HAKATA PARIS NEWYORK

今のファッションを斬りまくる辛口コラム

2018年12月

本業はファッション、グラフィックなどデザイン関連のクリエイティブディレクター。創る側の視点で今のファッション関連の事情を評論する。マスメディアはもちろん、業界紙誌も扱わないテーマに踏み込む。

綿100%で攻略する。

avail-fiberheat1 今年も残すところ、今日を入れて6日しかない。小売業は冬物在庫を早晩処分しなければならないが、1月なると筆者が住む福岡は日に日に陽射しが春めいていく。個人的にはすでに冬物より春先に着れそうなものに目が行くが、まだまだ気温の低い日もあるので、明るい色合いで保温力のある商品なら、プロパーでも購入したい。

 ユニクロでは12月のNew Arrivalで、スピーマコットンの薄手のクルーネックセーターが店舗には入荷。ただ、レギュラー商品だから企画が今イチで、先買いする気にはならない。こちらが欲しい時には、イメージするような商品がなかなか見つからないのだ。

 筆者が特別なわけでもないと思うが、毎年同じような繰り返しばかりの業界に、いよいよ最新テクノロジーを駆使して挑む企業が出現した。スタートアップのSENSYは、AIを活用して顧客の購買履歴や感性を分析し、需要予測を立てるという。序でに全国的な気温変動や陽射しの質も分析して、シーズンエリアに合う色目や素材開発までやってくれるとありがたいのだが。はたしてどんな結果をもたらすのだろうか。

 話を春物に戻すと、供給過剰のアパレルでもロスを恐れ、梅春物の生産に踏みとどまるのなら、着る側が工夫するしかない。考えられるのは、カットソーとコットンニットや裏毛起毛のスウェットを重ね着する方法。または肌触りのいいカシミアのTシャツとコットンのセーターを組み合わせるような着方だ。

 まあ、カシミアのTシャツはともかくとして裏毛起毛ならいけるかもと、事務所周辺に建ち並ぶ天神のファッションビルを見て回ったが、この秋冬はスウェットはルーミーなものがトレンド。ジャストフィットがすっかり影を潜めている。インナーがゆるゆるだから、当然アウターも太めを着用しなければならない。ついに身幅を細めに縫い直すしかないのかとさえ考えながら、キャナルシティ博多まで出かけて、「ZARA」を訪ねてみた。

zara_highnecksweatshirt1 すると、梅春にちょうどいい無地の「ハイネック」のスウェットが企画されていた。ところが、12月20日の時点で黒やグレー、カーキは在庫があるのに「ナチュラル」といった春先に着れる色がXLまで完売。公式サイトでも同じように売れていた。商品はセール対象になっておらず、価格は5990円と決して安くはない。再入荷は未定とのことだった。ZARAはECで受注した商品は店舗在庫から引き当てて、そのまま出荷する手法に踏み切っている。

 つまり、秋冬物でもインナーは「ブライトカラーを着たい」とか、「春先まで着られるトーンを買っておこう」とかと考えるお客が店舗、ECを問わず購入しているのではないか。しかも、ビッグサイズまで完売しているところを見ると、トレンドのドームカジュアルが輪をかけたのだろう。秋冬物のブライトカラーだから、もともと少なめの在庫投入だったのかもしれない。他店を見てもブライトカラーの方が売れている感じだ。筆者が特別なわけではなくて、同じことを考えるお客は意外に多いと実感した。

 キャナルシティ博多から歩いて行けるJR博多駅のアミュプラザ博多は、展開されるブランドがほとんど天神にあること、博多マルイはアパレルがほとんどないので、ともにスルー。隣のバスセンターにあるしまむらの「アベイル」を覗くと、ここもゆるゆる主体でロゴ入りのヤンキーテイスト一辺倒だ。端から期待はしていなかったが、折角なのでZOZOTOWNまでが参入した機能性インナーをチェックしてみた。

裏起毛360℃フィット アベイルavail-fiberheat2 すると、FIBER HEATシリーズで吸湿発熱効果を売りにした「綿100% 裏起毛Tシャツ」パッケージが目に留った。クールネックだけでなくハイネックまで揃い、価格は長袖980円、半袖780円。すでに値下げされ、レジで40%引き(後日、自宅に届く新聞に折り込まれたチラシを確認すると、きちんと表示されていた)になる。「綿に対してオーガニックコットン50%使用」という素材内容の真偽は別にしても、純綿の発熱インナーが600円以下で買えるなら、セーターやスウェット以上に押さえたい気持ちになる。

 機能性インナーはユニクロを筆頭に量販店、ディスカウントストア、ドラッグストアまでが投入し、もはや冬場の定番商材になった。一時はユナイテッドアローズのビューティー&ユースでもレジ横に機能性インナーのパッケージが置かれていたほどだ。そうしたマーケットにZOZOTOWNが満を持して「ZOZOHEAT」を投入したことで、「選択のポイントは」「どれが買いか」を解説する記事もチラホラ見受けられる。

 ZOZOTOWNは、先行する「ユニクロとの違い」を公式サイトやライブストリーミングで堂々と謳っている。それによると、価格はヒートテックが1,069円、ZOZOHEATが990円(期間限定価格はヒートテックが853円、ZOZOHEATが790円)、吸湿発散温度はヒートテックが2.5℃、ZOZOHEATが2.9℃、そしてサイズ展開はヒートテックが8サイズ、ZOZOHEATが1000サイズ以上と、紹介されている。

  ZOZOTOWNは価格、保温性、サイズ展開では、当社の方が勝っている」と言いたいようだ。ただ、ZOZOHEATは通販でしか購入できないので、それのみを購入する(送料200円)お客がどれほどいるのかと、考えてしまう。

 個人的には素材の混紡率が気になるところだ。ZOZOTOWNはZOZOHEATで高品質メリノウール混」を謳っており、混紡率はアクリル48%、レーヨン44%、ウール5%、ポリウレタン3%。つまり、5%分がメリノウールになる。ユニクロのヒートテックはポリエステル38%、アクリル32%、レーヨン21%、ポリウレタン9%。両者の違いはZOZOHEATはヒートテックにあるポリエステルの代わりにウールが少量混紡され、ユニクロはZOZOHEATにはないポリウレタンを含め、すべて合繊という点だ。

 ZOZOTOWNは、ZOZOHEATの綿タイプも揃える。混紡率はコットン 95%、ポリウレタン 5%。もっとも、ヒートテックの比較では、吸湿発散温度でZOZOHEATがヒートテックより0.4℃高いという検証データを得たようだが(綿タイプもデータは同じというのは不可思議さ)、これが実際に着た時に違いをわかるほどの温度差なのか。着てみてないので何とも言えないが。個人的には静電気がダメなので、ヒートテックは一度も着たことがないし、ウール混のZOZOHEATも着ることはないと思う。

 というか、子どもがこの時期に肌の異状を訴え皮膚科を受診すると、医師から「◯◯◯◯◯◯を着ていませんか」と、問い質されたという話を最近よく耳にする。◯◯◯◯◯◯とは、別にブランドを特定しているのではなく、機能性インナーの総称として医師があげたものだ。子どもは大人ほど肌が強くないし、敏感肌の子も多いだろうから、合繊オンリーを着ると保温性よりもアレルギーが先に立つのかもしれない。

 筆者も肌はあまり強いほうではないし、着用しないことでアレルギー症状が抑えられている面もあると思う。そうしたことからもアベイルのFIBER HEAT「綿100% 裏起毛Tシャツ」は、筆者にとってマストバイだと言える。コットンニットやスウェットを探していたが、素材と保温性にはやはり惹かれてしまう。試しにクールネックの長袖と半袖を購入した。

 先日、気温5℃ほどの大濠公園で軽いランニングをしたので、素肌に着たTシャツの上に長袖の綿100%裏起毛Tシャツを重ね着した。アウターは綿97%、ポリウレタン3%のジャージだ。ウォームアップではそれほど保温性は感じなかったが、コースを1周しただけで暖かさを実感できた。普通の長袖Tシャツでは、汗をかくと逆に気化熱で寒くなる。だから、アウターの下に12オンス程度のトレーナーと綿100%裏起毛Tシャツを重ね着すれば、1月から街着でもイケるかもしれない。

 せっかくなのでこの機能を生かして、ファッションアイテムのコットンセーターやスウェットを開発できないのかと思う。静電気が嫌な筆者には、冬場に屋外でランニングする時のウエアになればなおさらいい。苦戦するしまむらは、ここら辺の商品開発が復活の糸口になるのではないかと思う。風合いは質感はもちろん、アレルギー体質などから「綿100%」という素材に惹かれる消費者は意外に多いはずだ。「綿100%で攻略せよ」。経営者がこれくらい大胆な戦略を宣言するような2019年であってほしい。

異端なカジュアル投資。

2018.12.15-leater_pair_main ついにこの時がやってきた。スーツ量販店の青山商事、AOKIホールディングス、はるやまホールディングスが今年4~9月の半期決算で、コナカが同9月期の通期業績で、それぞれ最終赤字に陥った。(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO37705930T11C18A1DTC000/)筆者が住む福岡のフタタはコナカの傘下だが、上位各社の赤字決算を考えると、おそらく同社単体も赤字かと。都心の店舗はお客もまばらで、郊外店は週末でも駐車スペースに車はほとんどない。いつかはこうなるとは思っていたが、揃いも揃って赤字とは、いかに経営戦略が単調なのかがよくわかる。

 欧米ではすでに10年以上前からビジネスのIT化で、オフィスワークはTシャツやジーンズでもOKというドレスコードに変化した。日本はまだまだそこまでいかないにしても、ジャケパンスタイルやクールビズが定着。さらにストレッチが効いてクリーニング不要、吸汗速乾や防汚脱臭などの機能を備えた「アクティブスーツ」も登場している。ウール系のスーツ離れに拍車がかかっているのは間違いない。

 スーツ市場は、団塊世代の大量退職や非正雇用の拡大で縮小均衡しただけでなく、ヤングのビジネスマン&ウーマンがアクティブスーツに乗り換えれば、ウール系など見向きもされなくなると思う。最近は採寸、仮縫い付きの「誂え」とはほど遠い既製パターンにそって格安で作る「似非オーダー」が話題を集めているが、そもそもスーツを必要とする層が減っているのだから、「まやかし」が市民権を得るはずもないのは自明の理だ。

 筆者がまともにスーツを購入して着たのは、大学4年生の会社訪問の時くらいだ。ちょうど、1980年の前半でアルマーニに端を発する「ソフトスーツ」の到来前だったが、業界では特にスーツを着る必要はなかった。冠婚葬祭用もブラックのソフトスーツを1度買ったきり、ブーム終焉後はリースで済ませてきた。

 仕事ではぎりぎりオフィシャル機会を満たすジャケパンスタイルで通せたし、バブル崩壊後の90年代にはカジュアルスタイルがビジネスにも浸透し、福岡ではフリーランスになったことで、ジャケットですらアンコンに変わった。今では夏になると、立ち襟のシャツすら着なくなっている。

 一方で、ここ10数年ほどはスーツに代わるアイテムは何を着ればいいか。非常に悩みのタネになっている。非スーツであっても仕事でのスタイリングは接する相手に不快感を与えず、業界人としての自己主張できる感度やテイストはキープしたい。特にDC時代のモード感覚を引きずっている身としては、生地の質感や色目では妥協したくない。つまり、服を購入するならそこに投資をしたいのだが、日本で販売されているメンズブランドには、そんな条件に敵うものがなかなか見当たらない。

 それに輪をかけて、今シーズンは日本のトレンドが完全にルーミーな(久々に使う言葉)スポーツミックスカジュアルになってしまった。値ごろなアイテムを見ると、トップもボトムもワイドなシルエットで、ファッションビルも通販サイトも、この冬は「ゆるゆる」「ダボダボ」の度・カジュアル主体になっている。かといって、ビジカジはサラリーマン風で、業界人として好むテイストにはほど遠い。

 雑誌レオンが取り上げるような、欧米のモード系ブランドなら、素材重視でスタイリッシュなデザインもなくはないが、 地方では商品すら置いていないし、あっても著名なものになれば価格はバカ高い。ネット通販で購入できるものが見つかっても、現物確認も試着も不可能だ。これなら大枚叩いてもいいというテイストも、購入へのプロセスも完全に変わってしまったのだから、既製服の購入にはますます二の足を踏んでしまう。

 そこで「異端」は承知の上で、少しずつオリジナルの服づくりにチャレンジしている。テキスタイルメーカーや生地問屋さん、革の専門店などを暇を見つけては足しげく回って素材を見つけ、自分でデザインした後にパターンを起こし、工場に縫製してもらうやり方だ。レディスアパレル出身とは言え、服づくりにタッチしたものとしては、やはり自分で作りたい衝動は抑えきれない。インターに着るニットやシャツまでは至ってないが、アウターのコートやジャケット、ボトムのパンツは何アイテムか制作することができた。


IMG_2499chikyusyojiizumiko 服づくりを始めた時から構想していたものにレザーのブルゾンがある。10数年前から制作に取りかかり、デザインははるか前に終了。素材も上質な「ラム革」を地元博多の革専門店(https://www.izumikou.com/)で、ジップはYKKの九州代理店(http://www.chikyu-shoji.co.jp/business/ykk_fasteners/)で調達していた。問題は工場や職人さんにこちらの指示書通りに作ってもらえるかだったが、それも何とか口説き落とすことができた。今夏には試行錯誤の末にパターンが完成し、めでたく発注を終えた。


2019spring_leather1 先日、それが上がって来た。同じパターンで一部型紙を修正し、サイズとディテールを変えた春と冬のブルゾン2タイプだ。春用が0.8ミリ厚、サウジアラビアンラムのサンドベージュ。色の変化を想定し、多少明るめを選択していた。冬用は1ミリ厚、ラムの黒。デザインは両方ともほぼ同じだが、 春用は冬用に比べ襟高を1.5センチ程度低くし、インナーが薄手になることも想定して、身幅も2センチ程度細くした。冬物はフロント右身頃に風よけをつけた。

 ただ、せっかく作ったにも関わらず、自分オリジナルでデザインもサイズもド・ストライクのため、ブランド化を想定したサンプルとしてワードローブに保管したままのものもある。アウターは着用にも踏ん切りがつくが、パンツは数が必要なので、躊躇ってしまうのだ。今年あたりは手持ちの既成品が長期着用で劣化が著しいため、ついにアンタッチャブルにも手を付けないといけないかと思い始めた。

 冬用はコートやジャケットなど既製品を何着か持っているが、ブルゾンタイプのレザーはSPA系でチープなものしかなかった。それも購入から10数年が経過し、オフのオイルケアもむなしく細かいキズが白く目立ち、着用には耐えられなくなった。リサイクルショップに持ち込むと、1500円で引き取ってくれると言うので処分した。だから、オリジナルのレザーブルゾンは実用として着る中で、ディテールの表現面や着心地、ジップ位置など作品としてもをチェックしていきたい。

 せっかくなので、ブランド化を想定したプレスプロモーション用の素材も制作しようかと思っている。自分とほぼ同じ背格好の人にモデルになってもらい、撮影して写真データとして残しておけば、後々にいろいろ利用できる。instagramやpinterestでも発信できるし。知り合いにジャズのフルバンドをもち、自らもサックスプレイヤーの御仁がいらっしゃるが、その方に着てもらえると実に様になるのではないかと思う。ソリストのスタイリングとしては、モードな大人の雰囲気は醸し出せるだろう。もちろん、組み合わせるアイテムや小物も必要だが。

 福岡は冬でもそれほど極寒にはならない。中心部は都市化が著しく、ビルからビルへは地下を抜けて移動でき、屋外を長時間を歩くこともない。屋内は暖房が効いているので、厚着をし過ぎると、外から入っただけで汗ばむ。だから、インナーが薄着で済むレザーアイテムは重宝する。オリジナルの作品だし、熟考した末の制作だから、一生ものとして着ていきたい。ジップ処理も少なめにしたし、クライアントの打ち合わせに着ていっても、失礼には当たらないと思う。次回はニットの制作にもチャレンジしてみたい。

 ただ、13年ほど穿いている冬用のパンツがいよいよ耐用を超えてしまった。脇ポケットのステッチ部分から擦れて来て、ついに家族から「いい加減、捨てろ」と宣告されてしまった。クライアントでも、「こいつ、パンツを買えないのか」って思われるかも。決してそうじゃなくて、同じようなものが販売されれば即購入するのだが。

 生地が見つかればオリジナルで制作するのだが、これも10年以上探し続けても見つかっていない。こちらはデザインより生地一反を作ることが先になるかもかもしれない。ニットやシャツよりもパンツの素材づくりが早晩のテーマになりそうである。

一発勝負で冴える勘。

houseimain 以前からスマホケースを作ってみようと思っていた。というのは、当方は「脂手」なので、スマートフォンが手から滑りやすい。これまでは破損予防にバンパーを付け、脱落防止でバンパーにフィンガーストラップ、そのリングにはさらにレザーストラップまで付ける過剰防御でショルダーバッグに取り付けている。

 しかし、Amazonで購入したバッグは、タブレットやノートPC向けで「まち」が薄い。というか、最近はショルダーバッグまで薄型になりつつある。筆者は仕事ではあまり荷物を持ちたくないので、ダイアリーとペン、ウォレット、PC関連グッズが入れば十分なのだが、打ち合わせ後に持ち帰る書類まで入れると、どうしても膨れてしまう。スマホがいくら薄くても出し入れがしにくくなるのだ。

 そこで、バッグに入れなくていいスマホケースをレザークラフトで手作りできないかと考えていた。そんな時、海外のレディスブランドで首から吊り下げられる革製のポシェット型スマホケースを見つけた。これなら自分でも作れそうだったので、早速、サムネイルを描いて型紙を作り、素材を調達した。

samaphopochett 形状はスマホのサイズにそって幅9cm、長さ46cm程度の革を縦に重ね合わせて両端を縫い合わせ、スマホを差し込むもの。革を包んでできる空間に革紐を通し、首から下げられるようにした、まさにポシェット感覚のスマホケースだ。

smaphocaswback1_2 革は横から見ると三枚重ねになるので、1つの空間をスマホを差し込むポケットに、もう一つは切り込みを入れて名詞やカードを差し込めるようにした。当面はスマホチケットを利用するまでもなく、JRや地下鉄の料金は差し込んだカードでタッチできる。


形状

スマホサイズ:iPhone6Sとバンパーで、幅7.4cm 長さ13.9cm、厚み0.7cm

型紙:革を上下に重ね合わせ、折り返したポケットスペースに差し込む形。反対側には名詞やカードを差し込めるように3カ所の切り込み 幅9.5cm 長さ47cm


allmaterial 材料は柔らかい革だとケースに「こし」が出ないし、分厚すぎると加工がしづらい。だから、行きつけの革専門店「いづみ恒商店」と相談して、牛ステア1mmの厚手を選択した。これならかなりこしがあるので、スマホの硬さに負けないでケースの形を保持できる。革紐は中央区赤坂にある「ハシモト産業」福岡支店で、本革で丸厚のもの1mを分けていただいた。

 他は紐留めの革、革裏を滑り易くする別珍の端布。革を縫い合わせる糸は、レザークラフト専用の綿糸に縫い易いように蝋を引いた。加工の道具は革に針穴を空ける金属製の「ひし目」「木槌」「打ち台」「針」になる。革を切った「コバ」には劣化防止と化粧のために黒の仕上げ剤を塗った。


katagami材料

革:幅9.5cm、長さ47cm、厚み0.1cmの牛ステア

革紐:本革で中心にスポンジを注入した丸厚のもの 1m

紐留:牛ステアの余り革

布:別珍の端布

糸:レザークラフト専用の綿糸に蝋を引いたもの

コバ処理:仕上げ剤


材料費

革:牛ステア 幅10cm、長さ1m 1312円 いづみ恒商店

紐:長さ1m 330円 ハシモト産業福岡支店

カラピナ:110円 ハンズマン


smaphocasemain1 制作にあたっていちばん難しいのは、スマホを差し込むポケットサイズの割り出しだ。一応、型紙にそって制作するが、革厚の1mm分をポケットスペースの「まち」に加えておかなければならない。また、スマホにはバンパーをつけているので、これを外してしまうとフィンガーストラップはつけられない。もし、電話を利用する時に落下させてしまうと、ケースを持っても意味がないので、つけたままにしたい。

 つまり、ポケットスペースの幅が狭いとスマホが入らないし、広いとケース自体が幅広になって野暮ったくなる。また、スマホの画面にはキズ防止のシールを貼っているが、革の裏のすべりを良くするために別珍の布を貼る。だから、さらに厚みが増して、スペースサイズの割り出しは容易ではなかった。

 布製なら縫い直すこともできるが、レザークラフトはひし目を木槌で打って針穴を空け、蝋引きの糸を交互に重ねるように縫製する。穴空けは一発勝負で、失敗すれば別の革を用意しなければならない。革は厚みもがあるので、微妙な部分は型紙ではわからない。1点ものは試作を何度も繰り返せないので、制作しながら調整していくしかないのだ。 

 ケースの両端は糸で縫い合わせるので、左と右の糸間がポケットスペースの幅とほぼ一緒になる。結局、このサイズがスマホケースの制作で、一番の肝と言ってもいいだろう。これさえきちんと割り出せれば、後は革を切って縫い合わせるだけだから、完成したも同然だ。

 まあ、いちばん楽なのは型紙に頼るのではなく、バンパーを外してそれをひと回り大きめの革に包み、最初にだいたいのポケットスペースを決める方法だ。革の左右両側をダブルクリップで挟んで(表革にキズをつけないためには裏返して作業)、先にスマホがきちんと収まるようにしておく。そして、縫い合わせる部分=ひし目で針穴をあける部分に「アタリ」をつける。つまり、きちんをサイズを割り出すのではなく、現物の形からポケットスペースや縫い合わせの位置を決めるというアバウトなやり方だ。

 ただ、この方法ではどうしても縫い代を広くとることになり、左右の余分な革をカットしなければならない。1点ものだから、量販のように革の用尺を考える必要はないのだが、できれば切り屑になって捨てる革は少なくしたい。以前に手作りのバッグやアクセサリーをセレクトショップに納品しているデザイナーと話した時、「どうしても材料屑が出てしまうので、そのリサイクルも考えていかなければいけない」と語っていた。趣味だろうが、ビジネスだろうが、なるべくゴミを出したくないのは、筆者も同感である。

 結局、この手法ではポケットスペースは簡単に決まるが、革を贅沢に使うので断念した。型紙にそって最初からスマホケースの幅と厚みの寸法を割り出し、その範囲内で革の厚み分(左右2mm程度)をまちに加えて、ポケットスペースのサイズを決めた。

 スマホはケースに入れると落とす可能性は減るが、ジャストサイズで収まった方が首から吊り下げた時にしっくりくる。紐は首から袈裟懸けにして、ちょうど脇腹上くらいにケースが位置する長さにした。紐の両端は糸で縫い合わせ、目立たないようにケースと同じ革でカバーした。

 レザークラフトは長年やっているので、今回はスマホの厚みとまち部分を何とか調整し仕上げることができた。事務所マンションでの「ひし目打ち」は階下の住人に迷惑がかかるので、道具は自宅に置いているのだが、ご近所への配慮も考え、これのみ「ハンズマン大野城店」の工作室を借りて作業を行った。スマホもスッキリ収まったし、見た目もシャープでメンズライク。一発勝負の緊張感から、制作の勘どころも冴えた。

carapinamain コール音が鳴ったとき、直ぐに取り出せるようにフィンガーストラップはつけたままだ。また、屋外での落下防止を考えカラピナをつけて紐をスライドさせ、耳元に当てられるようにした。まあ、リールをつけるまではないし。材料費は2000円以下に収まった。

 レザーグッズは使い込む程に手や体に馴染んでいく。だから、スマホの規格が変わらない限り、使い続けていくつもりだ。


#スマホケース

#レザークラフト

#ポケットスペース

#いづみ恒商店

#ハシモト産業

# ハンズマン大野城店


一歩先は譲れない。

kikuchiasahi 11月18日の福岡市長選を前に、メディアはどう深堀りするか。現職の高島宗一郎市長が当選するのはほぼ間違いないので、選挙での関心はメディアの論調でしかなった。そこで、4日の公示日前後から市長選に関連するあらゆる記事を探した。行政批判がお得意の地元メディアはもとより、仕事の合間に事務所近くの図書館にも出かけ、大手新聞の地方版から地元紙の社会面まで読みあさった。

 もちろん、今回のテーマは市長の公約でも、その一環で実施されるファッション事業でもない。市長選関連の記事を読んでいる時、偶然見つけた朝日新聞文化面の「語る人生の贈りもの」で、10月29日から11月14日まで(連載14回)連載されたファッションデザイナー・菊池武夫氏についてである。このコラムでもだいぶ前に商社の三井物産が菊池氏が創設した「ビギ」を買収する話は取り上げた。

 その時は筆者が高校、大学と過ごす中でビギファンの知人、また社会人になってからアパレル関係者から伝え聞いたことを書いただけだ。何度か雑誌に掲載された菊池氏のコメントを読んだこともあるが、ご本人が回顧録のように語るのは、久々ではないかと思う。朝日新聞が菊池氏にご登場を願ったのは、アカヒ新聞と揶揄されるのを払拭したいわけでもないだろう。まして読者の中にいる往年のビギファンを意識する必要もない。

 文字数がそれほど多いわけではないので、インタビューからエポックな部分を切り取っただけと思うが、菊池氏が自分の言葉で語っているので、朝日側があえて脚色する必要もない。惜しむらくは、日経新聞の私の履歴書のようにロングランにしてくれれば良かったが、そうしないところが朝日の所以かもしれないが。まあ、筆者が知らなかったエピソードや記憶の曖昧だった部分がハッキリしたのは良かった。


 では、印象に残った菊池氏のコメントを抜粋してみたい。


 「アトリエはお店の中にもあるんです。服や靴、酒も遊びも仕事もあって、生活に必要な物全てが一緒、という感覚が昔からしっくりくる

 このライフスタイルには共感するところがある。菊池氏と比べるなど恐れ多いが、筆者もニューヨークから戻り、地元福岡の中心部に見つけたワンルームマンションに事務所を構えて20数年。郊外にある自宅から通えないことはないが、オフィスにはクリエイティブワークの道具はもちろん、日々の暮しに必要な最低限のものは揃えているので、仕事や余暇、ウエルネス(フィットネスやランニング)といった生活の拠点になっている。

 同じビギグループの「パパス」でデザイナーを務める荒巻太郎氏は、平日は都内のアトリエでほとんど過ごし、週末に箱根か熱海かの自宅兼ジムでトレーニングに励むとの記事を読んだことがある。メリハリをつけたいデザイナーはそうかもしれないが、オンとオフがコンパクトに一つの空間やエリアでまとまっているのは、非常に楽だ。楽しむのは仕事だけじゃないって感覚が有意義な人生に繋がると思う。


 「ヨーロッパ的な作りに見えるかもしれないけれど、実はむしろ日本らしさをいかに出すかを考えましてね。日本人の平面な体形や個性に洋服が合うように、シルエットや素材を工夫したんです

 これはすごくよくわかる。60年代後半から70年代にかけての日本の服づくりは、今ほどブランドが出回っていなかったため、知名度に頼るのではなく、素材やシルエットでクリエイティビティを発揮し勝負することができた。そこには、洋服好きのお客さんを知る目利きなバイヤー。彼らと喧々囂々のやり取りをするアパレルの企画担当者。もちろん、テキスタイルメーカーや縫製工場の協力があったのは言うまでもない。

 こうして原宿や青山などではマンションアパレルが誕生し、デザイナーや企画力で時流に乗ったところは、DCアパレルへと駆け上がっていった。その代表格がビギである。それまでのレディスファッションはコンサバで上品か、フェミニンで可愛いものが主体だった。しかし、ビギはそうした服とは一線を画すアダルトな雰囲気とエッジが効いたシャープな感覚を持っていた。菊池氏の工夫がそんな世界観を創り出したのだ。

 もちろん、そうした服づくりができたのは、菊池氏が専門学校でしっかり技術を学んでいたからだ。それが原のぶ子アカデミー(現青山ファッションカレッジ)での学習体験ではないだろうか。


 「原先生は布をトルソー(人台)に直接当てて、自分の考えるフォルムにしていくパリ式の立体裁断を教えていました。僕はその仕方で美しい形を作ることに没頭した

 原のぶ子アカデミーは、他の専門学校とは異なる人台(仮縫いするためのトルソー)を使っていた。フランスの「クリスチャン・ディオール」と同じものだ。当時、服づくりでは世界の最先端を行っていたフランス製ゆえ、人台の形状はとても優美で、人間の理想的なプロポーションを映し出していた。

 菊池氏と専門学校の同級生で一緒にビギを創立した稲葉賀恵氏も、洋裁師である筆者の母親が愛読していた雑誌「ミセス」か、「装苑」かで、同じようなことを語っていた。70年代、稲葉氏はファッション誌で洋服や着物を着てグラビアを華々しく飾っていたので、てっきりモデルだと思っていたが、記事を読んで本業はデザイナーだと知った。

 稲葉氏は原のぶ子アカデミーで「いろんな生地の糸抜きをした」とも語っていた。そこで布というものを知ることができたから、布目がよれた状態で裁断したり、縫製すればシルエットが変わってくるとも。生地のうねりや歪みを知るからこそ、それをデザインに生かせるわけで、それがビギのクリエーションを生み出すベースになったのは言うまでもない。


 「センスを磨くには知性しかないと思います。(中略)周りのことを全部理解して、整理して判断できる人。自分独自の考えを周りに巻き込まずにやり通す人です

 この行は、中高年男性が大半を占める朝日新聞の読者に対し、菊池氏の言葉を借りた朝日のメッセージのようにも感じる。特に現役時代は政治や経済、スポーツの紙面しか読まなかったが、リタイアして少なくとも文化面にも目を通せる余裕ができた世代への提案だろうか。

 いくら反日メディアとは言っても、広告収入で成り立つコマーシャルペーパーに変わりはない。面と向かって、中高年の男性に「もっとお洒落になろう」なんて、ベタなコピーが通用しないのは、朝日も承知のはずだ。

 むしろ、知性も学歴も一定のレベル以上だが、仕事優先で文化芸術にはほとんど感知せず、センスを磨くこともなかった企業戦士。それがリタイア組になったことで、時間もお金もあるのだから、衣服にも多少の興味を持ちセンスアップしてほしいとの願い。それが新聞社として広告スポンサー獲得に繋がるからだ。この辺は菊池氏も気づいていると思うが。


 「僕らの仕事は、時間を戻したり進めたりする力がないとやっていけない。アーティストのようであるけれど、着てくれる人とキャッチボールして、現実より一歩先を提案しなくてはならない

 服を着る人間は、洋の東西で体格の差こそあれ、普通の人なら手足と胴体、首、頭という部位は共通する。その中で、デザイナーは1枚の布が命をもつように服を創っていく。生物創世記さながら、海のように混沌としながらも、柔軟な発想がなければできないこと。人が着ることができるという意味で、服のデザインや形状は決まっていても、その時々のエッセンスや空気観を打ち出して、いかに斬新なものを表現していくか。それは着てくれる人との何気ない会話の中からヒントが見つかることもある。

 1975年、菊池氏は稲葉氏と63年以来の夫婦生活にピリオドを打った。そして、ビギの大楠祐二代表に独立をに願い出た。前年の74年、菊池氏はニコルの松田光弘氏や山本寛斎氏、コシノジュンコ氏らと「TD6」を結成。日本で初めてデザイナー集合ショーを開催した。その時、初めてパリコレに参加した寛斎氏の話に刺激を受け、国内マーケットだけを相手にする大楠代表の経営方針に疑問を抱いたのだ。

 「現実より一歩先を提案しなくてはならない」という思いは、デザイナーとしての血が滾るからこそだ。それは今も決して変わらないのだと思う。菊池氏はビギを退社して、メンズビギを設立した。だが、マーチャンダイジングを無視し、自分の思い通りのデザインをしたために事業に失敗し、ビギに舞い戻っている。

 ただ、その反省とワールドへの移籍など40年以上の時を経て、ファッションというビジネスを受け入れる人間的な度量も備わったのだと思う。それは「着てくれる人とキャッチボールして」に凝縮される。ビギの大楠代表が「感覚は新しすぎてはいけない。半歩先だ」を持論にしていたのに対し、菊池氏が「一歩先」を今さら持ち出すところは、当時からデザイナーとして譲れない決定的な違いではないのか。もっとも、「半歩先はつまらない。着るならやっぱり一歩先がいい」と支持するお客は、昔も今も一定数はいるはずである。


 「服作りではアジア諸国のパワーは増すばかりだし、市場では高感度で安価な物が求められている。そんな中で色々と提案しながら時代にフィットする答えをみつけていきたい

 80歳に近づくも、今なお現役の菊池氏がこう語るのだから、われわれ若輩者が妙に業界や服づくりに解を求めるなんて愚かなこと。いろいろ考えながら、あれこれ悩みつつやっていけばいいのかもしれない。むしろ、菊池氏の「語る―人生の贈りもの」は、これから業界を目指す若者にとっての気づきに繋がるのではないかと思う。

 このコラムを読んでいる学生諸君はほとんどいないと思うが、誰かのシェアで菊池の語るに触れる機会があり、全編を読んでみようと気になっていただければ、幸甚である。ネットで朝日の記事を読むには通信費がかかるが、公立の図書館なら朝日新聞のバックナンバーは無料で閲覧できるのだから。



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