2018.12.15-leater_pair_main ついにこの時がやってきた。スーツ量販店の青山商事、AOKIホールディングス、はるやまホールディングスが今年4~9月の半期決算で、コナカが同9月期の通期業績で、それぞれ最終赤字に陥った。(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO37705930T11C18A1DTC000/)筆者が住む福岡のフタタはコナカの傘下だが、上位各社の赤字決算を考えると、おそらく同社単体も赤字かと。都心の店舗はお客もまばらで、郊外店は週末でも駐車スペースに車はほとんどない。いつかはこうなるとは思っていたが、揃いも揃って赤字とは、いかに経営戦略が単調なのかがよくわかる。

 欧米ではすでに10年以上前からビジネスのIT化で、オフィスワークはTシャツやジーンズでもOKというドレスコードに変化した。日本はまだまだそこまでいかないにしても、ジャケパンスタイルやクールビズが定着。さらにストレッチが効いてクリーニング不要、吸汗速乾や防汚脱臭などの機能を備えた「アクティブスーツ」も登場している。ウール系のスーツ離れに拍車がかかっているのは間違いない。

 スーツ市場は、団塊世代の大量退職や非正雇用の拡大で縮小均衡しただけでなく、ヤングのビジネスマン&ウーマンがアクティブスーツに乗り換えれば、ウール系など見向きもされなくなると思う。最近は採寸、仮縫い付きの「誂え」とはほど遠い既製パターンにそって格安で作る「似非オーダー」が話題を集めているが、そもそもスーツを必要とする層が減っているのだから、「まやかし」が市民権を得るはずもないのは自明の理だ。

 筆者がまともにスーツを購入して着たのは、大学4年生の会社訪問の時くらいだ。ちょうど、1980年の前半でアルマーニに端を発する「ソフトスーツ」の到来前だったが、業界では特にスーツを着る必要はなかった。冠婚葬祭用もブラックのソフトスーツを1度買ったきり、ブーム終焉後はリースで済ませてきた。

 仕事ではぎりぎりオフィシャル機会を満たすジャケパンスタイルで通せたし、バブル崩壊後の90年代にはカジュアルスタイルがビジネスにも浸透し、福岡ではフリーランスになったことで、ジャケットですらアンコンに変わった。今では夏になると、立ち襟のシャツすら着なくなっている。

 一方で、ここ10数年ほどはスーツに代わるアイテムは何を着ればいいか。非常に悩みのタネになっている。非スーツであっても仕事でのスタイリングは接する相手に不快感を与えず、業界人としての自己主張できる感度やテイストはキープしたい。特にDC時代のモード感覚を引きずっている身としては、生地の質感や色目では妥協したくない。つまり、服を購入するならそこに投資をしたいのだが、日本で販売されているメンズブランドには、そんな条件に敵うものがなかなか見当たらない。

 それに輪をかけて、今シーズンは日本のトレンドが完全にルーミーな(久々に使う言葉)スポーツミックスカジュアルになってしまった。値ごろなアイテムを見ると、トップもボトムもワイドなシルエットで、ファッションビルも通販サイトも、この冬は「ゆるゆる」「ダボダボ」の度・カジュアル主体になっている。かといって、ビジカジはサラリーマン風で、業界人として好むテイストにはほど遠い。

 雑誌レオンが取り上げるような、欧米のモード系ブランドなら、素材重視でスタイリッシュなデザインもなくはないが、 地方では商品すら置いていないし、あっても著名なものになれば価格はバカ高い。ネット通販で購入できるものが見つかっても、現物確認も試着も不可能だ。これなら大枚叩いてもいいというテイストも、購入へのプロセスも完全に変わってしまったのだから、既製服の購入にはますます二の足を踏んでしまう。

 そこで「異端」は承知の上で、少しずつオリジナルの服づくりにチャレンジしている。テキスタイルメーカーや生地問屋さん、革の専門店などを暇を見つけては足しげく回って素材を見つけ、自分でデザインした後にパターンを起こし、工場に縫製してもらうやり方だ。レディスアパレル出身とは言え、服づくりにタッチしたものとしては、やはり自分で作りたい衝動は抑えきれない。インターに着るニットやシャツまでは至ってないが、アウターのコートやジャケット、ボトムのパンツは何アイテムか制作することができた。


IMG_2499chikyusyojiizumiko 服づくりを始めた時から構想していたものにレザーのブルゾンがある。10数年前から制作に取りかかり、デザインははるか前に終了。素材も上質な「ラム革」を地元博多の革専門店(https://www.izumikou.com/)で、ジップはYKKの九州代理店(http://www.chikyu-shoji.co.jp/business/ykk_fasteners/)で調達していた。問題は工場や職人さんにこちらの指示書通りに作ってもらえるかだったが、それも何とか口説き落とすことができた。今夏には試行錯誤の末にパターンが完成し、めでたく発注を終えた。


2019spring_leather1 先日、それが上がって来た。同じパターンで一部型紙を修正し、サイズとディテールを変えた春と冬のブルゾン2タイプだ。春用が0.8ミリ厚、サウジアラビアンラムのサンドベージュ。色の変化を想定し、多少明るめを選択していた。冬用は1ミリ厚、ラムの黒。デザインは両方ともほぼ同じだが、 春用は冬用に比べ襟高を1.5センチ程度低くし、インナーが薄手になることも想定して、身幅も2センチ程度細くした。冬物はフロント右身頃に風よけをつけた。

 ただ、せっかく作ったにも関わらず、自分オリジナルでデザインもサイズもド・ストライクのため、ブランド化を想定したサンプルとしてワードローブに保管したままのものもある。アウターは着用にも踏ん切りがつくが、パンツは数が必要なので、躊躇ってしまうのだ。今年あたりは手持ちの既成品が長期着用で劣化が著しいため、ついにアンタッチャブルにも手を付けないといけないかと思い始めた。

 冬用はコートやジャケットなど既製品を何着か持っているが、ブルゾンタイプのレザーはSPA系でチープなものしかなかった。それも購入から10数年が経過し、オフのオイルケアもむなしく細かいキズが白く目立ち、着用には耐えられなくなった。リサイクルショップに持ち込むと、1500円で引き取ってくれると言うので処分した。だから、オリジナルのレザーブルゾンは実用として着る中で、ディテールの表現面や着心地、ジップ位置など作品としてもをチェックしていきたい。

 せっかくなので、ブランド化を想定したプレスプロモーション用の素材も制作しようかと思っている。自分とほぼ同じ背格好の人にモデルになってもらい、撮影して写真データとして残しておけば、後々にいろいろ利用できる。instagramやpinterestでも発信できるし。知り合いにジャズのフルバンドをもち、自らもサックスプレイヤーの御仁がいらっしゃるが、その方に着てもらえると実に様になるのではないかと思う。ソリストのスタイリングとしては、モードな大人の雰囲気は醸し出せるだろう。もちろん、組み合わせるアイテムや小物も必要だが。

 福岡は冬でもそれほど極寒にはならない。中心部は都市化が著しく、ビルからビルへは地下を抜けて移動でき、屋外を長時間を歩くこともない。屋内は暖房が効いているので、厚着をし過ぎると、外から入っただけで汗ばむ。だから、インナーが薄着で済むレザーアイテムは重宝する。オリジナルの作品だし、熟考した末の制作だから、一生ものとして着ていきたい。ジップ処理も少なめにしたし、クライアントの打ち合わせに着ていっても、失礼には当たらないと思う。次回はニットの制作にもチャレンジしてみたい。

 ただ、13年ほど穿いている冬用のパンツがいよいよ耐用を超えてしまった。脇ポケットのステッチ部分から擦れて来て、ついに家族から「いい加減、捨てろ」と宣告されてしまった。クライアントでも、「こいつ、パンツを買えないのか」って思われるかも。決してそうじゃなくて、同じようなものが販売されれば即購入するのだが。

 生地が見つかればオリジナルで制作するのだが、これも10年以上探し続けても見つかっていない。こちらはデザインより生地一反を作ることが先になるかもかもしれない。ニットやシャツよりもパンツの素材づくりが早晩のテーマになりそうである。