f.w.f.1 さる6月26日、福岡アジアファッション拠点推進会議(以下、推進会議)は、平成30年度内に実施する「ファッションウィーク福岡(以下、F.W.F.)」の事業企画について、数年ぶりに「企画コンペ」を実施すると発表した。F.W.F.は高島宗一郎福岡市長の発案で、「春にも福岡を盛り上げるイベントを」として、2013年3月にスタートしている。

 本来なら、主催する推進会議が委託先の「企画運営事業者」の選定では、一般競争入札にすべきところだが、高島市長の思いつきにで十分な準備期間がなかったため、第1回は地場広告代理店のNA社に総て丸投げされた。しかし、 初めての試みは福岡を盛り上げるどころか、市内外から集客し販促につなげるという点でも、大した効果が得られなかったのである。

 推進会議はその反省を踏まえ、2回目(2014年3月実施)は13年の夏くらいから準備にかかっている。事前に事業を受託したい業者と参加商業施設のデベロッパーを集めて説明会を開催。ここで推進会議は、F.W.F. の企画運営事業者は企画コンペで選定すると発表。いわゆるプロポーザル方式の「競合プレゼン」によって委託先を決めるものだ。

 第2回の事業予算は総額で700万円。企画内容の条件はこれを原資にイベント展開の他、宣伝・広報媒体の「ガイドブック、サイトやSNS、ポスター等広報ツール、集客促進のための方策まで作れ」というもの。説明会に参加した業者は、みな営業的にペイしないと思ったようだが、コンペの結果、事業は大手代理店のH社に委託された。

 それから5年の間、再び企画コンペが実施された形跡はない。事業はずっとH社が無競争のルーチンで受託してきたわけだ。しかし、H社の企画もF.W.F.が集客や販促で大きな効果を上げたのか。推進会議から公式かつ具体的なデータは何一つ示されていない。つまり、一業者への委託が5年間も継続されてきたこと自体が根拠を欠くということである。

 そもそもF.W.F.事業費のほとんどは、福岡市の経済観光文化局予算から拠出されている。事業の名目は「クリエイティブ関連産業の振興」で、ゲーム産業関連の人材育成と並び、推進会議が実施するファッション関連事業として「他の事業」「福岡アジアコレクション」「インターンシップ」「セミナー」とともに「F.W.F. の実施」が同じ予算枠に収まっている。

 因に28年度のクリエイティブ関連産業の振興予算は、3264万9000円。F.W.F. のみにいくら予算が割り振られたかはわからないが、総額が3200万円程度だから、第2回の700万円と比べても大差ないと思われる。

 今回、再び企画コンペで業者を選定するのは、F.W.F. の事業効果がハッキリしていないため、企画を根本から考え直さなければならない面があることだ。それ以上に推進会議が福岡市から事業費を補助してもらっている=税金を使う以上、事業を何年間も一業者に発注することは許されない。

 推進会議は福岡商工会議所が母体で、地方自治体ではないにしても、委託業者に仕事(公共事業)を発注する以上、一般競争入札のかたちをとり、企画提案の内容を「総合評価」して、業者を決定するのは当然のことだ。とは言っても、それはあくまで表向きの事情である。裏事情は後で述べることにして、まずは企画コンペ概要を見てみよう。

fwf2018_1

ファッションウィーク福岡(F.W.F.)企画コンペの実施について【 2018/06/26 】


 「福岡アジアファッション拠点推進会議は、平成25年3月、「ファッションで福岡の街全体を盛り上げることにより、内外からの集客や消費喚起を図り、地域経済の活性化につなげる」ことを目的に、百貨店等商業施設と連携して「ファッションウィーク福岡(F.W.F.)」を開催しました。
 7回目の開催にあたり、当推進会議では、MICE、観光、インバンド支援(交流人口の増加)に向けて、「ファッションの街・福岡」の発信およびファッションと映像などのコンテンツ産業、美容や食との連携・融合を促進し、アジアの若者に刺激を与える新しいファッション都市を発信し、国内外からの交流人口増加を図りたいと考えており、このたび企画運営事業者を選定するため、企画コンペを実施いたします。」


1.対象事業
(1)事 業 名:「ファッションウィーク福岡(F.W.F.)」(以下「F.W.F.」という)
(2)実施時期:平成30年度内(期間は未定)
(3)事業内容:福岡市内の百貨店等商業施設やファッション関連店舗が連携してイベントやセール等を実施し、「ファッションの街・福岡」を国内外にアピールすることにより、集客や販売促進を図るもの。
◯集客や回遊性を高めるためのイベントの企画・実施/地域振興のため、ファッション及び食やコンテンツなどを交え、街が一体となった盛り上げを図るとともに、新規事業としてアジアの若年層など外国人の誘客につながるイベントを企画・実施。
◯天神地区・博多地区との連携
◯天神地区・博多地区の担当者との連絡・調整
◯宣伝・広報

・ウェブサイト、SNS、ポスター、チラシ、等、事業予算の範囲内で必要に応じたPRツールを制作し、効果的な宣伝・広報を行うこと。
・なお、福岡県・市の公式観光サイト、Facebook、インスタグラムのほか、市政だよりの活用も可能。
・素材の作成は必要であるが,下記広報枠の活用も可能。(デジタルサイネージ)ソラリアビジョン、市役所1階庁舎、博多座(街路灯バナー)天神・博多地区の行政枠(地下鉄ポスター掲示板)空港線・貝塚線全25カ所の行政枠
◯県内外および海外からの集客促進の具体策の検討・実施

・誘客のターゲットは、県内、県外、海外(主に、韓国、台湾)の若年層(主に女性)とする。特に国内在留外国人や訪日外国人旅行客の集客を促進するための具体策の検討・実施。
・アジアの若年層を惹きつけるファッション、食、インテリア、観光等の素材を活用し、外国人を含めた県内外からの誘客促進につながるイベントの企画・実施。
※目標来場者数:54,000人(うち外国人4,000人)
主催者事務局との連絡調整事務

・定期的に主催者事務局と打合せを行うこととし、事業の準備・進捗状況について書面作成のうえ報告を行うこと。

イベント期間中のアンケートの実施
・参画店舗および来場者に対し、満足度アンケートを実施し、結果を報告書に反映すること。
・アンケートの様式については、主催者事務局から提供し、協議の上決めることとする。

本件催事のための協賛の獲得及び関連業務
・推進会議からの負担金のほか、協賛金等可能な限りの収入を獲得し、事業の拡大を図る。
・協賛広告ツールの提案など、協賛プランの提案。
・協賛打診候補先、獲得見込数や金額の目標値を示すこと。
・実際の交渉等の際には、必要に応じて事務局に同行を求めることができる。
・協賛金については、事業費(支出予算)に加算する。

本件催事に係る打合せの議事および報告書の作成
・本件催事に係る打合せの議事録および報告書の作成。
・事業終了後、事業の成果目標に対する達成度、その達成・未達成理由、事業全体および今後のイベント開催にかかる考察など、事業効果について詳細な分析を行うこと。


 これを見ると、コンペで企画提案を求められる事業内容は、第2回の時と大きくは変わっていない。目を引くのは、「宣伝・広報」の媒体制作で、ウェブサイト、SNSが主要メディアに躍り出たことだ。これはここ数年での大きな変化と言えるだろう。

 第1回、2回はパンフレットやポスターなどの印刷媒体にかなりの経費をかけている。その時は委託事業者である代理店のNA社が子飼いのデザイン会社に発注したり、商工会議所のメンバーである印刷会社に忖度したわけだ。しかし、事業のメーンターゲットに若者を設定する上では、もう印刷物は広報・販促ツールにはなり得ない。第1回、2回ですら、手に取ってもらえないパンフレットが大量に発生した。すでに若者向けのメディアは完全にWeb、SNSにシフトしていたのだから、当たり前である。

 また、ここ数年のインバウンド効果からか、具体的にアジアからの集客目標を掲げたのは初めてだ。でも、目標来場者数の外国人4,000人について、何を根拠に算定したのかはわからない。どんたくのようにイベントを観覧する観光客が1平方メールあたりに何名いるとの計算で、福岡市のイベントエリアの総面積から合算するなら、明確だが。

 まあ、少なく見積もって実際には目標をクリアしたと、お得意の数字のマジックでも狙っているのだろうか。それにしても1週間のイベントで、天神や博多駅の各商業施設が参加するのなら、目標数値として妥当なのか。一般の買い物客もいるわけだから、イベント対象を若者に限定することで、来場目標を集計しやすくしたとも考えられる。


スポンサーへの営業力を評価する


 他には、「イベント期間中のアンケートの実施」「協賛広告ツールの提案など、協賛プランの提案」「協賛打診候補先、獲得見込数や金額の目標値を示すこと」「協賛金については、事業費(支出予算)に加算する」の項目が加わっている。これが今回のコンペの肝というべき点だ。

 アンケートは F.W.F. が福岡でどれほど周知されているかを調査する狙いがあると思う。もし、イベントの認知度が低ければ、宣伝・広報のやり方がまずいことになる。高々1週間程度のイベント期間中に修正は難しいが、次年度の企画の反省材料にはなる。

 協賛広告や協賛プラン、協賛打診先、獲得見込みや金額については、ついにここまで踏み込まざるを得なくなったということ。例年、事業の総予算が700万円程度しかないのだから、事業内容に掲げるすべての条件を満たせないのは、推進会議側もわかっている。企画に対し均等に予算を割り振れば、どこかが手薄になるのは目に見えているからだ。

 F.W.F. の予算がないのなら、RKB毎日放送の自社事業と化したFACo(福岡アジアコレクション)を止めればいいのだが、それも補助金とチケット収入から会場費や三文タレントのギャラを出せば、収支はとんとんか赤字。北九州市がTGC(東京ガールズコレクション)を開催し始め、福岡県からの支援取付にも成功。補助金の分捕りあいは熾烈を極めているので、福岡市の補助は不可欠になる。

 F.W.F. はここ数年、「後援」に新聞各社、テレビ・ラジオ各局が顔を並べている。これは代理店が手を回して協力を求めたのだろうが、協賛ではないためイベントのカネヅルにはなり得ない。

 言い換えれば、推進会議は業者委託に当たって単に企画レベルだけでなく、「スポンサーまで獲得できる」ところを選定の条件にしたいのだ。平たく言えば、業者に対し、「好き勝手なことをやりたければ、自らスポンサーを集めて費用を捻出しろ」「企画内容より、スポンサーへの営業力を見る」ということ。これが推進会議の本音と言える。

sankacommunity すでに2年前から F.W.F.はイベントに参加する「参加コミュニティ」に、イベント期間中に「スペース」や「付帯費用」を提供してくれる企業、団体を募集している。要はイベントに参加したいものに対して、「場所とカネを提供してくれるスポンサー」を求め始めた。もちろん、スポンサー側の意向もあり、イベントの内容と事前にマッチングを行っている。そこで合意に至らなければ、スポンサー自らで集客のために何かやってくれと、懐柔策を設けたわけだ。

 しかし、そんな回りくどいことをやったところで、スポンサーが簡単に場所やカネをだすはずがない。市民からフリーマーケットのような企画を提案されても、商業施設がスポンサーがなら販促の意味がないと承服できないだろうし、学生や俄クリエーターの手作り作品の即売会にしても、集客では大した効果がなかったのは明白である。

 結局、今年3月のF.W.F. では、参加商業施設やデベロッパーにスポンサードしてもらう代わりに東京などから「タレント」を呼んでライブやトークショーを催す企画に落ち着いている。所詮、代理店がやる企画なんてその程度のものである。

 スポンサー側も地元の参加者よりも、タレントの方が集客や販促には効果的との判断したわけだ。カネを出すのはスポンサーなのだから、それは仕方ないことだが、結局、タレントの地方営業のためのイベントになったわけである。

 まあ、「ファッションウィーク」と宣言しているものの、福岡は東京や神戸のようにアパレルメーカーや優秀なクリエーターが集積するエリアではない。ほとんどが小売事業者である。そこに福岡市が標榜する「アジアの中心都市を目指す」が加わると、商業はもちろんだが、観光やインバウンドに重点が置かれるのは当たり前。ファッションなんてものは所詮、公金を使い、スポンサーを納得させるための口実に過ぎないのがよくわかる。

 それでも、スポンサー営業という条件が課せられると、イベント制作会社ではコンペ参加は無理だ。おそらく企画書制作、プレゼンまでこぎ着けるのは大手をはじめ、地場の有力代理店になるだろう。だが、どの代理店の企画案も内容は大差ないと、推進会議は承知のはずである。

 だから、露骨にも事業を受託したければ、「費用を出してくれるスポンサーまで捉まえろ」と、「それがコンペに勝てる条件だ」と打ち出したのだ。事前にコンペのハードルを上げることで、委託事業者を篩にかける狙いもあると読み取れる。とどのつまり、推進会議は事業費の総てを賄える「冠スポンサー」さえ望んでいるのかもしれない。

 東京ファッションウィークを主催する(社)日本ファッション・ウィーク(JFW)推進機構は従来、イベントの原資を主に経済産業省からの補助金で賄っていた。これで東京コレクションはじめテキスタイル展示会などを行ってきたが、民主党政権の事業仕分けで補助がカットされ、民間企業を冠スポンサーに迎えた。12シーズンを迎えた2016年秋からは、それまでのメルセデス・ベンツに代わり、Amazonジャパンが冠スポンサーについている。

 Amazonは「ファッションはもっとも成長著しい分野」と位置づけ、アパレルやクリエーターの情報発信を進める上で、東京ファッションウィークは絶好のマーケティング機会と見たのだ。 

 JFW 推進機構は、2010年に世界中の有名アスリートのエージェントを務める「IMG(インターナショナル・マネジメント・グループ)」と、スポンサーシップ代理店契約を締結。11年から16年までのメルセデス・ベンツに次いで、Amazonジャパンを東京ファッションウィークの冠スポンサーに迎え入れることに成功した。同社はスポーツエージェントの領域を超え、東京ファッションウィークのような文化イベントでも、スポンサーシップの獲得に乗り出したのである。

 一方、世界最大のスポーツイベントであるオリンピックを見ると、JOC(日本オリンピック委員会)は、選手の強化資金を捻出するスポンサー獲得について、従来は数社の代理店に委託していたが、最大手のD社に一本化している。主催者や事業団体はより多くの資金を確保するために、IMG社やD社の営業手腕に賭けたわけだ。 先立つものは「カネ集め」であり、結果としてそれは成功している。

 話をF.W.F. に戻すと、地場で冠スポンサーにつける企業と言えば、九州電力、福岡銀行、西日本シティ銀行、西部ガス、西日本鉄道、JR九州、九電工からなる七社会くらいだろうか。ただ、企画の条件に「天神地区・博多地区との連携」が掲げられているので、それぞれ天神と博多駅が拠点の西鉄、JR九州が単独スポンサーになる可能性は薄い。

 他の企業は若者向けファッションに特化して、マーケティング戦略を行うとは思えない。推進会議の議長は歴代、福岡商工会議所の会頭が兼ねており、6月には九電工の藤永憲一会長に交替した。それとて、ファッションイベントの冠スポンサーになるほどの広告費拠出を名誉職の一存で決められるはずはない。とすれば、ビッグスポンサーしかない。しかし、F.W.F.自体にスポンサードする価値があるとは思えない。 

 各代理店は商業施設の岩田屋三越から福岡大丸、ヴィオロ、キャナルシティ博多、JR博多シティ、博多マルイまで出入りしている。そこではシーズンごとのプロモーションやイベント企画で競合プレゼンに参加しているが、F.W.F. のように事業資金まで獲得しろというのは、初めてのケースと思う。いったいそこまでが可能な代理店は何社あるのだろうか。それともビッグスポンサーを捉まえるためにIMGの手を借りるか。

 まあ、D社は事業予算が低いことから、これまで推進会議の事業には参入していないようだが、はたして今回の企画コンペにはどうするのか。それとも、推進会議側がスポンサー営業力を見込んで、コンペ参加を望んでいるのか。H社は25年度から29年度まで5年に渡り事業を担って来たわけだが、一旦手を引くのか、または子会社のDK社に任せるのか。すべてのコンペにおいてD社の動向次第で、参加するか否かを判断していることを考えるといかに。

 グループ会社に商業施設のデベロッパーをもつNA社が第1回目以来、ゲットするのか。JR博多シティに食い込んでいるAD社、福岡パルコと懇意にしているBD社がダークホースとなるか。それとも、ノーマークのNK社やSK社の出番か。どこが企画運営事業者になろうと、代理店がアパレル・ファッション音痴には変わりないし、スポンサードやアカウントに関係ない中小零細ファッション事業者など見ているはずもない。

 7月5日、福岡商工会議所で企画コンペの説明会が開催されるので、ここに代理店が雁首を揃えることになる。コンペに参加するかしないかは11日までに決め、企画書の提出期限は19日。プレゼンは27日で、30日に委託事業者が決まる。

 まあ、推進会議としてはルーチンはこれ以上無理だから、別の代理店にも仕事を出してやると言うこと。また、高島市長が言い出したから後腐れ無く、カネを使いきり、何かやってるフリをするに過ぎない。序でに言えば、消化ゲームをやっているようなものだ。

 つまり、推進会議としては「業者を変える意思はある」というアリバイ作りのために「企画コンペを行う」という裏の事情も垣間見える。だから、FACoのように出来レースで、すでに委託業者が決定済みということも十分にあり得る。代理店の腹の探り合いが続く中で、納税者である中小零細のファッション事業者は、全く蚊帳の外に置かれている。