2018.0808leathermain 昨日は「小倉井筒屋の3店舗閉鎖」について書いた。ただ、地方百貨店の厳しさは、九州の各都市では今後も続くのではないかと思う。一方、大都市の百貨店は市場規模、顧客の可処分所得、根強い支持、ブランド志向等々から、依然として攻めの経営が続けられるようだ。

 先日、そんな百貨店の代表格、阪急うめだ本店が『OTONA LEATHER』by AOYAMA LEATHER」というレザーウエアのオーダーイベントを行っているとの情報を得た。6階の婦人服売場コトコトステージ61で、8月14日まで開催中とのことだ。http://www.hankyu-dept.co.jp/honten/information/ladies/madam/00663224/?catCode=101001&subCode=102003

 HPを見ると、「デザイン・サイズ・レザー・カラーを選んでお客様好みの一着を作ってみてはいかがでしょうか」と、お客に投げかけられている。同フロアが対象とする40代~50代の女性が「革の質感や色、サイズを自分の好みに合わせて購入したい」との要望をもつことから実施したという。

 筆者がいたマンションアパレルの取引先でも、かつてはオーダーの受注会を開催するところがあった。当時は今よりファッションへの関心ははるかに高かったし、お客さんはでき上がった服への目利きも鋭かった。そうした点で、ショップ側も既成服だけではすべてのニーズには応えられないとの判断から、誂えに対応するメーカーに依頼し、受注会を企画していたのだ。その中にレザーウエアもあったと、記憶している。

 うちのメーカーは既成服オンリーなので、とてもそこまで対応できなかったが、ショップからすればお得意さんの声を一つ一つ拾い上げて一定の規模に達すると想定できれば、ビジネスとして考えざるを得ない。その一つがオーダーだったのだ。東京や大阪のようなお客の可処分所得が高い都市では、昔から代わることの無い安定したニーズなのかもしれない。それを決して放っておかないのは流石、阪急百貨店である。

 今回のイベントで提案されるアイテムは、この秋のトレンドになりそうなノーカラージャケットから、定番のライダーズ、女性ならではのショートボレロ、ロング丈ガウンまでの4型。革はスペインラム、シープなどの3種類、計14色から選べるという。サイズはノーカラー、ライダーズが7、9、11号、ショートボレロ、ロング丈ガウンが7、9号に対応してくれるそうだ。

 価格は6万円代~16万円代。革を鞣したり、染色するのに1カ月から1カ月半、それから縫製を行うので、完成までに2カ月程度かかるようだが、これもオーダーならば順当なところ。厳密に言えば、決まったデザインから選び、サイズを調整するパターンオーダーということになる。それでも、量販品にはない、自分だけの1着が作れるわけだから、価格的にも妥当なラインだと思う。

 今回のイベントは女性向けに限定されている。男性の場合は、ZOZOTOWNがゾゾスーツを使った採寸のデジタル化で仕立てるオーダースーツが注目を集める等、まだまだスーツが主流になる。でも、安さばかりが訴求される既製スーツが売れなくなっている一方、パターンやイージーとバリエーションの豊富さ、価格面など敷居が下がったことで、割高なオーダーが人気を集めているのも、何となくわかる気がする。

 ただ、メンズレザーのオーダーになると、バイカーなどマニアック向けの誂えが主流で、気軽に注文できるとまでは行かない。モード系もないことはないが、工房は東京に集中しているから、デザインから採寸、型紙制作、仮縫いまで考えると、どうしても注文には二の足を踏んでしまう。

 こればかりはネットでやり取りすると言っても、微妙な感覚のズレが埋められなければ、仕上がった時に「こうじゃなかったのに」となるリスクを伴う。だから、今回の『OTONA LEATHER』by AOYAMA LEATHERのような催事を、百貨店がメンズでもやってくれればいいのにと、ずっと以前から思っていた。

 というか、2011年に博多阪急が開業する時、売場20カ所に「コトコトステージ」と名付けたスペースが開設されると、リリースされた。駅利用客が百貨店に立ち寄っても常に飽きさせない工夫を凝らすため、常時何らかのイベントを仕掛けるということだった。ちょうど、買いたい服が中々見つからない時期で、折角、阪急が九州に上陸するのならと、思い切って開設準備室に「ぜひ、メンズのレザーウエアのオーダーイベントを実施してほしい」との願いをしたためて、手紙を出した。

 すると、ご丁寧な返事が来て、それには「福岡のお客さまからいろんな要望が来ていますので、鋭意検討の上に、実施していく考えでございます」と、記されていた。その時は阪急の本店で、レザーのオーダーイベントが企画されるなど、知る由もない。しかし、今回、阪急うめだ店のイベントを知って、女性と男性の違いはあるにしても、大人のお客は同じことを考えているのだと、改めて痛感した。

 市場にはチープな既成服ばかりが氾濫している。売場に並んでいる商品を見て、いざ購入するかどうかの段階になると、数千円ですら払う価値は無いと、思うことが少なくない。成熟した大人にとって、それほどブランドに拘らなければ、オーダーの方が良いかってこともある。素材や色が選べて体型にもフィットする、自分が思い描いたデザインに近い形に近づくのなら、なおさらそちらの方が良いからだ。

 メンズのオーダースーツがイージー、パターンと人気を集めているのも多少の温度差こそあれ、もう安いカジュアルウエアなら、何でもいいやって共通認識になりはじめている裏返しではないか。

 ただ、百貨店がメンズレザーのオーダーイベントを開催するのは、まだまだ時期尚早だろうか。企画会議に持ち上がるにしても、東京や大阪の店舗が先行すると思う。福岡ではいつになるわからないので、前々から考えていたマイオリジナルデザインのレザージャケットをこの秋に制作することにした。

 企画構想から10数年、デザインは10年前にし終え、パターンも周囲のアドバイスをもらいながら、何度も微調整を加えてトワルまで作り上げることができた。サウジアラビアンラムの革、YKKの高級ジップ・エクセラの手配も終えている。後は工場の職人さんと最後の詰めを行えばいいだけの段階にきている。

 春レザーなので、早くても年末、遅くとも1月中に完成すればいい。お盆明けにゴーすればいいだろう。もう10年以上、まともな服を買っていない。だから、これくらいの贅沢はいいかなとも思う。

 まあ、百貨店やセレクトショップの手法を批判したところで、自分の感覚にどストライクの服が並ぶことはないだろうし。無いものは創るしかない。クリエイティブワークに携わるものとして、挑戦する方が得るものは大きいはずだ。あと何年生きられるかはわからないので、一生もののレザーウエアにしたいと、考えている。