January 15, 2007

粉雪の舞う新春

14日の日経新春杯の実況で発走前にアナウンサーが
「全ての人馬が無事に周ってこれます様に」と
言った事に気がついた人はいるだろうか。
これにはある特別な意味がある。

さかのぼること29年前。
1978年1月22日に行われた第25回日経新春杯で悲しい物語が生まれた。
粉雪が舞う中、圧倒的な1番人気に押された栗毛の馬体は
ゴール板を通過する事なくターフを去った。

テンポイント。
当時新聞の文字サイズは8ポイント。
見出しを飾る様な馬になって欲しいという願いから10ポイント、
テンポイントと名付けられた。

母親は桜花賞馬のワカクモ。
ワカクモの母、つまりテンポイントの祖母に当たるクモワカは、
1952年に発生した馬伝染性貧血の集団発生騒動に巻き込まれ、
殺処分命令が下された。
しかし関係者は馬の状態から感染はしていないと判断。
クモワカを密かに隠したのである。
クモワカは繁殖を行うものの、書類上は殺処分が行われている為に
生まれてくる子供は競走馬として登録する事が出来なかった。
関係者は子供を生み続けている事が非感染の何よりの証拠であると裁判を起こす。
そして役所の再検査によりクモワカは非感染であることが証明された。
こうして初めてクモワカの子として登録をされたのがワカクモである。

黒鹿毛のワカクモに対し、テンポイントは貴公子と称される栗毛で、
デビュー前からも評判は高かった。
デビュー戦を大差の圧勝。
2戦2勝で挑んだ阪神3歳Sでも10馬身差の圧勝。
テンポイントの名前は一躍全国区となったのである。
翌年のクラシック戦線でも当然中心とされたが、
皐月賞は生涯のライバルであるトウショウボーイが。
日本ダービーは伏兵クライムカイザー。
そして三冠最後の菊花賞をグリーングラスが勝ち、
クラシックの栄冠を手にすることはできず、
そして年末の有馬記念でもトウショウボーイに完敗し、
期待に応える事が出来ない年であった。

しかし翌年テンポイントは覚醒。
2連勝で挑んだ天皇賞でグリーングラスに雪辱。
しかし春のグランプリでは休養明けのトウショウボーイにまたしても完敗。
「テンポイントはトウショウボーイに永遠に勝てない」
ファンの間からはこう囁かれる様になった。
そして年の瀬の有馬記念。
トウショウボーイは年内での引退が決定していたため、
これが雪辱を果たす最後のチャンスであった。
レースはスタート後にトウショウボーイが先手を取るも、
すぐにテンポイントがこれを交わす。
そしてまたトウショウボーイが抜き返しと、
人馬共に譲らないまま最後の直線を迎える。
譲らない2頭。そして外から強襲してくるグリーングラス。
クラシックで競い合ったTTGは残りの馬を大きく突き放してゴール。
この年の有馬記念は3頭のためだけに存在していた。
「勝負に負けてもいいから相手に勝つ事しか考えてなかった」
テンポイントの鹿戸騎手、トウショウボーイの武騎手共にこう語った伝説のレースは
栗毛の貴公子がライバルに雪辱を果たす結果となった。

年明けにはテンポイントは万票で年度代表馬に選出。
これを受けて現役最強として海外遠征プランを打ち出した。
しかしファンの間からはもう一度その勇姿が日本で見たいという声も数多くあり、
陣営は日経新春杯への登録を行う。
日経新春杯はハンデ戦である為、テンポイントには66.5kgという
過酷なハンデが課されてしまう(通常なら48-58kg程度でレースを行う)
当初は66kgを越える様であれば出走はさせないという判断だったが、
0.5kgならば・・・と陣営は出走を決意する。

発送後、すぐに先手を取ったテンポイント。
誰もがその勇姿に声援を送り、海外への期待を膨らませていた。
しかし雪の舞う4コーナーでテンポイントはバランスを崩し、
そのまま競走中止となる。
テンポイントの後ろ脚は粉々に骨折しており、
普通ならばその場で安楽死となるはずだった。
しかしスタンドからはテンポイントを何とか助けてやってくれとの声が挙がり、
高田オーナーはテンポイントを一旦厩舎へと戻し処遇を一晩考え抜いた。
翌日の朝日新聞の三面トップの大記事で今回の事故を掲載。
更に全国のファン、そして競馬関係者までからも届く
テンポイントを生かしてやってくれ、子孫を残して欲しいとの声に
オーナーは遂に延命を決意。
大獣医団が結成され、当時の技術ではまず成功しないであろうと言われた手術を
見事に成功させる。
その後闘病中の病状は毎日の様に報じられ、
療養馬房には千羽鶴やニンジンが届けられた。
一時は回復のきざしを見せたが、
蹄葉炎(折れていない脚で体重を支える為に他の脚が炎症を起こしてしまう)
を発症・悪化させてしまい2ヶ月近くにわたる闘病も虚しく78年3月5日に
貴公子テンポイントは名前に込められた以上の活躍でこの世を静かに去っていった。





montrachet1983 at 02:29│Comments(1)

この記事へのコメント

1. Posted by 適正年収   July 06, 2011 11:25
あなたの適正年収教えます!あなたは、本当は現状より多い年収をもらうべき人間なのかもしれない…!

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