colorblocktee2 ジャケットをレザーからコットンに衣替えしたのはつい先月。ところが、5月も半ばを過ぎると、暑がりにとっては長袖シャツを通りすぎ、Tシャツやポロシャツの方がしっくりくる。

 でも、この手のアイテムの形が決まっており、デザイン面での遊びがほとんどない。Tシャツは襟がUかVでくりの深さが多少違うか、ヘンリー(チュニジアン)くらい。あとはフロントやバッグ、袖にロゴやキャラクターがプリントされているか、刺繍が施されている程度で、ベースの生地は大半が無地一色のメリヤス素材。3オンス台から10オンス程度の生地厚か、オーガニックといった綿花の栽培法か、ブランドかで価格が決まってくる。

 一方、ポロシャツはもともとスポーツウエアから派生したため、デザインにはレギュレーションがあるようだ。色は無地、素材は鹿の子、あとは半袖か、長袖で、なおさら変化に乏しい。妙にデザインするとかえってダサくなるのか、胸元のワンポイントマークでブランド価値が決まり、それが価格に反映されてしまう。

 2年ほど前、流行が太めに揺り戻したせいで、ビッグシルエットがトレンドになり、昨年はポロシャツでも多少その傾向が見られた。変化と言っても、せいぜいそのくらいだから、毎夏、変わり映えしないスタイリングになってしまう。変わり映えがしないプリントTには正直飽き飽きしている。まあ、何を着ても暑いのだからしょうがないのだが。

 ことTシャツに限って言えば、メリヤスをCut(裁断)してSew(縫製)するだけの単純な構造になる。かつてはアンダーウエアだったものが、アウター、特にファッションアイテムとして注目されたのは、1960年代だろうか。米国の若者がジーンズとともに流行らせ、世界中に伝播した。

 うちの祖母なんか、筆者が大学生のなった70年代末に「Tシャツとジーパンとズック(スニーカー)があれば、気軽に海外旅行に行ける時代になったね」と、臆することなく言ってのけた。それだけあらゆる世代が服として認知したということだろう。

 それからさらに40年。吸汗、速乾、快適を謳う機能性素材こそ登場したが、基本パターンやデザイン、縫製加工はほとんど変わらないまま。数年前に「Hanes」がメイドインジャパンの日本企画を売り出したのも、本家Made in USAの3パック赤ラベルが一度洗濯したらヨレヨレになることを知っている世代に向けたものに過ぎない。

 そもそもTシャツは原綿から撚糸、生地、染色、縫製までを途上国で行うので、コストがかからず、そこそこの質をキープするものが五万とある。だから、着る側にはそれほど不満はないはずだ。しかし、作り手がそれに甘んじているのでは先には進めないと思うのだが。 やはり、企画デザインの面で何らかの活性化が必要な時期に来ているではなのか。それとも、考え過ぎだろうか。

 ファッション専門学校の中には、学生獲得のオープンキャンパスで、熱転写機を使い、Tシャツにプリントするワークショップを開催しているところがある。

 この企画もどうなのか。むしろ古着のTシャツを買って来て、一旦解いてパターンや編み地を学び、別の布を縫い合わせるリメイクなんかした方がよほどCut&Sewの勉強になるのではないか。そしたら、「高校生はどんな絵柄をプリントすれば、ファッション性が出せるのか、わかっていない。それを教えることも必要」と言う先生がいた。

 Tシャツごときの構造をそれほど学習しても意味はないってことなのか。だが、プリントする被写体のデザインなら、それはグラフィックの領域だ。縫製技術を熟知した専門学校の講師陣ですら、Tシャツづくりで何を教え、学ばせるのか。正直、ポイントが絞り込めていないとも言える。言い換えれば、アパレルの事業領域に収めない方がユニークなアイデアが生まれるということだ。

 そんなことを考えていると、先日、アパレル製造支援企業の「シタテル」から一通のメールが届いた。ここはインターネットのプラットフォームを駆使して、既存のメーカーやアパレル起業希望者と技術者、工場などをマッチングさせる業務を担っている。また、業界外の人間にもネットワークを広げるために、定期的にワークショップも開催している。

 メールは、見たような記憶があったが、イベント期日を見ると昨年の8月20日付け。「Tシャツの固定概念を解体してデザインされたオリジナルTシャツを創るワークショップ」告知で、すでに終了しているものだ。おそらくスタッフがデータ送信をミスしたのではないかと思う。

 それはさておき、このワークショップは「アートディレクター千原徹也氏が『Tシャツと言えばこうでなければならない』などという思い込みや『服は買うものだ』という常識を一度疑い『服を創る楽しさ』『新たなファッションに対する価値観』という角度から『TシャツではないTシャツ』をパターンからデザイン」との触れ込みだった。

 千原氏自身も「個人的にはこれまで服創りをやったことがない、しかし日々クリエイティブな仕事をしているみなさん、例えば、ウェブデザイナー、コピーライター、プログラマー、グラフィックデザイナー、エンジニア、建築家、編集者、アイドル、その他。とにかくクリエイティブな仕事をされてるみなさんにはとても楽しんでいただけるワークショップだと思います」と、誘っていた。

  アパレルの常識や先入観を捨てることが新しいTシャツデザインを生み出すことになる。そのために門外漢の人々にこそ、ワークショップに参加して欲しいようだった。実際に参加した人々の顔ぶれや制作されたTシャツがどんなものだったかはわからないが、少なくともプリントのレベルを脱するような企画があってもいいと思う。

 Tシャツのパーツは基本、クールネック、袖、胴体(丸胴)からなる。丸編み機で円形状に編み地を作り、それを縫い合わせたシンプルな構造だ。ニット製品で伸縮性があるから、サイズさえ決めれば、洋の東西を問わずあらゆる体型の人間が着ることができる。だから、カジュアルウエアとして浸透したのである。

 製造工程はまず、アメリカや東南アジア、インド、パキスタンで栽培される綿花から穫った原綿を何度も精製しながら丈夫な糸にしていく。それを編み立てて生地を作り、染料で染め上げる。染色は綿や糸、製品の段階でもできるが、大小のロット、生産効率を考えると、生地染めが一般的だ。おそらく今も世界中で天文学的枚数が流通していると思うし、その製造に対応するために同等のメリヤス生地が生産されているはずだ。

colorblocktee1 つまり、生地の段階で染め上がっているのだから、縫い合わせでバイカラーやマルチカラーのTシャツを作るのは決してむずかしくないはずだ。市販のTシャツでも、ラグラン袖とクールネック部分のみ色が違うものが販売されているが、セットインスリーブで袖と胴体の色を切り替える企画も面白いのではないかと思う。「カラーブロックT」とでも呼ぼうか。そんな企画がなかなかないのだ。

 ユニクロが2年ほど前にUTの企画で、お客がスマホで自由なデザインをアップロードすると、オリジナルTシャツが作れるキャンペーンを張った。Webとファッションの融合を謳った企画だったと思うが、あまりの注文の多さに対応が後手後手になった。グローバルSPAにはプリントと言えど、受注生産は馴染まないことを露呈したようなものだ。

 だから、SPAは端から既成服と割り切ったカラーブロックTの方が量産に向くのではないか。32色とか、24色とか生産するカラーバリエーションによって無数の組み合わせがあるが、AIを使ってお客の感性にそぐわない配色は除外すればいい。洋の東西や自由に組み合わせたいと考えるオーダー志向のお客への対策にもなる。まあ、白ベースだと小学校の体操服みたいと突っ込まれないようにしないといけないが。

 袖や胴体、さらにクールネットはパーツが既製品としてあるので、あとは縫い合わせるだけで、量産には向くと思う。 シャツではクレイジーパターンを企画していたのだから、別に難しくはないはずである。生地厚を指定して編みたて、染色、検反までを海外で行い、輸入した生地を日本の工場で縫製することだって可能だ。

 それなら、薄手のTシャツとタンクトップの重ね着でも良いじゃいないかとの意見もあるだろう。確かに古着慣れした欧米の若者や自らリメイクできる人ならそれもありだ。ただ、お洒落に見える色、素材合わせは万人には難しいし、組み合わせが少しでも不釣り合いだと、着こなしはダサくなってしまう。

 もちろん、企画として生地厚を3オンスから4オンス程度に下げ、下は半袖のTシャツ、その上にノースリーブのトップをレイヤードするようなMDはあるだろう。また、メッシュ素材やパンチング加工のカットソーといった進化型を開発できればなおさらいい。ただ、ファッションである以上、誰もが着てお洒落に見えることが大前提だから、それらを含めてアパレル側が完成型のアイテムを提案することが重要なのである。

 業界では「OLDNAVY、日本完全撤退』「H&Mの出店が止まった」「6月の入ると五月雨式で夏のセールが始まる」「GAPは値下げ商品をレジでも割引」を等々。夏場の企画でTシャツを量産し過ぎるアパレルやSPAへの批判は枚挙に暇がない。でも、そんな論評に終始するばかりでは結局、生産的なことには繋がらない。

 そうではなくて、中小のアパレルがほんの少し発想と方向を捻るだけで、クリエイティビティが発揮でき、活性化の糸口がつかめるかもしれない。先ずは暇を見て試作品を作ってみようかと思う。