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 今年も福岡アジアファッションフォーラム開催の知らせが来た。昨年、当コラムで同フォーラムについて書いたところ、同じような事業に疑問をもつ全国の業界関係者から賛同のご意見をいただいた。

 一方、おそらくこの企画に当たっていらっしゃるプロデューサーの御仁だろうか、的を射た指摘が癇癪に障ったのか、反応してこられた。でも、ただ捨て台詞を吐くだけで、反証を挙げるわけでも、議論をするわけでもなかった。


 まあ、ファッション業界はもちろん、地元の各企業の状況でさえろくにご存じないのだから、しょうがないと言えばそうなのだが。ただ、今年も昨年通りの企画内容、プログラムで、講演のみが差し替えられた過ぎない。

 一部が福岡アジアファッション拠点推進会議総会における「前年度の活動報告及び今後の取組み」と、「福岡アジアコレクション(FACo)出展ブランドによる取組み発表」である。その報告時間がたった40分。お歴々の挨拶があるだろうから、正味30分といったところだ。



情報公開できないことを知っての詭弁


 ただ、前年度の活動は例年とは違う。12月から4ヵ月の期間と巨額な予算をかけた共同販促キャンペーン「FASHION WEEK FUKUOKA」が展開されている。事業報告を行うなら、公式サイトへのアクセス率はどれくらいか。ガイドブックの反応は。キャンペーンのレスポンス率は。各店の売り上げへの影響は等々、詳細なデータを公表するのは当然のことだ。

 ただ、時間的に無理だろうし、主催者ははなから詳細な事業結果を発表する気はないと思う。なぜなら、データがあるのはサイトへのアクセス率と懸賞応募の件数くらいだからだ。


 個店が売上げ数字を公表するわけもない。まして、大型店は数字を出してもそれがキャンパーン効果と判断できるかと言えば、必ずしもそうとは限らない。そんなことは企画の段階からわかっていることで、そこが重大な問題なのだ。

 前年度、天神の大型商業施設で、昨対をクリアしたのは「福岡パルコ」と「ヴィオロ」だと言われている。でも、それはJR博多シティに流れていたお客が揺り戻されたに過ぎない。売上げの伸びがキャンペーン効果というには無理がある。


 結局、何のためのキャンペーンだったのかが曖昧で終わった。カネが流れたのは、サイトの制作会社もしくは枠の営業を担当した代理店、そして印刷会社。しかも、期間中のイベントは東京からタレントまがいの業界人を呼んだだけ。そのギャラにも多くの予算が使われている。少なくとも、その費用対効果が詳しく検証されないのは、大問題と言わざるを得ない。


 また、 FACo出展ブランドによる取組み発表も然り。 これまで地元ブランドはSPAばかりで、それではブランド数が揃わずNBまで起用してごまかす始末だった。そんな中で、昨年度は地元メーカー「サベナ」の「マリエッタ」がランウエイに登場した。


 ようやく地元の専門店系アパレルが参加したことで、FACoを絡めた同ブランドの営業戦略や取引手法などが紹介されてもよさそうだ。まあ、企業秘密の部分もあるだろうから、同社が応じるとは思えないし、拒否しても同社に罪はない。

 でも、それを企画を練って何とか説得してこそ、プロデューサーではないのか。ショーの尺に地元ブランドの頭数が揃わずにNBで代用しときながら、翌日の早朝ニュースでは「地元で活躍するデザイナーやアパレル商品を一堂に集めた」と、まやかしの報道をする。

 これも事業継続と予算確保のためのリップサービスでしかないのは、業界人なら誰が見てもわかる。前回のニュースなんか、2回もパブ枠にして報道しているところをみると、一連の公共事業に関わる利害関係者の腐敗がささやかれる中、プロデューサー氏の焦りが見てとれる。



東京情報に頼る企画力の乏しさ


 一方、二部の講演会は、昨年同様に東京から業界人を呼ぶもので、今回は「日本のクリエイティブを世界に発信~アッシュ・ペー・フランスが世界に挑む」である。

 ウエアだけでなく、アクセサリーやインテリアなども扱うアッシュ・ペー・フランスが、定期的に行っている展示会「ルームスリンク」。そして、同社が新たにしかけるイベント「SHIBUYA FASHION FESTIVAL」の取組み~について、話があるようだ。


 全くもって企画運営委員長も、当該プロデューサー氏もイベントがお好きなようである。アッシュ・ペー・フランスは、この春夏から「東京モードを原宿から発信する」をテーマに、クセがあり味の濃いブランドを集めたショールーム「ハラジュク・プロジェクト・ショールーム」を展開している。

 そこで扱う東京ブランドは昨年のルームスリンクでも紹介し、アジア圏も含めて取り扱いブランドの卸し先を開拓している。その集大成として「SHIBUYA FASHION FESTIVAL」という一大イベントを仕掛けるということだろう。


 まあ、同社はもともと青木むすび氏がバイヤーをやっていた時から、独特の感性で世界中から商品を買い付けてきた。筆者もパーティに呼ばれたことがあるが、その世界観にはある種のアングラさも漂っていた。

 でも、ビジネスで考えると、仕入れロットを自社の店舗で捌くのは限界がある。そのため、ルームスという展示会も企画して全国からマニアなバイヤーを集めて来たのだ。それを今度はデスティネーショントーキョーやウォールのバイヤーを務めてきた益子杏子氏が逆に「東京発信のクリエーション」を、展示会やイベントで発信しようということだ。


 でも、そんな話を聞いたところで、地元のアパレルやデザイナー、小売業者にどうしろと言うのか。東京・原宿やっていることを福岡でもパクろうというつもりか。デザイナーを目指す学生に福岡でもそんなクリエーションを作れというのか。素材も、工場も、流通ルートも確立していない福岡でである。まさにファッション音痴のプロデューサー氏の発想でしかない。

 まして、予算の大半をイベントやタレントに使っときながら、地元のアパレルやデザイナーには資金を拠出せず、「自前で商品を用意しろ。俺たちが器を準備するから」と、言っているようにしか映らないのである。


 事業の中心は福岡アジアファッション拠点推進会議である。東京からばかりの情報をもたらして何をやろうとしているのか。そんなことをやればやるほど、プロデューサー氏は何も考えず(考えきれないのは確かだが)に、ただ予算から自社のマージンを抜いているだけに過ぎないと言われてしまうのだ。


今年もFUBAに動員をかけるYA・RA・SE?


 もっとも、今回のフォーラムも日時は7月1日、月曜日、午後4時からである。昨年も書いたが、この日は県内の理美容院の多くが「店休日」である。プロデューサー氏としては今年もフォーラムの集客を考え、福岡アジアファッション拠点推進会議の参加団体であるFUBA(福岡県美容環境衛生同業組合)に動員をかけるのは言うまでもない。

 でも、参加者の大半がヘアサロンのオーナーやスタッフで、FACoの報告や東京ファッションのビジネス情報が役に立つのか。若手スタッフならクリエーションや商品には関心はあるだろうが、展示会での仕入れや利益のノウハウなんて何の役にも立たないはずである。ここに「集客さえはたせれば、フォーラムは成立した」というプロデューサー氏の姑息な考えが見え隠れする。


 もっとも、先日、FUBAの組合員であるヘアサロンのオーナーがこんなことを話してくれた。

 「FACoのチケットは始まった時から、組合が組合費で買っているんだけど、私たちは店があるのでとても行けないのよ。だから、(組合がやっている)学校にチケットが流れ、多くの学生が行っているみたいね。学校もただで行かせるわけには行かないから『勉強になるから』と理由をこじつけて。でも、あんなイベント見て、勉強になるわけないのに」と。


 まさに図星である。学生が「もえちゃ~ん、エビちゃ~ん」と黄色い声で叫ぶ他に何を学ぶと言うのか。バックステージに入れば別だが、会場での写真撮影さえ厳重に管理する芸能事務所側がそれを許すはずはないのである。

 つまり、今回のフォーラムも、福岡市から拠出される年間1200万円他の補助金を何とか消化する場であり、プロデューサー氏はそれを使ってマージンをハネ、自社の利益にし、企画運営委員長は関係者の利害調整をしているに過ぎない。


 「地元ファッションの振興」なんてのがいかにも安っぽく聞こえ、口実に過ぎないことがよくわかる。事業は予算を使い、関係者が甘い汁を吸うだけのものに堕ちている。