HAKATA PARIS NEWYORK

今のファッションを斬りまくる辛口コラム

2018年01月

本業はファッション、グラフィックなどデザイン関連のクリエイティブディレクター。創る側の視点で今のファッション関連の事情を評論する。マスメディアはもちろん、業界紙誌も扱わないテーマに踏み込む。

買わずに過ぎる季節。

gapandmicro 今年も早いもので一月が過ぎた。漫才のネタではないが、あと11カ月もあっと言う間に過ぎていくかもしれない。歳を重ねる度に時間が経過するスピードは、ますます早まっていく。

 業界メディアでは、一斉にこの冬の景況が報道されており、セールの動向や百貨店、ファッションビルの売上げが連日、紙画面を賑わせている。ただ、アパレルについて言えば、ミクロとマクロでは、どうしても見方は変わって来る。

 確かに売れているブランド、ショップは一部にはあるが、全体的に見ると流行を追うものはますます厳しさを増している。百貨店のレディスはデイリーに着られるコモデティ的なアイテムでないと売れづらいようである。だから、何のこだわりもなく、ただブランドにあぐらをかくだけでは、なかなか売れないということだ。

 じゃあ、ファッションビルやSC系のブランドが総じて売れているかと言えば、セールで何とか冬商戦の帳尻を合わせたというのが、本当のところではないかと思う。端境期で寒さが増しているので、店頭を薄手の春物に変えたところで、簡単に商品は動かない。

 それでなくても、個人的には地方百貨店やSCの店頭では、「これは」という素材やデザインに出会うことがほとんどなくなってきた。ネット通販を探せば企画に力を入れたものが見つかる公算は高いが、それとて現物を試着することができるわけではないので、実際に見たイメージとのギャップや返品の面倒さを考えると、購入する決断は店頭よりブレてしまう。

 この秋冬のファッション衣料も、地元店では一切購入することなく終わりそうだ。というか、2000年くらいから全く購入しないシーズンが確実に増えている。逆にレディスでは企画に携わったものを撮影用に購入したり、ショッピングサイトを見て海外から取り寄せたこともあるくらいだ。その手の趣味、志向があるわけではないが、レディスの方が「イイな」と感じるものがまだまだ身近にある。結局、自分が着たいアイテムが、地元では衝動買いすらできなくなったということである。

 年間の衣料購入予算が決まっているわけではない。使わなかった分を数年間プールして10万円くらいを貯まると、東京や海外に出かけた時にまとめて使うことになる。それでも、その時にお気に入りのアイテムに出会う公算は低く、何も買わなくて帰って来るシーズンの方が多い。一昨年の冬なんか、今年こそ上質なジャケットでも買うぞと計画したものの、結局気に入ったものに出会うことができず、その分の予算を全部「松茸」に費やしてしまったほどだ。

 「じゃあ日頃、何を着ているの」と聞かれるが、自宅のワードローブには新しくて10年物、一番古いものは20年物がストックされているので、それを着ているだけである。 古着を買っているわけではないので、ユーズドという表現も当たらない。タンスの肥やしどころか、旬は過ぎたがヴィンテージとまでいかないシロ物。 物持ちが良いというより、それらが非常に上質かつ丈夫で着心地が良いから、ついつい大事に着てしまうのである。

 某有名SPAが外国人デザイナーと契約したシリーズのジャケットやパンツ、セレクトショップのヤング向けのレザーやコートは何点か購入したが、端から仕事の資料として素材や縫製を見るためだった。だから、試着程度のまま1シーズンでリサイクルショップに持ち込んだので、現状ではストックは1着もない。

 ここ20年くらいのトレンドを振り返ってみると、フリースもプレミアムライトダウンも買わなかった。ヒートテックも静電気恐怖症と暑がりゆえに着たことは一度もない。ジャージはあくまでジムやランニングの時に着るものという認識である。一昨年、昨年とセレクトショップがこぞって企画したレザーもライダースジャケットも、あまりに露出が多くマス化してしまったので、買うまでには至らなかった。

 タンス在庫ばかりを着ていると、中にはトレンドに合わなくなったアイテムもある。ここ数年、メンズでもタイトなシルエットが続いていた。当方はもともと太めのアイテムが好きだったことから、細身のトレンドではジャケットもパンツの幅を細くお直しした。太すぎて野暮ったく見えるのが避けられ、細すぎて窮屈に感じることもない。ちょうど良い塩梅に着こなせている。微調整のために細かくピンを打ち、こちらのセンスに合わせてお直ししてくれるリフォーム屋さんには全く感謝している。

 今、このコラムを書いている時の普段着は、トップスが黒でウール100%のリブニット、ボトムが同色のパンツ。ニットは99年頃のコムサ・デ・モードのミドルゲージ、パンツは2005年頃に発売されたギャップの厚手のコットンパンツである。 

 ニットは購入して20年になるが、シーズンオフに丁寧に毛玉を取り、大事に手洗いしてきたせいか、多少の縮みはあるものの、今もジャストフィットで着れる。さすがにオフィシャルに着ていくのははばかれるが、アウターの下なら十分な許容範囲だ。昔からカシミアや梳毛といった組織変化がないニットが好きになれないので、ミドルゲージばかりになっていた。

 最近はSPAを中心にメリノウールが主流になっているので、ミドルゲージはほとんど出回らない。かといって、バルキーやカウチンタイプのセーターになると、ヘビーすぎる。ちょうどいい番手のニットがないので、どうしても手持ちというか、タンス在庫を引っ張り出してしまう。

 パンツは分厚いコットン素材のメイドインインディア。お得意のマークダウンで3割程度安くなっていたので、2本を大人買いした。サイズはW73×L81で、補正することなくそのまま穿けた。2本を毎冬ローテーションで着用し、トレンドが変わった数年前に両脇を絞って細くしたが、この冬で13シーズンに入ったことになる。

 仕事で使うゲージ(マイクロメーター)で生地の厚みを測ると、0.65mm。洗濯で多少は薄くなったのかもしれないが、それでも通常のチノクロスが0.3mm~0.4mmとすれば、防寒精度は高いと言えよう。こまめにギャップをチェックしているわけではないが、このアイテム以降、コットンでこれほど厚手のパンツを見たことがない。

 同ブランドはマークダウンや大幅値引きを行って在庫を減らす戦略を変えるようだ。でも、企画の段階からしっかりした素資材を使って商品を企画すれば、1万円程度でも売れると思うのだが。世界市場を狙う上ではやはり価格しかないのだろうが、値引きする前に価値と価格のバランスを熟考すべきではないかと思う。

 そんなこんなで、今年の春もほとんど買うアイテムはなさそうである。4月を過ぎると気候が暑くなるので、新たにTシャツを数枚購入すれば十分だ。秋冬は気に入った素材やデザイン次第だと思う。だた、もうブランドやアイテムを探して買うというより、自分が気に入るまで練りに練って「テキスタイル」「ヤーン」を作り、好きな色と厚みに「革」をなめすことから始めないといけないのかもしれない。

 一個人としては、業界のアンタッチャブルに入ってしまうのか。ただ、デザインは自分で自由に考えればいいわけだから、その方が納得いくだろう。究極のウォンツとは何か。時間をかけてじっくり作っていくこともありかと思う。

被買収が吉となる。

bigigroup2 先日、三井物産とMSD企業投資第一号投資事業有限責任組合(MSDファンド)が「ビギグループ」の全株式を取得するとの発表があった。今やファンドによるブランド買収は珍しくないが、今回は商社も絡んでいることで、注目される案件だと思う。

 「あのビギグループもついに買収の対象になったか」とは言っても、「ビギグループって何?」「どんなブランドなの?」。業界人でも50歳以下の方はそんな印象ではないか。今回の買収も50歳以上と以下で、受け止め方は異なるだろう。そこで、全盛期を知る人間として、ビギグループとはと、その買収の先にあるものについて書いてみたい。

 ビギグループとは創業ブランドの「ビギ」と、そこから派生した様々なブランド会社、さらにレストラン、販社、工場、ホテル、旅行代理店、印刷会社などで構成される企業グループを指す。企業、ブランドとも自社内からスピンオフしたものが大半なので、LVMHやケリングのようなM&Aで巨大化したコングロマリットとは異なる。

 ビギが誕生したのは1970年7月。今から半世紀近く前で、日本生まれのファッションブランドはそれほど多くなかった。当然、資本の論理による吸収合併などできるはずもなく、ある二人の人物によってサクセスストーリーが作り上げられたと言っていい。

 その一人は「タケ先生」こと、菊池武夫氏である。ご存知、日本のファッション業界で類いまれな感性と才能を持ったデザイナーだ。もう一人がその菊池氏の能力を見出した経営者の大楠祐二代表である。正しく言えば、菊池氏がビギグループのベースを築き、大楠代表が拡大、発展させたとでも言おうか。

 菊池氏は服飾専門学校の原のぶ子デザインアカデミーを卒業後、学友の稲葉賀恵(当時は佳枝)氏と結婚し、小さなアトリエを設けていた。だが、自分たちが好きなデザインの服を作ったところで、ビジネスにするにはほど遠いものだった。稲葉佳枝はデザイナーだけでなくモデルもこなしており、うちの母親が愛読していた雑誌「ミセス」ではかなりの露出もあって、小学生の筆者はすっかりモデルと勘違いしていた。

okusu1 大楠代表は日大芸術学部の写真学科に在籍中から、学業そっち抜けでバイトに勢を出したが、同期の篠山紀信らに撮影のバイトを紹介する代わりに斡旋料を取るなど、ビジネスの才覚を持っていた。どんな事業を展開すれば、金が儲かるか。どんな人間に賭ければ、ブレイクさせられるか。大楠代表にはそんな能力があり、デザイナーの菊池氏にもビジネスの可能性を感じたのは言うまでもない。

inabaokusu 因に大楠代表の妻は女優の大楠道代(旧姓は安田)である。鈴木清順監督、松田優作主演、楠田枝里子共演の映画「陽炎座」にも出演している。だが、筆者には緒形拳出演で、 女性の中に潜んでいる男の能力を揺すり起こし、東京オリンピックの陸上選手を育てる問題作「第二の性」のヒロインの方が印象に残る。個性派女優であることから、ビギグループのプロモーションにも数々登場している。

 それらはさておき、本題に戻ろう。ビギという名前は菊池氏が造詣が深かったロンドンの反オートクチュールのショップ「ビバ」を参考にしている。ロゴマークのデザインもビバをアレンジしたものだ。ビギが誕生すると、菊池氏はデザインに専念し、大楠代表は営業にまわる。役割分担は当初から徹底されていた。

 当時、日本のファッションは街のサロンブティックが牽引しており、パリやミラノのインポートや高級服地を使用したオートクチュールが主流で、既成服はそれほど出回ってはいなかった。筆者の母親もブティックのオーダーメードを仕立てる洋裁師をしていたので、子供ながらこうした状況は何となく感じていた。

 ヤング向けの既成服はスウィートな感じの服ばかりで、デザイナーが作るようなカッコいい服はほとんどなかった。だから、菊池氏が創り出す大人の雰囲気とエッジの利いたデザインにはすぐに洋服好きの女性が飛びついた。それを創刊間もないアンアンが取り上げる。ビギはたちまち全国にファンを拡大していった。

 「DC(デザイナー&キャラクター)ブランド」という新たなカテゴリーが創造され、ビギは加速度的に成長を続けていく。73年、大楠代表はビギのニット部門を独立させ、㈱メルローズを設立した。この頃から分社経営に乗り出すが、これがビギグループの成長の原動力となり、後に来る大楠代表の危機をも救ってくれた。

 会社が成長するにしたがって、クリエーションを追求したい菊池氏とビジネス重視の大楠代表の間には溝が深まっていったのだ。菊池氏は74年に故・松田光弘(ニコルのデザイナー)、山本寛斎、コシノジュンコらと「TD6」を結成し、合同でコレクションショーを開催した。

 これを機に「俺もパリコレで作品を発表し、観客の喝采を浴びたい」と熱望し、ビギからの独立を申し出る。狙うのが国内のマーケットだけ、しかもビジネス重視という大楠代表のやり方に、クリエーターとして反旗を翻したのである。

 一方、大楠代表には自分が売場からお客の声を集め、マーチャンダイジングに活かしたからこそ、ビギは売れたとの手応えがあった。海外でコレクションを開催したところで、有り余る利益にはつながらない。それ以上に菊池氏が好き勝手なデザインをやったところで、ビジネスに結びつくわけがない。失敗して戻って来るはずさ。その読みはズバリ的中した。

 ただ、またいつデザイナーに去られるかわからないとの危機感があったのも事実だ。そのため分社経営、多角化を進めていたのである。菊池氏の独立後は稲葉氏(菊池氏と離婚)をチーフデザイナーを起用してブランドの立て直しを進める一方、東京・青山にフランス料理店を出店した。

 大楠代表はデザイナーのネームバリュウに頼る事業ほどリスクの高いものはないと感じとっていた。ロサンゼルスの通りの名前からとったメルローズはラ・ブレア、メンズメルローズ、フィフスクラブなどで構成する。これらはC(キャラクター)ブランドと言い、デザイナーの名前は付けられていない。デザイナーがいつ交替しても良いようにとの考えからだ。

 こうして関連会社を次々と設立してブランドを増やし、ビギグループの骨格が形づくられていく。そこには大楠代表の独自の経営哲学があった。会社(ブランド)は大きくするより、小さな会社(ブランド)をいくつも持て。ビジネスはホームランを狙うより、小ヒットを重ねろ。そして、原価率を抑え、利益が大きくなる業種に絞れ。

 カフェからフランス料理やホテル、旅行代理店、印刷会社、蘭の栽培まで手がけたのは、すべてこうした経営哲学に則ったものだ。それらはそれぞれの会社が小さいからこそできることだと、当時は言われていた。 

 しかし、DCブランドブームが去ると、ビギグループの威光もすっかり消え失せた。95年には傘下のBMファクトリー(生産工場)と、全労協の管理職ユニオンとの間で団体交渉が行われている。部門廃止や人事異動、給与改定などのリストラが行われる一方、経営陣によるゴルフ会員権の購入や社用車の貸与など公私混同があったため、グループ内で初めて生まれた労働組合により、業界では珍しい争議まで起こされている。

 「ザラ」が日本で展開を始める98年には、インディテックスグループが49%、ビギグループが51%を出資して日本法人「ザラジャパン」が設立された。初代の社長には、ビギグループの販売会社「BMD」で代表を務めた城尾卓佳氏が就任した。大楠代表とともにビギグループを成長軌道に乗せた一人である。この話題も意外に知られていないが、業界ではエポックなネタだから、付け加えておく。

 ビギが誕生して50年近くを経過した今、そのブランド開発の手法や経営哲学が時代に合っているかどうか。それは別にしてもDCブランドの一時代を作り上げたのだから、もう一度そのスタイルを見つめ直しても良いのではないか。それでなくても大手アパレルは組織が肥大化、硬直化して新たな才能を開花させられず、新しいブランド育成もできていない。おまけに機動力や柔軟性まで失って、閉塞感ばかりが漂っている。

 買収に当たった三井物産は商社として、ビギグループとはブランドライセンスやOEMで付き合いがあったわけだ。ただ、メンズビギやメルローズは完全にお兄系のプチプラなブランドに成り下がっており、テイストも往年のDCとはかけ離れている。大人の女性向けで上質な「wb」が好調をキープしているのを考えると、素材調達や工場確保などネットワークに長ける商社の力が加わると、メンズ再生にも期待できるのではないか。

 そのためには人材が必要だ。かつてのビギで仕事をした人間は還暦を過ぎたり、定年を迎える年齢。いや70歳代に達している。しかし、DCブランドで磨いた若い感性やカッコいい服を作り出すことへの情熱は、決して冷めてはいないのではないかと思う。今でも時々PinterestやInstagramに登場されている菊池氏が何よりの証拠だろう。三井物産やMSDファンドがブランド再生にそうしたマグマのような力をどう掘り起こすかである。

 ビギグループは大楠代表のビジネス重視、やもすると拝金主義的な姿勢に反し、商品づくりに対しては確かな基盤を有してきた。自社にはデザインチームがあって企画に携わっているところは、安易にODMに走る大手アパレルとは一線を画す。それだけを見ても、買収の価値は十分にあったということだ。商社とファンドの資金が良い方向に投資され、是非ともメンズビギやメルローズのリニューアル、新たなブランドの構築を断行してもらいたいものだ。

bigigroup3 東京渋谷のJR恵比寿駅から駒沢通りを上り、旧山手通り一帯に広がるエリア。そう、代官山である。古くは外国大使館や教会、関東大震災の復興住宅・同潤会アパートなどが木々の緑と一体化した静かな街だった。ここをファッションストリートに変貌させたのは、何を隠そうビギグループである。

 母体の㈱ビギが原宿から移転し、その後にディ・グレースやピンクハウス、キャトルセゾン、P・3などのグループ企業が次々と本拠を構えていった。一時期、旧山手通りは「ビギ通り」と呼ばれていたこともある。今から30数年前、こうした店舗に商品チェックや市場調査を兼ねて通ったのが懐かしい。

 筆者にとっては現代のようなメジャーに開発された代官山ではなく、木立の中にある朽ちかけたアパートや不味い食堂の方がよほどお洒落に感じたものだ。ただ、一つだけ達成していないのが、ビギがプロデュースしたホテル「ロテル・ド・ロテル」での宿泊。何とか札幌に行く機会を作り、実現させたいと思っている。

進化の先にあるものは。

senken2018_1 新年が明けて2週間が過ぎた。マスメディアはもとより、業界紙誌でも企業代表の年頭所感の掲載が続いている。そこで、いろんな経営者が展望として判で押したように言及するのが、AIの可能性とECの強化である。

 AIは自動車や家電のメーカーで研究が先行しているが、ファッションではまだまだ素材や商品の開発、縫製、需要予測などに活用される段階にはない。せいぜい人型のロボットにAIを組み込み、人間に代わって接客対応やインフォメーションに活用される程度だ。AIから得た情報をさらなるマーケティングにどう生かすか。ようやく次のテーマが見えてきたというところだろう。

 反面、人間が行う仕事が問われているというか、業界への人材の流入は厳しいと思う。よほど知名度のあるブランドや企業でない限り、新卒も中途もスタッフの確保は容易ではなくなると思う。逆に若者の関心が企業の枠内で仕事をしなければならない企画&販売職よりも、自ら自由に発信できるインフルエンサー的な業種に向かっている。それが具体的に何かはわかっていない人間が多いが、裏方であるスタイリストに依然として人気があることを見てもそう感じる。

 もはやSNSは若者の消費文化の主力になっており、自分がネット社会の主人公になれるチャンスがあるのだから、なおさらである。トレンドファッションに身を包みたいが、企業、会社、店舗のレベルでは嫌で、もっとグローバルにスポットを浴びたいのだ。ネット社会を支えて行くような職種に人が集まる傾向はますます強くなっていくと思う。

 一方で、百貨店が厳しさを増していることを考えると、派遣社員を中心に30~40代の幹部登用が進むとも考えにくい。女性管理職というポストはメディアも盛んに取り上げるが、それがアパレル業界のSVやエリアマネージャー、小売りチェーンの店長職でも注目されているかと言えば、決してそんなことはない。なおさら求人側は求人難であることからラインスタッフの育成には、男女とも見切りを付けているのが本音のところだろう。

 各企業の代表こそ、声高には叫んではいないが、EC強化の背景には「店舗」「人員」のコスト削減が念頭にあるのではないか。物が売れない時代である。利益を上げるには在庫を低減させて経費を抑えなくてはならない。ましてお客の大半はネットで情報を収集し、買い物するかを判断している。そうした現状を考えると、スペースが限られる店舗で在庫を十分に手当てするには限界がある。むしろ、店頭在庫がEC在庫の欠品をフォローしている状況なのだ。

 大手企業がオムニチャンネルに注力してショールーミング、スマートフォン対応、モールやSNSとの連動を進めれば進めるほど、ECは主販路となり、実店舗の存在は揺らいでいく。それでなくても、日本企業全体が人口減少で、深刻な人手不足に直面している。おそらく、今後、優秀な人材がアパレルや小売業に率先して向かうとは考えにくい。

 とすれば、実店舗の数を維持するのは難しくなり、淘汰は余儀なくされるだろう。店舗を維持するにしても、AIを活用した無人店舗を推進するコンビニにファッションが追随してもおかしくない。生き残ったにしても、i-Padでみるデジタルカタログで商品を検索し、そのままサイトで注文するショールーム型にならざるを得ない。今年は実店舗とECとの主役交代がより鮮明になるのではないか。では、ECという進化の先には何があるのか。経営者はもとより、業界各人が想像し、想定しているのだろうか。

 EC担当者の中には、「自動販売機にはなりたくない」と宣う方もいる。確かに自社ECでも季節提案などメッセージ性のある作り方をすれば、店舗と変わらない情報発信とコミュニケーションの場になることはできる。ただ、問題はECによって、本当にお客が求める商品が供給されていくかである。

 店舗販売の次元では注目のブランドやショップ、目玉商品がどうしても東京に集中し、地方店には大量生産の商品しか供給されなかった。これはECによってずいぶん解消されたと思う。しかし、ECが単にアパレル側が生産した在庫を売り減らすチャンネルでは、真の顧客関係管理(CRM)が構築できるとは思えない。今どき、企業側が売りたい商品なんて、お客が買いたくなるはずはないからだ。

 どこにでもあるショップの在庫を売り捌くのでは、お客にとって求める商品が見つかるはずもない。そうしたお客がもつ「飢え」にECはどこまで応えきれるかである。EC限定の商品と謳ったところで、素資材、デザイン、品質のどれもが店頭に並ぶ在庫を超えないと購入する価値はない。その辺にも斬り込んでいく必要があると思う。

 お客はネットモールはもちろん、海外ECにも目を向けている。そこでは何が求められ、何が売れているのか。そうした動向をいかに探り、適切に対応して行くか。極論すれば、個人のニーズ=わがままにどこまですり寄れるか。マスプロダクトのままでは個人個人の消費にはアプローチできなくなっているのである。それがECにとって今年の最大のテーマになるのではないか。 

 米国では一昨年辺りから個人が欲しい商品を登録すれば、専門のスタイリストが商品を探し出して提案してくれ、そのまま購入できるサービスが人気を集めている。日本でサービスが始まるのも時間の問題だろう。そう考えると、アパレル側は小売業との企業間取り引きだけを考えてもだめなのではないか。

 現状のECに絡むマーケティング程度では、個人個人の細かなニーズに応えることはできない。真のスタイリストという個人のコーディネート&販売のプロにも注目しなければ、顧客へのアプローチはままならないのだ。SNSがここまで生活に浸透すれば、やはり商品を売っていくのは、メディアでもタレントでもインフルエンサーでもない。情報を察知して商品を見極めるプロのスタイリスト=個人ではないかと思う。アパレルはそうした人間とどうコンタクトを取るのかである。

 個人間の取引が進んでいくことを考えると、小売業における店長や販売スタッフといったポジションやクラスは無意味になっていくだろう。ファッションというエモーショナルな世界で、意思疎通を行いながらお客の信頼を得られる人間こそが商品を流通させられるようになっていくと思うからだ。そこでは本当の意味でSNSがカギになる。アパレルや小売業といった企業、硬直化した組織にはできないリアルなファッション情報を発信できる人間こそがものを言うのである。

 企業の中には、ECの施策として1to1マーケティングなどに力を入れるところもあるが、それは個人のニーズを聞き入れて商品を企画生産し提供することではない。あくまでアプローチの一手段と言っているにすぎない。しかし、個人スタイリストサービスは完全な1to1マーケティングであるのは疑う余地もないのである。

 そして、AIが進歩しIoTとの連携させれば、人間が描くクリエイティビティがネットを通じてイラスト化され、さらに色や生地もそのまま写し出されて行くことも不可能ではない。それをテキスタイルメーカーや染色・加工業者などが形にし、イラストをもとにパターンも自動制作され、たちまちサンプルが完成するという流れになっていくと思う。こちらもクリエーターが個々人で仕事ができることを暗示する。

 一人の人間が頭の中で考えたファッションデザインがそのままダイレクトに服という形になるのは、もう目の前まで来ているということだ。米国のMIT(マサチューセッツ工科大学)ではそうした研究も進んでいると聞く。

 AIとECを突き詰めていけば、人間が携わる仕事は何なのか。売り方が変わる。買い方が変わる。それだけでは済まされない。商品とそれを生み出す人間が変わらなければならない。その意味を考える1年にもなりそうである。


お試し拠が流行る?

tryonfityamato2 2018年、ファッション業界のトレンドは何か。個人的にはデザインでも、素材でも、カラーでもないと思う。むしろEC隆盛の中で、「試着サービス&拠点」の普及が趨勢になるのではないかということである。

 昨年末に報道されているが、ヤマト運輸がついに試着拠点&サービスの実証実験をスタートさせた。ネット通販の拡大で増加した宅配荷物の再配達を減らす対策として3月末まで実験を続け、全国150カ所のサービス拠点拡大を目指すという。

https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn?a=20180104-00000027-nnn-bus_all

 振り返ると、ECでファッション衣料を買う場合、試着ができないので生地の風合いや素材感はもちろん、サイズや着心地、微妙な色などを確かめることができない。靴になるとなおさら履いたフィット感がわからないまま購入することになる。個人的には、これがECのネックだと、このコラムでもずっと言い続けてきた。

 通販事業者やEC礼賛の評論家諸兄は、ページに掲載する商品情報を充実させ、返品対応等のサービスでフォローし、サイトのブランディングやシステムのインテグレーションを向上させていけば、試着の有る無しでお客がネット購入に二の足を踏むことはない的な論調を展開していた。

 確かにその通り、ECは瞬く間にファッションマーケットに浸透、普及し、ネット通販は完全に店舗販売の補完というより、独自のチャンネルづくり、シェアの拡大を成し遂げた。これには筆者も異論はない。

 ところが、商品をお客のもとに届ける配送事業者の残業が増大したのである。慢性的な人手不足に加え、荷物の増加で業務量が爆発的に増えたからだ。さらにネット通販の競争激化で「返品OK」が当たり前となり、売上げの伸びとともに返品率の向上、再販不能品の増加という副次的な問題を生じさせた。 

 正月に知り合いの運送事業者と話す機会があったが、運送業界は圧倒的なドライバー不足で勤務時間が増え、居眠り運転による違反、人身事故に繋がるケースも出てきているとか。当然、プロのドライバーとして会社からは懲罰を受けるため、物流センターの管理スタッフが配送に借り出されたり、本人が倉庫業務に配置転換されたり。最悪の場合は解雇もあり得るという。メディアはそこまで報道していないが、配送業界ではごく当たり前のことなのだそうだ。

 通販事業者もEC評論家諸兄も、これらの問題が発生することにはノーマークだったと思う。宅配はもちろん、返品の増加で、人手不足の配送事業者がパンク寸前に追い込まれるなんて論調は、記憶しているだけでもビジネス紙誌はもちろん、業界メディアでは全く目にしていない。

 唯一、コンサルタントの小島健輔氏がご自身のコラムで、通販ビジネスの経営陣やコンサルが頭で考えたシステム通りに配送業者をコントロールできないことがハッキリした。ファッション通販では『配達』だけでなく、『返品』の問題も生じている。靴なんかは試着しないとわからない。だから返品は多くなる。お客には『返品が無料で買ってから選ぶ』スタイルが浸透し、売上げが伸びるほど返品率も高まって行くというから、全く皮肉な話だ」と、警鐘を鳴らしていらっしゃった。

 ネット通販市場はほぼその通りになったわけだ。また、「玄関先で配達のスタッフを待たせておいて、その場で試着して『持って返ってよ』と言う強者も出てくるだろう。配送業者に新たな負担が生じるのだ。さて、EC礼賛の諸兄はどう改善策を訴えるつもりか。いよいよ『お試し受取所』といったデポが必要になってくる。結局、ショップレスでは無理なのだ」とも。

 これもその通りになった。だが、ネット通販の企業が改善策を打ったのではなく、配送事業者の方が試着サービス拠点づくりに参入したのである。EC礼賛の評論家諸兄が宣っていたブランディングやインテグレーションといったIT業界特有のお題目よりも、いたってアナログで現実的な機能で改善策に乗り出すわけである。今年、試着サービス拠点がお客から一気に支持を集めるようになれば、通販を行うアパレル企業は堰を切ったように賛同するかもしれない。

 その時、ファッション通販のガリバー、ゾゾタウン、ネットショッピングの古参、ヤフーや楽天はどうするつもりだろうか。「うちはバーチャルモール、仮想商店街という器を提供しているだけ、試着サービスを行うかは各社の裁量に任せる」とでも言うのだろうか。

 まあ、すでにネット通販商品の一部で店頭での受取、返品可を行っているセレクト系のショップもある。店を持っているブランドであれば、デポから店舗に商品を送り、注文客にはそこで試着してもらえばいいわけだ。定期配送の便やフィッティングルームはあるし、販売スタッフも常駐するから、こうしたインフラを活用すればコストはかからない。

 ただ、お客側からすると、これまで「ネット限定の企画商品」は、店舗に置いていないことから試着せずに購入し、気に入らなければ返品するしかなかった。これが店舗まで配送されてそこで試着できるのなら、返品の煩わしさからも解消される。今や商品ではほとんど差別化できないのだから、サービス競争が加熱すれば、やらざるを得ないだろう。こうしたサービスが現実のものとなるのは、時間の問題ではないかと思う。

 個店レベルでも試着サービスを行っているところがある。呼び方はいろいろだが、「商品ご試着サービス」「貸し出し」「こちらからの送料無料」などを積極的に謳われている。サービス詳細を紹介すると、インターネット通販につきものの、『実際に見てみないとわからない・・・』『サイズが合うかどうか心配』などの不安を解消いたします!!」というものだ。

 また、「試着後、写真とイメージが違う、サイズが合わない等がございましたらそのままご返送いただければ結構です」「実物をご覧になりたい方にお貸し致します」「購入の義務はございません」と、ハッキリ言ってくれているので、お客の側からすれば返品する後ろめたさも感じない。

 ただ、返送する場合には送料をお客の側が負担することになる。そのコストをどう考えるかだ。ネット通販で購入した商品を着てみると合わなかったけど、返品が面倒だから無理して着るか、そのうち着なくなってムダ金を使ってしまったと後悔するか。そうした問題がクリアできるコストと考えれば、安いのではないか。ただ、それが続くと言うことになると、お客は不満のはずだ。

 実際に筆者も昨年の暮れにこうした商品ご試着サービスを試してみた。検索エンジンにキーワードを入力した後にヒットしたアイテムがあった。それを扱うショップのサイトで商品を確認すると、商品の色や生地の風合いが自分の好みで、バナーには「商品ご試着サービス」と記されていたから、これは好都合だと思い利用した。

 もちろん、試着の目的は実際の生地とサイズ、着心地などを確かめて購入するかを決めたいからである。送られてきた商品を見ると、生地は掲載写真のイメージより薄っぺらだったため、試着するまでもなく返品を決めた。店舗で接客を受けたのではなく、販売スタッフの顔色を窺わなくて済むので、買わない踏ん切りも簡単についた。

 返送料はこちらで負担しなければならないから、料金がいちばん安いゆうパックを利用した。ただ、年末で郵便局の窓口はたいへん混雑しており、かなり待たされて時間を食ってしまった。それだけは如何ともし難い。その時は試着サービス拠点が早く福岡にもできてネット通販事業者がみな賛同すれば、そうした煩わしさからも解消されると切実に感じた。やはり返品は非常に面倒である。これはお客の共通の思いだと考える。

 結局、筆者が昨年に実店舗、ネット通販で購入したファッションアイテムは、スニーカー1足だけだ。これもゾゾタウンを利用したので試着できないことから、2サイズを注文して自宅に届いてから試着し、1足を返品した。もちろん、返送料はこちらで負担しなければならない。ゾゾタウンの担当者からは電話口で返品要領など細かな注文を付けられ、お客としてはあまりいい気分はしなかった。返品が増えると、商品に瑕疵が発生し、再販不能率も上がっているからだろうか。

 配送業者への負担を改善し、ネット通販の返品率を下げるには、やはり試着サービスと商品の管理徹底を行わなければならないと思う。そのためには拠点開設が不可欠である。各企業経営者の年頭所感を見ても、こうしたサービスに注力する動きはそれほど見られないようである。しかし、マーケットはECコンサルタントや評論家諸兄が思っているようには動かないのも事実だ。

 試着サービスの拠点が普及して各社が参入していけば、嫌が上でもサービス競争は激化する。これまでECへの参入で店舗賃料や人件費のコストが下げられ、利益が上がるとほくそ笑んでいた経営者も多かったのではないか。今年はそうした思惑も一気に吹っ飛んでいく1年になるかもしれない。


効率主義の産物。

offwhitepants 2018年を迎えた。業界はすでに春物企画を終え、初夏、夏の動向を探っている状況だ。これから寒さが増す季節と言いながらも、福岡は年末からとても天気が良く、年明けの陽射しが日に日に春らしく感じる。実需ではどうしてもブライトカラーに目が行ってしまうのだ。

 店頭は12月からセールに入っているものの、秋冬物の在庫処分なのでダークカラーの持ち越し在庫が中心になる。だから、とても買う気にはなれず、セールでは夏冬20シーズン以上何も購入しない状況が続いている。

 アパレル業界にいた体質というか、感覚時計というか、どうしても季節前倒しで商品を考えてしまう性だ。実需においても12月に入ると、春向きのライトベージュや生成り、オフホワイトの方が気になる。かと言って、気温は低いので、冬素材であることが条件なのだが。

 そんな我が儘は自分だけかと思いながらも、ネットで商品を検索すると意外にオフホワイトやライトベージュで、レディス、メンズともに冬素材の起毛系コットンなどがプロパーで完売している。自分と同じこと考えているお客さんは意外に多いとの印象を受けるが、その傾向が少しずつ顕著になっているような気がする。

 そこで、理由をいろいろ考えてみた。まず秋冬では配色構成はダークカラー中心になるから、ブライトカラーは差し色になる。暗い色の中に明るい色が混じると、逆に目立つから、お客さんが手に取るケースは多い。手に取った商品を比較検討に移ると、黒やグレー、モスグリーンなどは当たり前過ぎというか、お客さんはほとんどタンス在庫をもっているから購入を躊躇うだろう。

 いざ買い物行動の段階になると、オフホワイトやライトベージュには新鮮味を感じ、多少は購入に心が傾くはずだ。その時、季節が11月ならセールまで待つのか、今買っとかないと売り切れてしまうのか、気持ちは揺れ動く。さらに1月、2月に着用すること考えると、明るい色の方が3月上旬くらいまで着られるとなる。そして、よし買いだと、決断するお客さんがかなりいるのではないか。完売はそうした結果だと類推される。

 メンズアイテムに限ると、バリエーションが多いわけではない。色数も圧倒的にセーブされている。レディスのように1月に上下ブライトカラーで組み合わせるまでの大胆さは持ち得てなくとも、トップ、ボトムのどちらかを明るめにして着こなすのなら、抵抗はないはずだ。そうした心理が購買を誘い、完売アイテムが出ているのではないかと思う。

 完売しているメンズアイテムは、有名ファッションサイトで「モールスキン」「起毛系」「ホワイト」などのキーワードで検索しヒットしたセレクト系のパンツ(上代12,960円)で、売れ筋サイズ(M)のホワイト。他の色ではチャコールグレーもMが完売していた。秋冬カラーのカーキやネイビー、ベージュ(濃い目茶系)は、まだ在庫が残っている。ちなみにこのアイテムは12月31日時点で一切値引きはされていない。つまり、ブライトカラーの中心サイズは、プロパーで在庫を消化したことになる。

 同じ条件で検索した他のブランドでは、某紳士服量販店がヤングアダルト向けに展開するPBがあった。こちらは価格が12,000円で12月からセール対象となったようで、10,800円と10%オフになった段階で、オフホワイトはSSから3Lまでの全サイズが完売していた。12月31日時点では8,400円まで値下がりしているが、グレー、ネイビー、ブラウンの秋冬カラーはMはすべて、他のサイズもほぼ在庫は残っている。

 こうした傾向から導き出される結論は、メンズであっても冬だから必ずしもダークカラーだけが求められるわけではないこと。12月のセール期に入ると、年越し、梅春の実用性を考えてブライトカラーの方に人気が集まること。そして、春に近づくほど上下、どちらかにブライトカラーを組み合わせるコーディネートが好まれること等々。では、ないだろうか。あくまで類推の域を出ないが、信憑性はかなり高いと思う。

 筆者はレディス畑を歩んできたので、メンズはあくまで門外漢だ。ただ、11月からセールが前倒しされていることが批判を受けるが、お客は年越しの秋冬在庫にもそれほど興味がなくなっていることも指摘されるべきではないかと、異論を承知で言わせてもらいたい。メンズでも年内にしかもプロパーでホワイト系などのブライトカラーが売れていることが何よりの証しだ。

 筆者が昨年の11月、12月と多忙だったため、プライベートのショッピングチェックができず買い逃したことを割り引いても、12月でプロパー完売というのはかなりの機会ロスが出ているのではないかとも思う。実際のところはどうなんだろうか。

 そう考えると、メンズでもカラーMDを見直し、ダークカラーは11月までの在庫量とし、12月から遅くとも年明け1月からはブライトカラーのプロパーを強化してもいいのではないかと思うのである。


 一方、グローバルSPAのユニクロは、数年前から冬向けの暖パンシリーズにホワイトを加えている。今シーズンのアイテム名を正確に記すと、「ヒートテックスリムフィットジーンズ」。アイテムはあくまでジーンズだから、デニムの加工、濃淡でバリエーションを出し、それに無色のホワイトを加えたレギュラーと同じ構成である。

 ヒートテックスリムフィットジーンズは、デニムと機能性素材のヒートテックを合体させ、保温性を加えたアイテムということになる。商品説明には「今季はストレッチ性がアップし、裏地もフリースのような柔らかさになり、抜群に柔らかいはき心地にアップデート」とある。混紡率はホワイトで、63%綿、19%ポリエステル、8%レーヨン、8%アクリル、2%ポリウレタン。アクリルやポリウレタンが加えられているので保温性は高いと思う。

 それでもサイトのレビューをみると、メンズアイテムなのに女性に人気があるようで、小さいサイズ27インチのホワイトが完売していることに憤りのコメントが上がっている。サイズ的に同じことを考える女性が購入していると仮定すれば、女性は男性以上に冬場でもブライトカラーに抵抗がないことが見て取れる。

 ユニクロはストレッチジーンズもフリースもそれぞれ独自に開発し、そのノウハウを十分に蓄積しているので、この手のアイテムの開発はそれほど難しくないと思う。ゼロから新規に開発する必要がなく、素材調達も他と効率的に行えるから、すんなり販売できるわけだ。それは工業生産的発想の商品だからこそ、可能なのだろうが。

 混紡率を考えると、ブラックのタイプは静電気が発生して細かい糸屑が付着するのではないかと思ってしまう。同社のポリエステル混のストレッチパンツでも黒は糸屑が目立ったので、 ヒートテックスリムフィットジーンズでもそれが心配だ。まさか女性がホワイトを選んでいるのは、静電気による糸屑が目立たないことが理由ではないのか。

coscorduroy ユニクロの店頭を見ると、カジュアルアイテムとは言え冬向けの起毛系コットンやピーチスキンなんかの企画には踏み込む意思はないようである。冬場の代表素材であるコーデュロイも、この秋冬は全く見かけない。H&MのCOSがコーデュロイに回帰したのとは対照的である。ジーンズチェーンなんかも同じ傾向で、コットンの起毛系は全く見かけない。もう企画としては飽きられたのだろうか。

 昨今、商品が売れるにはブランドがどうのこうの、EC、ネット通販サイトによる販路確保が先決のように言われる。しかし、原点である商品の色や素材を抜きにしては成り立たないと思う。実際に完売している商品の背景を探れば、売れる根拠が示されているわけだ。ごくありふれた色や素材は、実店舗だろうとネット通販だろうと山のように在庫が残っている。

 それらを見ると、いくら50%以上割引しクーポンを付与しても、シーズンと色や素材が相関関係にあるファッションアイテムでは、年明けに持ち越し在庫の消化は難しいと言わざるを得ない。やはりMDは秋冬はダークカラーオンリーの固定観念から少し抜け出し、次シーズンにも行けるようなカラー&素材MDを熟考する必要があるのではないか。


 振り返ると、2017年の業界は「原価率の明示」と「EC景気」が注目を集めた。トーキョーベースは原価率50%を謳って商品企画を行い、市場からそこそこの評価を受けた。ただ、原価率は生産ロットでも大きく変化する。理論上ではユニクロが東京ベースと同じ商品を作るなら、トーキョーベース半額、つまり25%でも不可能ではない。もっとも、そうは言っても、ブランドの世界観や企画の方向性、素資材に対する考えが全く違うので、実際にはそうならないと思うが。

 比較することは全くナンセンスである。だから、原価率なんて数字のマジックがおき易い理屈ではなく、素資材そのものを見つめ直してほしいのである。経営効率を追いかけるグローバルSPAとは一線を画する素資材の使い方である。

 一方、ECはどの企業経営者も重要な販路に位置づけ、結果、配送業界へのしわ寄せや返品増加、再販不能という負の効果も露呈した。実店舗、店頭を補完する機能というより、独自のチャンネル、メーンの販路になると、店舗の価値がどうなるのか。皆が通販サイトばかりで商品を探すために、売り切れ、売り逃しが頻発し、店舗はそうした状況にどう対応するのか。そうしたことも考えなければならない1年になりそうである。

 誰がアパレルを殺すのか。今年はその犯人探しの前に、殺伐とした環境とは一線を画する、もの作りを目指すこと、それには原点である素資材の追求が重要ではないかと個人的には思う。まずは自ら実践していこうと考えている。

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