チベット密教で、密教を超える教えと言われるゾクチェンで行われる夢見の行法を紹介しましょう。
といっても、「夢見」といよりは、夜見る夢の中で行う「瞑想」というべきものですが。

チベット密教はシャーマニズムの夢見の技法を発展させた高度な技術と思想を持っています。
夢見も通常の瞑想と同じように修行として考えて、夢の中での方が瞑想修行がうまくできると言います。
また、夢をコントロールすることは、死後生での自覚的な行動と密接に関係したものと考えます。


密教やゾクチェンでは夢には2種類の夢があると考えます。
一つは過去の体験や習慣から生まれる夢で「カルマの夢」と呼ばれ、もう一つは純粋な創造性から生まれる夢で「光明の夢」と呼ばれます。
霊的な存在からのお告げのような夢もこの「光明の夢」に当たります。
夢の修行の目的は「カルマの夢」を消滅させて、智慧に満ちた「光明の夢」だけにすることです。


夢の中で目覚めることは第一歩です。
光のような根源的な意識の瞑想を十分に行えば、睡眠に入っても自覚を持ち続けることができますし、夢の中でも目覚めることができるようになります。
ですが、他の方法としては、日中にすべては夢だという自覚を促すことです。
夢の中で目覚めることができるようになると、より深く日中の認識世界も夢にすぎないということが認識できるようになって、自我もほどけていきます。 


また、睡眠の前に、眉間のチャクラに白いア字もしくは白い光の滴を、あるいは喉に赤いア字もしくは炎が輝く蓮の花(いずれも根源的な意識の象徴)を観想して集中します。
次に観想したままリラックスして寝ます。眠りにくい時は心臓の部分に白いア字を観想します。
こうすると、明瞭な夢を見てその中で自覚できるようになります。ですが、理想的には根源的な意識に入ったままに寝ます。


夢で見たすべてのものを足で踏みつけたり、夢の中のどんな場所にでも行けるようにします。
また、夢の内容を反対のものに変容させます。
つまり、熱いものは冷たく、小さいものは大きく、といった具合です。
夢の中で目覚めると、夢を自由に変化させます。

といっても行動を選択して夢の無意識的な創造性を発展させるのではなく、夢の中の存在や環境をまったく違うものに変えていくことで、夢が夢でしかないことをはっきりとさせていくのです。
簡単に変えることができる夢は、最近の体験から生まれた夢で、なかなか変化させることが難しい夢は、子供時代の体験や、前世に由来する夢だと言います。


さらに、夢の中のすべてを神々の現われと考えて、それらを神々に変容させます。
この神々は単なる姿形ではなくて、運動性を持ったエネルギー的存在でなければいけません。
最後に、自分自身を仏の姿にイメージします。
そして心臓のチャクラの中にフームという文字、あるいは微細な光の滴を観想します。
そして夢の世界をそこに順に溶け込ませて消滅させていきます。さらに、自分自身の身体をもこの中に溶け込ませます。
そして最後には、この文字、滴も消して、そこに根源的な光明を現わします。このようにして、夢も現実も同じように根源的な空から生まれた幻であることを悟ろうとするのです。


やがて、夢を何かに変えようとした時、まったく意図したものと異なるものに変化することが起るようになります。
それは「光明の夢」の現れだと言います。