orderinterior1 今回は久々に家具・インテリア業界、そして某企業について書いてみる。従来、家具は婚礼、いわゆる嫁入り道具に代表される一生ものだった。だから、家具店は高価格帯の商品を売ってさえいれば、それほど回転率が良くなくても商売は成り立っていた。

 ところが、少子晩婚化、都市間格差、備え付けなど家具を取り巻く環境が変わり、 一生を使う調度品という考えは様変わりした。もちろん、一戸建てや大型マンションで暮らす人々は、家具やインテリアに投資することもできるが、それはごく一部の富裕層に限られる。マンションでは収納設備が整ってきたため、テーブルや椅子、ベッド、キャビネット、ラグと、家具店で売れるアイテムは限られてきている。

 また、それらも進学や就職、転勤、結婚といった人生の転機では、廃棄や買い替えを迫られるので、機能的で見た目が良ければ、低価格で構わないという意識が強くなっている。この時期に不謹慎な言い方かもしれないが、日本は地震や水害が多発しているので、その都度、家具やインテリアの需要が増大する。これだけ災害が多いと、生活者も家具は耐久消費財というより、消耗品という意識に変わっているのではないか。なおさら、低価格の商品にとっては追い風なのだ。

 イケアのように自分で商品を選び、自宅まで持ち帰り、自分で組み立てることで、価格を抑えた家具もあるが、DIYに関心がありドライバーまで揃えている人は少数派だ。やはり届けてくれて、セッティングさえすれば、すぐに使える家具の方が多くの人に重宝されるようで、ニトリが一人勝ちするのも頷ける。

 そこで、何かと比較されるのが、大塚家具である。先代勝久氏の時代から高級路線を歩み、業界では確固たる地位を確立した。しかし、2008年のリーマンショックを境に売上げは下降線を辿っていく。経営コンサルタント出身で娘の久美子氏が経営に携わってからは「中価格帯」の商品を販売する政策に修正したが、業績の回復は一向に見られない。

 昨年の売上高はニトリの5720億円に対し、大塚家具は410億円。大きく水をあけられた状況である。上場企業だけに経済誌にとっては格好のテーマになり、売上げ減に歯止めがかからないのは、久美子社長と勝久氏の確執が原因とばかりに書き立てている。挙げ句のはてには「父親に頭を下げ、ファンドなどと組んで経営するというのも一つの手」と言い出すコンサルタントまで現れる始末だ。

 中には交差比率(粗利益率×商品回転率)で、両社を比較する人もいる。高利少売と薄利多売の違いはあっても、交差比率ではニトリの数値に近づける(適性数値)ことが必要との理屈だろう。しかし、 粗利益率を下げて商品回転率を上げるにしても、安売り家具店がこれ以上必要なわけでもないから、売上げが回復する保証はない。そもそも大塚家具とニトリでは企業文化やビジネスモデルが違い過ぎる。比較してもあまり意味はないわけで、抜本的な経営改革を提言できない経済メディアの言い訳的にも受け取れる。

 大塚家具が創業から貫いてきた営業スタイルは、大型店にテイスト別で商品を陳列し、来店客に対してスタッフが懇切丁寧に接客販売するもの。お客との会話の中でうまくニーズを引き出し、商品を売り込んできた。言わば、コンサルティングセールスだ。

 お客一人当たりに軽く1時間以上は応対するので接客数は限られるが、粗利益が取れる高級家具を売ることで収益を維持し、ペイさせてきたのである。高級ブティック、宝石貴金属や高級時計、かつての眼鏡の商売にも共通する高利少売だ。もちろん、スタッフの高い販売力に支えられてきたのは言うまでもない。

 高級家具が売れなくなったからと言って、商材のみを中価格帯に変えたのでは、収益が下がるのは当たり前である。店舗(銀座本社屋含む)の家賃やスタッフの給料など固定費はそのままのわけだし、父親の代からの古参社員のことを慮れば、思いきったリストラも難しい。

 しかし、商品単価を下げる以上に、現状の「でき上がった製品を仕入れて、在庫を抱えて販売する」ビジネスを続けているのでは、家具を取り巻く環境が変わった今、収益が大幅に回復することはあり得ない。対して、好調なニトリは低価格戦略ばかり注目されるが、根本理由はそこではない。購買時点(店頭)で売れ筋を読み、企画デザインや製造現場が連携して、季節ごとにタイムリーに投入するから、売れているのである。

 家具・インテリアのSPA化とでも言おうか。情報整備と生産態勢、さらにECと、製造から販売までの一貫システムを作り上げたことが好調の背景にあるのだ。それに対し、大塚家具は売れるか売れないかわからない商品をメーカーから仕入れ、在庫を抱えながら売り減らしていく旧態依然のスタイル。ただでさえ、商品回転率が鈍い家具を扱うのだから、在庫負担が重くのしかかるのは当然である。

 つまり、「完成品を仕入れて売る」「在庫を抱える」という二つの課題があるのだから、これにメスを入れるのが先決なのだ。それはニトリのようなSPA化に舵を切れという意味ではない。大塚家具が向かうべきは、家具インテリア市場をもっと細かく分析した上で、「オーダー」「コントラクト(請負)」といった受注販売の強化だと思う。

 昨今、オーダーという考え方は、ZOZOTOWNがスーツを販売し始めたことで、注目をを浴びている。だが、業界諸兄各位も語っていらっしゃるように、あれはオーダーと言っても、予め出来上がったパターンに注文者のサイズを落とし込んで縫製しているに過ぎない。お客の体型を隅々まで採寸して要望に添い、仮縫いまで行って顧客仕様で仕上げる、ビスポークではないのだ。

 一方、市販の家具は高級品であろうが、低価格品であろうが、マンション含めて日本家屋の間取りに合わせた規格サイズである。ところが、お客のライフスタイルや価値観の変化で、なるべくモノを所有したくないとか、省スペースで生活したいという意識が高まっている。「テーブルの天板を3cm四方カットできないか」「キャビネットが左右、奥行きともあと2cm小さければ、空きスペースに収まる」「天井ギリギリまで棚が付けられると、収納スペースが増えるのに」等々、家具やインテリアに対する要望は少なくないはずだ。こうしたニーズをきめ細かく拾い上げ、新しいマーケットを掘り起こすのである。

 かく言う筆者も個人事務所をマンションの一室に構える時、市販のテーブルや椅子、デスクを一揃い購入したが、仕事をしていくうちに資料や書籍が増えると、シェルフが増えてスペースを食うようになった。そこで、テーブルやデスク、ブックシェルフはIllustratorで省スペース用の図面を描き、木材(タモの集成材や合板)をカットして組み立て、カップボードはオリジナルでデザインし、木工所に作ってもらった。

interiordesign2017 ワンルーム21畳の限られたスペースを入念に計算して家具の幅、高さ、奥行きを割り出し、ムダな空間が出ないように綿密に設計デザインしたものだ。そのため、事務所の空間にゆとりが出て、手足を伸ばしたり身体を動かしてもインテリアが気にならないので、非常に仕事がしやすい。ほんの数センチなのだが、こうも日々の生活が変わるのかと、実感している。それがオーダーというか、セルフメイドの良さなのである。

 筆者が住む福岡県は県南の大川市が家具産地でもある。インテリアデザインにまで首を突っ込んだので、家具メーカーとも話す機会が持てるようになった。ある若手経営者によると、大川の家具・インテリア産業は25年ほど前から低迷。生産額は1991年の1268億円をピークに減り続け、2014年度は312億円と、4分の1まで落ち込んでいるとか。家具づくりに携わる人材も機械化や海外生産の影響で、減少の一途を辿っているという。

 大川産地は長らく家具店に製品を卸すB2Bで成り立ってきた。そのため、生活者には大川で家具が生産されている認識がなく、産地ブランドのロイヤルティも確立してない。そこで国内外の主要見本市への出展やインターネット取引を始めて知名度を上げる一方、著名なインテリデザイナーと組んだ新ブランド「SAJICA」をデビューさせ、東京にショールームを開設して世界にもアピール中だ。また、医療福祉大学と連携したユニバーサルデザインの研究・商品開発も進めている。

 注目すべきもう一つの点がコントラクト事業の強化である。これは家具・インテリアの概念を超え、家や店舗などの「建具」の製造から請け負うもの。家具やインテリアは、スペースデザインとは切っても切れない間柄だ。最近はオリジナルで家を建てたい人々や内装まで自分仕様にできるコーポラティブハウスへのニューズが高まっている。首都圏ではデザイナーズマンションの人気も高い。大川産地はこうしたマーケットを開拓しているのである。

 「これは産地、メーカーだからできることだ」と、言い切ってしまえばそれまでだ。また、大川市自体が元自民党の有力政治家の地盤で、「国からの支援も取り付けることができたから」との見方もある。しかし、実際に行動を起こすのは家具・インテリア業界であり、各メーカーの経営者やスタッフたちだ。その点で大塚家具には大川産地にはないブランド力や知名度があり、高いコンサルティングセールスのノウハウを持つ。これらを活用しない手はない。

 だから、住宅市場やスペースデザインに踏み込んで、新しい販路や市場開拓を狙ってもいいのではないか。産地にできて、小売りにできないはずがない。住宅販売の経験が全くないユナイテッドアローズでさえ、マンションデベロッパーと組んで、リノベーションを手がける時代である。

 専門のチームを組織してハウジングメーカーやマンションデベロッパーに、オーダー家具やコントラクトの営業をかけてもいいと思う。製造はメーカーに委託すればいいのだから、大塚家具にできないはずはない。B2Cが苦戦しているからこそ、発想を変えてB2Bに打って出るのである。

 先の経営者はこう言い切った。「父の時代から機械化を進め、値頃な家具を作ってきた。ただ、業界内だけでものを考え、全く外の変化に気づいていなかった。家具づくりには、つくづくライフスタイル全体からのアプローチが必要だと感じた」と。まさに木を見て森を見ていないのが家具業界、そして大塚家具なのだ。もう、桐たんすが売れる時代ではない。

 “モノは作ったから売るのではく、売れる物を作る”。これは現在の製造業では当たり前。同時に小売りにはそのニーズをお客から聞き出し、メーカー側に伝える義務がある。そのためには、お客に新しいライフスタイルの楽しさを提案し、お客の買う気をそそる商品をメーカーと一体になって作っていかなければならない。そうした市場を喚起しなければ、このままジリ貧になるだけである。

 昨今のアパレルが声高に叫んでいる「オーダー」は、何千種類にも及ぶ既製パターンに落とし込む効率の産物。しかし、家具・インテリアでは、丸太一本からできる無垢材やつき板があれば自由かつクリエイティブにオーダーやコントラクトの製品を作ることができる。それに挑戦するかしないかは、経営者のイノベーション感覚なのである。久美子社長にはそれを期待したい。