より増して「高いなあ」と感じる。

 例えば、某有名セレクトショップがハイクラス業態名を付けて販売するパンツは、27,000円。素材は綿100%だが、原産国は中国製となっている。為替が一時の円安から円高に揺り戻した影響は、それほどないと思う。商社やOEM業者との関係やネットワークを維持すれば、この価格設定になったのかもしれない。それにしても、アパレル事業者が原産国は関係ないとの理屈に立ったところで、消費者には中国製と27,000円という価格とブランドイメージは、釣り合わないのではないか。

 他にも日本製パンツが2万円台になるなど、このショップのプライスゾーンは全体に高めにシフトしている。まだ立ち上がったばかりなので、タイムセールの対象にはなっていない。セレクトショップだから、「うちはこの価格帯でプライスリーダーを通して来た」と言ってしまえばそこまでである。しかし、ハイクラス業態名を謳いながら中国製が散見されるようでは、やはり価格の高さは拭えない。店舗まで出かけて行って、価格に見合うクオリティかどうか確かめれば良いのだが、ネットではそれも無理だ。どうしても二の足を踏んでしまう。

 一方、別のセレクトショップは、日本製のブランドアイテムが1~2万円台もあるし、イタリア製のブランドが2万円台。一時、原産国の不当表示で公取の排除命令を受けたルーマニア製品も、今では堂々と表示され販売されている。中にはイタリア製より高い3万円台もあり、「ユーロ圏ではないのにそれは高いんじゃない」と、言いたくなる。やはり今年の価格高騰は、セレクト系全体に言えるようだ。

 価格とは価値のバランスで、納得できることもあれば、できないこともある。それを前提にすると、セレクトのハイクラスブランドなら27,000円の中国製より、3万円のイタリア製の方が売りやすいのではないか。3000円という価格差は、高くても安くても重要だ。それもわかる。バイヤーサイドでも議論はあったとは思うが、結果的にこうなったという点が残念でならない。特に日本製への回帰、中間業者をセーブして原価率のアップとコストダウンを両立させ、ネット通販の良さを活用して売上げを伸ばす業者も出始めている。こうした業界変化を考えると、有名セレクトとて決して安泰ではないはずだ。

 逆に有名店になればなるほど、ブランド維持のためにリアル店舗も必要になる。ただ、日本企業はどうしても販売員をコストとみなすので、売上げが伴わないと利益率が下がる点に目が行く。そのため、コストがセーブできそうなECも重要な販売手段と考えるようになってきた。「コスト高のリアル店とコストセーブのECをバランスよく組み合わせて、利益の最大化をはかる」という経営政策はわからないでもないが、双方に新たな課題が持ち上がっているのも事実だろう。


 ECでリアル店の商圏に入らない客層までマーケットを広げ、購買に誘う。 それにしても、これだけ小売りにWEBサイトが浸透した中で、結局、「割引」でしか「デザイアー」や「シミュレート」させられないのは、何とも寂しい限りだ。その前提としてと途上国生産で原価率を下げる。ネットだからどうせ質感の詳細はわからない。プロパー価格を高めにして、粗利益を確保できるようにする等々。背景にはそんな意図があるように思えてならない。

 WEBサイトにプロパーとセール品が混在してアップされる現状を見るにつけ、ECのシステムや運用面をどうのこうの言う次元でいいのだろうか。もっと流通から販売におけるロス、製造コストが増える問題点に切り込むべきではないのか。仕組みそのものを考え直さないと、プロパーではますます売りづらくなると思う。

激戦地で勝ってこそ。

ny soho wvillege バロックジャパンリミテッドが展開する「マウジー」と「エンフォルド」が続けざまに米国のニューヨークに出店した。

 先にオープンしたのがエンフォルドで、ワシントンSQの西側、7番街と8番街に挟まれるブリーカーストリート沿い。マウジーはダウンタウンのブロードウエイと6番街の間のブルームSt.に面する。両店ともNYを代表する観光&ショッピングエリア、ウエストビレッジとサウス・オブ・ハウストンSt.、所謂ソーホーの一角である。

 SPAが足下市場で手応えを感じ、グローバル戦略に踏み出す時、ニューヨークに出店するのは珍しくない。ただ、バロックJLは「アジアへの情報発信基地の拠点を目的とするために、米国市場に参入した」と語っている。4月には現地法人のバロックユーエスエーリミテッドを設立しており、米国で店舗展開する上で、NYはマーケティングやプロモーションのすべてを含む情報拠点として、全社を支援する態勢を司るようである。

 同社が語る「アジアへの情報発信基地の拠点を目的とするために米国市場に参入」を額面通りに読むと、「アジアへの情報発信が何で米国なの?」と思う。 同社はすでに中国・香港に160店舗以上を出店していて、十分に情報発信しているではと、 素人目には考えられるからだ。

 それゆえ、米国市場に参入する真意とは何か。非常に気になるところだ。まあ、マウジーの店舗の場合、中国・香港での展開は、大半がインショップだろう。そのため、商品を売るだけの拠点であって、店づくりにコストをかけているとは思えない。そうした店づくりの中で、ラインナップされている商品がブランドの世界観を十分に発信できているかと言えば、やはり疑問符が付く。


 昨今のお客はインターネットのサイトで商品を検索し、気に入ったアイテムが見つかると、近くのショップに行って現物を確かめようとする。消費者の購買心理なんて洋の東西を問わず、大して変わらないはずだ。でも、ブランド側にすれば、それではお客にロイヤルティをすり込み、顧客化しているとは言いきれない。やはりマウジー、そしてエンフォルドが他と一線を画するブランドであることを示すには、空間演出を最大限に施したショップでVMD駆使したストーリーと、スタッフの秀逸なトークによって世界観を伝えて行くことが何より重要なのである。

 なおさらバロックJLがグローバルSPAを目指すには、世界中のお客はもちろん、カジュアルウエアの一大市場としてのポテンシャルをもつアジア攻略抜きには考えられない。こうしたエリア内にある中華系をはじめとするファッション企業、バイヤーたちが注目するのは、やはりニューヨークからのトレンド発信なのだと判断したのではないか。オープンがファッションウィーク期間中だったというのも、彼らに見てもらう狙いがあったはずだ。言い換えれば、ニューヨークでも悔しいかなチャイニーズマネーとバイイングパワーは侮れないということである。

 社内的に見ると、ニューヨークでの展開は何より企画にあたるスタッフのモチベーションが違ってくる。マウジー&エンフォルドは日本の東京と異なり、世界のニューヨークでどう評価されるのか。エンフォルドはアパレルメーカーが集まる7番街の南に位置することもあり、ドメスティックいやジャパニーズコンテンポラリーをリサーチに訪れる業界人も少なくないと思う。

 マウジーは完全にショッピングエリアと化したソーホーにあるだけに、世界のトップブランドと比較されるのは言うまでもない。さらに辛口で名が通る現地メディア、インスタイルやナイロンといったファッション誌の論評も気になるところだ。

 良きにつけ悪しきにつけ、評価はそのまま企画スタッフのやる気につながり、それ以降のクリエーションさえ左右しかねない。スタッフが世界の目というプレッシャーをクリエイティビティに昇華させることができれば、マウジーはひと皮むけ、エンフォルドは更なる高みを目指せるはずである。

 一方で、資金的なバックアップも見逃せない。バロックJLは今から3年前、筆頭株主がフランスの銀行系投資ファンドCLSAサンライズキャピタルから、中国最大手の婦人靴小売チェーンを運営する百麗国際(ベルインターナショナル)ホールディングスに代わった。

 株式は日本のオリックスも30%程度有するが、中国進出に際しては現地の事情に詳しいパートナーが必要なことから、百麗国際HDが選ばれたと言われている。第3位の株主には同じくCLSAから株式を取得した香港のファンドCDHランウエイインベストメントが顔を並べ、中華系資本による支援が同社の世界戦略を担っていると言って間違いない。


 では、マウジーやエンフォルドにとって、ニューヨーク展開にはどんな可能性があるのだろうか。ファッション都市として見たニューヨークは、最初に五番街がラグジュアリーブランドのメッカとなり、次いで広告代理店の街だったマジソンアベニューにブランドの旗艦店が集まりだした。それらは欧州から見た米国市場攻略の橋頭堡でもあったのだが、世界に冠たる情報発信の街としての機能も捨て難かったと思う。

 80年代になると、それまで倉庫街だったダウンタウンにクリエーターたちがオフィスを構え、90年代からは次第にブランドショップが進出するようになった。この頃からディフュージョンラインやストリートを意識したブランドがソーホーを中心に続々出店するようになり、一気に不動産バブルを迎えたのである。

 同じダウンタウンでも、ウエストビレッジはグリニッジビレッジよりも古くからある街区で、アーリーアメリカンな落ち着いた佇まいから、70年代のガイドブックではギャラリーが集まっているとの触れ込みだった。しかし、この地区もバブルの影響か、90年代以降、ギャラリーは賃料の安い北側のチェルシー地区に移転している。

 マウジーが店舗を構えるブルームSt.の2ブロック北のプリンスSt.とブロードウエイの角にはアルマーニエクスチェンジが1991年に1号店を出店した。ただ、ソーホーのような人気エリアで、低価格SPAが単独展開するのは容易ではない。今では家賃の安いミートパッキング地区や郊外SCなどにも出店して包括的に収益が上がるような戦略を取っている。日本でも数年前から全国展開し始めているが、同じことが見て取れる。

 日本では衰えを見せないユニクロはニューヨークで苦戦気味だ。五番街、ソーホーに出店しているが、今年はマンハッタンより家賃が安いスタッテンアイランドの店舗を閉鎖した。理由は売上げ不振のよるものと言われるが、ランニングコストを考えるとマンハッタンの店舗も決して順風満帆とは言えないはずである。ただ、どちらともペイしないのであれば費用より効果を重視し、ソーホー店を残す選択をしたとも受け取れる。


 ニューヨークの変遷をずっと見て来た人間から言わせてもらうと、マウジーもエンフォルドもショップ運営だけで見れば、コスト的にとても合わないと思う。当然、それはバロックJLとしても織り込み済みだろうし、それ以上の目的があるからこそニューヨークに出店したのである。

 ただ、売れなければそれは評価されていないのと同じで、情報発信に水を差すことにもなりかねない。アジアのファッション企業やバイヤーにとって、ニューヨークでの販売実績は、ビジネス展開における重要なデータ以外の何ものでもないからだ。有能な業界人なら、まずブランド単品で捉えることはしない。色、柄、デザイン、素材といったゾーンで見ていく。服種、ゾーン内のカテゴリー別でも分析するはずだ。マウジーはジーンズ、エンフォルドはコートという固定概念を捨てて見てるバイヤーもいるだろう。

 もちろん、グローバルブランドがひしめくニューヨークだから、マウジーやエンフォルドに対する他社の評価を聞き出したり、ライバル店と比較したりもする。もちろん、女性スタッフに買い物してもらい、意見を聞くことも忘れないだろう。米国とアジアではサイズも気候も感性も違う。

 どんなアイテムが売れて、どんなアイテムは厳しいかは、冷静に分析していくと思う。その裏付けとなる数字が企画力やクリエイティビティ以上に重要な意味を持つのだ。バロックJLは非上場だから、バランスシートは公開はしていないが、彼らは何らかの形で入手していくと思う。

 バロックJLがニューヨーク出店を手段ではなく目的と語っている以上、激戦地での売上げ実績という結果を残すことが、何よりアジアへの情報発信であることは言うまでもない。

価格を超える価値とは。

beams_levis_1976 セレクトショップのビームスが今年は創業40周年に当たるとして、同じ年に発売された「リーバイス501」モデルを復刻し、9月17日から各店舗で販売するという。価格は3万円(税抜き)で、既に販売している店舗もある模様だ。

 リーバイス501復刻モデルは、ビームスの創業年である1976年のデッドストックを参考に素材やシルエット、縫製仕様などを忠実に再現。これを機に1978年モデルは品揃えから除き、1976年モデルを世界中で発売するというから、これだけを聞くとさすがビームスと言えなくもない。

 逆の見方をすれば、リーバイス側が1978年モデルの501を何らかの理由で1976年モデルにリニューアルして発売したいのかもしれない。例えば、78年モデルは76年のマイナーチェンジでしかなかったら、501の長い歴史の中でやはり「76年の方がいいよね」となることは当然考えられ得る。それを知ったビームスが自社の創業年と同じことでメモリアル企画を持ちかけたのかもしれない。まあ、真偽のほどは定かでないが。

 そう言えば、GAPも1999年には創業30年を記念して1969年モデルを発売した。GAPは創業当時は小売業だった。店頭では90年頃までリーバイスを販売している。ただ、この1969年モデルがリーバイスのコピーなのかはわからない。一度、試着したことがあるが、生地は良くもなく悪くもなく、サイズ感はややゆったり。シルエットはそのまま裾まで流れる感じだ。フロントはボタンフライ、これはリーバイスの501と同じだった。


 そもそもリーバイス501は、リーバイ・ストラウス社が1873年に製造した最初のオーバーオールジーンズXXを、1890年に501の名称をつけてデビューさせたものだ。当時の米国は西海岸でのゴールドラッシュに沸き、キャンバス地は金鉱労働者にとってテントや荷馬車の幌に必需品だった。もちろん、虫除けのためにインディゴ染めの衣服は、欠かせなかった。そうした機能性から作られたのがジーンズだ。

 リーバイス社はそのジーンズで金属リベットで細部を補強し、素材をキャンバスからデニムに切り替え、汎用性のある作業パンツを量産するようになる。そして1890年にロットナンバーの501が付され、フロントにはコインポケットが付く。90年代に入ると、2つのバックポケット、ウエストのベルトルーフが付けられるなど、現在に引き継がれる501の原型ができ上がっていったのである。

 それが130年近く立った今も、ほとんど形を変えることなく、リーバイスのスタンダードとして根強い人気を集めているのだから、501はジーンズの定番、礼賛されるべきモデルと言っても間違いないだろう。


 一方、リーバイ・ストラウス社におけるジーンズビジネスは、決して順風満帆とは言えない。ジーンズが世界中の人々に浸透していく反面、ファッション衣料としての性格を持たせるには、デザインのバリエーションを増やし、付加価値を高めることが必要になる。

 マーケット規模が大きなレディスなら微妙なシルエット、穿き心地、カラーや擦り感、トレンドといった条件を加味しなければ売れない。当然、SPAをはじめ、ジーンズメーカーも新企画の商品を次々と投入していく中で、リーバイス社が競争に巻き込まれていったのは確かだ。

 いくら世界に冠たる501を持っていようと、本家の米国はもちろん、世界中でカジュアルウエアのジーンズに100ドル以上投資できる国民は限られている。リーバイス社は世界戦略を行う中で、量販店向けのバジェットライン、ジーンズショップに卸す中価格帯、フラッグシップショップ限定のヴィンテージシリーズと、バリエーションを増やした時期もあった。

 日本でも90年代後半から2000年代前半にかけ、レディスのパンツトレンドがストレートからヒップハングのタイト、スキニーへと変化した。ジャパン社はあえてストレートジーンズという普遍性を封印し、こうした市場にもアプローチしようとした。2005年には独自企画として、女優の小雪をイメージキャラクターにしてスキニー開拓に挑んだが、マウジーなど強力ブランドの前で、あえなく惨敗した。

 低価格路線やトレンド狙いがロイヤルティを下げてしまったことで、リーバイス社は戦略転換を余儀なくされたのである。そこで世界トップブランドとしてプレステージ性を維持し、アメリカ文化の象徴であるジーンズの世界観を伝えて行くという原点に立ち返ったのだ。基本的なポジショニングは、ジーンズをこよなく愛する人々のためのブランド。メーンターゲットはアメカジ、トラッド、ヴィンテージに心酔する男性で、可処分所得が高い階層ということになる。

 その市場規模がどれほどあるかは漠然としているが、テイストがオーバーラップするビームスには、リーバイス501に造詣をもつ顧客が一定数はいる。創業40周年記念の501復刻モデルは、そうした層に販売していくということになると思う。


 問題は価格の妥当性や価格に対する価値だ。価格という点では、市販されているヴィンテージクローズの501でも3万円以上の価格が付けられている。それを考えると、今回の復刻モデルが特別に高額だとは言い切れない。

 では、価値はどうなのか。ビームス創業年と同じ年に発売された501モデルが復刻するという話題性はある。しかし、写真を見たところでは単なるジーンズで、40を表すローマ数字のXLや限定本数を示すシリアルナンバーなど、ビームス側のメモリアル要素は特に加味されてはいないと思われる。

 となると、ビームスのメモリアルジーンズというより、リーバイスの1976年モデルにビームスが乗っかったという方が現実的だ。仮にそうだとすれば、3万円という価格に対する価値はいったいどうなのかである。

 明確な価値と言えば、40年前の仕様だろう。ヴィンテージクローズという生地、ステッチ糸やポケット用の裏地、リベットやフロントボタン、革パッチ、フラッシャー、そしてデザインやパターン、シルエットは当時のものを再現したというから、それはそれで価値となる。

 では価格の妥当性はどうか。これはその商品を購入する人々のライフステージや収入で、高いと感じたり、安いと思ったりするから一概には言えない。ただ、価格は原価や利益の比率によっても変わってくる。何も原価が低いものが価格が安く、原価が高いものが価格が高いとは限らない。安い原価でも儲けようと莫大な利益を載せれば価格は高くなるし、高い原価でも適性利益のままなら、価格は抑えられるのだ。

 ここで重要なことは、原価はそのまま商品のクオリティを示すということである。仮に1976年版復刻モデルの原価率が価格の3分の1、つまり1万円だとしよう。原価計算やマーチャンダイジングに詳しくない方でも、生地や付属品、縫製に1万円もかけているのなら、相当に良い商品ではないかと思われるはずだ。確かにプロのアパレル事業者も、原価が1万円だとすれば、そこそこ良い商品と判断する。

 ただ、どれと比較して良い商品なのかはわかりにくい。そこで、某ブランドのジーンズを引き合いに出してみたい。ここのジーンズは1時間に4~5mしか織れない旧式のシャトル機でつくったセルヴィッチデニムを使用している。柔らかで風合いの高級コットンで、染めも昔ながらの味わいのあるインディゴブルーだ。

 反面、コアスパンという丈夫な糸を使用して縫製しているため、経年劣化がしにくい。ステッチがほつれたり切れたりすることはない。穿き込むほどにヒゲ、いわゆる股から太もも、足の付け根にかけて自然な色落ちが楽しめる。今は違うが、そのままとっておけば、ヴィンテージ価値が出てきそうな逸品だ。

 価格は13,000円程度である。これを手掛ける企業によると、工場が出す価格に倍掛けしているだけという。つまり原価率は売価の半分ということだ。単純計算すると、このジーンズの原価は6,500円程度になる。しかも100%日本製である。もちろん、いろんな中間業者をカットすることで、この価格を実現しているのも事実だ。

 ただ、これまでのリーバイス501と見比べても、クオリティは明らかにこちらの方が高いと思う。価格を超える大きな価値をもつジーンズと言っても、過言ではないだろう。かたやリーバイスもジーンズメーカーだから、小売りのPBのように間にいろんな中間業者が介在しているとは思えない。となれば、復刻モデル501の原価はいったいいくらなのか。またクオリティの分だけ原価が1万円より下回るのであれば、いくらの利益を載せているのかという疑問が湧いてくる。


 ナイキのエアジョーダンが爆発的なヒットをした時、その原価がわずか4ドルだったと暴露され、不買運動に発展したのは業界関係者の多くが知るところだ。売価が200ドルとして、原価率はたった2%。それでもマイケルジョーダンのエンドーズドモデルという価値があるから、相当な価格でも世界中で売れたのである。

 では、1976年復刻モデル501はどうなのだろうか。リーバイスは現状でもヴィンテージクローズの501XXを3万円以上の価格で市販している。それから類推すると、ビームス40周年という価値が相当の利益として載っけられているとは考えにくい。ビームス側も暴利をむさぼっているわけではないだろう。

 リーバイスがブランドロイヤルティを維持する上で、価格設定が重要だと考えるのは理解できるが、その背景で相当な利益を載せていることも事実ではないのか。もちろん、生産ロットは普及版ほどではないから、製造コストがかかるという言い訳もたつ。それにしても、価格対価値という点では少し高すぎるのかもしれない。

 1976年復刻モデルのリーバイス501に3万円という価格に見合う価値があるのか。あるとすればそのことを売場スタッフが明確に伝え、どれほどの顧客がそれを見いだせるか。ビームスがこれから生き残っていくとすれば、価格を超える価値を提案できてこそ、ファンは納得するのである。今回のケースはセレクトショップが販売するブランドの価格対価値という点でも、考えさせられる事例と言える。

復興景気も郊外がリード。

kumamototrminal 先週末、仕事で熊本を訪れた。震災直後の5ヵ月ほど前に訪れて以来だ。全国的な報道がすっかり沈静化した中、熊本県は自治体としての施策を災害対策から復旧・復興に切り替えていくと発表した。ただ、住宅街を歩くと、屋根にかけられたブルーシートが数多く残り、被災者の生活再建にはまだまだ時間がかかるようである。

 一方、地元業界は被災状況が都市部と郊外、店舗ごとに違い、震災直後から営業したり、1、2ヵ月から数ヶ月かけて部分開業したりと様々だ。実際、中心部の店舗を見ると、 休業のままま、工事や解体中のところもあり、営業しているのは震災以前の7割程度に止まるのではないか。 

 熊本の中心繁華街は、熊本城が見下ろす通町筋を起点に南と北の両縦と南端から西に伸びる3つアーケード、ストリート、バスセンター界隈で形成されている。しかし、郊外の住宅開発とモータリゼーションの発達で、ここ15年ほどは地盤沈下が激しい。

 南側のシャワー通りは一時期、ファッションの発信基地と称されていた。わずか200メートルにも満たないストリートには、ここにしかないブランドショップが軒を並べ、東京の業界関係者をもあっと言わせるほどだった。しかし、銀行がバブル崩壊による金融引き締めで融資をストップすると、ショップオーナーたちは資金繰りに困り、閉店や倒産を余儀なくされた。

 ファッション発信と騒がれたところで、ビジネスの規模はその程度だったのである。今も空き店舗が出るとチラホラ出店はあるが、一歩通りを外れると風俗街、歓楽街が広がり、計画的なエリア形成には至っていない。北側の新市街アーケードは中高年の飲食や遊戯関係者が往来し、解体されるビル、半壊した店舗などが合わさり、どこかうらぶれたイメージがまん延している。それだけ活性化は不可欠なのだが、再開発計画が持ち上がっているのは、新市街を抜けたバスセンター、県民百貨店周辺の桜町地区一帯だ。


 熊本は今から10数年前にも行政主導で通町筋の再開発事業が実施されている。しかし、ハード整備中心で、商店街が全盛期の売上げを回復するまでにはない。期待された中国人旅行者も熊本城を観光すると、そのままバスで阿蘇方面に移動するため、商店街にカネが落ちるほどの効果はない。鳴りもの入りでオープンしたラオックスも、集客のカギになる水前寺公園の湧水が地震の影響で枯渇する始末。地元にとっては二重三重の苦しみを味わっていると言っても、過言ではないだろう。

 地元紙の報道によると、大西一史熊本市長は、市議会の一般質問で「過去の事例から地震後2年は震災特需で地域経済は支えられるが、その後は減速が懸念される。3年目以降を見据えた取り組みが重要」と答弁。震災復興をそのまま地域の浮揚につなげていく考えを明らかにした。その中心となるのが、桜町地区一帯の再開発事業である。

 計画は老朽化が進んでいたバスセンターやホテル、百貨店、文化会館を解体して交通、商業、ホテル、文化ホールなどを一体化した多目的施設に建替える一大プロジェクトだ。竣工は4年後の2020年秋になるが、復興需要が一段落した後に景気を減速させないためにも、熊本市では重要な再開発事業と位置付ける。

 ただ、商業施設には核店舗を誘致できず、テナントがリーシングされるだけ。東京の有楽町マリオンやプランタン銀座をはじめ、全国各地の百貨店が軒並み閉店していることを考えると、熊本も例外ではない。定期借家契約による店舗集積の商業ビルしか、打つ手がないのだ。出店するテナントもだいたい想像はつく。これから4年、ビジネスモデルが劇的な変化をとげれば別だが、今のまま推移していけばファッション衣料は半分以下で、雑貨やビューティ、外食が主体になるのは目に見えている。

 メディアがテナントに「九州初進出」とか、「熊本初上陸」とかの冠をつけて囃し立てても、ほとんどの業態がすでに存在するのだから、目新しいテイストであるはずもない。そもそも新業態のテナントがなければ、デベロッパーとして誘致するものは限られる。同じようなテナントが集まれば競争が激化し、勝つか負けるか、または縮小均衡せざるを得ない。もちろん商品が売れなければ、売上げは付かない。すでに熊本の中心部も市場規模からすればオーバーストア気味。活性化以前の話だ。

 ブームを仕掛けるのがうまい外食とて、半年もすれば行列は無くなり、客足は遠のく。所詮、商業ビル、ハコもの主体の開発である。加えて購買力の半分以上が郊外や福岡に持ち出されている。街ごと作り替えるわけではないので、効果は限定的ではないか。ハード中心の再開発事業が中心部を活性化するなどという考えには、全く首を傾げたくなる。


 熊本にはかつて百貨店が三つあったが、現在は一つ。閉店したのが桜町の県民百貨店(旧くまもと阪神)。もう一つは大火災後にGMSとして営業して来た城屋ダイエー(旧大洋デパート)。このダイエー跡地には来春、「熊本下通新天街NSビル(仮称)」が一足先にオープンする。開発に当たるのは、地場デベロッパーと下通で靴やバッグの専門店を経営する民間企業だ。地下にはイオン系のスーパー、マックスバリュが入り、1階から4階は福岡天神でヴィオロを運営するプライムプレイスがテナントをリーシングする。5階以上はオフィスビルやサービス関連のテナントが入る計画という。

 しかし、こちらも桜町の再開発ビル以上にファッションテナントの顔ぶれは推察できる。報道ではセレクトショップや雑貨、カフェなど60店舗が入居予定と言われているが、セレクトと言っても、ビームスは通町筋に旗艦店ビルをもち、隣のビルにはB&Yユナイテッドアローズ、鶴屋百貨店が運営するNew-S館にはユナイテッドアローズのGLR、シップス、スピック&スパン、トゥモローランド、同東館にはユナイテッドアローズ、エディフィスとイエナの複合業態、アーバンリサーチメイクストア、熊本パルコにはナノユニバースが出店済みだ。

 これらがリローケートすることも考えられるが、手本となる天神ヴィオロのテナントから類推すれば、メジャーなセレクトではアーバンリサーチ ソニーレーベル、アメリカンラグシー、クルーン ア ソング、ロイヤルフラッシュなどが順当だろう。他にはジャーナルスタンダード単体、あとはユナイテッドトーキョーなどのブランドが出店するのか。地元の小売り事業者にも新業態やFCでのオファーが来ているとは思うが、莫大な出店投資を考えると厳しいと思う。

 当面、下通新天街NSビルが長くてだだっ広い商店街の新名所になるのは間違いない。それに熊本はロケーションに反してクリエーター系ブランドが売れてきた土壌もある。大手にとってはテストマーケティング的な進出もが考えられるかもしれない。ただ、若者の服離れは熊本も同じだろうし、地震による景気の冷え込みもある。通常の市場環境とは言い難いのだ。来春オープンだから、今年中にテナントは決まるはずだが、果たして…


 課題山積の中心部に対して、郊外は順調に復旧、復興を進めている。イオンモール熊本も8月中に順次テナントが営業を再開した。オープンを待っていたお客が堰を切ったように訪れ、平日にも関わらず週末のような賑わいを見せる。中でもニコアンドは通路での仮営業でフルアイテムが揃わないにも関わらず、人気ぶりは健在。店側も来店客にはサイト掲載の商品が見当たらなければ、取り寄せで対応するなど最大限の配慮を欠かさない。そうした点を見ても、郊外業態の勢いは震災禍でも底堅いと言えそうだ。

 ゆめタウンのはませんとサンピアンは11月を目処に再開予定という。被害が軽微でシネコンなど一部を除き営業してきたゆめタウン光の森は、近隣のサンピアン休業に伴い集客、売上げとも好調に推移している模様だ。何しろ平日でも駐車場は、ほぼ満車の状態。グローバルワークやレプシム、スタジオクリップ、グリーンパークス、プティマインでは、秋物商戦でも順調な売れ行きを示している。

 中心繁華街には震災の爪痕が残り、ストリートでは休業したままの店舗も少なくない。路地裏の個店は家賃が安いからこそ営業できたのだが、屋根瓦の葺き替え、外壁、内装の修理などの費用が嵩めば、賃料が値上げされる可能性もある。若手オーナーにとっては休業、移転はまだしも、廃業や転業の決断を迫られるかもしれない。

 メーンの商店街にしても、来春、再開発第一弾のビルが開業したところで、同じ並びに休業店舗があることも予想される。それでは継ぎ接ぎ状態は否めず、街全体の魅力アップにはほど遠い。そもそもアーケード街にお洒落な出立ちはそぐわない。クリエーター系もインポートもセレクトも、街と呼応して活きる部分が大きいからだ。街づくりがファッション文化を育む源であるし、コストがかからない街だから服に投資できるではあまりに寂しい。それも機能や価格で優れたショッピングセンター系ブランドに押されて来ている。

 

 いつも思うが、行政が作る再開発の企画書には壮大なことが書いてある。街そのものを変えていくような意気込みが感じられる。しかし、実際はハード中心にお金が流れ、ソフト面はイベントを仕掛けて、賑わいを生むくらいしか方策がない。

 なぜパリやミラノがお洒落なのか。なぜ横須賀や原宿からファッションが生まれたのか。街と大きく関係するからだ。「東京よりも先にブランドが登場した」「日本で初めてセレクトショップを作った」。熊本には逸話がある。しかし、所詮小売りや店舗のレベルに過ぎず、マスメディアに取り上げられたことでの自己満足だ。街によって育まれたファッション文化ではないだろう。

 少なくとも全館修理で再開するSCに震災の傷跡は残らない。熊本の復興景気はやはり郊外が一歩リードというところだろう。そこで買った服を着て中心繁華街を歩いても、若いお客ほどなんら違和感を持たない。それが熊本の実態だと思う。復興、復旧、再開発を口で言うことは容易い。でも、その先の街づくり如何でファッションが左右されるのもまた事実だと思う。

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